Text
あの白い海について分かったことがある。
ここ最近、気温が上昇して大気中の水蒸気などが漂い、遠くがぼんやりとかすんでいるそうだ。
雲ではなく霞。
空に数箇所隙間ができて水色の丸い穴がある。
白い空と薄い水色の雲のように見えた。
春がすみ、1番好きなもののひとつ。
2025.1.24
0 notes
Text
頭の中でいつの間にか話をしていることがある。
相手は近しい人が多い。
例えば、ふと知り合いが前に話していたことを思い出す。
それに対して、そのときは言えなかったけれど、
そういえば、こんなことが言いたかったかもしれないと考えるところから始まる。
大抵自分の長話になるので、それを後日実際に話したことはない。
これが、近すぎる人は登場しにくい。
姉には大抵その場で言いたいことを思いつくままに話しているので、そんなに登場しない。
そういう人たちの場合、こんなとき、この人ならなんて思うだろう?
の「?」から頭の中で起動し始めることはある。
多く会っている人ほど、頭の中に正確な人物像が出来上がっている。
その人のAIが私の中に搭載されているイメージ。
会えば会うほど精度が上がっていく。
ある画家は、頭の中に理想の女性像が完全に再現できると聞いた。
指先や頭の形、骨格まで全て分かるので、
女性を描くときにモデルや参考の図などなくても、
さまざまなポーズが取れるのだろう。
もしかして、その理想の女性像が頭の中で完成するまでには、
膨大な情報と実体験が積み重なっているのかもしれない。
2025.1.23
0 notes
Text
また晴れているのに白い海を見た。
前回は去年の3月14日だった。
日が照っているのに、眩しくない。
空も水面も白くて境界線がない。
太陽の光は届くくらいの、
すごく薄い膜のような雲が空に張っている。
白い海を見るときは、必ず春の空気が漂っている。
2024.1.23
0 notes
Text
先週の14日は満月だった。
私の住む近くは、東側に山があって日の出と月の出が全然見えない。
その代わりに夕陽がきれいで、
たまに月の入りも眺めることができる。
なので、14日の晩もどうせ隠れているだろうと思っていたら、
低い位置に建っている家の瓦屋根がキラキラ光っている。
近くの外灯ではそんなふうに光らない。
月明かりに照らされてキラキラしているらしい。
もう少し夜更かしすれば、月も見られたかもしれないけれど、その日はこれで充分だった。
2025.1.20
0 notes
Text
人知れず誰かが立てた浜辺の青い旗は、
あの後しばらくして雨の日に倒れていた。
それからは電車から浜に横たわった青いものが一瞬見えるだけだった。
今日再び旗が立て直されているのが見えた。
誰かにとって、必要なものなのだろう。
2024.12.7
0 notes
Text
時に昔のものを見たり読んだり聴いたりして感傷的になったりする。
およそ20年も前に大好きだった曲をふと聴き直す。
その頃のぜんぶが鮮明に蘇ってくる。
感情とか、空気のにおいとか、通学路とか、友だちのこととか、ビデオデッキの感触とか。
今と比べると、同じ人生とは思えないほど別の人間のように思える。
これは本当に幻だ。
この曲のミュージシャンも、今では路線を変えて全く別の音楽をしているから、2度とこの曲を歌ってくれない。
すでに消滅した星の光が時間の差で地球から見えるのと同じだ。
2024.12.7
0 notes
Text
無駄を省く、時短、タイムパフォーマンス、
そんな時代。
要らぬ手間は省けばいい。
ただ、要る要らないの判断をするには
無駄かもしれないと思えるものまで吸収して
学ばなければならない。
最初からすべてを効率化してしまったら、
人生そのものが痩せ細って、
なんの味気もない近未来。
2024.11.7
0 notes
Text
自分のことが、とても俗っぽいと思うときと、
ありきたりな言葉で、世間と線引きしてしまうときがある。
漫画を読めば大概主人公に感情移入するし、
話題のドラマを半信半疑で観はじめたらハマったりする。
かと思えば、流行りの服なんてたぶん着ないし、
誰もが一度は通ると言われる某会社のアイドルたちを一度も好きになったことがない。
どちらかに振り切っている人なんて、
ほとんどいないのかもしれないから、
どちらに属したいかってことだけなのだけど、
どちらにも属したくないし、
