#断熱煙突
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無題
平穏よりも胸のときめきをいちばんにしたら世界のぶあつい皮膚が一枚めくれたかのように��にもかもが歌い踊りかがやきはじめたのをいまでも覚えている。わたしは親が厳しくて外泊できないけれど、そのあいだに同級生の子たちはうつくしい島の海に反射する満月をみて、だれかと夜通しぴたりとからだをあわせて内緒話をするような、今にもぷつりと切れそうな糸のように細くて鋭い若さを世界の夢に浸らせている。感性を野放しにして、こどものころの感動をひとつずつ取り戻す時間がわたしにも必要だった。けれど思いどおりにいかないこともある、それも定めとおもって歯をぎゅっとくいしばる。わたしには必要だった。路上、白い廊下みたいに澄んだ朝霧をかんじる時間。薄いトップス。ズレた口紅。酔った勢いで入れ墨を彫ってしまう危うさ、煙ったクラブでなにもかんがえずに踊って、好きな男と寝て一限目をサボるとか、夜の街頭を走り抜け、くだらないことに時間とお金を費やすこと。「それだけじゃない、夜に遊ばなくても昼に釣りをしたりサッカーしたりそういう遊び方だってあるだろう。そっちのほうが幾分もまともだ」 おとうさんは夜遅くに帰ってきたわたしを叱りつけ、そう言った。わたしはけしてワルにあこがれているのではなくて、ただただ綺麗なものに飽きただけだった。わたしにとって祈りや信仰はさいしょから型があってそれに当て嵌めてハイ完成みたいなかわいいお菓子作りのようなものじゃなかった。自らを成り立たせるピースを集めた上でそれを食い尽くすくらいの覚悟や貪欲さがあなたにはある?わたしにはそれが足りなかった。昔も今も自分でうつくしい歌をつくれない。うつくしいものがたりをかけない。うつくしい絵を描けない。世の中にはフォロワーが万桁いる女子高生がいて、今、何千もの美術展が開催されていて、明日、いつかオリンピックに出るであろう少年がはじめてスケボーに乗るかもしれない。わたしには何もできないかもしれないけれど、彼らの生き様はわたしをわたしたらしめる微かなエッセンスとしてわたしに溶け込む。それを祈りという言葉で表象してはだめ?これからのことをかんがえると、ずっとどきどきする。目の前の光景が、訪れたことのない地の光が、風が、わたしを、わたしのからだを必要としてる気がする。世界中に張り巡らされた血管がわたしの心臓部にも繋がっているような心地。死ぬ5秒前ってどんな感覚なのか��らないけど、築き上げた塔が崩れてゆく感じなのかな、雪景色のような。
無題
朝起きたら腕に友達の噛み跡と身に覚えのない痣が3つくらいあった。耐え難い疲労がからだのあちこちにひっついて、入れ墨と化している。活字の海を、本をその背に背負えたらよかったのに、今のわたしを崖っぷちに引き止めているのはうつくしい言葉でもなくて、泥に塗れた重いカルマ。イヤホンの先から垂れ流れる音楽すらも風のように軽やかで自由なものではなくて、ねばねばした気持ちわるくてかなしいものに聴こえた。夏と、そのあつさと、その底知れぬ闇に街ゆくものすべてがこころのずっと奥の方で平伏している。昼過ぎにスクランブル交差点前の巨大スクリーンが薄青い空を泳いでいるようにみえたこと、街ゆく人の肌色が、シャボン玉のようにその熱を吸収して発光していたこと、ぜんぶなんか夢みたいにふわふわしているかんじがした。もうすぐでなつやすみなのに、大学入ってからそれまでもずーっと夏休みのような感じだったからあまりどきどきしない。みずみずしくずっと光っていたい。わたしもいつかデカい人間になりたい、いつかいつかいつかという文句ばかりが増えてゆくのを横目でみて、ぜんぶカサブタを剥がすように振り解いて拭ってくれる奇跡みたいな命、日々、音をどうしても期待してしまう。どうすればいいんだろーしにてーと思いながらまたあしたも友人と夜ご飯をたべにいく約束した。それでまた家に帰って、朝起きて虚無感に苛まされて、の繰り返しを大量の課題で中和する。薄暗い中でたべるごはんとか朝早起きして化粧をすることじゃない、今はなにもない海とか草原でなにも繕わずにその自然のデカさとか愛を仰向けになって享受するのがいちばんただしいきがする。たすけてと呼ぶには大袈裟すぎるし。わたしはわたしのことをぜったい見放さない、それだけで充分いっぱいすてきでしあわせで救いだということを今じゃなくてもいい何年もかけて真実にしていく、揺るがない愛に変えていきたい。
end
泣き出しそうに張り詰めた空気に鼻を啜る。世界の彩度が落ちて、ぶあつい服を着た街ゆく人たちが皆んなちっちゃな怪獣みたいにみえる。肌寒い。外はずっと灰色、モスグリーン、レモンみたいな匂い。大きな木が揺れて、木の葉の上に横たわっていた雨の滴が霧のように3秒間くらい降った。最近は毎日毎日やることが多くて、それをこなしているあいだに1日が終わる。3��連続で化粧を落とさずに寝てしまった。多くの人が電車にのっているときに外の景色に目をやらないのと同じ感覚で、わたしも生活の外側にひろがる微かな動きに鈍くなった。ずっと特別でありたかった、1番愛されたかった、そういった思春期的な熱望とどんどん疎遠になっていく自分に日々焦ったり安堵したりしている。だけど同時に、わたしの中をまだ生きている17歳のわたしがその面影をときどき覗かせる。期待させる。突拍子もなく走ったり、ゲラゲラ笑ったりする。些細なことで泣いたり、理不尽な世界に怒っている。良くも悪くも変わっていくのなら、これからの自分に期待をしたい。アルバイト先では後輩が6人くらいできて、みんなわたしよりも仕事ができる。わたしはもともと注意をされると衝動的に泣いてしまうところがあったし、シンプルに忘れっぽかった。あまりにも器用に仕事ができないので、ある日店長とそのことについて話し合ったら意識の問題と言われた。その1、人からのアドバイスに劣っている自分を見出してはだめ。その2、素直に人からの意見を受けとる。その3、自分のためでなくだれかのために働く。この3つを約束した。夜の繁華街で50歳の男性に飲みにいきませんかと声をかけられたり、あした授業にどんな服でいくかを考えながら化粧品を見に薬局に寄り道したり、腕に点々とのこる虫刺され痕をみて、それを残した蚊のことを考える。あした、図書館で借りた本の返却期限。わたしもちっちゃな怪獣になって寒さをまるごと食べてしまいたい、寒い日の、霞んだ光やクリアな淋しさ、果実のようにぎゅうぎゅうに酸っぱい気持ちを。
slow burning
大学一年生というよりも、高校四年生というような振る舞いをしているなあ、と自分のことを客観視する。新宿の横断歩道橋から行き交う人々を眺める。つい最近まで、委員会の同期の仲の良さにムラができていて、グループとかカーストとかそういう言葉が浮上してきてしまうほど揉めそうになっていた。それでも、それぞれが居心地の良い場所にしようと歩み寄っている。こういう、諦めによる愛想ではなくて心からの気持ちに胸を打たれる。明大前の飲み屋で酔っ払って「俺みんなのこと愛してるよ」と照れ笑いする先輩に、わたしたちみんな、キモいねーなんて言って茶化した。そのあと夜の大学で騒いでいたら警備員に注意された。机の下に10円玉を落としたのを拾わないで帰る。いつまでも赦されていたい、わたし、山猫のような女の子でいたかった。すぐ隣、肌すれすれにだれかの温も���を感じて弱さを誤魔化すのではなくて弱さを共鳴しあっていたい。「東京の人は生き急いでいる」なんて言葉があるけれど、わたしは美しい光景がそこに広がっていれば必ず立ち止まる人でありたい。仕事に遅れそう、とか、終電が、とかじゃない、好きな人たちのためだけに忙しくありたい。恋人は待ち合わせをするとき、「どこでおちあう?」と聞くのだけど、高2の頃、初めて会う日、それを「(恋に)落ち合う」と勝手に解釈して死ぬほどどきどきしたのを思い出した。それからわたしも「どこで落ちあう?」と聞くようにしている。ドア窓の形に切り取られた青い影が電車のフロアに映って、がたんごとんという音に沿ってフィルム映画みたいに小刻みにうごいていた。池袋で新疆料理をたべて、お腹を下す。スペイン語の中間試験。木曜日、ほんとうは1限に英語の授業があったんだけど、財布を忘れたいせいで交通費が若干足りなくて新宿駅から乗り換え先の電車に乗れなかった。その旨をインスタのストーリーに載せたら、一度しか喋った事ない同じクラスの男の子から「抜け出していくわ、」とだけ連絡が来て、本当にきてくれた。クラスで唯一金髪で、派手で、いつも高そうな服を着ている。ピーナッツをぼりぼり食べながら、ダーツをする。わたしが2回勝って、可哀想だったからあとの1回は負けてあげた。それからは何も無かったかのように授業では一言も喋らない。お互い、目を合わせないふりをしているような、ふしぎな距離感を保つ。渋谷で5分1000円の手相占いをしたら、鎖みたいにいくつもの線が絡まっていますね、と言われた。意外と気にしいなんじゃないですか?「そうですね」と答える。駄菓子屋で1000円使い切ったほうが幸せになれそうだとおもった。電車の隣の線路にカラスが一羽いた。こんなに近くでみるのははじめてだ、と思って、じーっとみつめた。黒なのに黒じゃなくて、光を受けて渋いグリーンや紫っぽくみえる羽毛に目を見張る。なんか、空はどこまでも真っ青なのに光の細部だけ色があたたかい夕方前みたい。ふわっとなにかに気付いて、じーっとそれを見つめて、そこになにかが“視える”とぜんぶ途端にスローモーションになって、焦燥感や虚しさがたちあがってくる瞬間がある。からっぽなのにぎゅうぎゅうな感じ。AirPodsをケースにしまう音が体感的に5秒間くらい耳に残ったり、自分の息遣いにどきどきしたり、すれ違う男子高校生の会話声や、鳥が羽をはためかせる様子がクリアに輪郭が保ったまま空中を転がる。ガムを買って噛みながら、心のもやもやしたなにかを同時に小さ���噛み砕いてゆく。光の洪水。家に帰ってパスタをたべたあと、お風呂で下の毛をつるつるにする。夕方終わりにお風呂に入るの、とても好きだなあと思う。コンタクトレンズを外さないまま、化粧も落とさずベッドへダイブする。瞼の裏に東京タワーの赤がたましいの塊みたいにまあるく光っている、はやく何もかも諦められる年齢になりたいと思う。
無題
なんかまじでわたしが疲弊していて悲観しているのか、世界が残酷なのかわからなくなってきた。脳科学の講義を受講したあと、テキトーに混雑した休日の街をあるいていたら皆んなの脳みそが透けて浮きでてきそうで気持ち悪くなった。地球4周分の神経線維。そう、どでかい爆弾が街ゆく人々の頭蓋骨に葬られている。ニューロンが軸索を介してつながってゆく、放出と受容を繰り返してみんな手を繋ぎあってゆく。セール中でバイトの雰囲気がぴりぴりしていて、みんな資本主義の豚みたいに働いていた。うつくしくないとおもったし、私も美しくなかった。結いた髪に、ぴたっとあげられた前髪。なにを思っているのかを書くのがずっと怖かった。もしかしたら私の感じているこの欲望はとても汚らわしいもので、それゆえにだれかを傷つけてしまうかもしれない。でも、言葉にしなければすぐにわすれてしまう感情に名前をあげなくなって、水をあげなくなって、そうしたら、じぶんの脳みその溝をうめていたみずみずしい苔までもがすっかり枯れきってしまって虚構を連ねるようになった。空洞に哀しみの音だけが響き渡る。友達はいるけど、私はその友達の1番になれない。恋人みたいな人はいるけど、私はその恋人の1番にはなれない。1番っていうのはほんとうの意味での1番、2番とか3番とかがいない1番。圧倒的な2人の世界の中でのフェアで高貴な1番。有名になりたかった。文章でも外見でも写真でもなんでもいい、だれにも敵わない羽根で世界を羽ばたいてみたかった。わたしを選ばないで、そこらへんのそれっぽくかわいい女の子を選ぶかっこいい男の子たちを信じられないでいる。外国に行ったらモテるよ^_^と投げかけられた言葉について何回も考えるけど、考えるたびにかなしくなる。でもね、神様はいるとおもうの。木漏れ日の首筋に、砂丘のしずけさに、広大な空の一枚下に、その温もりと永遠が芽吹いているのをしっている。そのたびに、わたしはこの世界に愛されていて、まだ19歳で、まだ何にでもなれて、そして世界を(気持ちがあふれてしまいそうなくらい)等身大で愛しているドラゴンみたいにかわいい女の子だとまじないを唱えるようにして心を強く保つ。アスファルトに散った桜が朽ち��、吐瀉物のようにグロテスク���ぬるい光を浴びている。走り抜ける!だれかの憎悪の中に、疑念の中に、見下しの中に憧憬の眼差しを覚えながら。東京で灯される光の数だけ、アフリカの広原でつややかな花が咲けばいいのに。光の重さの分だけ、銃弾が軽くなればいいのに。帰り道、ひさしぶりにパンを買って帰った。
日記
弟がiPadのタッチペンを無くしたらしくて、それを聞いた母がすぐにAmazonで検索して新しいのを買った。こういうとき、ほんとうになんか小さなことだけれど、すごく心が愛にみちる。
大学の新校舎の建物のにおいが400人もの人が集まった大教室の縁をすべっていく。扉を開けた瞬間、目と目と目がわたしの顔を捉える。湿気漂うフロアにだれかがペンを落とす音、先生のマイクが吐息までもを拾って湿った熱を加速させる。「儚いって聞いて何を思い浮かべますか?蝶?蛍?蝉?トンボ?」 教授がそう聞くと、みんなのえらぶ選択肢がちょうど均等に分かれる。講義が終わるといつもすぐに帰るイケてる男の子が蛍を選んでいて、なおさらかっこよく見えた。わたし、インスタのフォロワーが490人いるんだけど、その人数って今見てるこの人たちよりももっともっと多いのかと思うとなんか心強いような息苦しいような、不思議な気持ちになるなーとぼんやり思った。君たちはぶっちゃけ勝ち組です、という先生がキモかった。海外の大学院に行きたい。わたしはもっともっと色々な人を知るべきだし、美しい景色にであうべきだし、貪欲に学ぶべきだとおもうから。聡明になって、お金を稼いで、将来だいすきなひとたちにたらふくご飯をたべさせてあげたい。お母さんとお父さんが育ててくれた、守ってくれたこの心の真ん中にそびえる愛情のかたまりを誰かに分け与えていきたい。でも、そうとも思うけど、逆にそれをこなごなにさせてくれる危険性や若さゆえの解放にも目が眩んでしまうの。「今しかできない」ってとてもずるい言葉だなあ。
19さい
19歳とかいちばん呪われていた1年だった。まだハタチじゃないけど、もうそうさせて、と思うくらいに、1年のあいだに10年分くらいの幸せと不幸せがぎゅうぎゅう詰めに、どっちがどっちかわからなくなるくらいに入り乱れててくるしくてさみしくて悲しかった。くるしかった。わたしと同じ純度で、等しく、あいしてほしい。あいされたい。
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Xユーザーの阪口 克さん:「この形の「土の断熱性能と煙突形状の吸排気」の効果が利用された炉で、誰でも安全にテーブルの上で使える超便利焚き火グッズが日本にあるんですけどね。七輪って言います。」
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『マッドマックス:フュリオサ』を観てきました
ヒャッハーーーー!!!観てまいりましたよ『マッドマックス:フュリオサ』をwith姉!!マジありがとうジョージ・ミラー監督。
余談ですが退館後高架下にある自転車置き場に行ったら橋脚にスプレーでこんな落書きがしてあって姉と「いやちょっと待てwww!!!」と大笑いしました。こんな落書きです↓
もしかして名古屋、はぐれウォーボーイズおるか(撮影して載せたかったのですが人目を気にしてしまいました。撮るべきだった……)???
