#文ッ字フリ��
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Page 77 : 夜の始まり
同日の晩。眩しかった太陽はとっくに沈み、在るのはぐんと深い闇夜。白色の灯りに照らされた真弥の部屋には、数人の姿がありながら、誰もが口を閉ざしていた。金属の擦れる音がする。五月雨と名付けられた刀を圭が僅かに抜いた音だ。覗く刃を前にして、圭は目を伏せる。流石に肩に力が入っていることが、背後からでも見て取れた。緊張感に引っ張られるように、クロも定位置に忍ばせている火閃の形を片方の手でなぞった。 やがて、リビングと廊下とを繋いでいる扉を開ける音がした。白いTシャツに黒い薄い素材のジャージを穿いた、日中よりもラフな格好をしたラーナーは、リビングに漂っている痺れた空気が全身に触れたのを敏感に察知する。 「……出掛けるの?」 シャワーを浴びたばかりでまだ髪を濡らしているラーナーが、リビングで椅子に座りウェストポーチの中身を確認し身支度を整えているクロに尋ねる。クロは取りだそうとしていた小型ナイフを彼女から隠すようにそっと戻した。 「まあ」 「そっか……どこに?」 クロは口を塞ぐ。後ろめたさのような感情が、彼に顔を上げさせなかった。 「首都のおもしろい場所さ」 助け船を出すように、代わりにソファの方から真弥の声が応える。 「心配しなくて大丈夫。少し遊びに出るだけだよ」 ソファに身を倒していた真弥が立���上がりながら言い放つ。ラーナーは心許ない表情で真弥を見つめるが、彼の顔はいつもどおり柔らかくはにかんでいるだけで、何も教えてはくれない。 「ラナはこの家でゆっくり休んでおいて。今日も疲れたろう」 「……でも」 「君みたいな女の子が夜中に街中を彷徨くのはよくない。寂しくなったら思い切ってノエルを尋ねたらいい」 余計なことを言わせる前に黙らせようとしているみたいだ、とラーナーは思った。親切という一見優しげな衣で、真実を覆い隠そうとしている。そして、無闇に暴かれる前に、紐できつく縛り付けてしまう。 圭は音を立てないように刀身を鞘に収め、巻き付けた腰紐に五月雨を差し込んだ。しっくりとした金属の重みを腰に感じながら隣にいるクロに視線をやると、クロは頷き、二人とも徐にその場を立つ。それが合図となり、真弥はそれぞれの顔色を確認した。 「よし、じゃあ行こうか」 各が頷き、ラーナーの横を通り過ぎようとする。 クロが傍にくると、ラーナーにちらと視線を寄せると、煮え切らない表情を浮かべている。シャワーを浴びたばかりの柔らかい香りがする。彼女はここにきれいなまま居なければならない、クロはそう直感した。 「……そんな不安げな顔しなくても、大丈夫だから」 「クロの大丈夫は、いまいち信用できないよ」 「はは、お前信頼が足りてねえな」 「うるさいな」 すぐ後ろについて茶化してきた圭を睨みつけた。 しかし圭の軽快な態度で緊張が解れるはずもなく、瞬く間に霧散し空回りしてしまう。ラーナーの強張った顔は少しも変わらなくて、クロはどう声をかけたらいいものかわからなかった。 「……じゃ」 結局何も身の入っていない、端的な別れの一言にしかならなかった。じ、と見つめてくる栗色の瞳が何も言わずに去ろうとしているクロを責めてきているように彼には思えて、尚一層早く逃げ出したくなる。 「行こう」 弱っているクロの背を、真弥が軽く叩いた。真弥は自分のペースで上手くあしらう術を身につけているようだった。 クロは背中越しに真弥を見て頷くと、外へと続く扉に手をかけた。そこからは一度も振り返らず、圭、真弥と続いていき、静かに扉は閉められた。 人が消えて、重い沈黙だけが残されていった。 急に人口密度は低くなる。ラーナーは何も無い玄関に取り残されて、急な孤独感で眩暈がするようだった。 鉄の色をした褪せた扉をラーナーはじっと見つめる。嫌な予感を拭うことができない。また一人だけ置いていきぼりだ。過去の繋がりや信頼がそのまま壁となり、ラーナーの前に立ちはだかる。それでも、目の前であからさまに隠されて良い気分はしない。重苦しい秘密の空気にクロの塞がった表情がラーナーの中で留まることなく明滅している。遊びに出るだけ、そんなはずがない。クロ達と過ごしていれば嫌でもそのくらい思いつく。彼女は意を決したような面もちで扉に背を向けた。共に旅をしてきた関係だ。彼等の目的を知る権利くらいは自分にだってあるはずだ。
*
「雨が降るかもしれないな」 真弥が夜空を仰ぎながら呟く。暗闇の中でも、鬱蒼とした厚い雲が立ちこめているのがなんとなくわかった。晴れているならば突き抜けるような黒い空になっているだろうが、今はどことなく霞がかかっていて、何より空気が湿り気を帯びていて重い。 「圭はエアームドがいるんだっけ」 「ああ」 「なら、飛んでいこう。二人も余計に抱えるのはさすがに無理だけど、もう一人くらいなら多分どうにかなる」 「それはどういう、」 クロが言い切る前に、真弥の腕がすいと空を縦に切り、途端クロの髪や服がひらめいて、風に煽られていると気付いた時にはその風が一気に激しくなった。クロの足が地面から勢いよく浮き上がるほどに。 「なっ!?」 急に足下を掬われたクロだったが、そのまま地面に落ちることはなかった。風は竜巻のようにクロを包みながら、一気に下から押して急上昇していく。高度が上がっていくほど耳元がきんと凍えるように詰まり、恐ろしく不安定な状況に身体が支えるものを求めようと勝手に動く様はじたばたと暴れる子供のようだった。しかし当然ながら空中には支えなどなく、ある程度の高度までたどり着くと、そのまま水平に保ちながら横へと流されていく。