でも自分をどこかに位置付けて安心を得たいときもある。
ただ、結局は定義付けることができないという事実にぶつかって、
振り出しに戻る。
2024.11.5
0 notes
Text
最近浜に新しく旗が立った。
それも電車の窓から見えるので、
今日は東風なんだなとか、
今日は風が弱いなとかで楽しんでいる。
あの青い旗の本当の目的はなんだろう。
人は山のてっぺんに登った証に、
月に着陸した記念に、
何かを祝うために、
オムライスの上にまで旗を立てる。
誰かが風を読んでいるのか、
誰かに宛てたものなのか、
分からないまま皆窓から眺めている。
2024.11.1
0 notes
Text
人混みをすり抜けるのが得意。
コツは、人の足元あたりに目線を落として全体を見る。
顔のほうだと、隙間があるように見えて荷物を持っていたりしてすり抜けられないことがある。
足元に集中すると、バラバラだったピースが一瞬整列して、
私だけの抜け道がはっきり見える。
歩くスピードも1人だとはやいので、
大体は追い抜いてしまう。
それでもたまに同じ速度の人がいて、なかなか動きにくいことがある。
そんなときはひとつギアを入れて、
一瞬早く歩いてから元に戻す。
人生でも、そういう一瞬でもギアを入れてひとつ先に進まないといけないときがある。
それをしば��くしていない。
2024.10.21
0 notes
Text
どこかに自分の時計を置いてきたように、
全てが凪いでいる。
毎日起きて、ごはんを食べて、仕事をして、
予定にも行っているのに。
物理的に動いているけれど、感情が止まって幽体離脱をしているみたい。
無駄になり得る作業がいくつか同時進行していて、それが原因だと思う。
登山はどんな小さな一歩でも目的に近づいている実感が湧いて無駄がない。
四方に島が見えない海で遭難したとして、
当てもなく泳ぐのは、
それがずっと続くのは、
かなりの忍耐力がいる。
泳ぐ方向が間違っているとしたら、全て無駄なんだ。
お正月に引いたおみくじには、
状況が停滞していても焦らずに、
できることをしっかりして時を待つこと。
そんなことが書いてあった。
今は自分の時計を無くしても、動き続けるしかない。
2024.9.29
1 note
·
View note
Text
東京の記録その1
演劇を観るために東京へ。
いつもは夜行バスとかで早朝に着いて、
駅近くのカフェテラスで朝ごはんを食べながら、
丸の内に出勤する人たちの列と、
だんだんと多くなっていく観光客の様子を見ていた。
今回は正午に到着して、駅はすでに人で溢れている。
圧倒されて、出口も間違えて、目的地まで1時間以上かかってしまう。
丸の内駅舎のドーム天井。
行き交う人の流れの中で見上げる。
私の定番の観光場所、KITTE内インターメディアテクの展示場へ。
外はあれだけ人が多いのに、静かで人がまばら。
みんな思い思いの過ごし方をして、ソファで居眠りするおじさんもいる。
地下鉄で神保町駅へ。
去年、とても良い本が見つかった田村書店。
入り口は開いてるのに店主が阻むようにじっと外を見て座っている。
声をかけて中へ入ると、
とうとう店内の客は私ひとり。
あれだけの喧騒と雑踏をくぐり抜けて、
行き着いた場所は、
本の呼吸が聞こえそうなほど静かで、
古い紙の良い匂いがする。
ここが私の求めていた東京。
2024.9.13
1 note
·
View note
Text
夏の間ぜんぜん更新していないのは、
毎日電車に乗らなくなるから。
通勤電車は嫌だと思う反面、
この時間に色々無駄な考えごとをしている。
充足すると消えるものがある。
あっという間に夏が過ぎて、
海の家も解体されて、
バラバラの組み木になって浜に横たわっている。
2024.8.29
0 notes
Text
帰り道を歩いていると、
むこうのほうで赤いリボンタイに紺色の制服を着た高校生2人が何かを見ている。
曲がり角にある生垣のほうに視線を向けながらゆっくり近づいている。
私からはちょうど見えない。
しばらくして、ひそひそ言い合いながらまた歩き始めた。
「ぜったい居たよね」
「あそこに見えたよね」
「うん、見えたよね」
「ぜったいそうだよね」
そう言い合いながら過ぎ去っていった。
猫なら猫と言うはず。
なにかがいたんだと思う。
ぜったい。
2024.5.29
1 note
·
View note