映画の感想はというと……激熱でしたね。色々語りたいことがありすぎて逆に語れないのと、本当は日付を超えてでも視聴したその日である昨日に書くべきだったのですが寝落ちして記憶が少し飛んでいます(最悪)。本当すいません!6/30に書くべきでした本当に!!
ここから先、がっつりネタバレを含みますのでご注意ください。
☆前作のオマージュ
今作は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(以下MMFR)の続編であり、大隊長・フュリオサの若き日を描いた前日譚でもあります。今作だけいきなり観に行るのは、個人的にはあまりお勧めしません。恐らく世界観等が理解しづらいであろうことと、純粋に前作視聴後に観た方が間違いなく楽しいであろうことからです。ネトフリのリンクを貼るので俺を見ろ!!
頭蓋骨から蜥蜴が這い出てきた瞬間「これは……!!」と思ったら期待通りの展開(※別に蜥蜴が嫌いで死んでほしいとかではない)になったのでにっこりです。そして【俺を見ろ特攻】も!やはりマッドマックスと言ったらウォーボーイズによる高空からの自爆特攻ですよね(※すいません当方シリーズ中2作しか鑑賞しておりません)!今作は前作以上に"高さ"を感じられる演出が多く、思わずアガりました。
あと生体メカニックの彼は最初はディメンタス軍団所属だったんですね……。
☆ラストについて
ラストでフュリオサがディメンタスを鎖で拘束した時、私はてっきりフュリオサは意趣返しとしてジャックがされたことをするのだとばかり思っておりましたが、全然違いましたね。まぁバイクで引きずり回すのと車で引きずり回すのは手応えが全然異なるでしょうしね……。ディメンタスによるフュリオサへのご高説、まーーー鬱陶しいこと笑!!その場で殺さなかったフュリオサの忍耐強さと執念よ……。
その後いきなりお笑い漫画道場で富永一郎が描きそうなカット(今時の若者が絶対分からない比喩やめろ)が出てきて私はかなり動揺したんですが、周囲の誰もが特に反応していなかったのでますます動揺しました。え、あれ笑っていい場面じゃないんですか!?不意打ちであの絵面出てきたら絶対笑うんだが!?
……真面目に書きますと、フュリオサから日常を、母を、恋人を奪った挙句彼女の希望を否定しひたすらに絶望しかないと唱え続けた男が最後(最期?)「希望(※)」の苗床として生かされる痛快なオチに感動しましたね。林檎又はそれに似た果実を取りに行った結果彼女は攫われディメンタスとその一味に目の前で母を殺されたのですが、最後は彼女がディメンタスを果実のなる樹の苗床として利用し、いずれ母となるであろう前作でいう「子産み女」の女性達に実を分け与えるのです。ディメンタスはフュリオサに最早希望などないと散々喚き散らしておりましたが、前作……時系列では後日なんですが(ややこしいな)、フュリオサは自身と同じように攫われ砦(シタデル)へ連れてこられた、或いはそこで生まれ育った子産み女達を解放し、自身の生まれ育った「実りの大地」へ戻る為にウォー・タンクを率いて離反します。これは彼女の中に希望が残っていたからこそ成せたことでしょう……ディメンタスの完全なる敗北ですね。実りの為に母を殺した男の最後が母(子産み女)の為の実りを生み出す苗床なんて、流れが美しすぎますよ。 ※個人的な解釈ですが最後に出てくる林檎の果実は母を失い絶望を味わったフュリオサが地獄の日々を乗り越えた果てに母(子産み女)を守る為に育てている希望の象徴みたいなものかな、と勝手に思っています
※林檎の実についての興味深い資料がありましたのでよろしければどうぞ 出典:敬和学園大学
「表象としてのりんご 」
☆イモータン・ジョー
以下イモータンと表記します。ディメンタスが言ったように、彼の行いは「搾取と奴隷労働」ではありますが、ディメンタスと異なり余興や見世物の様に仲間の命を奪ったりすることは決してありませんし、何なら前作で描かれていたように水もちゃんと分け与えています。もっといい配り方してやれよとも思いますが
ノブレス・オブ・リージュ……ではないのですが、支配者としてきちんと統治してはいるんですよね、イモータンは。実際ガスタウンや弾薬畑も施設としてかなり立派でしたし、だからこそあそこまでウォーボーイズ達に盲信されているのでしょうね。なんだかんだでディメンタスの煽りを受けても乗っからずにうまく返して撤退させていましたし、終盤の再襲撃に逸る配下達の意見ではなくフュリオサの案を採用しましたし、状況判断に長けていますよね……うっかり装置の誤作動で殺す予定ではなかった人質を殺めてしまったディメンタスとはわけが違いまさぁよ!!
ディメンタス軍団は全員ガチムチ!殺し合い上等!な感じでしたが(冒頭でバイク軍団に選ばれた女性、終盤まで終始前線で奮闘していてすごかったですね)、イモータン達やシタデルにいる人間達はディメンタス軍団の様に元気な体!って感じではないんですよね。MMFRで水の配給を待っていた人達は高齢者や体のどこかに障害や疾病を抱えている(ように見える)人達ばかりでした。リクタスは大型で筋肉質で肉体��そ元気ですが知能がちょっと怪しいですし、スクロータスは顔つきが一般的な人間とはやや異なっており皮膚が独特の様相を呈しています。ウォーボーイズは短命ですし、その中でもボミーノッカー係だった赤ちゃんは完全に奇形児でしたしね……これ、もしかしたらディメンタス軍団は肉体が健康でない者はもしかしたら処刑なり何かしらの手段で選別されている可能性も出てきましたよ……ざわ……ざわ……。もしかしたら流れてきた"そういう者達"を、シタデルが受け入れているのかもしれません。知らんけど
……こう書くとイモータンがまるで人格者のように思えてきますが、ディメンタスよりはマシというだけであって別にいい人ではないので気を付けてください!本当に!!
☆フュリオサ
シャーリーズ・セロンに較べるとどうしても華奢さが目立つアニャ・テイラー=ジョイですが、悪くはなかったのではないでしょうか。フュリオサ、ここからMMFRの間に体躯をめっちゃマッチョに鍛えたのかもしれませんしね!
☆ディメンタス
お前の事誰が好きなん?
いやーーー本当にこいつは……こいつは本当に……キャスティング良すぎィ~~!!クリヘムことクリストファー・ヘムズワースを持ってきた人にもうあげちゃうわッ…あたしの銀のスプレー!
ガタイのいい俳優は履いて捨てるほどいますが、ディメンタスという悪辣で愚かで豪快な脳筋人格破綻者を演じるにはクリヘムのそこはかとなく漂う陽キャ感が必要だったように感じます。もしこれがステイサムだったら首尾一貫スマートに片づけそうな気がしません?少なくとも乳首を吹き飛ばすような真似はしないでしょう
あの腰につけているぬいぐるみは息子の形見と言っていましたがあれ本当なんですかね。本当のような、攫ってきたばかりのフュリオサに心を開かせるためについたその場しのぎの出まかせのような……うーん。
ディメンタスは随所に余り賢くない描写が挟まれており、「シタデル」と聞いて「何デル?」みたいなことを言う、乳首を吹き飛ばす、生き字引として常に「賢者」を伴っている、はぐれウォーボーイズの発煙筒を自分で被る、等。もし彼が賢かったならきっとフュリオサ���傷つけることなくうまく彼女のいた土地を陥落できたのでしょうが、彼は暴力と殺戮と支配を選んでしまったので、結果的に実りの大地への道は閉ざされてしまったわけです��有能な№2でもいたらきっともっとうまく様々な土地を手中に収められたのでしょうが、彼の周りにいるのは支配によってイエスマンと成り果てた者ばかりでしたね……その点イモータンは一応人食い男爵達に(採用するかは置いておいて)発言権は与えていたりするので、やはり格が違うんですよねぇ。仲間をウォーボーイズに仕立て突撃するために撃ち殺したり、或いは死体を自らの身を守るための盾として使ったり、気に入らないものは首を吊らせたり……この点でも、喜んで自ら命を捨てるウォーボーイズの育成に成功しているイモータントの対比を感じます。小物感!
すいません眠くてまともな文章が書けなくなってきてしまったため、ここらでクローズといたします。ジャックについても書きたかったのですが……。海外版山田孝之!なルックスで「あんまりシュッとした感じの人じゃないな」などと思っていたら処刑シーンでブタ野郎呼ばわりされていてちょっと申し訳ない気持ちになりました(最悪)。しかし本当にあの処刑シーンは余りにも人の心がなかったですね。邦画だったら逃げ切りそうなところを……。
最近ちゃんとした長文を書けていない為、リハビリ目的で頑張りましたが全然ダメでした、さーせん!でも映画はめっちゃよかったです!!!
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【小説】コーヒーとふたり (下)
※『コーヒーとふたり』(上) はこちら(https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/746474172588425216/)
零果が会社に行けなくなったのは、三年前、三十歳の時だった。
最初は、朝起きられないことから始まった。いつもと同じ時間に目は覚める。アラームを設定した時間よりも早く目が覚めることの方が多かった。しかし、目は覚めても、身体を起こすことができない。羽毛布団を跳ね除けることさえできないのだ。全身の筋力が突然失われてしまったのかと思った。それでも、重い身体をなんとか起こしていた。
ベッドから起き上がってからも、身体が思うように動かない。毎日さっと済ませることができた朝の用意も、時間をかけないとこなせなくなった。それでも、通勤電車の時間に間に合わせないといけない。当初は、起床時間を早め、朝の支度を可能な限り簡略化していくことでなんとか始業時間に間に合うように出社していたが、次第にそれも難しくなり、ベッドで横になったまま、「一時間遅刻します」、「二時間遅れて行きます」と会社に電話を入れるようになった。
それでも出勤できてはいたものの、だんだんと、身体を起こした後に頭痛や吐き気に襲われるようになった。会社に近付けば近付くほど、それは強くなっていき、出勤前に会社の目の前、道の反対側にあるコンビニのトイレで嘔吐する日々が続いた。コンビニまで辿り着けていたのはまだ良い方で、やがて駅のトイレで吐くようになり、ついには電車に乗ることもできなくなった。
ある朝、何度も鳴り響くアラームをやっと止め、なんとか力を振り絞って身体を起こしたその途端、「どうせ吐いてしまうのだから」と、しばらく何も食べていなかったにも関わらず、喉を��り上がってくる胃液を堪え切れずに床にぶちまけて、零果はそこで初めて、「もう仕事に行くのはやめよう」と思って、泣いた。
病院へ行ったらうつ病だと診断された。事情を聞いた上司からは休職を勧められ、驚くほど簡単に手続きが進み、会社に行かなくて済むことになった。
最初は、休めることにほっとした。休職したことによって初めて、零果は自分が仕事を休みたいと思っていたことに気が付いた。そのくらい、当時は激務だったのだ。
毎日のように遅くまで残業し、それでも仕事が終わらないことが不思議だった。休日を返上して、やっと一週間分の業務がすべて片付いたと思ったその翌日には、また月曜日がやって来て、新しい一週間が始まる。ただそれの繰り返しだった。終わりの見えない日々。どうしてこんなに仕事があるのか。一体、どこから仕事がやって来るのか。デスクに積まれた書類がちっとも減っていかない。こなしてもこなしても、また新しい書類が重ねられていく。
当時は、部署の垣根を越え、商品管理部と協力して新しい管理システム、物流システムを構築する作業に明け暮れていた。自分の本来の職種がなんだったのかを忘れそうになるほど、毎日違う部署へ顔を出し、社内を走り回り、自分のデスクに戻って来るともう夜になっていた。書類を捌く時間などなかった。
毎日、缶コーヒーを何本も飲んだ。頭痛薬を飲むのももはや習慣になっていた。それでも働き続けていた。苦労はあった。つらいと思う時もあった。しかし、達成感や充足感もあった。新しく、ゼロから何かを作り上げていくというのは面白かった。そう、零果にとって仕事は、ただ苦痛な作業という訳ではなかった。日々の業務に自分の生き甲斐を見出していたのは確かだ。だからこそ、彼女は働き続けることができたのだ。しかし、心が折れるよりも先に、音を上げたのは身体の方だった。
会社を休んでいる間、なんの気力も湧かなかった。ベッドから起き上がれないほどの倦怠感や吐き気は少しずつ改善されていき、日常生活が難なく送れるようになっても、毎日毎日、有り余る時間をどう過ごしていいのか、わからないままだった。もともと零果は、友人が多い訳でも、熱中している趣味がある訳でもなかった。休日って、何をして過ごしていたんだっけ。手持ち無沙汰から始めた家の掃除も、二週間もすれば家じゅうピカピカになり、磨くところがなくなった。やりたいことが何ひとつ思い浮かばなかった。これなら仕事をした方がマシだと、何度も思った。
有武朋洋から連絡が来るようになったのは、そんな時期だった。
零果は彼の営業アシスタントを務めていた。すべての業務は桃山に引き継いだはずだったが、それでも有武はときどき、過去の書類やデータについて、休職中の零果に質問をよこした。
そして、零果が毎日時間を持��余していると知ると、遠慮なく頻繁に連絡して来るようになった。内容は、半分は業務に関する話題で、残り半分は職場での愚痴か、他愛のない雑談だった。どう考えても今は勤務中だろうという時間帯に電話がかかってきて、課長への文句を一方的に延々と聞かされたこともあれば、休日の夜に、どうしたら業務が改善できるか、解決策をふたりで二時間も話し続けたこともあった。
「電話でずっとしゃべるくらいなら、いっそ会おうか」という話になり、カフェで会ってお茶をしたこともあった。どういう訳か、実際に顔を合わせると、お互いなんとなく口数が少なくなり、たいした話はできなかった。しかし、その時の沈黙が、決して居心地の悪いものではなく、零果と有武はその後、ときどき一緒に食事をするようになった。
営業アシスタントをしていた頃は、有武とプライベートで会うなんて一度もなかった。零果は休日もほとんど返上して働き詰めだったので、そもそもプライベートがないようなものだったし、それは有武も同じだった。ふたりはほぼ毎日顔を合わせる羽目になっていた。
しかし、仕事の話を抜きにして有武と向き合う時間は、それまでとはまた違う空気が流れていた。
零果が休日にコーヒーを飲むようになったのも、彼に喫茶店に連れられて行ったのがきっかけだった。
「誰も知らないような店で美味いコーヒーをひとりで飲む時間って、贅沢なんだよな」
そう言う有武は、いつにも増してハイペースに煙草を吸っていた。最近は飲食店でも全面禁煙の店が増えたが、昔ながらのその喫茶店は、全席喫煙可能だった。零果からすれば、彼はコーヒーを飲みに来たというよりも、煙草を吸うためにこの店に来たとしか思えなかった。
「……良かったんですか、私を連れて来て」
「何が?」
「誰も知らないような店を私に教えて、美味いコーヒーをひとりではなく、ふたりで飲むことになっていますが」
零果がそう指摘すると、いつものように有武は小さく鼻で笑った。
「加治木さんはいいんだよ。俺にとって特別な人だから」
そう言われて、自分はなんて返事をしたのか。零果はもう思い出すことができない。
しかし、それから彼女の脳内には喫茶店リストが作られ、休日にコーヒーを飲むための店を選ぶようになった。あの日に有武が言ったように、誰も知らない店でコーヒーをひとりで飲む時間が、彼女にとって何よりも特別な時間となった。
半年間の休職ののち、零果は復職した。だがしかし、元のデスクに戻ることは叶わなかった。
営業アシスタントとしてではなく、事務職としての復帰。
