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cuheiu · 17 days
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恐縮なことに、とても好きな脚本家の方が数名いる。昔からドラマや映画を鑑賞するのが好きで、その中で何度も繰り返し手に取ったり、数ヶ月毎に新期に変わるテレビドラマで、熱中して観る作品の脚本を手がけている方が偶然同じだったりして。言葉の扱い方や選び方、間の取り方。その時々に使うには突飛しているようなシーンでさえ、まるで伏線回収するようにパーツが組み合わさって、始めからそうなることが決まっていたかの如く偶然を積み重ねていく物語性で、一目見れば最後のクレジットで名前を確認しなくとも「その人だ!」と分かる事も多かった。だが正直、好きな作品はほとんど軸が平和なものではない。全員が秘密を抱えていたり、何かを探り合っていたり、生と死の狭間を残酷にも美しく描いていたり。一般的に手に取りやすい恋愛系やネタ要素が強くライトな印象を与えるものとは違って、内容によっては扱いを躊躇い、後を引くこともある。けれど、そう。いつだってそれらを鑑賞した後は、分からないなりに懸命に思考するのだ。詳しい知識はなく、当事者でもなければ簡単に「理解した」と言えるものでもなく。作品の中で導いてくれる思考の道筋や、専門性の高い情報、描かれる心情描写。脚本家によって分かりやすく噛み砕いて思考させる言葉選びだったり、自分にはなかった角度から向けられる感情だったり、と。曖昧で、繊細で、真っ直ぐで。いつも余白を与えてくれるからこそ、手に取った人は皆何かしらを感じ得ていく。そんな愛する作品をもう何周したか分からなくなった頃、素敵な朗報が届いた。噂には耳にしていたがまさか本当に実現されるとは思わず驚いたが、待ち侘びていたことでもあった。聞けば、好きな作家が脚本を担当した映画が公開され、更にその映画にこれまで作家が脚本を施したドラマ作品の主要人物達が出演するというのだ。公開から現在までたくさんの好評を耳にし、ようやく映画館へ足を運んだ先日。約二時間半ほどだろうか。鑑賞を終えて、友人と発した第一声は「凄かった」と、なんとも圧倒された感想だった。本編終了後のクレジットに注意書きがなされるほど、事の深層は社会の闇や人間の精神的な部分に触れたものだった。合間に登場する知っている人物達に歓喜しても、その直後にけたたましい音と共に爆破され、被害を受けた人々の悲鳴や無惨な現場に心臓が忙しなく逸る。怪しく見える人物、何度も展開される内容、過多していく情報。疑惑、平穏、戸惑い、信頼、疲弊、安堵。寄せては返し、また寄せる波のように訪れる怒涛の展開に必死にしがみつきながらも、決して視聴者を放置せずに丁寧に描かれる物語は圧巻そのものだった。そして、魅力的な登場人物達。前向きで強く、けれど繊細で、多角的に物事を捉え、なにより皆が揃って命の重さを知っている。決して軽くも簡単でもない過去を持っても、明日を生きることにいつも希望を持っている。彼や彼女の口から溢れる言葉の数々に思いが巡り、必ずなにかを得て学ぶのもドラマ同様いつものことだった。後悔を抱え、大切なものの為に躊躇いなく進み、時に危なっかしく無茶をしては、息苦しそうに涙する。昨日、今日、明日。止まることなく続く毎日の中に、自分の中に、彼や彼女がいる。よく人間同士の関わりや物語を描くものをヒューマンドラマ等と呼ぶが、これらは、そうだな。人間として生きる誰しもの生活に蔓延る、人間関係だけではない「人間の一生の一部」を描くヒューマンドラマなのだと思う。「2.7m/s→70kg→0」彼が残したその意味に、はたして彼は辿り着いたのだろうか。この映画がくれた余白を考える今、彼がした選択と密接する全ての事柄に、誰しもひとつは心臓を握られ、思いを馳せ、共感したり恐れたり、色々な意味で他人事ではないと感じたと思う。その感覚から、少しでもこれからの世界が違和感を持ち、平行線な世の中が変化を望み、想像してくれたら。「人間が想像できることは必ず実現できる」という言葉が、決して幻ではないと証明してほしい。彼が強く踏み込み、彼女がスイッチを入れた大きな度胸を。忘れたくないと、いつまでも思い続けていくために。
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cuheiu · 22 days
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cuheiu · 26 days