高らかな笑い声と共に、後から真弥も風に乗ってやってきた。 「おいおい、あんまり暴れるな。落ちるぞ」 「どっどうしてろっていうんですか!?」 「何もしなくていいよ。俺に任せときなさーい」 「それ一番不安なやつなんですけど……! ワアッ」 「ほら言ってる傍から」 空中でのバランスがとれずに風の軌道から逸れ落ちてしまいそうになるところを、また強い突風に吹かれて、飛び上がる。 クロの心臓は凄まじい勢いで脈打っていた。外にまでその鼓動が聞こえてくるのではないかと錯覚するほどだった。相変わらず覚束なくて不安定な空中遊泳。ただ、無闇に動くと逆に危険なことを身を以て思い知り、硬直した身体でバランスを保つことに神経を削る他ない。それにしても不思議な感覚だった。相変わらず身体中が強ばっていて何が起こっているのか把握しきれていないが、どうやら真弥が起こしている風がクロや真弥を乗せているらしい。彼等の視界には、ビルやマンションの灯りが点々と輝いている首都の美しい夜景。しかし、その風景を目に焼き付けていられる余裕などクロには微塵も在りはしなかった。 「クロ、真弥さん! 置いていくなよ!」 圭の声が真っ黒に塗りたくられたような夜空に張り裂ける。振り向いた頃には、あっという間に近くへとエアームドと圭が滑り込んできた。圭の長いシャツが不自然なほど乱雑にはためいていて、真弥の起こしている風の強さが見て取れる。 「すげーな、クロまで飛ばせるなんて」 「まあ俺も初めての試みだから安全は保障しきれないけどねー」 「ちょっと、そういうの勘弁してください……っ」 さすがのクロでも、高層ビルにも匹敵する高度から落ちればひとたまりもない。普段冷静に気丈に振る舞っているクロにしては随分と慌てた、ひっくり返ったような声音だ。当人は死に物狂いなのだが、周りからしてみればいつものクロとのギャップが激しくて、溢れてくる笑いを抑えられない。真弥も圭も堪えきれずに笑いだすものだから、クロの顔は瞬く間に紅潮していく。 「真弥さんそんな笑ってないで真面目にお願いします!」 「失礼だなあ、俺大真面目人間よ? ……ああ、ごめんごめん、もしかしてそういうフリか」 と、わざとらしく真弥が両手を叩いた瞬間、クロの足下がふい、と凍り付いたようにおとなしくなり――そのまま真っ逆様にクロは落ちていく。 「わああぁぁああああああああ!?」 悲痛な叫びが夜の首都に響く。叫ばずにはいられなかった。心臓が置いてきぼりにされた浮遊感は重力を伴ってぐんぐんと加速していく。が、やがて背中が捕まれ、不意に落下が止まる。相変わらず足は宙に浮いている状態だが安定を得たクロは目を大きく見開きながら、背中からぶら下げられているような体勢のまま、ようやく呼吸を思い出した。心臓が自分のものじゃないかのようにに、尋常ではない速さで脈打っている。 服の背中部分を掴んだのは、エアームドだった。さすがに驚いた圭が咄嗟に助けにいくように指示したのだろう。 「クロ、大丈夫か!?」 頭上から圭の声が投げかけられるが、クロは文字通り放心状態になっていて、返す言葉も浮かんでこない。 頑丈に力強く鍛えられたエアームドだが、嘴だけで一人の人間の体重を持ち上げるのは苦しいのだろう。必死に翼を羽ばたかせるものの、厳しい表情である。その鋼の嘴にぶら下がってしばらく呆然としているうちに、やがて忌々しい夜風の音がクロの耳に蘇ってくる。急な気圧の上下に遊ばれて、耳の中の気持ちの悪さに酔っていると、ふ、とクロの足下に不自然な風の塊が宿り、そのまま彼の身体が見えぬ力で上へと押し戻された。エアームドの嘴を弾いて、真弥の傍へとクロを連れて行く。 既に憔悴したクロの表情を前にして、堪えきれずに真弥はくつくつと肩を震わせたと思うと、やがて腹を抱えて笑い出した。身体をくの字に曲げて全力で笑う様子は、いつも余裕を携えた彼に比べると少々異質のようでもあったが、あまりに大袈裟に笑うので、クロは自分が恥ずかしいと思うよりもずっと早く、顔全体が火を噴き出しているように熱くなるのを感じた。 「真弥さん! なんてことするんですか!」 「いや、だって、さ、あんなこと言われたら落とすしかないでしょ」 薄らと潤んだ瞳を擦りながら、真弥は尚もげらげらと爆笑し続けた。クロは確信した。この人、本当に性格が悪い。 そして反対側でエアームドに乗って悠々と飛行している圭も、一時は息を止めて驚いたものの、安堵した直後に凄まじい反動が起こったように、真弥につられて顎が外れる勢いで口を開けて大笑いし始めた。 「圭! お前までそんなに笑うなよ!」 「無理無理!」 「無理じゃない!」 「クロの超慌てた姿とかあまりにレアすぎて!」 「あー、もう……!」 真っ赤に染まった顔は一向に戻らない。顔どころか耳まで発熱しているようだった。いっそここから走って逃げだしたくなるが、今はまさに真弥の掌の上。彼が掌を返せば、あるいはそこから飛び出せば、真っ逆さま。助かったとはいえ、落ちゆく恐怖を刷り込まされたクロには妙に現実感のある想像が頭を過ぎり、遮断した。 「にしても、真弥さんすげえな! いつからこんなこと出来るようになったんだ?」 高揚した気分が収まりきっていないまま圭は自然と尋ね得る。疲弊しているクロの脇で、少々気分が落ち着いてきた真弥は乾いた笑みを浮かべた。 「やってみたらできるようになっただけさ。大切なのはイメージ、想像力だよ」 「イメージ、かあ。そういや、そんなこと言われたような気もするな」 圭の表情に苦みがさしたが、嫌でも頭に過ぎった記憶をゴミでも払うようにすぐに捨て去る。 「……でも俺やクロはどう足掻いても空は飛べないな」 「はは、それは確かに難しいな。