総務や人事を含め、それが零果に関わるすべての上司や上層部が下した決断だった。休職前より残業時間が少ない部署に異動することに主治医も賛成していたし、彼女自身も最終的にはその異動に同意した。一度、心身のバランスを崩した人間が以前と同じように働くことができるとは思っていなかったし、休職したまま二度と職場に顔を出すことなく辞めていくことになった同僚がいること���知っていた。復職できただけ、自分は��運な方だと思った。
「どんな形であれ、加治木さんがこの会社に帰って来てくれて、本当に良かったよ」
すでにふたりの営業マンのアシスタントを務め、さらに有武の業務も担当することになったにも関わらず、桃山美澄は本心から出た言葉のような、穏やかな口調でそう言った。
零果の復職後、昼の休憩時間に廊下の端の自動販売機の前で偶然出会い、ふたり揃って同じ缶コーヒーを飲んでいる時だった。
「ご迷惑をおかけしてすみません」
「迷惑だなんて思ってないよ。それに、迷惑をかけてるのはむしろこっちだよね」
桃山は困ったような表情をして、少しだけ微笑んだ。その仕草はどこか、少女のようだ。
「有武くん、変わらず加治木さんに仕事を頼んでるでしょ。ごめんね」
そう言われて、今度は零果が困った顔をする番となった。
納得して受け入れた部署異動だったが、どうしても納得してくれないのが有武だった。彼は事務職として復職したはずの零果に、営業アシスタントとしての仕事を振ってきた。最初は、自分はもうアシスタントではないと抗議していたが、もともと、彼は零果の言葉を聞くような人間ではない。何度説明しても有武が納得することはなく、やがて零果も諦めた。
まだ慣れない事務職としての業務に加えて、有武からの無茶ぶりとも思える依頼は、部署異動した意味を台無しにしているような気もしたが、しかし、彼が回してくる雑務の量や求められている質に、零果への気遣いを感じたのも確かだった。
「加治木さんは俺のアシスタントだよ」
いつだったか、有武は煙草を吸いながらそう言った。その日も、彼は外階段にいて、零果は煙草を吸う訳でもないのに隣にいた。もう何度も、その言葉を聞いた。もうあなたのアシスタントじゃない、あなたの仕事は手伝えない。そう訴える度、彼は必ず、その言葉を返した。
「そもそも、俺を営業部に異動させたのは加治木さんでしょ」
そんなことない、自分はそんなことをしていない。零果はいつだって真剣に反論したが、有武はいつも、小さく鼻で笑うだけだった。それは彼の癖だ。零果は知っている、彼が鼻で笑うのは、上機嫌な時だけだ。
「俺が営業部にいる限り、俺のアシスタントは加治木さんだよ」
地獄にまで道連れにされそうな、そんな言葉に零果は肩を落とすしかなかった。でもこの言葉に、ずっと励まされてきたのも事実だ。
もしも有武がいなかったら、自分の担当が彼ではなかったら、休職中に連絡をくれなければ、零果は仕事に復帰することができずに、そのまま退職していたかもしれない。復帰できていたとしても、事務職としての仕事だけをこなす日々では、いずれこの会社を辞めていたのではないか、と思う。どんな形であれ、自分を必要としてくれる存在がいるということが、現在の零果を繋ぎ留めていた。それがなければ、自分はもうとっくに千切れてバラバラになっているだろう。
有武は――鋭い眼光を放つ、あの澄んだ瞳で――、そのことを見透かしているように、零果は思う。彼は零果の性質を理解していて、その上で、彼女のために手を伸ばしてくれている。一緒にいるとそう感じる。それが彼なりの優しさなのだとわかる。だから、零果はその期待に応えたいと思うのだ。そして、それが��しいという現実に、いつも少なからず絶望する。彼の優しさに報いることができない自分を見つめては、無能感に苛まれる。
どんなに頑張っても、私はもうこの人のアシスタントではない。
それだけの事実に、打ちのめされてしまう時がある。
身体を壊さなければ良かった。うつ病になんかならなければ良かった。ずっと頑張ってきたのに。思い出すこともできないほど、忙しい日々を送っていたのに。頑張れなかった。最後の最後まで、頑張ることができなかった。あんなに苦労して作り上げた新しいシステムも、完成まで携わることが叶わなかった。あれは、まだ有武が商品管理部にいた時に考案したものだ。そのシステム実現のため、彼は営業部に異動した。零果はその当初から、最も近くで彼を見てきた。慣れない営業職の仕事に苦悩する彼を知っていたのに。本来ならば、もっともっと、一緒に仕事ができたはずなのに。
零果のそういう自責の念を、恐らく有武は見抜いている。だから彼は、今でも零果に依頼するのだ。寄り添うように、励ますように。彼女の心が折れないように。彼女との繋がりが、断たれることがないように。
ピッ、という短い電子音の後、缶が落ちた音がした。自動販売機から見慣れた黒一色のパッケージの缶コーヒーを取り出し、プルタブに指をかけた時だった。
「お疲れ様」
そう声をかけられ、零果は振り返る。戸瀬健吾だった。
彼の腕には上着と鞄がある。外回りから帰社したところなのか、それともこれから退社するところなのか、零果には判別がつかない。今の時刻は十九時四十分で、定時である十七時はとっくに過ぎてはいるが、営業部はこの時間帯に外出先から戻って来ることも珍しくはない。
零果が「お疲れ様です」と挨拶を返すと、戸瀬はいつもの穏やかな笑みで「いやー、疲れちゃったなぁ」と言った。その声には本当に疲労の色が滲んでいる。どうやら今、会社に戻って来たところのようだ。
戸瀬がポケットに手を入れた動作を見て、零果は自動販売機の前から場所を譲る。案の定、取り出したのは小銭入れで、彼は移動した零果に礼を言いながら自販機へと硬貨を投入した。
「加治木さんって、いつも遅くまで仕事頑張ってるよね」
「そんなことはありません」
「そう? 頑張ってると思うけどな」
ピッ、と電子音が鳴る。戸瀬の指先が選んだのは、今日の昼にもらったのと同じカフェラテだった。このカフェラテが好物だと言っていたっけ。そう言えば、あの時の詫びを、まだ伝えていなかった。零果は心に貼り付けたまま忘れそうになっていた、黄色い付箋を思い出す。
「今日は、すみませんでした」
「え?」
突然の謝罪の言葉に、戸瀬は目を丸くした。
「お昼に、私のことを気遣ってくださったのに、仕事の手も止めず……それが申し訳なくて……」
「あ、ああ、なんだ。そんな、気にしなくていいのに」
戸瀬は再び笑顔に戻り、穏やかな口調で言う。
「俺の方こそ、ごめんね。忙しいタイミングで声かけちゃったみたいで」
「いえ、戸瀬さんは悪くないです」
零果は首を横に振る。それから、彼の手の中にある缶を見やり���あの時もらったカフェラテのお礼を、どう伝えるべきか悩んで口をつぐんだ。まさか有武にあげてしまったと言う訳にはいかないが、あたかも自分が飲んだかのように話すのも憚られる。零果は、コーヒーは無糖のブラックしか口にしない。カフェラテも決して飲めない訳ではないが、元来、甘いコーヒーは好きではない。しかし、そんな好き嫌いを伝える訳にもいかない。
どうしたものかと思案する零果を、戸瀬は変わらず人当たりの良い笑顔のまま、どこか不思議そうに見つめている。微かに口元から覗く歯の白さ。どうしてそんなに歯が白いんだろう。ホワイトニングでもしているのだろうか。テレビのアナウンサー顔負けの歯の白さだ。
零果は無意識のうちに、有武の黄ばんだ歯を思い出していた。あれはきっと、ヘビースモーカー特有の歯だ。
戸瀬と有武は、まったく違う。戸瀬は、髪型が整っていて、髭もなく、見た目に清潔感がある。近付くと、ほのかに柔軟剤のような良い香りがする。零果は戸瀬が事務員の中で「王子」というあだ名で呼ばれているのを知っているが、そう呼ばれるのも納得できる。外見だけではなく、人当たりも良いし、穏やかで、丁寧だ。営業部での成績も良い。
それに比べて、有武は、不潔で、臭くて、がさつだ。思い付くアイディアは革新的だが、発想が常人離れしていて、たいていの人間はその思考の飛躍について行けない。彼の提案には、それを裏付けるための膨大な資料や説明する時間が必要となる。彼が考案した新システムも、社内で導入されるまでかなりの時間と労力が費やされた。普段の突飛な言動も相まって、商談の成功率はまちまちだ。営業先では彼を気に入っていると言う顧客もいるらしいが、社内での評判はあまり良くない。戸瀬を見ていると、同じ営業部二課所属でも、有武はこうも違うものかと、そんな余計なことをつい考えてしまう。
「加治木さんって、俺のことすごく真っ直ぐ見つめてくれるよね」
そう言われて、零果はあまりにも戸瀬をまじまじと見つめていたことに気付く。慌てて謝った。
「すみません……」
「謝ることないよ。でも、あんまり見つめられると、ちょっと恥ずかしいかな」
戸瀬はいたって穏やかに笑っている。あまりにも爽やかで、嫌味など微塵も感じさせない笑顔。この笑顔に惚れ惚れする女もさぞ多いことだろうな、と零果は思った。ファンクラブができるのも頷ける。
「加治木さん、もし良かったらなんだけど、今度の土日――」
戸瀬が言いかけた、その時。
スマートフォンの着信を知らせるバイブレーションが、人気のない廊下に静かに響き渡る。それは零果のスマホだった。制服のポケットに入れていたそれを取り出し、画面に表示されている発信者の名前を一目見て、彼女は頭を抱えたくなる。
今日は会議があって、その後は会食だと言っていた。時間帯から考えれば、今頃は先方と食事をしているはずだが、それでも電話をかけてくるというのは、何か緊急事態なのか、忘れていた仕事を思い出したか、そのどちらかではないか。そして、そのどちらだとしても、何か今から厄介ごとを頼まれる予感しかない。今日はそろそろ仕事を終えて帰れると思っていたのに。否、会社を出てから仕事を頼まれるよりは、まだマシかもしれない。
「出なくていいんじゃない?」
戸瀬はそう言った。その声音の固さに、零果は驚いた。彼の表情からはいつの間にか、笑顔が消えていた。
「電話、有武さんからでしょ? また何か、仕事を押し付けようとしているんじゃない? 加治木さんはもう、アシスタントじゃないんだよ?」
戸瀬は真剣だった。零果にはそれがわかった。彼が言っていることが何ひとつ間違ってなどいないということも、わかっていた。それでも、と思うこの気持ちを、どう説明したらいいのだろう。間違っているのは自分だ。それもわかっている。だけど、構わない。零果は画面に表示されている「応答」の文字に指を滑らせた。
「すみません、戸瀬さん。失礼します」
そう小声で告げて、零果は踵を返した。「加治木さん!」と、戸瀬が呼んだのが聞こえたが、振り返ることはしなかった。スマートフォンを耳に当てながら、自分のデスクがある事務部フロアへ続く廊下を小走りに駆ける。
「お疲れ様です。加治木です」
覚悟はできている。たとえこの後、どんな無茶苦茶な依頼をされようとも、必ずそれを成し遂げてみせる。
今まで、そうやって仕事をしてきた。これからも、そうやって仕事をするのだ。ふたりで、一緒に。
休日に喫茶店へ行くことは、加治木零果にとって唯一、趣味と呼べる行動だ。喫茶店で一杯のコーヒーを飲む。ただそれだけの時間を楽しむ。
喫茶店へ誰かと連れ立って行くようなことは、普段は決してないのだが、ときどき、それは本当にときどき、誰かと向かい合ってコーヒーを飲むことがある。
その喫茶店は開店直後だった。営業時間は、午前六時四十五分から。零果がその店に入ったのは、朝七時を回ったところだった。オープン直後である。土曜の朝、客として店にいるのは、ウォーキングの後とおぼしき中年の夫婦が一組。それ以外の客は、昨日から徹夜して働き続けて疲れ果てている零果と、彼女と同じかそれ以上にくたびれた様子の有武朋洋だけだ。
「……こんなに朝早くから営業してる喫茶店なんて、よく知ってましたね」
零果は目の前に置かれたコーヒーカップを見下ろしたままそう言ったが、向かい合って座っている有武は、まだ火の点いていない煙草を咥えたまま、返事もしなかった。椅子の背にもたれかかって、ただ天井を仰いでいる。
カップへと手を伸ばす。零果が注文したのはグアテマラだった。有武のカップに注がれているのはキリマンジャロだったはずだ。喫茶店に足を運ぶようになった当初、零果は豆の違いなどまったくわからなかった。いろんな店で飲み比べた結果、なんとなく味の違いがわかるようになってきた。
「……もう、徹夜はしんどいなぁ」
零果がコーヒーを飲みながらひと心地ついていると、ぴくりとも動かなかった有武が唐突にそう言って、やっと、右手に握っていたライターで咥えていた煙草に火を点けた。目の下の隈がひどいな、と零果は彼の顔を見て思ったが、今の自分も同じくらいひどい顔をしているのだろうと思って、口には出さなかった。
「何も、徹夜してまで資料作らなくても、良かったんじゃ……」
「でも俺、来週は出張でいないからさ」
今のうちに作業しておかないと。煙を吐きながら、有武はそう言った。
「だからって……無理に今日作らなくても……」
そう言いながらも、零果はさっきまでふたりで行った作業のことを思い出していた。徹夜したとはいえ、ふたりだったから、この時間で終わったとも言える。もしも来週、出張先の有武からひとりでこの資料を作るようを命じられていたら、零果も途方に暮れていただろう。
否、彼女がひとりではできないと踏み、彼はそんな指示を出さないかもしれない。有武がひとりきりで資料を作る……というのもまた、不可能だろうから、アシスタントである桃山に依頼することになるのだろう。彼女であれば、零果よりも短時間で資料作りを完遂させそうだ。
だったら最初から、桃山さんに依頼すればいいのに。なんて言ったら、有武はなんて返事をするだろう。
昨夜、有武から零果にあった着信。会食の後、そのまま帰宅するはずだった彼は、会社へ戻って来た。新しい商品のアイディアを、突然思い付いたのだと言う。そのプレゼンテーションのための資料を今から作るから、手伝ってくれ。有武はそう言った。時刻は夜の八時に近かった。金曜の夜だった。一週間働いて、疲れ果てていた。けれど零果は、彼の言葉に頷いた。そうして、ふたりで作業をしているうちに、夜は明け、朝になった。
何も今やらなくても。零果は何度か、そう言った。しかし、有武が考え付いたことをすぐに形にしたがる性格だということは、もう長い付き合いでわかっていた。今まで何度も、こういう夜があった。休日に突然、呼び出されることもあった。今からですか、今じゃなきゃいけませんか、私じゃないと駄目なんですか。何度も、そう尋ねた。答えはいつだって同じだった。
「どうしても今日、やりたかったんだよねー。加治木さんと、一緒にね」
ずっと天井を仰いでいた有武が、ゾンビのように身体を起こす。澄んだ瞳が零果を見る。目が合いそうになって、思わず零果は目線を逸らした。相変わらずその瞳は、まっすぐ見つめるのも躊躇するような輝きを感じさせる。しかし、これって自分だけなんだろうか。一体、いつから、自分は有武の目を見ることが苦手になったのだろう。
「今日、加治木さん、元気なかったでしょ」
そう言われて、そうだっけ、と零果は記憶を辿る。今日、ではなく、正確には昨日だが、眠らないでいるといつまでも「今日」という日が終わらない感覚は、零果も有武も同じようだ。
そうだった、外階段で煙草を吸っていた有武と話した時、確かに落ち込んでいた。同僚たちの陰口を聞いてしまい、食欲もなかった。零果自身は、もうそんなことは忘れていた。けれど彼は、それを心配してくれていたのか。
「加治木さん、仕事頼んだら元気になってくれるかなって思ってさ」
有武は、そこでやっと自分のコーヒーカップへと手を伸ばした。もうとっくに冷めてしまっているはずだが、キリマンジャロを美味そうに飲む。
「……は?」
対する零果は、有武の発言に呆然とするしかない。励ますために、仕事を頼んだとでも言うつもりなのだろうか。そのために、今さっきまで仕事をしていたのか? 徹夜してまで? 朝の六時まで?