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数年、数ヶ月、数日。同じ箇所にテーピングをするのにも随分と慣れた。慣れたと一口で言ってもただ習慣として身に付いただけで、その一連の流れはいつも微妙な出来上がりだ。負荷が掛からないように形作り、箇所をサポートするために貼り、要点を過ぎると肌が負けないように剥がす。時折思い出したようにジクジクと痛む時は鎮静効果のある湿布を用いた。風呂上がりに数枚、角度や枚数、微妙に位置を変えて。面倒だとか手間だとか、この行為を苦痛に思う時期は遠に過ぎた。そこに触れる度に、壊れたテープを再生するように何度もフラッシュバックすることも、それに比例して激しく痛むことも。ただ、そう。自分で施すには少々難しいそこに貼った湿布が、皺になって、歪んで、ぺらりと浮かんで。ああ、もうちょっとこっちに貼りたかったのにな、なんて思う時。咽せ返るような息苦しさと眩暈が、鼓膜を劈く耳鳴りが、突然襲いかかってくる。膝を抱えて顔を埋めると、重心が揺れて崩れていく平衡感覚と共に、ほんの少しだけ詰まった息が戻ってきて。かつてボロボロになった所から、強い湿布薬の香りが漂ってくる。肩を巻き込んだことにより顔の皮膚に触れたか、体温が下がるようなスーッとした冷たさも。意識すればするほど忙しなくなる脈拍のように、逸らせば不思議と落ち着いてくる呼吸が平穏を取り戻してきて、人間の感覚機能は案外と単純であると実感する。色んな所が痛むなんていうのはまやかしで、一箇所の痛みしか訴えることが出来ないのだ。心が痛む時は身体の痛みに集中し、目が回る時は嗅覚を強く刺激し、呼吸が乱れる時は皮膚に違和感を与えて紛らわせる。そうして些細な瞬間で少しずつ確実に欠けていく心の立て直し方を覚えて、取り戻して、また崩れて、ゼロではなくマイナスへ落ちて。繰り返すうちに慣れてしまった堂々巡りは、はたして正常なのだろうか。貼って消費してもまた何度でも手に入る湿布薬とは違い、この身も心も交換するスペアはないのに。見えない内側も、負荷が掛からないように形作り、サポートするために貼ることが出来たならどれだけ良かっただろう。いつの間にか、記憶を辿ってズキズキと響く傷口ごと自分を抱き締める。今夜が過ぎたらまた、取り戻せるように。数年後にはこんな今日も、遠くに過ぎていくように。抱えた膝で隠した胸痛を、ただただ途切れる呼吸で逃した。
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cuheiu · 1 month
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cuheiu · 2 months
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cuheiu · 2 months
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別れとは、悲しいものが多い。涙を汲んだり、離れ難さに振り返ったり、受け入れきれずに悔やむ事もある。大きな分岐点で、ひとつの終わり。もう二度と会えないかもしれない。そんな予感すら過る事もあるだろう。それでも人は、何度も何度も別れを迎える。辛いかもしれない。苦しいかもしれない。ただ、それだけではないのだ。目一杯の笑顔と、見えなくなるまで腕がちぎれるほど振り合う手のひら。願いを込めて繰り返す「またね」の言葉。大切な誰かと交わした別れの先で、共にした記憶を抱えて生きていくこと。共に得た知見でもっと大切な誰かに出逢うこと。別れは、始まりでもある。巡り続ける縁の中で君を見付けたのは、人生において最良な選択だったと思うから。そっと心で祈りを込める。必要ならば、また必ず結ばれる。赤い糸だけではない運命が、君と繋がっていると信じて。
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cuheiu · 2 months
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「夢にまで出てきて困る」とか、全然困ってない顔して言ってくれよ。
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cuheiu · 2 months
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cuheiu · 3 months
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「何が行く手を阻んでも、何に邪魔されても、泣きたい時は泣けばいいんだよ。文句垂れたっていいし、全部飲み込む必要ないじゃん。お酒飲める人と飲めない人がいるみたいに、飲めませんって言っていいんだよ。じゃないと飲まされちゃうでしょ、ぶっ倒れたらどうすんの。なんだっていいよ。言っていいよ、聞くから。」
