#機能性とデザイ��性の両立
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DNP班 研究プロジェクト成果報告 要旨
2017年に研究された4つのプロジェクトのうちの1つである、株式会社大日本印刷との研究成果を報告いたします。
産学連携プロジェクト研究要旨
【行動デザインとサービスデザインの統合に関する研究 要旨 ̶BDSDプロセスの有効性の実証̶】
武山政直研究会
小池洋平 佐野拓海 行徳江里奈 相山由依 中島純生 宮田柚月
1 目的
本研究は、慶應義塾大学経済学部武山政直研究会と大日本印刷株式会社サービスデザイン ラボが共同開発した、行動デザインとサービスデザインの手法を統合するデザインプロセス (以下、BDSDプロセス)の有効性を、実社会のデザインプロジェクトを通して評価すること を目的としている。
2 課題と背景
サービスデザインは、ユーザーの体験とサービス提供者の業務プロセスを包括的に組み立 て、共創を促す手法として普及し、人々のより良い行動を支援する様々なサービスの開発に 寄与している。しかし、課題設定やアイディアの形成がデザイナーの主観に依存し、かつア イディアの有効性を評価する手続きも明確に定まってはいないため、組織内でアイディアの 有効性を説得していくことが困難になっている。またアイディア形成にも時間を要するため、 ビジネスに導入する上では大きな課題となっている。 そこで本研究では、科学的知見やデータの裏付けを持つ行動デザインのナレッジを、サー ビスデザインの手法に効果的に導入することで、サービス開発のプロセスの効率化と発展、 ひいては組織内のコミュニケーションの円滑化を狙う。 近年、欧米では、既に行動科学の知見を行動変容の促進や支援を目的とした製品やサービ スの開発に応用する動きが広まりつつある。その動きの促進要因として、1行動科学(行動 経済学や社会心理学など)の研究によって、人間の行動に見られる合理性からの��離傾向(以 下、バイアス)が次々と明らかにされていること、2ITの発展によって、行動データの取得範 囲や機会が広がっていること、 3その両者をつないで価値を生み出す行動デザイン手法の 開発が進んでいることが挙げられる。
3 行動デザイン手法とバイアス理論の理解 行動デザインの基本手法は、「Design for behaviour change(以下、DBC)」(Wendel, 2013)と「The Behaviour Change Wheel(以下、BCW)」(Michie et al., 2014)の2つの書籍を参照した。またバイアス理論の理解は、「THE BEHAVIORAL ECONOMICS GUIDE 2017(以下、BE GUIDE)」(Samson, 2017)を参照した。
4 行動デザインの手法検討トライアル
行動デザインの手法を、サービスデザイナーが実践することで、行動デザインの手法の有 効性を評価した。DBCで提案されている行動デザインツール「CREATEアクションファネル」 を用いて、日常生活における行動デザインを実践した。行動変容を促すためには、1デザイ ナーが自分自身の行動を変容させる場合と、2他者の行動変容をデザイナーがサポートする 場合の2つがある。1のことを行動変容セルフデザインと名付け、慶應義塾大学の学生を対 象に行動変容セルフデザインの有効性を検証した。
5 BDSDプロセスの設計とトライアル
BDSDプロセスの検討と効果検証を、実際のビジネス課題におけるデザインプロジェクト のトライアルを通して行った。具体的には、大日本印刷株式会社が開発、提供をしているサー ビス「&HAND」の改善プロジェクトを、BDSDプロセスを用いて実践した。 &HANDとは、「障害者・妊婦・外国人旅行者のような、外出時に身体的・精神的な不安 や困難を抱えた人と、手助けしたい人をマッチングするサービス」である。デザインプロジェ クトの開始当時(2017年9月)、&HANDは既にサービスデザインのプロセスを経て、プロト タイプの直前、サービスの実現計画を練っている最中であった。この&HANDを題材として、 SDBDプロセスに沿ってデザインプロジェクトを実施した。
7 成果
サービスデザインに行動デザインを導入した結果、行動科学の知見を裏付けとした手続 きを踏むことが可能になり、再現性の高いデザインプロジェクトを実施できた。行動デザイ ンのプロセスとツールは、行動障壁の分析、介入戦略の策定、行動変容アイディアの発想、 そしてプロトタイプの実施提案において、有効であることが確認された。
8 結論
行動デザインの特徴は、ある特定の単一行動に対して、行動科学の裏付けに基づき、対象 行動をユーザーが実行できるようにデザインすることである。それに対し、サービスデザイ ンの特徴は、ユーザーの一連の行動を体験として捉え、インサイト(ユーザーから得られた 客観的な事実や検証実験)に基づき、体験全体をデザインすることである。例えば、 「CREATEアクションファネル」は一瞬の単一行動の支援に特化したものである。それに対 し、サービスデザインで用いられるジャーニーマップはサービスの体験、つまり複数の連続 した行動をまとめて、ストーリーや世界観で支援することに長けている。 そこで、サービスデザインと行動デザインを統合することで、単一の行動変容だけでは期 待するアウトカムが達成できない場合に、体験全体を包括的にデザインし、魅力的なストー リーや世界観を構築することで、ユーザーの実行能力を高める、または動機付けを行うこと が可能になる。
9 参考文献
● Alain Samson. (2017). THE BEHAVIORAL ECONOMICS GUIDE 2017.
Behavioral Science Solutions Ltd.
● Stephen Wendel. (2013). Design for behaviour change. O'Reilly Media.
● Susan Michie, Lou Atkins & Robert West. (2014). The Behaviour Change
Wheel. Silverback Publishing.
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