しかし、有武の口調は大真面目だった。
「俺が加治木さんにしてあげられることなんて、仕事を依頼することぐらいだから」
あとは、たまにこうして、一緒にコーヒーを飲むことくらいか。そう付け加えるように言った声音に、零果を案ずる感情が含まれていることに気付いて、文句を言うために開きかけた口を、静かに閉じる。徹夜作業に付き合わせた言い訳に、「励ましたかったから」と言っている訳ではない、ということはわかっていた。
どうして自分は、この人から離れられないのだろう。
仕事なんて断ればいいのに。上司にも、同僚にも、ずっとそう言われてきた。自分だってそう思う。定時を過ぎての残業も、休日出勤も、徹夜作業も、全部断ればいい。それだけのことだ。
それでも、一緒に仕事をしたいと思う。
彼の助けになれたら、と思う。
それが無茶苦茶な依頼であっても、一緒に働くことが楽しいと思える。
身体を壊す前も、そうだった。楽しかったからこそ、身体を壊したのかもしれない。きっと苦痛であったのであれば、もっと早くに音を上げていて、休職するほどにまで自分を追い込まなかっただろう。そう、心身を病んだ時、零果はただの一度も、有武を恨まなかった。彼の仕事の振り方が問題なのだとは思わなかった。一緒に仕事ができたことに感謝したいくらいだった。そのくらい、刺激的な日々だった。もっとも、有武に感謝の気持ちを伝えたことなどないが。
「……今度、焼き肉に行きませんか」
零果は喫茶店の窓の外を見つめ、そう言った。窓の外には静かな土曜日の朝の光景が広がっている。通りはまだ人もまばらだ。老人に連れられたマルチーズが毛足の長い綿毛みたいに、もしゃもしゃと道路を歩いて行く。
「有武さんに焼き肉を奢ってもらったら、元気が出るかもしれません」
零果の言葉に、有武は鼻で笑った。機嫌が良いのだ。わざわざ顔を見なくてもわかる、彼は今、楽しそうに笑っている。
「焼き肉でも寿司でもいいよ。今度一緒に、飯でも行こう」
加治木さんは少食だから、俺の方が食っちゃって、割り勘だと割に合わないから、結局俺が奢ることになりそうだなぁ。ぼやくようにそう言いながら、有武の目線もいつの間にか、窓の外のマルチーズに向けられていた。
ふたりはしばらく、陽の当たる道を綿毛の化身のような犬が遠ざかっていくのを見つめていたが、やがて老人と犬が曲がり角の向こうに見えなくなると、お互い、目線を室内へ戻し、顔を見合わせた。
今度こそ、目が合う。
咄嗟に目を逸らそうとする零果よりも先に、有武が座席から身を乗り出した。目の前にまで迫って来た彼から、零果は飛び上がるように大きく身を引いて逃げる。その様子に、有武はぷっ、と吹き出した。零果は完全に顔を背けたまま、しかめっ面をして無言で怒っていた。
有武は「ごめん、ごめん」と笑いながら、煙草を持っていない方の手を横に振った。
「加治木さんは本当にさぁ、俺と目を合わせてくれないよねぇ。昔からそうだよね」
「……恥ずかしいんです」
「まぁ、俺はそんな加治木さんが好きだけどね」
煙を吐きながらそう言っ��、有武は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。自分のコーヒーカップを持ち上げながら、零果のカップをちらりと見やる。その中身がほとんどなくなっているのを見て、「じゃあ、それ飲んだら出ようか」と、有武は言う。
「……あの、」
「ん?」
「コーヒー、もう一杯飲んでもいいですか」
そう言う零果は、テーブルの上のメニューへ目線を向けている。でも実際に、メニューの文字を読んでいる訳ではない。次に頼むコーヒーをどれにするか、思案している訳でもない。
有武はしばし、そんな零果の横顔を見つめていた。一見、表情の読めない彼女の顔を、じっと見つめた後、彼は口元まで運んでいたコーヒーカップを、そのままソーサーの上へと戻した。そうして、作業服の胸ポケットから煙草を一本取り出して咥えた。
「じゃ、もう少し、ここにいようか」
零果が小さく頷いたのを見届けてから、煙草に火を点ける。
有武は零果の思考を、果たして読み取ったのだろうか。何も言わなくても感じ取ったかもしれない。そのくらいは聡い男だ。微かに緩んだように見えるその表情は、この時間が決して苦痛ではないという証拠だろう。徹夜明けで疲れ切っていても、早く帰りたいと言わないのは、お互い同じ感情だからだと、そう思うのは傲慢だろうか。
「すみません」と、零果が店員を呼んだ。追加のコーヒーを注文するためだ。店の奥から、店員の「少々お待ちください」という声が返って来る。
喫茶店では一杯のコーヒーを飲んだら、すぐに店を出る。それが彼女のルールだった。どんなに美味でも、二杯目を頼むことはない。だが時には例外があっても良いだろう。コーヒーを二杯、飲んだっていい。特別な相手と一緒にいる時だけは。
ふたりで喫茶店へ行くのも、良いかもしれないな。
零果は疲れ果てた頭の片隅で、そんなことを考える。
休日はふたりで喫茶店へ行く。新しい趣味にどうだろう。「それは趣味なのか?」と、有武はきっと、笑うだろう。いつものように、鼻で笑うのだ。でも決して、悪くはない。
頭の中の喫茶店リストを開き、もしも一緒に行くとしたら、どの店にしようか、なんて考える。美味しいキリマンジャロを出す店を、それまでに見つけなくちゃ。心の中の水色の付箋にそれを書く。その水色は、窓の向こうに見える空の色だ。ふたりで徹夜して、迎えた朝の空の色。それはとても澄んでいて、もう一度見たいと思える色。
またこうして、一緒に働けて良かった。
いつかそのことを、本人に伝えよう。
そう思いながら、零果はその水色の付箋を、自身の心にそっと貼り付けた。
了
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ゴジラー1.0観ましたよ!
ゴジラー1.0を公開当日、ゴジラの日の朝一番にドルビーアトモス上映で見てきた。 チケットも高いし、迷ったけど、迫力もあって、選んで良かった。 最初、ドルビーアトモスの紹介動画が流れたのだけど、特徴を際立たせたその没入感と音の迫力に思わず少し泣いてしまった。 自分のツボが謎すぎる。
予告編だけみて、内容の予想を勝手に立て、Twitterに投稿していた。 7月12日の事だ。
「ゴジラ-1.0勝手予想。運良く特攻を避けていた非戦派の主人公が、葛藤の末、 国産核兵器(京大制作)を積んで、唯一残っていたゼロ戦で、戦災を免れていた京都に現れたゴジラ相手に特攻。 日本人が日本人の手で0の日本を-1.0とする。クレーターと化した京都市内。煙の中から咆哮が…。劇終。」
「ゴジラ-1.0勝手予想2。昭和二十年九月二日。 東京湾で戦艦ミズーリが轟沈。連合国は日本の仕業と判断し、十一月、ダウンフォール���戦が発動される。 九州南部を強襲する連合国、迎え撃つ��軍、そこへゴジラが現れ戦場は大混乱に陥る。 一方国内は物資欠乏、食料危機も迫るのだった…。」
という風でで、さて以下ではネタバレ込みで予想の適否とその他諸々の感想を書き殴っていく。 本投稿は予約投稿を指定しておき、3か月程度経過した後にポストされるようにする。
予想1、「特攻を避けていた主人公がゴジラを倒す為に特攻を決意、とどめを刺したかに見えたが咆哮が響く」 というのは、大枠で正解してしまったと言えるのではないだろうか。 何となく思っていた通りになってしまったことは、却って寂しい感じもする。 しかし、だからといって単調な駄作という事では決してなかった。
さて私も普通に生きてきたので、日本の大衆的な創作物の文脈にあるものを摂取しながら育った。 ある程度色々と見ると、その文脈の中でも頻出の「お約束」があり、それをを感じると却って醒めてしまうというのはよくある。 そうして私は所謂「所謂アンチ邦画派」になってしまった。世の中にも一定数そういう人がいるようで、 私もそうした人と同じように洋画と比べた時になんだか脚本が観客を舐めてないかとか、カメラワークが稚拙でないかとかをついつい考えてしまう。 今回のゴジラでも同じように、主人公とヒロインの心が通う…と思ったら…からのどっこいやっぱり…という展開にはやはり感じ入るものがある。 加えて、戦闘機の追加装備の件、私なら爆弾の安全装置が二重なんだと筑波の整備兵氏に嘘をつかせる。 ああやって言葉で説明しないと観客は理解できなかろうと思われている所が割に許せないのである。 座席の後ろに箱があり、大写しにしている時点でそれ位は察せるし、きちんとそういう演出をしているじゃないかと思う。 それと、全体的に生きろとか死ぬなとかセリフにあり過ぎてこれにも難を感じる。 私の感覚では、意外とそういう事は口にしないもので、人間危急の時であってももっと目の前の事を語るのではないかと思う。 生きろ、じゃなく逃げろならまだわかるかな。 比較してもしょうながいけど、シン・ゴジラの「幹事長は任せろ」みたいな物言いが「本物」なのではないか?とか思ってしまう。
一方で、昔は、「戦場から逃げてしまった負い目」とか「戦争のトラウマをひきずっている」とか、「それらを吐露して涙を流す」とかの描写も好きではなかった。 しかし、今、私も三十半ばとなり、自分自身も私を取り巻く現実にも大小様々な嫌な事、辛い事が満ちていて、 そうしたものに囚われながら生を重ねており、それがストーリーの軸になること自体についてはおかしく思わないようになってしまった。 むしろそうした描写に居心地の悪さを感じていたこと自体が、自分の怯えをそれと理解できなかった���らだという風に考えるようになってきた。
さて、映画とかを見てちょっと醒める瞬間の話に戻して、 じゃあやっぱり「あ~三丁目の夕日かね、もっとシン・ゴジラみたいなら良かったね」と思うかというと全然そんなことはなかった。 ゴジラ自体が恐ろしすぎて、その「お約束」で逆にバランスを取れているんじゃないかと思わされる位だった。 人間がくちゃくちゃにされてしまうシーンは割と直截的であって、ゴジラの剝き出しの敵意と合わさってそれが恐ろしい。 逆にこの雰囲気だけで全編終わってしまったら、ただ後味が悪いだけになったろうと思う。
自分でも先に触れてしまった事だけど、直近の実写ゴジラといえば「シン・ゴジラ」で、あれは、ある種の「正解」になってしまっていると思う。 シンを鑑賞後にゴジラシリーズを振り返ってみると、要所要所にこれまでのゴジラシリーズのモチーフがあり、 例えば胸躍る音楽である所の「宇宙大戦争マーチ」にしたって、実はシン・ゴジラが初めてではないのであった。 にも拘わらず、初めて/久し振りに「ゴジラ」を見た人をああまで虜にするその新規性と作りこみという点が凄いと思う。
庵野作品だから。庵野作品が好きな人の感想ばっかり私が見ているから、とかもあるかも知れないけど。
でもユリイカのシン・ゴジラ特集の寄稿者の真剣味とかもそれはそれはすごい熱量だった。
とまあ、そこと比べられる事が前提でありつつ、 他方「山崎貴のエンタメ」を見に来る人を考慮に入れながら東宝の看板作品を撮るというのはどれ程難しいだろう。 私は、その両方を満足させられるだけのものを感じた。 一方で分かりやす過ぎるほどの分かりやすさを、一方で突き抜けた恐怖を…という感じに。 あれだけ人間を蹂躙できるのだから、浜辺美波ちゃんのところがどっこいも、なしにしようとすればできたと思う。 それを、そうせずに、ハッピーエンドを重ねつつ最後にひと押し崖から突き落とす示唆があるという所で、 私は印象を攪乱され、良いとも悪いとも断言できない深みを覚えたのであった。 正に、「恐れ入り谷の鬼子母神」。