俺は便利で応用が効きやすい力を得たと思うね」 「違いないや」 揚々と圭は朗笑した。 笑いの絶頂を通り過ぎて、時間が経つにつれて気分が冷静さを取り戻してきた頃には、クロは飛行に慣れつつあった。流石の運動神経と適応力に真弥は内心舌を巻きつつ、未だ恨みがましい不機嫌な表情をしているクロをしみじみと見つめた。 「クロ、表情豊かになったな」 「は?」 風の音が騒がしくても、真弥の言葉を聞き取れたらしい。急に懐旧の情に駆られているような言葉に、クロは素直に眉を顰めた。 「いや、昔を思い出すと……なんだか懐かしさと新鮮さが入り交じるというかね」 「急にどうしたんですか」 「いや���や、深い意味はないよ。ただ���感慨深いものがある」 ふうと細い吐息。長い秋の夜にしっとりと溶ける。 「それが良いか悪いか、ねえ」 聞かせる気のない独り言は、人間を運ぶほどの強い風に呑み込まれていった。
*
真弥達の住む北区の隣、セントラル北西区某所。暗闇を天に据え、歓楽街はネオンライトの煌めきで彩られている。派手で自己主張の強い電飾が道で所狭しと鎬を削っており、顔を赤く火照らした人々が甲高い声をあげて往来している。 そんな声と光と音楽の狂騒は遠く、足下すらはっきりとしない暗闇に包まれた路地裏で、クロ達は先ほどの非日常的な空中遊泳の高揚感を一切忘れ、冷たい緊張感を高めていた。目的地から少々離れ、かつ人気の無い地点に着地した後、用意していた地図を頼りに歩いていた。一切の雑談は無く小汚い路地を探るように進んでいくと、先導していた真弥が立ち止まり動かなくなったので、遂にその場所か、とクロと圭は身体を強ばらせた。 真弥は彼等を振り返り、右のポケットから一枚の灰色のカードを取り出しそのままクロに手渡した。黙って受け取ったクロは、裏表ひっくり返したり指でなぞったりしてカードを観察する。無地のカードで、端に一つ矢印がマジックでかかれているだけのシンプルなものだった。 「それはノエルに造らせたものだ。今日の任務について、改めて説明する。いいな」 クロと圭は視線を上げる。真弥は二人の顔を確認すると、話を続けた。 「目標はカンナギの幹部の抹殺、及び地下で飼われている子供の回収だ。クロと圭は、裏手にある関係者出入り口から侵入して、地下に向かえ。途中で子供以外に出会ったら殺していい。用心で何匹かポケモンも所持しているが、問題ないだろう。これ、組織の面子とその所持ポケモン。確認して頭に叩き込め」 そう言って、やはりポケットから小さく折り畳まれた資料を出し、クロに手渡す。折り目を開くと、人間の顔写真がずらりと並べられ、隣に所持ポケモンと考えられる名称も添えられていた。 「依頼内容としては、黒髪に白人の子供は回収しろということだ。それ以外は任せる。ただ先に言っておくと、余計な数を増やすと面倒だ。先方の回収の手筈は整えてあるし、すぐに受け渡しもできるだろうけど、最小限に留めた方が無難」 圭の顔が一瞬歪んだが、気付かないふりをして、真弥は続ける。 「緊急で連���したければポケギアで。出れるかはわかんないけど。あと何かな、確認しとくことって……ああ、俺は別口からいくから。客を装って真正面から突入して、合図を送る。ポケギアのコールを三回鳴らして切るから、注意してて。俺はそれで、上から虱潰ししていくよ」 「……わざわざ正面から入らなくても」 「お、心配してくれるの?」 「別にそんなこと考えてないです」 「つれないねえ。その方が面白いでしょ?」 くつくつと笑う。こんな状況下でも人を食ったような態度でいるのが真弥らしさで彼の強さでもあった。 「これは君らを考慮したつもりでもあるんだよ。上で騒いでいれば、少しは他が薄くなるだろ。ガキなんて見張っている余裕無いだろうさ。わかりやすいように、多少派手に暴れるよ」 「それらしいこと言いますけど、結局は愉しみたいからでしょう」 「あはは」 笑ってかわし、大きく右肩を回す。 「さて、と。じゃあどんな子を選ぶか考えながら入店しますかねー」 「……悪趣味ですね」 「俺、そんな趣味じゃないんだけどねえ。仕事だからね」 軽蔑の視線を余所に、真弥は圭の方に視線を移した。 「圭、さっきから黙ってるけど大丈夫か?」 穴を開けそうなほどじっと真剣な眼差しで資料を見ていた圭は、弾かれるように顔を上げた。 「……大丈夫。これ覚えようとしてたら、それどころじゃなかったから」 舌の回りがぎこちないのは、誰の耳にも明らかであった。無意識に手が腰に下げている刀の鞘に触れ、落ち着かない拙い所作でなぞりあげる。まるで怯えているようだったので、クロは目を細めて彼の浮かない横顔を見つめた。 「はは、そんなに肩張らないでいいさ。君らならどうにかなるよ」 「けど、俺、こういうの久しぶりだし」 「んー、真面目だな。悪いことではないけど……クロ、うまくフォローしろよ」 真弥はクロに目配りすると、クロはすぐに頷いた。 満足したように真弥は笑うと、じゃ、と手を振り、クロ達に背を向けてゆったりとした速度で細い路を歩いていく。落ち着いた空気を纏った背中は暗闇の中へ溶けていきやがて殆ど見えなくなると、まるでじんわり絞められていた首が解放されたようにクロはほうと一息ついた。そして隣で顔をしかめている圭を一瞥する。 「緊張してるな」 クロがぼそりと呟くと、圭は苦笑する。 「まあ……ねえ。でもうじうじ考えててもしょうがないんだよな。でも、俺、多分足引っ張るかも」 「問題ない。俺がサポートする」 淡々というクロの言葉が妙に頼もしくて、圭はまじまじと見つめた。 「……なに」 鬱陶しげに顔を歪める。