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2021.11.2

　日記的（日記とは？）なものをつけていると11月が霜月という旧暦の月名だということをなんとなく調べたりして、なんだこの時間ってなったりします。

　夕焼けがワンバンして電車の中の目を瞑っている僕まで届く

　（鈴木ちはね『予言』「失業給付」）

　夕焼けがワンバンするという表現が、ワンバンつまりワンバウンドなんですけれども、している状態。よくわかんないけど想像は及ぶ。思えば夕焼けはあらゆる状態で歌や詩に登場しますが、ワンバンしてくる夕焼けの光って新しいと思うのですが、そういう表現の更新が行われていない限り、安易に夕焼けと正対することはない。ということがこの歌を読んだ時に、やはり主体像を超えて丁寧かつ慎重に短歌と向き合っている作者の姿が見えてくる気がする。決して褒められた読み方ではないかもしれませんが、ここまでこの歌集を読んで感じるのは、やはり主体として短歌の中に置かれた存在をプロデュースするようなカメラの視点のその所在なのかもしれない。時として社会と正対し、時として短歌の表現の新規性と向き合う。それぞれは全く性質としては異なるものだけれども、作品としてひとつの思想のようにそのカメラアイは通底しているようにも感じるのだ。

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2021.6.7

　ここ最近は読書することが楽しくなってきました。これはとてもいい傾向です。ここ20年はまともに本を読んでこなかったので、本を読むことで得られる知識の大切さ（これは恥ずかしながらマジのトーンで言っています）に、本を読むたび感動していたりします。よくわかんないですけど、頭よくなっているような気もします。この感覚は錯覚でもなんでもいいのですが、ただ継続して本が読めるよう、脳は騙され続けてほしいと思います。

　stressfulな日々なんですねと医者が云ひストレッフォーなんですよと応ふ　

　※stressfulには「ストレッフォー」のルビ

　（吉田隼人『忘却のための試論』「砂糖と亡霊（シュガー・アンド・ゴースト)」）

　医者がネイティブに近い発音で「ストレッフォー」と言ったのだろうか。直感的にそんな医者ちょっとやだなと思いつつ、この歌の主体は「ストレッフォーなんですよ」と返す。主体の発話はカタカナなので医者の発音をやや揶揄するような態度なんじゃないかな、と思った。主体は肯定しているけど、どこかで医師のstressfulの発音に、そうだからここに来ているというどこか倦んでいるような感じを「stressful」と「ストレッフォー」という表記を変えているところに込めているように感じた。ここまでどちらかというと内省のフィルタを通した、実景と心象風景のあわいを突いてくる歌が並ぶなかで、わりと諧謔寄りの風景の切り取りにどこかほっとして立ち止まった。

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2021.4.21

　夜になると蒸し暑い感じがする。朝は少し肌寒い。地球はだんだん温められて、冷まされてゆく。というなかでの人の肌感覚の振り幅がいちばんでかい時節なのかもしれない。

　秋の夜の弔辞読みたし母の顔、友の顔うかべ次々ころす

　（山下翔『温泉』「弔辞」）

　短歌ならこういうこと言っても許される、というわけではなく、という前置きをして、この内容が短歌という詩形、短歌であってよかったという感慨を持たせてくれるのは、こういう主体の独白だと思う。例えば散文であれば、やはりその前後関係というか、なぜそうなったのかを詳細に書かなければ成立しえないと思うわけです。うーん、短歌はそこを省いてよいという話でもないのですが、なんか今日はうまくいかないな。短歌は読み手がそこにいることへの信頼感が作り手の中に醸成し��すい。とでも言うのか。でもそうなると、一気に「内輪でしか共有できないノリ」みたなことを言っているような気もするし、今日は書きながら結論の出にくい方向に持っていってしまった。

　一般化しないで自分の読みに寄せると、そういうことを考えることは、あると思う。でもそれは死んでほしいのではなく、弔辞を読みたい気分の延長線上にある妄想であり、決して死への想像力の欠如ではないことが、連作の前後関係からはわかる。じゃあ連作評にしろよとも思うのだが、急にそういう、この一首だけについてだけ話をしたくなったのだけれども、全くうまくいかなかった。この歌が好きだということしか言えない。そういう日もある、そういう日ばかりでもある。ちゃんとしたい。