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cuheiu · 3 months
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cuheiu · 3 months
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心身を蝕む感情の前で、俺たちはいつも無力だ。どんな言葉を使おうと、どれだけ思いを馳せようと、他人が決して触れられない場所に留まり続けるのが、それらの感情が持つとても厄介で気難しい特性だからだ。何が出来ると、この人生をもっても証明することは不可能だとすら思う。絶対や必ずといった言葉を使う必要があるならば、尚更その気持ちを増長させる可能性の方が高いほどだ。だけど、君がしてくれた事の全てを、俺はこの心で知っている。ただ傍に居続けるのは、出来る事や出来ない事を一つひとつ数えるよりも、本当はとても難しい。惜しまない思いの先にある結論が、たとえ無力だったとしても。この心が覚えている限り、無駄にはならないはずだから。君がどうしようもない感情に明け暮れる時は、そっと記憶に連れてきてほしい。何が出来ても、出来なくても。君のためにどんなひとつも厭わない存在が、確かにあるという事を。そしてそれが、君にとってほんの一瞬でも悪くないと思えるものだったなら。俺はようやく初めて、君に何かを返せるはずだから。もしこの先の人生で、二人が交わる事がなかったとしても。思いの丈が繋がっていれば、きっと意味があると信じて、祈り続けたい。目に映るものが美しく、包み込むものが優しく、鼓膜を揺らすものが温かく、姿を照らすものが柔らかく。なによりも、その心身を満たすものが、穏やかでありますように。どうか君にとっての幸せが、ひとつでも多く降りかかりますように。
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cuheiu · 3 months
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cuheiu · 3 months
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「僕のことも書いてほしい。」そんな風に懇願されたのは、いつの頃だったか。意識しないうちにかれこれ一年も共にしているらしく、所々曖昧だったり鮮明だったりする記憶がそれらを物語っていた。初めの頃の印象といえば、そう。口を開けば「ご飯作ってください!」「奢ってください!」の二点が定番で、この子は食事の要求以外に俺への関心がないのか?というものだった。仲良くなろうと話してくれているのは分かるが、その選択肢があまりにも少なくて。柔和で人懐こい表面の中に、そこはかとなく漂う人見知り性や話題提供が苦手そうな、微かな不器用さを感じていた。今となってはこちらに向けられるものも表面だけが残っているが、そこに至るまでに交わした言葉の数々は、まあ。わざわざ書き記すことではないと思うから、割愛とする。一年前より、そして半年前より随分と甘えたに変わって、一瞬頼りになる弟の顔をしたかと思えば、またすぐに幼さすら感じる甘えたに戻っていく。感情表現が豊かで、楽しそうに笑ったり、突然拗ねたかと思えば不安そうにゆらゆらしたり。この約一年で「ヒョン来てください!」って、もう何回聞いたかな。他人に甘える機能と共に、その分大切だと思った誰かのために緊急出動するシステムまで追加したお前は、本当にいつも一生懸命だからこそ。俺だけではなくて、沢山のヒョンやヌナに愛されているんだと、側から見ていて心から思うよ。どうかその個性を大切に。そして、お前らしい前向きな言葉で、これからもヒョンを笑顔にしてあげておくれ。…おっと、これじゃあ常にそういなさいと言っているようなものか。決してそうではなくてだな。お前の心で感じたものを無くしたり、粗末にする必要はないんだよ。それこそ大切にしていてほしいし、向き合ったり考えたり、抱えていく最中でなんとなくだっていい。ひとりでは難しいな、と思ったら、少し顔を上げて見渡してごらん。お前の周りには、力になってくれる人達が沢山いるからな。それはお前が自身の魅力で得た、人生の財産のひとつだよ。上手くいかない時、だめになりそうな時ほど、よく覚えておいて。いつも本当にありがとう。これからもどうぞよろしく。
追伸。そういえば、最近悪い夢は見てないか?話して、放すこと。忘れずにな。
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cuheiu · 3 months
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cuheiu · 4 months