その間もじっくりと観察するように下からクロをのぞき込んでくるのは、むしろ気持ち悪いくらいに思われた。やがて腕を組んで自分で納得したように頷くと、にいっとじんわり歯を見せた。 「いや、そういえば俺とお前ってパートナー関係だったなあって思ってさあ」 パートナー、の部分を膨らませて強���した。 「なに今更言ってるんだ」 ��急に懐かしくなってさ。でも基本的には俺が引っ張ってたような気がするのになあ……お前も大人? になったってやつ?」 急に圭の雰囲気が先ほどと打ってかわったので、クロはかえって呆れた顔をした。 「さっきまでガチガチになってたくせに、急に緊張感ないこと言うなよ……」 「さっきまで散々振り乱してた奴が言える台詞か、それ?」 「あれは不可抗力だ」 もう思い出したくもないとでも言いたげに苦々しくクロが言うと、圭は肩で笑った。 「だってさ……なんか急に安心した。うん、大丈夫だな。クロがいるしな。頼むぜ、あーいぼう!」 「痛ッ!」 路地の奥まで音が響くほど力一杯背中を叩かれ、クロは声をあげた。手形がそのまま背中に写りこむのではないかと錯覚しそうになる。 「あははごめんごめん」と言いながら、まだ笑っている。まったく悪びれはない素振りだった。苛立ちを無理矢理胃に流し込み、冷静にと言い聞かせて怒声の代わりにクロは息を吐く。 「……茶番はここまでだ。さっさと待機場所に向かうぞ」 「ひでえ! 茶番なんて言うことないだろ!」 喚く圭の声を背に、足早にクロは目的地へと向かう。いっそ緊張してくれたままの方が静かで良かったかもしれない。 < index >
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2017.3.14 咲人会
咲人 2017年3月14日(火)/渋谷WWW
18:00開場/18:30開演
ついに来たよ新興宗教の集会の通達 もしくは赤紙
おおよそバレンタインくらいからただただ行きたくねえよお~~~~~~~~~~まだ死にたくないよお~~~~~~~~~~~~~~と友人たちにグチグチ言い続けてきましたがまあモチ・・・
行ってきました(厨の鑑)
・当日~物販
渋谷ってきらいなんですよね(ハ?)
方向音痴なのですぐ迷うし人怖いし汚いし
あと今回に関しては咲人ギャしかいない(訳じゃないけど・・・)のがもう死ぬほどこわい わたしはレベル1の咲人ギャなんだ まだ始まりの街でチュートリアルを受けているくらいの
ひとりじゃ心細すぎて最近メアのライブではもっぱらニコイチみたいになってる友達(新弥ギャ)と直で合流して物販ついて来てもらいました
あのさあ~~~~~~~wwwwwwwwwww
街ゆく人達、チラッと黒い集団を見ては「さき、ひと?かい・・・?」ってぼそっと言って通り過ぎていくのほんとやめて すでにHPはレッドゾーンだよ
どうですか?今なら簡単に入会できますよ さ��
物販は整理券出ててマジか!?と思ったんですけど多分道が狭いからかな?まあ普通にスピーディかつ売り切れなしの時点で買えました
ただTシャツ
新弥ギャ「その真ん中にかいてあるオシロスコープ(音を表現する波みたいなやつ)さあ・・・五文字だね・・・」(下:Tシャツデザイン参照)
https://twitter.com/nightmare_staff/status/841198478332067840
やめろ!!!!!!!!!!!!!それ以上は いけない
まさかねえ そんなだっさいことしないでしょ 咲人だよ
さ き と か・・・おっと誰かきたようだ
その五文字が何なのかは咲人のみぞ知る
・開場~開演
渋谷WWWってなんていう読み方なんですかね
わたしは草、そうでなければワールドワイドウェブと呼んでいます
なんかすげえ箱だな!?なんか大学の大講義室みたいにすごい高い段がドンドンドン!て細かくある
見やすいんだけどそれぞれの段がほんと細かくて狭いからなんか・・・動物園の檻のようにかんじた(蘇る咲人バの下手)
えっまわりほぼほぼ咲人ギャ?・・・こわ・・・
ステージを見ると垂れ幕にDJブースがある
この時点でメチャメチャ嫌な予感しかしなくなる(狂喜)
・セトリ
My name is “SCUM”
UGLY DUCK'S WILL
ドラスティカ
BOYS BE SUSPICIOUS
mimic
Cherish
404
ジャイアニズム死
Gotta Get a Ghost
東京傷年
Dazzle
極上脳震煉獄・弐式
ジャイアニズム惨
極東乱心天国
Quints.
nizm!nizm!nizm!
KENKA DRIVE
the FOOL×4
EN
ヰタ・セクスアリス(?)
What a fuck(?)
極上脳震煉獄・弌式
W EN
惰性ブギー
何から話せばいいのかわからん
ていうか完全ポルナレフ状態なのだが・・・俺にも何が起こったのか(ry
とりあえずさ~~~~Cherishおめでとう
咲人ギタリストだしなにするのかな~と思ってたんですけど形式としては爆寸みたいな感じだったかな~メアの曲をDJアレンジして咲人がなんかノリながら叫び踊る
ただこれdisとかじゃなく聞いてほしいんだけどホント上手くなかった 面白かった
なんか煽りとか?シャウトとか?やろうとしていることとやりたいことは何となく伝わるんだけどなんか・・・伸びしろがすごくあった(婉曲表現)
ただそんな咲人のことも大好きだなあと思ってしまうのでもはや末期ですね
���ニターにメアのライブでも出る様な映像とかを流しながらって感じ
参照画像↓
参照は新弥ギャとのLINE
このギャを表現した画像、擬人化のプチプチの咲人に似てない?