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2021.4.11

　入院している人のお見舞いをした。とはいえ、病院に行ったのではなく、その人は病院に外出届をだして病院の最寄駅の駅前まできてくれた。その人とは２年半ぶりくらいに会った。体調がまだ芳しくなく、速く歩けないのだそう。それを聞いた時、いつかこの人と並んでふつうの速度で歩いたことがあるので、少し泣きそうになった。別れ際持ってきた外出届を見せてくれた。なぜか名前をひらがなで書いていた。字がきれいだった。あと手もとてもきれいな人で、そのきれいな手を俺が乗る都バスに向かって振ってくれた。俺も都バスの中から手を振った。でも俺の手は出来損ないのクリームパンみたいにパンパンで、それでまた少し泣きそうになった。あと字も超絶下手だ。

　煙草吸ふ母のライターで火をつけてあれが最後の花火だつたな

　（山下翔『温泉』「花火」）

　今日の一首です。まずは何から俺の心が動いたかを整理したいのですが、というか歌に出てくる順番でいいのか。「煙草吸ふ母」はとてもいいですね。いやよくはないのですが、物語の登場人物としては最高です、グッときます。そして、その母が普段は煙草に火をつけるために使っているライターで花火をする流れが、やはり母というキャラクターに一気に厚みを与えているというか、花火をしながらも、あくまでもそのライターは花火のために用意されたものではなく、母の煙草のためのものという主体である息子の把握があるんですよね。そして、いいですか。それが最後の花火となったそうです。だから、この歌は主体の回想だったということになるのですが、母への思いのようなものがそこで一気に初句に立ち戻ってぶわっとあふれてくるんですよね。結句の「な」で、そこまでのすべてを流れを受け止めて、読者に向けて拡散してくる力があるように感じる。連作の表題歌でありながら、一首として屹立しうる物語性がある歌だと思いました。

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2021.4.11

　入院している人のお見舞いをした。とはいえ、病院に行ったのではなく、その人は病院に外出届をだして病院の最寄駅の駅前まできてくれた。その人とは２年半ぶりくらいに会った。体調がまだ芳しくなく、速く歩けないのだそう。それを聞いた時、いつかこの人と並んでふつうの速度で歩いたことがあるので、少し泣きそうになった。別れ際持ってきた外出届を見せてくれた。なぜか名前をひらがなで書いていた。字がきれいだった。あと手もとてもきれいな人で、そのきれいな手を俺が乗る都バスに向かって振ってくれた。俺も都バスの中から手を振った。でも俺の手は出来損ないのクリームパンみたいにパンパンで、それでまた少し泣きそうになった。あと字も超絶下手だ。

　煙草吸ふ母のライターで火をつけてあれが最後の花火だつたな

　（山下翔『温泉』「花火」）

　今日の一首です。まずは何から俺の心が動いたかを整理したいのですが、というか歌に出てくる順番でいいのか。「煙草吸ふ母」はとてもいいですね。いやよくはないのですが、物語の登場人物としては最高です、グッときます。そして、その母が普段は煙草に火をつけるために使っているライターで花火をする流れが、やはり母というキャラクターに一気に厚みを与えているというか、花火をしながらも、あくまでもそのライターは花火のために用意されたものではなく、母の煙草のためのものという主体である息子の把握があるんですよね。そして、いいですか。それが最後の花火となったそうです。だから、この歌は主体の回想だったということになるのですが、母への思いのようなものがそこで一気に初句に立ち戻ってぶわっとあふれてくるんですよね。結句の「な」で、そこまでのすべてを流れを受け止めて、読者に向けて拡散してくる力があるように感じる。連作の表題歌でありながら、一首として屹立しうる物語性がある歌だと思いました。

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2021.4.7

　タンブラーの新しい入力画面を試してるけど、ここにきてこれはいいんじゃないかなと思う。予約投稿も簡単にできるみたい。改善されるのはいいことだ。月詠がやばい。

　自転車のタイヤがどうもやはいんぢやないかみたいな体調つづく

　（山下翔『温泉』「銀鱈の皮」）

　体調を言い表すにつけて、自転車のタイヤがずっと空気入れしていない状態で、ペダルが重く感じるあの状態であるという。なんというわかりやすさなのだろうか。自転車は、例えば毎日通勤通学などで使っていると仮定すれば、ある朝気づくわけですね、タイヤのやわさに。でもまあいいかと乗り続ける。ペダルの重さを日に日に気にしながらも、乗り続ける。の感じ。決定的な不調ではなく、通常運行の中での違和感、そして、それは空気を入れることによって簡単に解消することも含めて、それをまだしなくてもしのげる程度の。という比喩になっている。「みたいな」という言葉遣いにも軽妙さがあり、全体的に体調とは裏腹な軽さがあって、とてもおもしろい。