以下、観ながら頭に浮かんでいた事の羅列。順不同。 第二復員省の関西弁のおじさん最高。 東洋バルーンの技術者さん達最高。 浜辺美波ちゃん。 佐々木蔵之介様~。 鐘がなりますきんこんかん♪ ジュラシックパークやん! インデペンデンスデイやん! 電車パクーはファーストゴジラオマージュとしては誰もが喜ぶやつだよねー。 大人の男はタバコを吸うという描写から逃げないのいいね。朝ドラとは違う。 幼い子が出てきちゃうのははずるい。 浜辺美波は、シン・仮面ライダーでも成り行きで一緒に住むことになってしまった魅力的な女の子役だった���ど、 まさかゴジラでも同じような役柄になるとは…。彼女の何がおじさん達にそうさせてしまうのだろうか。 にしても「できないよ!」からの「乗せて下さい!」は、あまりに碇シンジ君。 というか逆に、神木隆之介君は既にエヴァで本物の碇シンジ君になっていたか…。
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推しが好きだと叫びたい[Vol.007]
お久しぶりです皆さん。狂気の記事が帰ってきました(約7ヶ月ぶり7回目)。単行本17巻18巻は勿論読まれましたね?そうでなければこんな記事は開かないはずだ。そうだな??改めて今ループの活躍目覚ましく表紙にも連続起用される推し…クリード=デッカード(少尉)について語り散らしていきたいと 思うわけです。これまでの歩みはVol.001〜006をご覧ください。今までも頭おかしくなっちゃうくらい語っていますけれど、今ループの活躍は本当に…大丈夫か?となる。大きく戦争編と宇宙編に分けて話しますが長尺記事になるので連休で暇を持て余している方推奨です。
【戦争編】
ブロージャ紛争における情報量があまりにも多くて毎回毎回フォロワーさんに安否確認をされていたような気がします。それはそう。
▷No.145 IN THE WAR
ボイド=ボルクスの加入で大熱狂の中はじまる否定者戦争編。改めて振り返ると鬼の様なテンポです。今ループ初登場のホウキアタマ&傷跡一本&実は公式初登場の喫煙描写&あまりにも胸板が厚いまだ不減じゃないクリードという情報の洪水に死にかけました。ビリーとクリードの煙草の吸い方はやっぱり意図して描き分けられていると感じる。噛み癖って精神的な不安とかが影響してるって聞きますけれど実際どうなんですかね。前ループでも腕組みが多かったのでそういう警戒心の強さとか神経質さがね わかってこう ふふ
▷No.147 RUN−IN
テラーヒロイン回。この悲劇に無慈悲な一撃を食らわせるのは隊長…え!?隊長!!?ここで前ループ9巻プロフィールの“部下へのスパルタ教育”が脳裏を過る。それはそうと口元だけでも顔がいい。非道に見える判断と『情でキレた相手程読みやすい敵はいない』『戦争を終わらせるって事ぁこういう事だ』『早く帰りたきゃ心を悪魔に売れ』という台詞の畳み掛け、表情の険しさ。戦争は善悪じゃない…そういう……覚悟が……必要なんだよなァ…………どうして彼は軍人という職業を選んだのでしょうか。いつか話してくれる日が来ますか。ちなみに「不明瞭な報告はやめろ 死にてえのか」がめちゃくちゃにすきです。ずっと言ってますが言葉選びが全体的に好き。
▷No.148 三番目の犬
こちらの回は情報量的に本誌感想読んでもらっても良いかもしれない。Tumblr版以外だとprivatter版(https://privatter.net/p/9820173)もあります。クリード隊の皆さんがジブリのモブっぽくて好きですね…早くプロフィールを知りたい。ミリタリーバイクで飛び出してくる隊長の刺激が強すぎて本誌当時頭がどうにかなりそうでした。思考がワンテンポ早いという公式の出雲��子所見で涙する。優秀なんだなぁ…ハァ……しかしどの台詞をとっても部下の事…デッカード少尉という立場の開示…敬語が使える…攻めてるの髪型だけでは!?上司にしたい否定者ランキング第一位は間違い無いだろう。学歴もありそうだし免許も資格もそこそこ持ってるんだろうな…収入も安定してるんだろ……しかも顔がいい…完璧かよ…?え??UNDER最凶とまで言われたクリード=デッカード……どんな気持ちで核のボタン押してたんですか。何を感じて男子高校生殴ってたんですか。しかしまぁアレはあれで活き活きしてた気がしなくもない。そういうとこも好き………「命は減ったら戻らない」ことを知っている男が闇競売が行われている豪華客船上でマフィアをドンジャカ撃ち殺すシーンがもうすぐアニメで見られるってマジですか???興奮してきたな………
▷No.149 You see me now?
ショーン・ダッツメイン回。主な内容についてはこちらも本誌感想を参照のこと。多分書いてたと思います。Tumblrのアーカイブ、PC版じゃないと見られないからちょっと不便なんですよね。ナメてかかった10代に反撃されて負けるノルマでもあるのかこの人はまったく…そういうところも好きです……でもここで見せる怒りの感情は最もなんだよなあ。盾の中に何人か手練れがいる、というシーン、その手練れをまとめて相手にしてるアンタは何なんだ??舌打ちしながら手榴弾も『減らない』って気付くクリード隊長ね…もうね……困るよ…弾幕張りっぱなしで投げてきてるの意味がわからない���らね………そしてこの回以降上着が行方不明になります。笑う。
▷No.150 No more war!
出雲風子の功夫にも耐えうる身体!最高です。流石にイチコさんに処置してもらったぽいけれど。ホントに上着どこいったんですか?敵味方両陣営の絨毯爆撃に憤怒し、誰より『減らすための戦争』を望んでいた男。信じてついてきてくれた部下たちを思う言葉。何から何までもう…十三人一首の『戦友の悲願』『戦の理を殺めても』という謎の多かった一節を紐解いていく鍵となる彼自身の人間性が見えてきますね。そして部下を助けてくれた恩を返すと言ってくれる隊長…風子との会話もね……こんなん…ね……「風子からのプレゼント」である不殺のゴム弾。抜けない刀で木を圧し折る侍とか拳だけでどうにかしてるっぽい自分ぐらいデカい男とか更にデカい鎧武者とかに囲まれてんの改めてどうかしてるんですけれどきっちり風子の背中を押してくれるの最高なんだよな……あと今後も度々言うかもしれませんがカタカナ表記の「フウコ」呼びが好きです。単行本だとここにビフォアフが挟まります。横傷の原因は多分ビリーなんですがコレは18巻に入る内容ですね。ちなみに17巻最終の次の回では金斗雲に当然のように乗れることがわかる。
さて皆さんそろそろ18巻の準備をしてね。なんと人物紹介にいるんですよクリード=デッカード少尉が!!!
▷No.152 Gun Fight
UNDERクラスタが突然死ぬ回。焼け野原だよ。ディスクも奪われ半ば自棄を起こして戦いを挑むクリードと受けて立つビリー、最初のコピーが不減ってことは解除される条件も含めて何かしらやり取りがあったはずなのでエピソードオブブロージャは一刻も早くスピンオフしてくれ。頼みました。敵だった俺に声かけちまう甘ちゃんのビリー、という台詞めちゃくちゃ好きです。ここでしれっと横傷の追加と髪型変更が行われている理由はわからないままですが瓦礫の中でもスーツというか軍服を着る選択をしているのは何故なんだろう。これはもう前ループからずっと気になってるところですけれどね。会議っぽいシーンは着る主義なんですか?世界の終わりにも着てたね……基地では着る主義…??あとはファンを勧誘している。やっぱり中国語が堪能なんですか?何故ですか??生物としてのスペックが高すぎるのでは???
▷No.153 Fair play
「指揮官がなにベソかいてんだ!!」
「士気が減る!!引っこめろ!!」
全 部 大 好 き
いやもう…読者待望の叱ってくれる大人……こんなん……泣くな!じゃないのがなんか可愛い。引っこめろってのも可愛い。この回、戦争編の大団円なんですがディスクも吹っ飛んじまったって大口開けて笑うクリードが見られるんですよね……なんかもう色々おかしくなっちゃ��て笑い出す軍人トリオ大好きです………前ループでは見られなかった笑顔なんだ…………軍人が入るんだからキツイの回せって言ってくれる頼り甲斐。でも宇宙って聞いたら流石に驚くのもすき。本当に大好き………ありがとう否定者戦争編……
【宇宙編】
あらゆる面で有能であることが証明されました。この軍人 スケベなだけじゃなくエリートすぎる…推しが推されている世界線で生きていけることに感謝しながら宇宙編、行くぜ!!!
▷No.154 Select
UNION制服の着こなしが高校球児。2m超えしかできないアイコンタクトありがとうございます。突然やってくる推しのモテ期。宇宙に選抜されることが確定している頁で既に死を覚悟したのにもう新装備供給されてて気が狂いそうでした。扉絵だけじゃなかったんかい!!でも扉絵の方見ると既に『5』の数字が。この次点でⅤ席はほぼ確定事項だったんですかね。
▷No.155 お困りのようだな
ジナショ大暴れ!の回です。戦闘員として率先して危険に立ち向かう覚悟…ヒイ……という空気を塗り替えてくれてありがとうジナショ…オマケ頁で怒り狂うニコを取り押さえてるの解釈一致すぎて大喜びしました。
▷No.156 Right Stuff
「処分は?リーダー」という第一声が最高すぎて頭を抱えました。組織に属するものとしてのスタンスが1番ある…立場をわきまえた上で判断を促す言葉をあえて投げかけ『それだけのことをしてしまったんだ』という事実を二人にも暗に解からせるこの……わかりますか!?それはそうと一発一億の武器支給されて「ヒュー!」となる潜在的な茶目っ気も大好きです……ニコがシリアスな考察モノローグしているコマで仕事をやり遂げたショーン=ダッツの頭を撫でてるの隙がない大人!!会話を!!!聞かせてよ!!!
▷No.157 Save You
フィルくんの謎が紐解かれていく回。会話している間通路で見張りしてるのが本当に隙がなくて……役割を徹底して果たせる大人…殿を引き受けながらもシャッターからジーナを遠ざける判断をサッとしてるのもさ…そういうところですよ隊長!!!!
▷No.158 Don't think.Feel
通路に最後まで残って敵の様子を観察している…冷静に分析して……ディスカッションに活かす…え?かっこよすぎませんか??宇宙に来た意味がありすぎる……流石満場一致選抜男………フィルくんの活躍については本誌感想で触れてるのでよければ探して読んでみてね!!次の回で前ループの記憶を手に入れるってことは最後に共闘したのがクリードってこともわかるんだなあって思うと言いようのないエモさが駆け抜けます……
▷No.160 Welcome to Earth
こちらも主な内容については本誌感想でどうぞ!宇宙船操縦技術をしれっと身につけてんの改めてどうかしてるな……と思いました。ギリギリの状況下で笑うタイプの男…たまんねえよ……地球に帰ってきて一番最初にすんのが喫煙なの戸塚先生の性癖に忠実な描写すぎるから頭おかしくなりそうでした。最高だわ。宇宙で「帰ったら何する」「…煙草だな」「わかる…」って話してたんか!?身体は大事にしてほしいがそれはそうとバカスカ吸ってくれ!!