興奮しすぎててあんまりよく覚えていないんですが様々心に残ったシーンはありました
東傷で突然柩のシャウト部分叫び始める(うまくない)咲人とか柩のギソロにキラキラ(話には知っていたフリだが年代が違うので新鮮だった)する咲人とか例のごとくmimicで吐息ならぬ叫びをするのかと思いきやまさかの吐息をやってくれたこととか
それにまた咲人バよろしくギター持って出てきてくれたのも嬉しかった!DJのでメアの曲れるのも楽しいけどやっぱギタリスト咲人が一番カッコいいです
あと他に挙げるとするなら
ザフの煽りで産声を上げたことですかね
いやホントだって ほんとに見たもん
「オギャーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
だったよアレは
あのあと数少ない咲人ギャの友達に聞いてみたら「来いやー!」じゃん?って言われたけど絶対アレは新たな咲人の産声だったって 絶対
わあ 元気なおとこのこですよ
まあそんな冗談を本編後新弥ギャと喋ってたんですけど
まあ・・・ホントに新たな咲人の誕生だったんですよね・・・
・JAKIGAN MEISTERの誕生
それは本編後咲人が捌けた後のことです
まあアンコはあるやろなと思ってたんですがおもむろにDJブースが片され唐突にメッセージの浮かびあがるモニター
ソロをやる うん 想定済ですね
名前は はい
JAKIGAN MEISTER(ドォン!!!!!!!)
わたし・新弥ギャ「・・・・・・・・・・」
ハア!!??!??!?!??!?!???!?!??!???!??!?!???!?!??!?!?
わかる?なんかジャングルみたいなSEが流れる中太字ゴシック体でデカデカとジャキガンマイスターって映し出されたときのこっちの気持ち
最初英語だと思ってかかったから読めなくて?となったよね
多分新弥ギャもそうで二人して数秒の沈黙後に膝から崩れ落ちた
ダッサ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(言った)
邪気眼てwwwwwwwwそこまでwwwwwwwww
新弥ギャにすげー笑いながら脇腹殴られ続けたとこ(本編から通して殴られてた)まだ痛いんですよね
な?サイコーでしょ���たしの推し もっと崇めてよいぞ
気を取り直して
で、聴きたい?ってことで現時点でできてる曲を二曲やってくれるそう
設置されるマイク・・・マイク?えっ
歌うの・・・・・・?
いや誰だってそう思うじゃん!!????瑠樺はサポート呼んでるじゃん
いや確かに瑠樺は歌わない人だけど 咲人 うた うたうの
瞬間駆け巡る数多のイメージ
・もはやハモリではないレベルのジャイ碌の「ゥアーーーーーーーーーーー!!!!!!!!ィマィジョカナシミ!!!!!!!!」
・少年合唱団レベルの高音の「レッ・・・モッ・・・」
・〃「トゥラーーーーーーーーーーィ・・・」
まあ歌いましたよね がんばれ・・・!!!ってなってた
口頭だけだったから曲名がわからないのでセトリにも?付きで書いてます
たぶん一曲目のムーディなやつはあってると思う 森鴎外だね
すごい好きな系統の曲でした メロディアスでちょっと憂いのある感じのエロティックな曲 咲人のボーカル新鮮過ぎて 駄目
「君を舐め回す犬になろう」みたいなサビの歌詞だった ヤバ
二曲目はほんと曲名わからんかったwwwワッラッファッ!てシャウトもしてたからWhat a fuck?かなと思ったけど
ほんと早口な曲でなんて言ってるのか全ッ然分からなかったです 咲人のことなので毒をついてる曲だとは思いましたが・・・(偏見)
咲人「さっきの曲なんて言ってるか分かんなかったでしょ?もっかいゆっくり言うね。・・・ゥワッ ゥラッ ファッ」
わかんないです
邪気って言われたからメチャメチャスゴいのが来るかと恐々としてたけど普通にノリのいい感じの二曲でした やっぱメアとはちょい違うけど ボーカルがまず全然ちがうしね
シャウトで思い出したけど新弥出た(遅い)
正直新弥が出てきたときが体感一番メンコでかかった 帝國民どっから出てきた?
咲人も新弥いいな~そんな言われて!って言ってた
サポートで呼びました~って言ってたけど、ぶっちゃけ最近新弥柩んとことか色々行ってたから来るとは思ってたwww弾くとは思ってなかったけど
隣の新弥ギャが発狂していた
はっきりとは言わなかったけどこのままサポートになってくれればいいのになあ~と思った 新弥もソロとかあるかもだし邪気眼がこれからどの程度活動するかによっては難しいかもだけど・・・
新弥「あけましておめでとう」
カレンダー見て
なんか咲人が新弥んちにマグロ持って行った話とか聞いてほのぼの~となったりなどした
あと邪気眼の曲終わってから知ってる曲で終わりたいよね?ってことでやってなかった弌式
その前、咲人が下手のスタッフに時間大丈夫?って確認してたんだけど
新弥「いいよー!・・・あっ俺じゃない」
咲人「君は・・・時の番人か?」
新弥さん変わらずお元気そうでよかった 帝國領にむけて 拝
Wアンコ��思った通り惰性 オッケー
君は何処?君は何処?
咲人「セイッ ニーヤココ!ニーヤココ!」
さすがに草
最後
咲人「ありがとうございました!咲人会会長、咲人でした」
ド下手の新興宗教に名前がついた瞬間だった
会員証です
・終わりに
イヤ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なんか
ことばにならねえ・・・・・・・・・・・・・・・・
すごい濃ゆすぎる集会でした
なんか咲人を凝縮したような・・・咲人の煮こごりみたいな会
あ~それでこそわたしたちの教祖様 あんたがマイマスター
いや、これからは マイマイスター・・・・・・?