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2021.3.12

　歴史って、たとえば今から100年後のことは今という地点から100年前の歴史がひとまずベンチマークになるのか、ならないのか。今から100年前から観測した100年前は、そのまた100年前は。おそらくそれぞれがそれぞれに違った「100年前の歴史」なのではないだろうか。何が言いたいのか、それはやっぱり今という時代が、100年後にどのような「評価」をされるかということに興味があって、そんなこと一個人が夢想したところで何にもならないのだけれども。100年後の人にバカにされたいじゃないですか。市井に生きた人として。もちろん、いい意味でですよ。

　秋の字の書き順ちがふちがひつつ同じ字となる秋をふたりは

　（荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』「遭難のあとさき」）

　秋の字の書き順、書いてるところを見たら自分と違う、という状況があってもなくても、同じ秋を過ごしている。ということを、曲がりくねった道を進むように読む。めちゃくちゃ寄り道しながら進む。感じがします。雑に読み下すと歌意はふたりの秋の感じ方の違いかもしれない。でもそんなことは、そんな他人のことはわからないわけです。だから「書き順が違う」という別の違いの（実際の）尺度をもってきている。けどそうすることで、秋を違うものとして捉えているふたりがきちんと結像する。なんとなくあやふやな他者への規定を、実態としての違いに置き換えながらも、その秋はふたりにとって、感じ方は違うのだけれども、秋として秋は同じものだということが、回り道、寄り道をしながら秋の散歩をしていくふたり、のように短歌の中に収まっている。その佇まいがとても美しい。

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2020.1.26

　もう５年くらい同じ眼鏡なのですが、まじまじ見るともう限界なのではというフレームのつなぎ目のすこし欠けているところがあって、もう限界なんです。眼鏡が。冬に生まれながら冬に弱いわたくしも44回目の冬を迎えました。２日前に。ありがとうございます。

　砂糖何個入れますっけから砂糖って入れますっけに変わる　いいね

　（御殿山みなみ『モモモノローグ』「七月二日」）

　あ、この人自分に「近づいてる」って瞬間がうれしい。それって余程注意していないと見逃して「なんかいい」で終わってしまう生活のひとコマなんですが、短歌やってると切り取れてくるんですね。別に短歌やっていなくても気づける人は気づけるのでしょうが、何らかの外部の変化を受けた自分の心の機微に敏感になるというか。だからこの主体へのコーヒーについての質問が、正解に近づいているのがとてもいい。そういうことを見逃してはいけないよなって心から思える。短歌やっていようが、いまいが。

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2020.12.29

　まだ名古屋です。昨日はしばらくは食べることの叶わなくなる平和園の炒飯を食べてきた。ちょうど山川創さんがきていたので、いろいろと短歌人の話をして、来年は結社内での活動の幅をひろげさせていただけそう。これも平和園があったから可能だったことだ。そもそも短歌人にはいるきっかけのひとつを作ってくれたのも小坂井さん。改めて高まる、平和園への感謝の気持ち。

　公園の禁止事項の九つにすべて納得して歩き出す

　（工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』「この人を追う」）

　自分が半夏生の会に入る前、会が１周年を迎えるときの会合があり、工藤吉生さんにその年のノミネートされた歌会で出された短歌の選評をしてもらっていた記録が残されている。それが2018年の夏のこと。工藤さんはその年の短歌研究新人賞をこの一連「この人を追う」で受賞している。自分がはじめての連作をつくる時、工藤さんが「この人を追う」をつくる時のメソッドがブログの記事になっており、それを参考にさせていただいたこともある（現在はnoteの有料記事です）。自分が短歌を始めた頃から今まで、アウトプットのとにかく豊富な工藤さんの諸資料にかなり助けられてきたし、これからもそうなんだろう。

　今日の一首、とにかく俺は「かっこよさ」を感じた。まず、そんなことは普通しない。公園の禁止事項なんて読まない。仮に、読んだとしても何も思わない。あまつさえ納得など絶対にしないだろう。その上で「歩き出す」主体。かっこよさの源泉は自分でも言語化が難しいのですが、いや俺は絶対にそんなことしないから、というツッコミを完全に跳ね返してくる主体の行動なんですよね。それは「ツッコミ待ち」というスタンスではなく、本気でやってる感なんだよな。伝わってますかね。

　一首を読みながら結像していく主体の行動の、一般的には破綻しているような行動。でも公園の禁止事項は存在していて、それに納得することではじめて公園に足を踏み入れることが可能になることもまた、揺るがない事実として存在する。それを書く。ということ。空中に漂う暗黙を掬い取り、真顔で作中主体にそれをさせる「技術」がそこにあると思わずにはいられないのである。どうだろう、俺はそこが「かっこいい」と思うんです。

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よだれ

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しんどい

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豚ひれかつガールです　

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The monsters are gone. It’s ok. I’m ok.