【〜最新話まで】
宇宙編のあとはメイちゃん遭遇の食事シーンのあとから暫く大きな出番なく過ごしているんですけれど、学園潜入中の留守番組として何してたんだろうとか、15年スキップで誰も連れて行かなかったけれど家族とかはいるんだろうかとか、15年ぶりの部下との再会はどうだったんだろうとか、あまりにも幕間に幻覚の余地がありすぎて楽しいんですがオイオイオイオイオイおなんだその新装備品は!!!!!!!!!!(正気をセーヌ川に投げ捨てる)
…よし。とりあえず明日の本誌前に頭の中は整理できたかな……ここまで���んでいただいてありがとうございます。これからも元気に推し活していきますので各位よろしくね!!!!そして今月10月20日はクリード=デッカードのお誕生日!!!!!みんなでお祝いしようッ��ッッ
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一択から二択、二択から三択
「ボク達の生存逃走」のイベスト全部見た。すごく良かった。めちゃくちゃグッときた。
まふゆちゃんの置かれている状況がどんどん悪くなっていく中、瑞希ちゃんが満を持して「明確に」まふゆちゃんに働きかける、言葉を届ける、想いを伝える、というストーリーだったけど、物凄く丁寧な展開で、かつ瑞希ちゃんにとっても大切な意味があるストーリーだったな、と思った。
あと、��ふゆちゃんのお母さんの方針というか、手法が見えたのも凄くよかった。なんというか、やっぱり愛なんだなと思った。まふゆちゃんに対する愛ではある。ただ、その愛の手法が物凄く画一的で弾力のないものなんだな、と。幅もなく、狭く、そして潰しの効かない愛。もう少し突っ込んで言うと、赤ん坊や幼児に対する愛の段階で止まっている、硬直した愛だな、と。
赤ん坊や幼児は、社会の仕組みを知らないし、危険も安全もわからない。だから、ある程度成長した子どもなら触らないであろう、沸いたお湯の入ったヤカンに触れてしまったりする。周りを確認もせず、突然道路に駆け出してしまったりする。ヤカンが熱いこと、道路には車が走っていること、そういう危険があることをそもそも知らない。知識として持っていない。だから、大人が見たら無謀なことをする。命知らずなことをする。
だから、大人は赤ん坊や幼児の意志を無視して手を掴んでヤカンに触れないように、道路に飛び出さないように止める。どんなに触りたいと喚いても、走っていきたいと泣いても、大人は絶対に赤ん坊や幼児の手を離さない。自由を許さない。なぜなら、そこで自由を許せば、酷い火傷を負ったり、最悪の場合は命すら失うから。だから、自由を制限する。赤ん坊や幼児が怪我をしたり命を失うことがないように、と。それは愛だろう。その子の身体や命を守ろうという愛。
まふゆちゃんのお母さんは、そこで止まってるんだなと思った。まふゆちゃんを赤ん坊と同じように扱う。まふゆちゃんに選ばせることは危険だと考えているんだろうな、と思う。まふゆちゃんにそういう選択ができるということを信じていないというか、考えてもいない。まふゆちゃんはいつまでも子どもで、赤ん坊で、判断力のない無力な存在だとどこかで思っているんだろうな、と。
だから、選択肢を潰す。本来ならば無限にある可能性をひとつに絞ろうとしている。まふゆちゃんのお母さんが考える「確実に幸せになれる方法」の選択肢以外を全て排除しようとする。選ばせないようにする。そうすれば、まふゆちゃんが苦しむような未来への道を全て潰せると思ってるんだろうな、みたいな。
そして、今まではそれでよかった。少なくとも、小学生くらいまではそれでも良かったんだろうなと思う。私が小学生の時なんて、粘土齧ったり、ガラスで出来たグラスを噛み割ったり、危険な高い場所によじ登って転落したりしてるから、ある程度自由を奪うことは必要だっただろうなと思う。幸いにして私は怪我したり命を失ったりせずにここまで来たけども、運が悪ければ後遺症が残るような怪我や病気をしたり、最悪死んでただろうし( ᐛ ) だから、ある時期まで自由を制限する、奪うことは子どもを守ることにも繋がってた。
ただ、まふゆちゃんはもう高校生なわけで。そして、まふゆちゃんはとても聡く賢い子なわけで。もうそんな「とんでもなくリスクの高いこと」は選ばないくらいの知識や判断力を身につけていると思う。多少痛い思いするような選択肢を選んでしまうことはまだまだあるだろうけど、少なくとも取り返しのつかないデンジャラスな選択肢を選ぶような可能性はすごく低いと思う。粘土齧ったり、グラス噛み割ったり、高い��ころに登って転落するような事はしないと思う。
それなのに、まふゆちゃんのお母さんはまだ粘土を齧るような幼い子どもを相手にするように接している。自由の制限が赤ん坊や幼児の時のレベルと変わらず、物凄く少ない選択肢にしている。他にも無数にある幸せへ続く道を潰していって、自分がこれと思う選択肢だけを選ぶようにしている。選択肢を次から次へと潰している。それは愛だけど、とても幼い愛だな、と。
子どもがどうして向こう見ずに危険なことをするのかと言えば、知識がないのももちろんだけど、もうひとつの理由として、周りが見えてないからなんだよね。道路の向こう側にある綺麗な花しか見えてない。その道路に走っている車が見えていない。そういう狭い視野で世界を捉えているから、道路に飛び出してしまう。少し離れたところを猛スピードで走ってきている車が見えてないから飛び出す。
まふゆちゃんのお母さんの考える幸せも、それと同じじゃないかな、と思う。たった一つの幸せへの道しか見えてない。他にもたくさん幸せへ至る道があるのに、たったひとつしか見えていない。それ以外が目に入っていない。それならば、子どもが道路の向こう側にある綺麗な花に向かって走っていくのと同じじゃないかな、と思う。とても幼い行動だな、と。
何より、道路の向こう側にある花を走って見に行くというのは、自分の「見たい」という欲求が最優先になった行動なわけで。そこに他者が存在しない欲求でもあるわけで。尖った言い方をすれば、利己的な行為だとも言えるかなと思う。そう考えるならば、まふゆちゃんのお母さんが選択肢を潰して一つだけにする行為も、やはり同じく利己的だとも言えるだろうなと思う。「私の考える幸せ」には、他者が存在しないんだから。まふゆちゃんがそれを幸せと捉えるかという視点がないのだから、まふゆちゃんの存在がそこにほとんど意識されていないのだから、幼くて利己的な幸せ観とも言えるんじゃないかなぁ、と。
それに対して、ニーゴの子達やバーチャルシンガーたちは、ずっとずっと「まふゆちゃんの存在」を念頭に置いて考えたり行動したりしてきている。それぞれがそれぞれに、「私はこういう方法がいいと思う」と提示しながらも、「それを選ぶのはまふゆちゃんである」というところを常に意識している。あまりにも自分の意志を無視され続けてきたせいで、自分が選択肢を掴み取る事を悪い事だと思っているかのように動けないまふゆちゃんに対して「自分から動け」と檄を飛ばすことはあっても、この選択肢を選べと強要してはいない。それは、赤ん坊や幼児に向けられた愛よりももっと段階が上の愛だなぁ、と思った。
その人が「自分の手で幸せを掴むことが出来る」と信じる愛というか。その力を貴方は持っていると信じることが出来るというのは、相手を「無力な子ども」ではなく、「無限の可能性を持った子どもであり、人間である」と認めることでもあるのかなと思う。それはかなり発展した、進化した愛だなぁ、と。
ニーゴの子たちやバーチャルシンガー達は、まふゆちゃんの選択肢を「増やそう」としているんだなと思った。お母さんに潰されて見えなくされていた選択肢を、これだって選んでいい選択肢だよと掘り起こして見せている。んで、絵名ちゃんの家にまふゆちゃんが行ったイベストや、前回の奏ちゃんとまふゆちゃんのお母さんが対面したイベストで、明確に掘り起こされた選択肢が「立ち向かう」という選択肢だったんだな、と思う。お母さんが示した、たったひとつだけに��た選択肢を「選ばない」という選択肢。そして、その選ばない方法として「反発する」という方法を提示した。
そして、今回のイベストでは、「選ばない」という選択肢の中にもうひとつの選択肢を掘り起こして見せた。選ばずに反発する、という選択肢だけ��ゃなくて、選ばずに逃げる、という選択肢を示した。それを示す役割を担ったのが瑞希ちゃんというのがめちゃくちゃに熱いな、と思った。
今までのイベストでは、奏ちゃんや絵名ちゃんが進んでいく様が示されていた。二人がそれぞれの抱えた問題に対して、文字通り向き合っていく姿が描かれていた。
もちろん、その描き方は二人とも違っていて、奏ちゃんはひとつひとつに向き合いながら、自分なりに納得出来る形に取り込んでいく形かなと思う。お父さんを壊した事実を見つめて、その事実に対して自分がどうしたいのか、何を願うのかをひとつひとつ考えて、自分の中に取り入れていくというか。事実を受け入れていくという感じかなと思う。そういう立ち向かい方というか。
絵名ちゃんは、真っ向から向き合って身体全部心全部でぶつかりに行って、そこで見つけた自分の問題点をひとつひとつ見つめて改善していく、みたいな感じかなと思う。ようは、事実と向き合い戦うという手法。戦うために力をつけようとするみたいな、かなりアグレッシブな方法で立ち向かっている。けちょんけちょんにされながら、時にKOされながら、それでも震える足で立ち上がってまたぶつかりに行く形。
形はこうして違えど、二人がしている事は明確に「向き合うこと」で。向き合い、片や受け入れていき、片や戦っていくという手段の違い。向かう先は似ているけど、そこに至る過程が違うのが奏ちゃんと絵名ちゃんなのかな、と思う。
そこに来て、瑞希ちゃんは今までのイベストではひたすらに逃げ続けている描写がされていた。向き合うことをせず、目を逸らしたり耳を塞いだりしながら、苦しい現実から距離を置き続けている。立ち向かう描写はなく、自分が逃げているという事実ばかり浮き彫りになっていくというだいぶつらい描写が目立つなぁと思ってた。
それが、ここで生きてきたなと思う。
瑞希ちゃんは逃げることに関してはほかのメンバーの誰よりも上手だと思う。巧みに煙に巻いて姿をくらませて、苦痛から逃げていく。恐らく、ある意味では他の誰よりも「衝突」の経験がないんじゃないかなと思う。衝突を避けて逃げているのだから当然と言えば当然なんだけども。
じゃあ、衝突を経験してないから苦しんでいないかと言えば、そうではなくて。逃げているというその事実にひたすらに苦しめられている。何も解決していない、臭いものに蓋をしているだけ、見たくないものに目をつぶっているだけ、聞きたくないことに耳を塞いでいるだけということを、瑞希ちゃんは物凄く理解している。蓋をしても、目を閉じても、耳を塞いでも、そこにそれはずっとあって消えないのだと痛いくらいに経験している。何も変わっていないし進んでいないと、苦しいくらいに理解している。それが瑞希ちゃんの聡さであり、悲劇でもあるなと思う。
その場しのぎでしかないわかってしまうから、苦しいんだろうな、と。その場しのぎだということに気が付かなければ、瑞希ちゃんはきっと苦しむことは無い。これが解決策だと心から思えていれば、蓋をして目を閉じて耳を塞げば���なかったことになる」と心から思えていれば、きっと苦しいなんて思わない。自分が知覚しない場所にあるものは「存在しないものとしていい」と本気で思えていれば、瑞希ちゃんは苦痛なんて感じずに楽しく生きていられるのだろうと思う。
でも、瑞希ちゃんは聡いから、そうは思えない。自分が知覚しないようにしているだけで、問題はずっとそこにあるということに気づいてしまう。察してしまう。知っている。だからこそ、自分はその場しのぎで楽な方に流れているだけだ、問題から逃げているだけだということに物凄く自覚的で、だからこそ苦しむ。周りに立ち向かって進んでいく人がいるから、余計に逃げ回っている自分が情けなく見えて、でも逃げることを辞めることが怖くて出来ず、立ち竦んでいる。それが、瑞希ちゃんの現状なのかなと思う。
たぶん、瑞希ちゃんにとって「逃げる」という選択肢はあまりにも情けなく、みっともなく、どうしたって否定的にしか見れない選択肢だったと思う。力強く立ち向かっていく絵名ちゃん、覚悟を携えて進んでいく奏ちゃんの姿は瑞希ちゃんにあまりにも眩しくて、だからこそ自分の「逃げる」という行為が後ろめたく薄暗いものに見えてるんじゃないかな、と。
だからこそ、今の今までまふゆちゃんにも「逃げていい」と言えなかった。逃げ続けた自分がたどり着いたのが「進みたいのに足を踏み出せずに立ち竦んでいる」という現状と苦しみだからこそ、それをまふゆちゃんには渡せなかった。自分が苦しんでいる道にまふゆちゃんを連れていく訳には行かなかっただろうし。
それに対して、ルカさんが別の視点を与えてくれた。確かに瑞希ちゃんは逃げているし立ち向かっていない。それは臆病なことであるともしっかり明言された。でも、ルカさんはそれを否定するでもなく「見方を変えてみたら?」と提案した。逃げて逃げて逃げ続けたのが瑞希ちゃんだけれど、それで手に入れたものは何?と。逃げることで失ってきたものにばかり目を向けていた瑞希ちゃんに対して、逃げることで得たものに視線を向けさせた。
そうして瑞希ちゃんが気づいたのは、逃げたことで得たものが確かにある、という事実で。それが「家」という逃げ場であり、その「家」に隠れて生き延びたことで出会ったニーゴの皆との関係だ、と気づいた。逃げずにいれば、きっと瑞希ちゃんは潰れていたし、そうなっていれば家が安全基地だと気づくことも出来ず、ひいてはニーゴの皆とも出会うことは無かったと気づいた。確かに逃げまくって来たけれど、逃げたからこそ今までどうにか生き延びることが出来て、そして大切なものに出会えた。それに気がつけた。
否定的にしか見れなかった「逃げる」という選択肢に対して、肯定的な面が見えた。だからこそ、瑞希ちゃんはまふゆちゃんに「逃げろ」と言うことができるようになったんだろうな、と思う。選ばずに逃げてしまえ。苦しいなら逃げていい。そうして得たものがある、得られるものがあると、心から思えたからこそ口にできた。
今の弱り果てたまふゆちゃんには、立ち向かう選択肢はかなりハードルが高くて、まふゆちゃんは怖くて選べない。でも、それを選ばないなら、まふゆちゃんの前にはお母さんが用意した選択肢しかない。どちらに行っても辛かったり怖かったりする選択肢しかない中に、瑞希ちゃんが見せてくれたもうひとつの選択肢、逃げる、が追加された。二つだった選択肢が三つになった。それって本当に凄いことだな、と思う。
そして、瑞希ちゃんは逃げる達人だからこそ、警告もくれた。逃げ続けることはオススメしないよ、と。それを選んだ自分は今別の苦しみに囚われているから、と。だから、逃げる選択肢ばかり選ぶのはきっと辛いよとも伝えた。それでも、一時、今にも死んでしまいそうなくらい苦しい時に逃げるのは、ひとつの手段だよ、と。逃げの達人だからこそのアドバイスを贈れた。しかも、逃げる実践付きで。