更なるご活躍とご発展をお祈り申し上げます
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XX(2017)
2017年/アメリカ 監督 セイント・ヴィンセント、 カリン・クサマ、 ロクサーヌ・ベンジャミン、 ジョバンカ・バッコービック 出演 メラニー・リンスキー ナタリー・ブラウン クリスティーナ・カークほか
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【感想】
どーもどーもーえだまめでございますー。
あ・れ・れぇ〜?今日からスターウォーズ公開されてますけど観に行かないんですかぁー?もしかして予約し忘れて座席取れなかったとかそんな初歩的ミs‥…
明日も仕事……ですッ!!!
今日紹介する映画は____?
【V/H/S】【ABC・オブ・デス】に続け?新人さんいらっしゃぁ〜い♪の若手の登竜門的オムニバスホラー……もはやタイトルから凝りすぎて「意味不明」っていうか読めません【XX】
えー「オムニバス・ホラー」なんて、古くよりトワイライトどぉーん!!とかクリープ・ジョー?という具合にありますよね。【V/H/S】シリーズからまた需要が増えたのでしょうか。。。。。。なーんていう具合に書いていたら「いっけねぇストレインジャーシングル見なきゃ!!」と私がなるので今日はオムニバス風にささーっと行きましょうか。。。。。。
但し!!本作はその中でもちょっと変わった映画なんですね〜。……全4話ある短編物語を担当した各監督が「全員女性」という、つまりは「女性監督によるオムニバス・ホラー」、「女性」だからこそ撮れる、また違った視点、シチュエーション、概念で作られた4つの短編ホラー映画、だったんですねぇ〜。
これはちょっとオモシロそうだなぁ〜なんて思いながら「ネフリ」で見つけてポチッと再生を押してみたわけでありますが……
①「The Box」
【あらすじ】
ある日2人の子どもと地下鉄��乗る母親。車内で見知らぬ男が抱えた「赤い箱」を不思議そうに見つめる息子が「プレゼントだよ」と男に声をかけられ「箱の中身」を覗く。「箱の中身」を見るや「なんとも言えぬ表情」を浮かべた。その日の晩、夕食の時間。「食欲がない」と言い出す息子。明くる日、その次の日も、そのまた次の日も食卓に出される料理に手を出そうとしない。「きっと自分の目の届かない場所で何か食べているに違いない」母親はそう思い特に何も言わなかった。すると今度は娘が何も口にしなくなっていき……
トップバッターから何やら「世に奇妙」みたいな話でかなり興味をそそられました。「The Box」の中身を見たその日から突然「何も口にしなくなる」息子。ワ〜イ?全く意味がわかりませーん。それにはきっと「何か意味がある」とずっと考えながら観てたんですが、ある晩息子にヒソヒソと何かを「吹き込まれた」娘が今度は何も食べなくなってしまい……そして今度は夫までも!?
いやぁ〜なかなか面白いですねぇ〜。で、終盤。いよいよ「箱の中身」が_!クライマックスのシーン
・・・・・・・で?
ラストの「セリフ」に全てが集約されるようキレイにまとまってはいると思うんだけど……要はその「セリフ」をただ「言いたいだけ」に20分を「フリ」として使ったって訳か……にしてもその「フリ」に使うには「そのセリフだけ?」あまりに物足らない。とんこつラーメン食いに行って替え玉頼もうかと思ったらあ、うちそーゆーのやってないんですよ。って言われたらイヤでしょ?……そーゆーことだってばよおおおお!?
②「The Birthday Party」
【あらすじ】
娘の誕生日。愛娘の誕生日会に気合を入れる母親。若干使用人の小沢真珠がウザいが喜びを分かち合おうと夫のいる部屋に行くと……
てれれ〜ん!?そこには椅子に座ったままピクリともしない夫の亡骸があ���た……!?
・・・・・・・で?
コレはちょっとガチで意味がわからーん笑一体全体ナニを伝えたかったのでしょうか。。。。ラストに映るテロップも意味不明。……コレちゃんと日本語訳出来てます?w
③「Don't Fall」
【あらすじ】
とある「崖」を登る「崖」愛好家の男女4人組。そのうちの一人の女性が崖の上のp…岩壁に描かれた「世に奇妙」な「壁画」を見つける。そういやさっきサソリにでも刺されたなぁ〜アハハウフフしていたその夜、彼女のカラダに「異変」が_____!?
「見た目」的にはコレが一番面白い。俗に言う「ヘンゲ系」の「B級モンスター・パニック」ですね。ただコレは「オムニバス」の「意味」を完全に殺しちゃってます。つまり短時間で面白さを追求する20分間の短編映画でやる内容ではないってこと。この監督さんは多分たまたま「モンスター映画が撮りたい」時にこの作品のオファーでも受けたのでしょう笑
④「Her Only Living Son」
【あらすじ】
もうすぐ愛する息子の18歳の誕生日。でもなんだかこの頃息子の様子がちょっとおかしい。ジャガーさんどうしまs……「思春期」?オトコって皆そゆものなの?生卵にほんのり赤い血が混じったらなんか舐めちゃったり外で愛犬と戯れるついでにウサギの死骸を木に吊るしちゃったり学校のクラスメイトの指の爪全部剥がしちゃったり……でも先生たちはこう言う「彼は罰しません。我々は彼から『学んだ』のです」 ナニを?ストレスを溜めない10の方法とでも言いたいのか!?そしてやってくる18年目のバース・デー。その時息子は?息子の「運命」は_!?今息子の身に隠された「18年目の真実」が明らかに___!?