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cuheiu · 4 months
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いつもの如く強請られて、日々拵えた気持ちをぽつぽつと書き連ねていく。こんなやりとりも、もう何回目だろうか。この数年一度も欠ける事なく傍に居たものだから、答えを出すのは難しいかもしれないな。そう、マブダチ。お前の願いをやっとこさ叶えていくよ。近頃の俺たちと言えば、付かず離れずという言葉がよく似合う。隙あらばただただ時間を共にする初期を超え、随分と落ち着いたな。昔は秒単位で返信をし合って、互いにある他との関係にヤキモチを妬いたりして。若さとは言えど、親しい友人と呼ぶには少し突出していたように思う。こんな風に綴るとまるで今が冷め切っているみたいだが、様々な時期を経てちょうどいい距離感を得た俺たちの想いの深さは、今が最高潮だよな。情けない所も、ちょっと面倒な所も。…ふ、口が悪い所も?分け合って、見せ合って、今がある。それこそ、そこら中に居る一、二年目の恋人同士よりは曝け出し合っているし、よく理解し合っているし。だからこそ少々離れていようとも、言ってしまえば平気なんだよ。まあ、離れているなと感じる���にちゃんとお互いに戻ってくるしな。そういう他にはない安心感というものが、お前にはある。意味もないしオチもない話をして盛り上がったり、かと思えば何十分も黙ったまま自由に過ごし合う通話だとか、定期的にこうやって求めて語り合う気持ちの数々だとか。お互いしか知らないような話も、これからだって増えていくんだろうな。俺たちはお互いそこそこ自由で気まぐれで、波もある。何回も同じ事で躓いて怪我して、学んで成長したかと思えばまた後退して、その度に苦い思いもするけどさ。自分と向き合うべき瞬間に、俺にはお前が居て、お前には俺が居れば、多分全部大丈夫だよ。それで馬鹿だなって笑い合おうぜ。そういうのを何回だって、何十回だってしよう。お前が居てくれさえすれば、まあどうにかなるだろうしな。一緒に生きる醍醐味は、これからも俺たちで作ろうぜ。
さて、追伸。せっかくだからこっちにも書いてやるよ。お前にだけは愛されてる自信あるからさ、これからもくまなく���せよ。いつもありがとう、マブダチ。サラハンダ。
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cuheiu · 4 months
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怒涛のように過ぎ去る上半期。思いもよらぬ事態や、自業自得を絵に描いたような蓄積した結果に追いやられ、数年を濃縮したかの如く詰まりに詰まった時間となった。その割に得たものはほぼ無いに等しく、寧ろ計画してきた作業や待ち侘びた予定を崩す結果に。精神的にも、身体的にもダメージが大きすぎる日々。そんな予想とは別の時間に追われる毎日で、疲弊したまま手に取るのは懐かしい貰い物だった。もうすぐ二桁を数える程に遠くなった過去。生活する事すらままならず必死だったが、悔しさや反骨精神で歯を食いしばっては何度も立ち上がったあの時。絶えず与え続けてくれた存在が、いつも自分の心に光を灯してくれた。何もかもを知っている訳でもないお互いの仲ですら、その言葉の数々には確かに関係を飛び越えるほどの思いが込められていて。それらから体温を感じる度に、冷えた指先や心が包まれる心地がした。会えない間も何をしているだろうと、大切な思いを馳せてくれる。健康でいるだろうか、よく眠れているだろうか、笑えているだろうか。こちらを気遣う文字が作る筆圧の強さに、何度も心を打たれたのだ。その時に感じたこの震えるような湧き上がる感情は、どれだけの時間を超えて上塗りされ、海馬の奥底に追いやられていたとしても、決して忘れることはない。あの時から以降も、毎日毎日、必死だった。良いことばかりではなかったし、悪いことばかりでもなかった。上り坂も下り坂も辛く、突如現れた平坦な道や行き止まり、滑落した崖にも苦しんだ。けれど、どの瞬間も信じられる声や言葉が、思いがあったからこそ、ここまで辿り着いた。今一度確かめるように触れて、思い返すのはきっと。そうするべき地点にこうして、連れて来てもらったからだと思う。あれから、時は二桁を迎えようとしている。変わらない根本で思いを受け止めながら、積み重ねた今だからこそ新たに芽生えた感情や、心に作られた器を抱えて。今はまた、立ち上がる時だ。この先の未来で、君がくれた光を、思いを。自分の全てで、返すために。
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