これは、選択肢の少ないまふゆちゃんにもうひとつの選択肢を用意したことと、もうひとつ大切な意味があるなと思う。それは、瑞希ちゃんが今までの自分を「肯定できた」ことだと思う。つまり、瑞希ちゃんはまふゆちゃんの救いの道をひとつ増やすと同時に、自分の救いの道もひとつ見つけたんだな、と。
今まで瑞希ちゃんは自分を肯定的に見れていなかった。少なくとも、「逃げる自分」に対しては否定的に見ていたし、後ろめたさしか感じていなかった。そこに来て、瑞希ちゃんは初めて「逃げた自分」を肯定することが出来たんだな、と思う。情けなくてみっともなくてどう��ようも無いと思ってたけど、無意味で無駄だと思っていたけど、そうじゃない部分もあるということに気づけた。
逃げたことで生き延びることが出来たという成果に気づけたし、その経験がまふゆちゃんの助けになる可能性を見出した。そして、まふゆちゃんがそれを選ぶなら、自分は助けられるという一種の自負も生まれた。それは、立ち竦むことしか出来なかった瑞希ちゃんの新たな道だと思う。瑞希ちゃんの側にも選択肢が生まれてきた。それがすごいな、と思った。
そして、何よりもグッときたのが、瑞希ちゃんが「責任」という言葉を使ったこと。絵名ちゃんにガチンコで向き合ってもらった時ですら「誰かがボクの事全部話してくれたらいいのに」と、自分がやらなきゃいけないことを他者に任せて逃げようとしていた瑞希ちゃんが、ここに来て初めて「まふゆが逃げることを選んだなら、それはボクの責任だ」と明言した。誰のせいにもせず、自分のところに言葉の責任を持ってきた。それってめちゃくちゃ凄いことだと思う。ここに来て初めて、瑞希ちゃんは「逃げ」を選択しなかった。責任という言葉で自分の逃げ道を塞いだ。激アツ過ぎる。
なんてーか、まふゆちゃんを救おうとすることで、それぞれが救われていくというか、自分の問題と向き合って変わろうとしていってるな、みたいな。苦しんでいるまふゆちゃんが拙くも必死に足掻くことで、周りも頑張ろうと思えているように見えて凄く心が震えた。まふゆちゃんの頑張りが、人一倍臆病で立ち竦んでいた瑞希ちゃんに、「責任」という言葉を使えるほどの勇気を与えたんだな、みたいに思って目頭熱くなっちゃった( ᐛ )
一方的に救って、救われての関係じゃない。一方的に助けて、それに助けられるだけの関係じゃない。勇者が無力な人を救うのでなく、か弱い人達が互いに影響し合って影響され合いながら、少しずつ成長していく関係が見えたような気がして、本当に素敵だった。そしてそこには強要はなくて。何を選ぶかはそれぞれに委ねられていて、誰かが何かを選んだなら、他の人はそれを支えようと皆が必死になって考える。誰かの選択を受け入れていく。
それは凄く、こう、多面的でしなやかな弾力があって、強く温かい関係性だなと思った。それを強く感じたイベストだったなと思った。めっちゃ好きです、このイベスト☺️
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"Kill them with kindness" Wrong. CURSE OF MINATOMO NO YORITOMO
アイウエオカキクケコガギグゲゴサシスセソザジズゼゾタチツテトダ ヂ ヅ デ ドナニヌネノハヒフヘホバ ビ ブ ベ ボパ ピ プ ペ ポマミムメモヤユヨrラリルレロワヰヱヲあいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわゐゑを日一国会人年大十二本中長出三同時政事自行社見月分議後前民生連五発間対上部東者党地合市業内相方四定今回新場金員九入選立開手米力学問高代明実円関決子動京全目表戦経通外最言氏現理調体化田当八六約主題下首意法不来作性的要用制治度務強気小七成期公持野協取都和統以機平総加山思家話世受区領多県続進正安設保改数記院女初北午指権心界支第産結百派点教報済書府活原先共得解名交資予川向際査勝面委告軍文反元重近千考判認画海参売利組知案道信策集在件団別物側任引使求所次水半品昨論計死官増係感特情投示変打男基私各始島直両朝革価式確村提運終挙果西勢減台広容必応演電歳住争談能無再位置企���流格有疑口過局少放税検藤町常校料沢裁状工建語球営空職証土与急止送援供可役構木割聞身費付施切由説転食比難防補車優夫研収断井何南石足違消境神番規術護展態導鮮備宅害配副算視条幹独警宮究育席輸訪楽起万着乗店述残想線率病農州武声質念待試族象銀域助労例衛然早張映限親額監環験追審商葉義伝働形景落欧担好退準賞訴辺造英被株頭技低毎医復仕去姿味負閣韓渡失移差衆個門写評課末守若脳極種美岡影命含福蔵量望松非撃佐核観察整段横融型白深字答夜製票況音申様財港識注呼渉達良響阪帰針専推谷古候史天階程満敗管値歌買突兵接請器士光討路悪科攻崎督授催細効図週積丸他及湾録処省旧室憲太橋歩離岸客風紙激否周師摘材登系批郎母易健黒火戸速存花春飛殺央券赤号単盟座青破編捜竹除完降超責並療従右修捕隊危採織森競拡故館振給屋介読弁根色友苦就迎走販園具左異歴辞将秋因献厳馬愛幅休維富浜父遺彼般未塁貿講邦舞林装諸夏素亡劇河遣航抗冷模雄適婦鉄寄益込顔緊類児余禁印逆王返標換久短油妻暴輪占宣背昭廃植熱宿薬伊江清習険頼僚覚吉盛船倍均億途圧芸許皇臨踏駅署抜壊債便伸留罪停興爆陸玉源儀波創障継筋狙帯延羽努固闘精則葬乱避普散司康測豊洋静善逮婚厚喜齢囲卒迫略承浮惑崩順紀聴脱旅絶級幸岩練押軽倒了庁博城患締等救執層版老令角絡損房募曲撤裏払削密庭徒措仏績築貨志混載昇池陣我勤為血遅抑幕居染温雑招奈季困星傷永択秀著徴誌��弾償刊像功拠香欠更秘拒刑坂刻底賛塚致抱繰服犯尾描布恐寺鈴盤息宇項喪伴遠養懸戻街巨震願絵希越契掲躍棄欲痛触邸依籍汚縮還枚属笑互複慮郵束仲栄札枠似夕恵板列露沖探逃借緩節需骨射傾届曜遊迷夢巻購揮君燃充雨閉緒跡包駐貢鹿弱却端賃折紹獲郡併草徹飲貴埼衝焦奪雇災浦暮替析預焼簡譲称肉納樹挑章臓律誘紛貸至宗促慎控贈智握照宙酒俊銭薄堂渋群銃悲秒操携奥診詰託晴撮誕侵括掛謝双孝刺到駆寝透津壁稲仮暗裂敏鳥純是飯排裕堅訳盗芝綱吸典賀扱顧弘看訟戒祉誉歓勉奏勧騒翌陽閥甲快縄片郷敬揺免既薦隣悩華泉御範隠冬徳皮哲漁杉里釈己荒貯硬妥威豪熊歯滞微隆埋症暫忠倉昼茶彦肝柱喚沿妙唱祭袋阿索誠忘襲雪筆吹訓懇浴俳童宝柄驚麻封胸娘砂李塩浩誤剤瀬趣陥斎貫仙慰賢序弟旬腕兼聖旨即洗柳舎偽較覇兆床畑慣詳毛緑尊抵脅祝礼窓柔茂犠旗距雅飾網竜詩昔繁殿濃翼牛茨潟敵魅嫌魚斉液貧敷擁衣肩圏零酸兄罰怒滅泳礎腐祖幼脚菱荷潮梅泊尽杯僕桜滑孤黄煕炎賠句寿鋼頑甘臣鎖彩摩浅励掃雲掘縦輝蓄軸巡疲稼瞬捨皆砲軟噴沈誇祥牲秩帝宏唆鳴阻泰賄撲凍堀腹菊絞乳煙縁唯膨矢耐恋塾漏紅慶猛芳懲郊剣腰炭踊幌彰棋丁冊恒眠揚冒之勇曽械倫陳憶怖犬菜耳潜珍
“kill them with kindness” Wrong. CURSE OF RA 𓀀 𓀁 𓀂 𓀃 𓀄 𓀅 𓀆 𓀇 𓀈 𓀉 𓀊 𓀋 𓀌 𓀍 𓀎 𓀏 𓀐 𓀑 𓀒 𓀓 𓀔 𓀕 𓀖 𓀗 𓀘 𓀙 𓀚 𓀛 𓀜 𓀝 𓀞 𓀟 𓀠 𓀡 𓀢 𓀣 𓀤 𓀥 𓀦 𓀧 𓀨 𓀩 𓀪 𓀫 𓀬 𓀭 𓀮 𓀯 𓀰 𓀱 𓀲 𓀳 𓀴 𓀵 𓀶 𓀷 𓀸 𓀹 𓀺 𓀻 𓀼 𓀽 𓀾 𓀿 𓁀 𓁁 𓁂 𓁃 𓁄 𓁅 𓁆 𓁇 𓁈 𓁉 𓁊 𓁋 𓁌 𓁍 𓁎 𓁏 𓁐 𓁑 𓀄 𓀅 𓀆
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2024/12/10 8:00:19現在のニュース
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この後メチャクチャドレスを買った(魔女)
※CoCシナリオ「かいぶつたちとマホラカルト」のネタバレを含みます。
甲高い女の声、不協和音のようなチャイム、わざとらしいノイズ、キイキイと五月蠅く繰り返すだけの一定のメロディ。数年前に買ったきり置いていたステレオを通したその曲は、ただ鼓膜を振動させるばかりで何の酩酊も齎さない。――これも外れ。 予想通り。けれどそうであることに落胆はしつつ停止ボタンを押し、ディスプレイに向き直る。作業の暇潰しに流しておくBGMにしては騒がしすぎた。
『電子ドラッグ』。あの一件からその単語に興味を持って、界隈でそう呼ばれる音声は幾つか入手してみたものの、どれもこれも単調なフレーズを繰り返すだけの素人音楽のように聞こえた。一度だけ聞いたあの音楽と同じように、耳から流れ込むような酩酊感を与えてくれるものは見つからない。聴くだけで万人の脳に直接作用するような技術の実在を確かめるため、そしてあの人智を超越したかのような音の快楽を再び得るためには、やはり本家本元の開発元からデータを入手する必要があるだろう。 マホロバ株式会社、そしてマホロバPSI研究所。不定期的に移転を繰り返しているという怪しげな研究所の所在自体は調べがついたが、内部データへのアクセス方法については思案しているところだ。流石に所内におけるデータ通信は��て独自ネットワークで管理しているらしく、片手間の調査だけでは侵入経路を見つけることはできなかった。 場合によっては現地に赴くことも吝かではないけれど――、施設や研究員への接触を図るにしても、生身で動くのは何かとリスクが伴う。それなりに顔と名前が世間に知られた身であれば尚更。『×大教授に不正アクセス禁止法違反の容疑』、もしくは『謎の失踪』――、あることないこと書かれたゴシップ雑誌の見出しを想像して思わず口角が上がる。……それはそれで刺激的で少しだけ惹かれるが、どうせ掛け金の大きい勝負をするならばもう少し色々な可能性が欲しい。
ならばどうしようか、と一息ついて視線を巡らせる。 夜のオフィス街から点々と電気が消えていく。人気のない国道沿いをトラックが横切り、静まり返る住宅地を若者が自転車で通り過ぎる。客もまばらなファーストフード店でポテトをつまむ学生がふと視線を上げるとき、寂れた歓楽街でホステスが豪快に嘔吐している。入り組んだ裏路地で、交差点で、商店街で、エトセトラ、エトセトラ――。 壁一面に並べたディスプレイは、研究所が所在する地方都市各地の監視カメラの映像を映し出している。本業の合間の趣味、リアルタイムで観察できるのは多くても一日一時間程度だが、昼間の分のログデータは随時収集して見返していた。このような研究所周辺地域の監視、それと関連機関へのハッキングを通した情報収集、それらをしばらく続けて確信を得たことが一点。 マホロバについて探っている人間が自分だけではないこと。それも、少なくとも二組いる。
まず一人目。自分と同様に、けれど恐らくそのもう少し前から研究所について情報収集を行っている何者か。関連機関のネットワークの一部に、自分以外の人間が情報入手の目的で侵入した痕跡があった。また市内に仕掛けられた目��しい監視カメラの位置を洗った際、他企業や警察が設置したにしては不自然な位置に取り付けられたカメラを幾つか発見した。データを解析するに、これらは前述の侵入と同時期に仕込まれたようで、都合よくマホロバの研究員達の行動圏内に設置されている。ひとまず有難くタダ乗りさせてもらった。
二人目の方は姿まで既に特定できている。顔は結構男前だが、いかにも堅気ではなさそうな雰囲気の褐色肌の男――ディスプレイの片端で、今も路地裏で呑気に煙草を咥える姿が映っている――彼はこの一週間程、観光客として市内のホテルに滞在しているようだ。こちらの動きはもっとわかりやすかった。 ふらふらとした一応の観光客然とした散策の合間、時折監視カメラの位置を確認しては記録しているような動作をする。強盗か、誘拐か、あるいは別の狙いがあるのか。人の目につかないルートを探っているようだった。 一組目の総戦力は不明だが、二組目の彼の方は単独犯ではない。手下が多いのか組織の規模が大きいのか、頻繁に誰かと電話をしているし、数日に一度は別の人物と合流して一緒に行動する姿を見かける。
目下思案しているのは、彼ら、恐らく同じマホロバという獲物を狙う者たちに協力を持ちかけるか否か、ということだ。私が今欲しているのは直接的な現地への干渉力、そして武力。彼らの動向を見ていると、恐らく条件は満たしているように思える。 そして何より、同時期に同施設を狙っているという偶然。受け入れられるにしろ突っぱねられるにしろ、これを奇妙な縁と思って、多少は面白い展開を期待してもいいんじゃないか? でもこういうのって、変に期待して駄目だった時が一番白ける―― 「……、ん?」 そこまで考えたところで、ふ、と画面の一点に目が留まる。 先程ファーストフード店にいた男子学生が、今度は駅前の繁華街を通っている。帰路の途中ならそれ自体は自然なことだが、路地を歩く彼はふと『こちら』を見上げた気がしたのだった。長い前髪と眼鏡のレンズに隠れた、どこか感情を読み取りにくい瞳がディスプレイ越しに私を見る。数秒じっと目が合ったような奇妙な間を経て、視線は外れた。 気がした、だけ。写されている側から視ている側のことが覗けるはずもないので、確実に気のせいだ、と判断できる。
市内の監視カメラの映像を確認しているとき、被写体と目が合ったように感じることはこれまでも時折あった。何も後ろ暗い所がなくても交番の前を通るときは緊張を覚える人間が多いのと同じで、監視カメラを見つけると過剰に意識してそこに目をやってしまう、もしくは意図して逸らそうとする人間は多い。 二日前に目が合った老女も、昨日目が合ったサラリーマンも。そして今日の男子高校生も。それと自分が画面を見たタイミングが偶然噛み合ってしまっただけだ。 けれど彼はそういえば先程も、食事中の妙なタイミングで視線をカメラの方向へ上げていた。 「……」 何となく、目を引かれるものがあった。看板の電池の切れた歓楽街の入り口から中央へ、そしてそこからも外れた裏路地へ。メインディスプレイに表示するカメラをその歩調を追うように切り替え、彼の足取りを追う。
学生に注目しはじめてから、すぐに気が付くことがある。褐色肌の男と彼の位置情報が、待ち合わせ場所で落ち合おうとしているかのように近づいている。君もあの男の子飼いの一人? それなら監視カメラの位置を気に掛けるのは不思議ではないけれど――ああでも今更調べるまでもなく、あの学生(仮)はボス(仮)より正確にこの街の死角を把握しているようだった。 歓楽街で目が合ってからというもの、彼の姿は一度も途切れることなくメインディスプレイに映り続けている。
彼が『わざと監視カメラに映る位置を選んで歩いている』のだと確信を持つのにそう時間はかからなかった。
鼓動が少し早まるのを感じる。荒唐無稽な想像に高鳴る心臓を、落胆したくはないという強い理性が未だ強く抑えていた。脳が瞬間的に熱くなるような感覚を得て、同時に妄想の域の推測が頭の中を高速で駆け巡る。 監視カメラの死角へ外れることなく、画面の中央を歩く男子学生。そしてこの数日、男の周辺で見かけた部下らしき複数の人物たち、奇妙なタイミングで監視カメラを『偶然』見た老若男女。 容姿や動作に共通項を見出したわけではない。それはただの勘で、期待だった。 もしかして、男の部下は複数人いるわけではなくて――
もうすぐ褐色男のいる裏路地に辿り着くというところで、唐突に学生の足が止まる。視線が再び『こちら』を向いた。無表情のまま彼の口が開く。 『――』 そしてそのまま、何か発話するように唇が動いた。
「――え、今なんか言った!?��� このカメラ音声入ってないんだよ!