コレよ!!こーゆーのが観たかったのよおおおおお!!!4話目最終話にしてやっと最後��おお〜」ってなるしっくりくる「オチ」映画に出会えてホッと一息。
監督は以前ご紹介した「未体験どぉーん!!の映画たち」で拝見した【インビテーション】の監督さんですか。確かにアレも衝撃のラストまで全く筋が読めない展開が面白くってですね……
序盤と終盤での母親の息子を見る「目」?序盤は愛する息子の身に一体ナニが起きているのか、目から「恐怖」の2文字が浮かび上がってくる、それが終盤で「実は事の成り行きを知っていた」ということが判明した時の「得体の知れない恐怖」から息子をなんとしても守ろうとする「母性」っていうんですか?「母親の力強さ」みたいなものが目から伝わってくるんですよねぇ〜。
そうそう、4作品とも共通しているのが
「主役が女性」……そりゃそうだろうよおおお!!先に言った「女性の視点」で本作が作られている、ということですよね。特に1話目なんか、フツー映画の中で愛する息子娘がおかしくなったら、人一倍騒いだりヒステリックになったりつい感情的になるのってお母さんじゃないですか?それが本作だとお父さんなんですね。母親はむしろ黙ってずっと一人で飯を食っている(それもそれでイヤぁ!!)皆が皆お母さんがそうなのではないんですよ〜って、コレって女性からしないとあまりわからないと言いますか、勝手な妄想なのですが、そーゆー所が「ならでは」なのではないでしょうか。。。。。
あとは各話の「繋」として出てくるストーリーテラー的な人形の異常なキモさ。モイキーモイキー……
【XX】
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【blog】大空と大地の中の街・北海道足寄
エントリタイトルで思っくそネタバレしてますが、とにかく昨日の「志村けんのコントのような体験をした街・北海道某所」の姉妹編です。 1996年、アタシは北海道北東部に住むTという友人宅に遊びに行きました。 Tとは大学で同じサークルだったんだけど、もうひとつ、一緒に音楽もやってた。ま、そうはいっても完全にT主導というか、疎いアタシをTが引っ張るというスタンスでやってたんですね。 当時アタシとTがやってたのはレゲエです。しかしこれは前も書いたけど、アタシはレゲエなんかほとんど知らないのですよ。知らなかったじゃなくて今もろくすっぽ知らない。間違っても嫌いなジャンルではないし、運転中のBGMとしてはかなりの確率で聴いたりはしてるんだけど、一向に知識は増えない。あいも変わらずのド素人レベルです。 しかしTは違う。たしかにこの頃は北海道に引っ越したりなんかして少し音楽とも疎遠になりかけていたけど、それでもレゲエの知識も情熱もアタシなんかとは比べものにならないレベルだったわけで。 レゲエだけじゃなしに洋楽邦楽問わず、Tは詳しかった。そしてJ-POPみたいなのはまるで聴かない。そんな人間でした。 ということを踏まえた上で、この後の文章をお読みください。 修学旅行を除けば、アタシにとって初めての北海道旅行だったから、とにかく見るものすべてが驚きの連続だった。 何を見ても「雄大」という言葉しか思いつかず、ビデオカメラを持参していたんだけど、どうやっても雄大さをフレームに収めることができない。何だかこじんまりしてしまう。 スゲーなぁ、これ、クロサワならどうやって撮��んだろ、みたいな冗談を言いながらクルマでT宅に向かっている最中でした。 「すごいだろ?北海道。俺も最初ビビったもん。松山千春の歌が理解できたからね、こっちに来て」 ま、松山千春?いや、北海道だから松山千春ってのは、そりゃ遡上に上るのはおかしくないけど、あのTの口から松山千春の名前が? 「ほら、あれ。♪ 果てッしィないぃ おおッぞらとォ〜って歌。まさにあの世界っしょ」 Tは取り憑かれたように、松山千春の歌が如何に北海道にマッチしているのかを語り出した。レゲエに淫する、そしてJ-POPやフォークなんか一切聴かないTが。 いやいや、たしかに言いたいことはわかるけど、どうにも松山千春について熱く語るTに馴染めない。 なんだその、北海道ってところは音楽の趣味趣向まで変えてしまうような場所なのか。 しかし何故か、そこはツッコめなかった。あまりにもTの語り口が熱すぎて、ツッコめるような雰囲気じゃなかったのです。 翌日、Tはやけに重々しく「実は連れていきたいところがある」と言い出した。 お、真面目な話か?それにしてもいったい何処へ? 「実は・・・、松山千春の実家に連れていきたいんだけど」 は?・・・は?? 松山千春を熱く語るならまだしも、実家に行くだと?いやいやいや、アタシは松山千春にそこまでの興味はないし、ましてや実家になんか行ってどうなるんだって話ですよ。ま、はっきりいえば行きたくない。 行きたくないのはわかるけどさ、もう、どうしても一緒に行きたいんだよ!と、ますますTのテンションは上がる。アタシとしては歓待されている身なわけで、さすがにそこまで言われると断れない。 じゃあ、行くか・・・。 しかし何だって松山千春の実家になんか行かなきゃならんのだ。せっかく北海道に来てさ、他にいくらでも行くべきところはあるだろうが、と。 松山千春の実家は足寄にあります。T宅から足寄まで、たしか2時間くらいだったと思う。 その車中、やけに重苦しい。普段は馬鹿話で盛り上がるTは何故かほとんど喋らない。同じサークルで仲が良かったTの嫁さんは喋ってくれるけど、それでも、もう、尋常じゃない空気が流れている。 これ、もしかしたら、とんでもないことをしに行くんじゃないか。だからTは緊張に包まれているんじゃないか。そう勘ぐるしかなかった。 「そろそろ、かな」 ああ、足寄に着いたようだ。しかしここからが本番。ここでいったい何が行われようとしているんだろうか。 そう思うとアタシも緊張してきた。どうか、無事に今日一日が終わりますように。 「あれ!」 突然Tは叫んだ。そして指さした。Tの指の先を追うと、とんでもないものがアタシの目に飛び込んできた。 「松山千春や、松山千春の実家や。というか松山千春の実家以外の何物でもない!!」 実際に行かれた方ならおわかりでしょうが、松山千春の実家は完全な観光名所になっており、家に馬鹿デカい似顔絵(しかもフサフサ時代の!)が掲げられているのです。気になる方は「松山千春 実家」で検索して��てください。 アタシは笑いを堪え切れなくなった。ひっくり返って笑った。んで、ふと我に返った。もしかしてTは、このために・・・? 「先にいろいろ言ってしまったら面白くなくなるから」 いやはや、この伏線はすごい。つかやりすぎレベルです。 Tはアタシにこの似顔絵看板を最大限に面白く見せるために、松山千春の話を熱弁し、足寄までの道程で寡黙に振舞っていたのです。 つまりTは本当に松山千春に激ハマりしたわけではなく、アタシを楽しませるために長大な伏線を張っていたわけで。 もちろん松山千春の実家に入ることはなく、クルマで通り過ぎるだけ。アタシは「素泊まり2500円かぁ」と目についた看板を文字を口に出すくらいしか出来なかった。あまりにもTのフリがすごすぎて、本当にそれくらいしか言えなかった。 冷静に考えると松山千春の実家はそこまでおかしくはない。けど、どうやればホンイキで笑えるくらいまで持っていけるか、それを考え実行したTは本当にすごい。松山千春よりすごい。 いややっぱり、あんな似顔絵掲げる松山千春の方がすごいか。
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COMITIA122に参加します!
