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生と悪と嘘と愛と 2
2部は中村さん大塚さん沢城さん以外の4人が左右場所を入れ替わり。
“忘れ難き”記憶を対価に魔力を得て城を逃げ追われるジル・ド・レと付き添うラ・イル。王国の騎士としてそれを追うアランソン。神託が嘘であることを隠すためにジル・ド・レを追わせるシャルル7世とリッシュモン。
それぞれの対立と、ジル・ド・レが手放していく思い出。辛い記憶であったり戦いの中のささやかな笑いであったり、そういうシーンが演じられる度に、これも忘れて行くんだと思って号泣。
この辺りから、リッシュモンの言動と、ラ・イルとラボラスのやりとりになんとなくの違和感を覚える私(笑)
最初は詐欺の一環として、生きる術として引き受けた聖なる乙女のジャンヌは、やがて本当に国のために命を懸けて戦地に赴くようになり。どんな気持ちなんだろう、と劇中ふと思うと、沢城さんの声の勇ましさや弱々しさの緩急にとても意味が込められているようで、本当に素敵な役者さんだなぁと。 同時に、それを案じるジル・ド・レ、アランソン、ラ・イルの、彼女を認めている姿勢の健気さにも泣けて来るし。
一部ではあまり大きく掘り下げられなかったラ・イルの人生が語られ、そしてなお記憶を手放して行くジル・ド・レ。
2部は本当に、ラ・イルの暗躍というか大立ち回りが物語を動かしていたような気がする。俯瞰して見ているような作品だったけれど、ラ・イルとラボラスの視点に近いようなものだったのかも。
そして掌の上で転がすようにジル・ド・レを追い詰めて行くリッシュモンと、その種明かし。正直、リッシュモンと悪魔の関連は予想していたけれど、ラ・イルとこの繋がりは予想外で、その前のシーン(だったかな?)で彼が叫んだ「悪魔は私たちです」という台詞と、「金の大切さを知る者」の話で、彼も人間だったんだなぁという実感。戦場で怒りに我を忘れて、というか本来の荒くれた面が見えるところより何よりラ・イルの人間味を感じたシーンはここでした。
追っ手のフランス軍と待ち受けるイングランド軍を退けるために次々記憶を手放して行くジル・ド・レはついに無二の親友アランソンと対面するも、彼についての記憶すら手放していて。アランソンとの対立は本当に朗読とは言え2人を直視できないぐらい悲しい場面で、梶さんの咆哮って本当に身が切れてしまいそうな鋭さで、顔からハンカチが離れなかった。
唯一無二の友を殺す後ろめたさが無いと言うジル・ド・レと、剣術も戦略も自分の弱点すらも手放してしまった友を追い詰めるアランソン。そしてその彼の弱点の原因も、アランソンにとっての忘れ難き記憶で、自らの命を庇って受けた傷を攻撃するあのシーンの重みは忘れられない。
そんな中、そんな2人の友情を身を呈して守ったラ・イル。あの瞬間の演技は、距離が感じられないぐらいリアルで、目の前で起こってるぐらいに感じられた。
リッシュモンとジル・ド・レの対決は、とても分かりやすいようでトリッキーな対比だなと。“忘れ難き記憶”って何だろう。友との思い出、自身のことまでも売り払って、1人の少女の生還を願うジル・ド・レと、力を大切に貯金して効率よく使うリッシュモン。最終的に、片方は誰かも分からない相手に救われ、片方は自分が育て上げた男にトドメを刺される。
最期の力を振り絞って、友の力を借りて、焼き付いて離れない、あの少女の生還を願ったジル・ド・レの叫びと、そんな3人のお陰で幸せを感じることができたラ・イルが繋いだ、逢瀬の時間。「この一瞬は永遠になる」と言う言葉。とても重かった。
嘘は日が暮れて朝��来れば本当になる。
その一瞬は永遠になる。
壮大で無慈悲で胸が締め付けられるシーンばかりで、それでも見終わって、生きるということ、悪とは、嘘の在り方、愛するものの存在、色んなことを考えさせられる劇だったな。
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生と悪と嘘と愛と
大層な題名付けたけど、要は朗読劇見て来ましたよ感想。
Reading High 音楽朗読劇 『Chevre Note ~Story from Jeanne d’Arc〜』
もともと梅原さんが出演されるのと、個人的にフランスが好きな事で興味を持ってチケットを手に入れたんだけど…
開演直後から20分ぐらい?演者の姿は見えなく声だけの掛け合い。その時点で、津田健次郎さん演じる他人任せで自分本位な起伏の激しい王と落ち着いているようではあるものの何か末恐ろしさを感じさせる諏訪部順一さん演じるリッシュモン大元帥、友への仕打ちに怒りを露わにする梶裕貴さん演じるアランソン公と梅原裕一郎さん演じるラ・イル。声こそ発さないけれど存在の圧を感じさせる中村悠一さん演じる、ジル・ド・レ。
私の席は中央寄りでこそあったけれど最後列で、演者の方々の顔までははっきり見えなかったけれど声や身振りから感じる怒りや悲しみや喜びや企みの演技にひたすら圧倒されまくり。
まず、序盤での梅原さんの怒りの演技に体がビリビリして、津田さんの独特の小馬鹿にするような、喋りのリズムに引き込まれ。
百年戦争のこと、フランスイギリス両国の王位継承のこと、ジャンヌ・ダルクのこと、ある程度の知識を持ってはいたけれど、その上で、なるほどこういう繋がり方か…という着眼点。
国の行く末を左右されるような責任を背負わされながらも天真爛漫さを振りまくジャンヌを演じる沢城みゆきさんの、十代の少女の明るさと、厳しい人生を生き抜いて来た精悍さを兼ね備えたような声の使い方は本当に神が宿ったようで。
対するようにジル・ド・レにとある道を示す“悪魔”は大塚明夫さん演じるグラシャ・ラボラス。これがまた他のどの役とも違う、人間を嘲笑うような達観したような凄みのある演技で。
7人の役者さんそれぞれの立ち位置も実は大きな見所のひとつかも。中央にジル・ド・レ、それを挟むアランソン公とラ・イル。この3人の兵を操るように控えるシャルル7世とリッシュモン。ジル・ド・レの背後、そして人間たちを見下ろすような位置にラボラス、そして誰よりも高位に立つジャンヌ。
中村さんをはじめ、声優さん方の一つ一つの台詞の発し方全てが色んな伏線に思えて取りこぼせなくて、めちゃくちゃ手を握りしめながら見入っていた一部。
中村さんや梅原さんの怒りの演技が特に印象的だった。それまでのやりとりがあったとは言え、怒りの言葉を吐き出す瞬間のエネルギーの大きさに鳥肌が止まらなくて、演技の力強さに圧倒され。
反対にどこまでも静だったのが諏訪部さんのリッシュモン。絶対悪いやつでしょ!って思うんだけど、怖いまでの冷静さや不敵な感じが嫌という程嫌にクリアに耳に入って来る諏訪部さんのあの落ち着き。
そしてそんな演技を更に彩る豪華な舞台効果と音楽。雷や風や雨や炎がとてもリアルに感じられる舞台でした。
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