COMITIA122に、ホジョイさんと一緒に参加します!!! ちょっと前から、またそろそろイベントにも出てみたいな〜短編集とか出してみたいな〜と思っていたのですが、今回ようやくそれが叶いました…★ サークルサイト:http://soirobo.wixsite.com/rekihou とか軽いタッチで書いてますけど結構心臓バクバクです。 前回、コミティア107に杏ちゃんと一緒に参加したのが人生初イベント出店だったんですけど、もうあれから四年近く経っているようで…マジか…はやいな…。 今回なんと、ホジョイさんのオリジナル漫画が!!出ます!!!!! Pixivで公開済みの作品が一つ、書き下ろしが一つ!!! 書き下ろし、実は先に読ませていただいたのですが(何のお手伝いもできていないのに役得…)、凄くかわいくて…きゅんとなって……しかし切ない……とても素敵なお話なので、ぜひお手にとって読んでみて頂きたいです…!!! ホジョイさんの描く表情とか、にじみ出る闇というか、ほんと大好きなんですよね……。 私の方は、書き下ろし本(新刊)と、短編集(新刊)と、BOOTHでも売ってる既刊の写真集(間に合えば新刊のイギリス本も)を持参する予定です。 あっ!ティア以外での販売方法とか取り置きとか、あとそうあらすじとか、そういう真面目な話は次の記事にまとめて書きますね。この記事はとりあえず私の日記的なアレでソレなので、その点よろしくお願い致します。 で、話は戻るんですけど。 この書き下ろし本、『鳴き沙のアルフェッカ』がね…すごいんですよ……。 とりあえずサークルサイトでサンプル見て!?としか言えないんですけど、今回なんと、ホジョイさんが表紙+扉絵(7P)書いてくださってるんですッ………!!!!!!(あと実は…表紙裏…) 豪華すぎてッ…オススメしかできないッ…!!!←←← いや、ほんとに、表紙見て期待して買ってくださった方が、本編読んでがっかり…なんていうことになるんじゃないかと心配で、そのことを考えると心臓がキリキリするんですけど、でも創作する人なら私がどれだけ嬉しくて幸せすぎて毎日何回画像見ながら死んでいたかきっと理解してくれると思う…。 今回本当にホジョイさんにはお世話になりっぱなしで、本編が上手く進まなくて死んでたときも、ホジョイさんが書いてくれた���フ見てテンション上げて頑張ったし、回収できてなかったり説明不足で意味のわかりにくかった箇所をご指摘いただいて直せたり、他にもとてもおしゃれなサークルサイトとか、マーケティング力高そうな帯とか、もう、もう本当に頭が上がらないんだぜ…。 元は純粋に短編集を作るつもりで、今までに書いたファンタジー系短編+書き下ろし一本で一冊、今までに書いたSF系短編+書き下ろし一本で一冊、合計二冊を出すつもりだったのですが、アルフェッカ書いてる内に楽しくなっちゃって、どんどん字数が延びて、一冊単独本になりました。最終的に、大体47,000字くらいです。 まあ普段書いてるものよりは短いよね。ぎり短編だよね。 サークルサイトのサンプルページで、序章〜第一章までまるっと試し読みできますので、見てみていただけたらとても嬉しいです! そんなこんなで、短編集の方はファンタジーもSFも混合で一冊にまとめることにしました。ほとんどWeb公開済みの作品ばかりですが、以前Silfanyという冊子に寄稿させていただいたSF短編、『ディエス・エラ』の掲載許可をいただきまして、こちらも掲載します! それと、まだ微妙に書き終わっていないのですが、『ある王のヒライス』という5,000字くらいの短編も掲載します。『ある王のヒライス』については、サークルサイトのサンプル画像に、ちらっと冒頭だけ載せてみました。 そんなこんなで出来上がった新刊、ぜひともよろしくお願いいたします。 来年は出来たら文フリとかにも出てみたいなぁ〜と思っていて、在庫多めに刷ろうと思っているので、足りなくなることはそうそうないはず…。 そして、ここからちょっと別の話題となりますが、先日短編を寄稿させていただいた『アンソロジー空』もCOMITIA122から頒布開始となるようです! http://clew09.web.fc2.com/sora/ 私はこちらに、『ヨミゴト』という短編を寄稿させていただきました。地に足のついていない、ふわふわした話です。空がテーマだからね!笑 もう少し真面目に説明すると、ちょっと和風なファンタジーです。 こちらもよろしければ、ぜひよろしくお願いします〜!
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