私が思わずディスプレイの方に身を乗り出したときには、彼は既に画面から視線を外して前方へ歩き出していた。 「…………、ふ、」 知らず知らずの内に笑っていた。 「あっははは! どういう仕組み? なんで分かったの?」 いつぶりなのか思い出せないほどに、無性に良い気分だった。 私が夢中になって酔えるものは、あの電子ドラッグだけではない。自分の予測を超えていて、仕組みが理解できないものは、あの音楽だけではない。私がそれを知らなかっただけで、初めて頭を殴られるくらいに刺激的なことはまだこの世界に残っている。長生きはしておくものだと心から思う。 こんなに楽しいことがあるのなら、もっと早く犯罪者になっておくんだった!
表示するカメラを進行方向に切り替える。彼は褐色肌の男と合流したようで、死角に入った誰かと話す男の姿だけが画面に映っていた。この位置の映像は元々一人目が仕掛けたカメラから拝借したものだ、この画面を、彼あるいは彼女もきっと見ていることだろう。 大方この中で一番のルーキーは『俺』なのだろうから、ファーストインプレッションは派手にしておいた方がいい。
『こんばんは 良い夜だね』
近場の電光掲示板をジャックしてメッセージを送信すれば、画面に映る男が派手に煙草を取り落としたのが見えた。
『犯罪でも一緒にどう?』
――意外にも長続きすることになるお遊び犯罪者サークルが結成されたのは、この少し後の話だ。
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【小説】『獣を放つ』4終
幼い頃に離婚したと男の父親は酒を呑む獣だった。酒を呑み、理性を失っては暴れる獣だった。その風貌は獣ら��く毛深い。赤く上気した顔に生える髭は毎日の手入れを怠るずぼらさのせいで、いつもまばらに伸びていたし、手足は濃く太い毛に覆われていた。酒気を帯びた呼気の不快さに隠れた煙草の匂いとすえた体臭を携えて、獣はいつも家に一つしかないエアコンがよく効いた部屋にいた。机の上にはビールの缶が乗っていて、側に広げられた型の古いラップトップパソコンには何やらウェブページが開かれている。黒いテーブルには缶かコップの丸い跡が幾重にもついていた。男の定位置は父親の背中側。食事後の晩酌を邪魔せずに宿題が出来る板の間だった。プリントで問題を解いていると時々、板の目に鉛筆の芯が嵌まって不自然な直線が引かれる。穴が空いてしまうこともあって、上手く書き直せなくなるのが嫌だった。
突如、体内で飽和した熱がぶわりと脳味噌を炙って、真夏の陽炎みたいに風景が揺らいだ。くわんくわんと明滅を繰り返す中、瞬きをする。ドツっと鈍い音が床から伝わってきた。後に続くのは母の金切り声。対抗するような怒号。蛍光灯を遮って立ち塞がる巨体。理性の楔を断ち切ったその姿は獣そのものだった。影から手が伸びてくる。抵抗すればより悪い結果を招くことはわかっていたからそのままじっとその影を見つめていた。宿題が破れてしまわなければいいなと思ったことを覚えている。
口の中に温い液体が競り上がる。呼吸の度に撫ぜられるような体毛の動きが落ち着かない。寒気に似た奇妙な感触が心臓の鼓動に合わせて全身を巡っていった。ふと見ると床に、突いた手の指先が白くなっていた。固い土にシャベルを突き刺すように身体の芯から何かが浸食してくる。荒い息が唇を掠めた。苦しくて叫びたいのになんと叫べばいいのかわからない。志向先の定まらない激しい後悔に涙が溢れた。皮膚を突き破って暴れ放たれる衝動に手近なものを引っ掴み、腕を振り上げる。叩きつけるように振り下ろし、それを投げつけた。飛んでいく先には幼い自分が座っていて、恐ろしさと軽蔑と少しの心配を滲ませた目でこちらを見ている。それを透過したスマートフォンが床で跳ね壁まで転がった。子どもが頭を押さえる。大人になった男の中で死にぞこなっていた子どもが。
「あ゛っ…ぁ゛ぁ゛…」
閉じた咽頭に擦れた声が嗚咽に変わる。短慮の末に暴れる男はいつかの獣そのものだった。
酒は大人の象徴だ。酒の味を知っていることが大人と呼ばれる種族の要件なのだ。だから、酒が呑めるほど大人になればこの地獄から抜け出して、自由を得ることが出来るのだ。そう男は思っていた。その漠然とした思い込みはどこか儀式めいたニュアンスで男の内にあった。しかし、たとえ酒が呑めるようになっても、成人式が過ぎ去っても、自由を得ることは出来ないでいる。薄く張った肌の下、癒えた筈の生傷がシクシクと痛む。痛みの源は体内で流れる獣が開けた風穴だ。
食道が激しく波打つ。男は這うようにシンクへとすがり付いた。縁に手を掛け、頭を突っ込むと決壊した唇から泡立った液体が口からまろびでる。アルコールとグレープフルーツの合成香料の香りが鼻の奥に刺さった。
結局自分も、あいつと同じ獣だ。
幼い頃、泣きじゃくった時と同じ鈍痛が副鼻腔を加熱する。舌の上にはざらつく苦味が残っていた。
Ⓒ2023十ヶ十颯
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現代共犯者傭リのメモ
区切り毎に独立している文言 現代共犯者傭リのメモ。 【設定(変動あり)】 傭兵 自殺した母親の遺体を滅多刺しにしてイギリスに逃亡した人。 大学生。 リッパーの殺しの後始末したりしてる。 リッパー 殺人鬼の生まれ変わり。前世の記憶ぼんやりある。 普段は画商をやってる(と思ってる)。画家の兄(主人格)がいる。 傭兵と殺しを満喫してる。 占い師 傭兵が亡命後に転がり込んだ教会に住んでる少年。 14歳(よへは20歳)。 目が見えない代わりに、たまに予言が視える。 ハスター 教会の神父。神なのに神父してる。 普段人前に姿を表さずに、声だけで導いている。 面白い事好きなので、面白い人間を教会に受け入れがち。 そして占い師に怒られる。
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現実の共犯者軸の傭リは、リッパーの事以上に傭兵の事をリッパーが知らないのかもしれない。 リッパーは、直接的ではないけれど自分の情報を細切れに話していたりするけれど(誰にでもではない、傭兵が信頼出来るから話しているだけ)、意外と傭兵の過去とか故郷とかはリッパーは知らない感じ。 別に隠してるとかでは無いので聞かれたら答えるけれど、傭兵がリッパーの話を聞くことの方が多いので結果こうなってる。
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現代共犯者傭リの傭兵は過去に人を殺した事がある(ので故郷に帰れない)のだけど、初対面の時にあまりにも戸惑いを見せずに処理するのでリッパーが冗談交じりに「貴方、人殺した事あるんですか」と言ったら、真顔で「ある」と答えられて固まる。 面白くない冗談だこと、と返すと、お前が冗談と思ったのならそれで良いさ。と軽く微笑みながら返す傭兵。 真偽がどうなのかはぼやけたままだけど、殺してはいるんだろうなと思いつつ冗談だと受け取った体ではぐらかし続けるリッパー。 知ったらいけない気がして、触れて��ない。
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リッパーが久方ぶりに突然傭兵の部屋を訪れると、死んだ顔をした傭兵が玄関を開けて出迎える。 そンな顔をした貴方初めて見ました。といえば、本や紙が散乱した部屋の中で、明日提出するレポートがあるんだすまない。お前が折角来てくれたのに申し訳ない。と茶を出す傭兵。 (殺しの)お誘いだったんですが、この調子じゃ無理そうですねぇ。と言うリッパーに、残念そうにする傭兵。 まぁ、いつも付き合ってるんだから今回ぐらい付き合いますよ。と、その日は泊まり込んで傭兵の夜食を作るリッパー。傭兵の気が散らないように、隣の部屋でよへが研究している内容の書籍を読む。 明け方、レポートを送り出した傭兵が、ソファーに寝そべるリッパーの傍にふらふらとやってきて、その上に倒れ込む。 そのまま眠る傭兵の頭を、たまにはこういうのも悪くないですね。と思いながら撫でるリッパー。 初めて傭兵の部屋に泊まることになる。
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自殺した母親の遺体を、自殺だという痕跡を消す為のナイフで滅多刺しにしてる所を見つかり、母親殺しだと思われる傭兵のことを考えている。 それで、親戚のつてを借り海外に逃げて行くことになる。 最終的に遺体を調べられて自殺だとは判明するけれど、死体損壊の罪や何故そんな事を行ったのかという事を問われるので、国に帰れない。
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自殺した母の遺体を見付けた時に、俺の食事が隣の机に用意されてたんだよ。俺の好物ばかりでさ。もう冷たくなってて、死体に寄ってきた虫が周り飛んでんの。 それ食べながらさぁ、母さんの自殺隠さなきゃって思えてさ。それで刺したんだよ。
と、それと同じメニューが並んだ食卓を挟むリッパーに言う傭兵。 その話をしながらへらりと笑う傭兵に対してリッパーは、それは母親が自分を置いて行ったとは思いたくなかったのでしょう?と思うけれど、口には出さない。 傭兵がそれに気付いていない訳では無いのを知っている。 気付く事と認める事は違う事だから。 好物を食べる度に母親の遺体にナイフを突き刺した感触と、瞳孔が開き決して自分を見ない母親の顔を傭兵は思い出す。 母親にして見れば、置いて行く息子に対する懺悔みたいな物だったのかもしれないけれど、傭兵にとっての一生消えない呪いとなる。その料理が食卓に並ぶ度、居もしない虫の羽音が聞こえる。
俺がもし自殺したら、リッパーは俺の死体を切り刻んでくれる?とへらへら笑いながら聞く傭兵に、冗談。貴方の死体なんか刺した所で1mmも楽しくないからお断りですよ。私に甘えないで下さい。というリッパー。 そっかぁ~と何処か残念そうに言う。自分はリッパーに、一生分の傷を付ける事は出来ないのかなぁと傭兵は考える。 傭兵がへらっとした笑い方する時は、自分の中で消化しきれない感情が渦巻いてる時で、リッパーはそれになんとなく気が付いてる。傭兵は無自覚。 この男、本当に笑うのが下手くそですね。と思っていて欲しい。 最初は馬鹿にされてるのかとも思ったけれど、付き合うにつれてそれが彼の不器用な面の皮の隠し方だと分かってきた。そんなに下手なら仮面でも付ければ良いのに、私みたいに。とも思う。
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自殺した母親の遺体を滅多刺しにしているのを見つかった時に、自分が「正常ではなく、楽しんでいる」風に見せる為に、自分の口の両端を母親を刺したナイフを使って自分で裂く傭兵。大きく笑っている様にみせる為に。 分かりやすく狂ってみせれば、母親の死因より自分に目が向くと考えていた。そして、そう見せる事で、本当に頭がおかしくなれたら楽になれるのに、とも考えていた。 初めてリッパーの殺しを見た時に、リッパーが狂っているのを傭兵は一目で理解した。
でも、傭兵の目にはリッパーだけが真っ直ぐに立っていて、周りの全てが歪んで見えた。
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傭兵がリッパーに好きだ愛してるっていう癖に全然抱こうとしないので、貴方もしかして不能ですか…??ときいて違うと怒られる回。 (傭兵は性的快感に近いものを殺しで得るリッパーに恋しているので、リッパーを抱けない) 正直お前で抜く時がある。とさらっと言われて、それはそれで気持ち悪いです。と返すリッパー。 そんな事するなら理由付けて抱けば良いのに、意固地な人。と内心リッパーは思う。
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殺しの後でリッパーに連れられて入ったお高いホテルのルームサービスを山のように頼んで食べる傭兵。貴方、もっと味わって食べてくれませんか?此処の食事、1品で幾らすると思ってるのですか?というリッパーに、いくらだ?と首を傾げながら傭兵は問いかけ、私が支払うのに金額を言うなんて野暮な事しません!と怒られる。 死体の処理すると腹が減るんだよ。約50kgの肉を処理するんだぞ。と言う傭兵に対して、貴方…元とはいえレディに対してもう少しデリカシーのある言葉を使いなさいよ。何故殺人鬼の私が、被害者に同情しないといけないのか。と呆れた様にリッパーが窘める。 逆に、リッパーはあんだけやっておいてそれだけで済むのか?と、成人男性の1食分にしては少し少ない料理に目を向ける。 ええ、私はこれで十分です。一人の時はサンドイッチだけで済ませる事もありますよ。と答えるリッパーに、ほんとよくそれで殺せるなぁと変に感心する。 傭兵が、1人で食事って自分で作るの?と聞けば、えぇまぁそうです。と言われ、俺リッパーの手料理が食べたい。と強請る。 多分貴方の腹を満たせる様な料理は私出来ませんよ。とリッパーは言うが、傭兵はそれでも良いよ。と食い付いてくるので、仕方なく、殺した後は疲れるの嫌なので、それとは別の日なら良いとする。
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占い師も出したいけれど、年齢差的に中学生になってしまうだよね。 近所の中学生に世話される大学生傭兵も良いのは良い。 占い師は、傭兵の近所の教会に住んでる少年。中学生ぐらいだけれど、教会で勉学を学んでいるので学校には通ってない。 傭兵がバイトの関係でたまに教会の手伝いに行くので顔見知りからの友人。教会の奥で傭兵が煙草吸ってるのを占い師に見付かって怒られたのがきっかけ。 孤児ではないけどまぁ色々事情がある。 傭兵も元々教会の世話になってから大学に入ったとかでも良いな。(親戚づてで来た) 占い師の方が傭兵より先に教会にいた。 教会の神父がハスターで、普通の人からは人間に見える。
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傭兵がよく足を運ぶホームセンター(で良いのか?)で働く若い女性が、傭兵に惚れる話。 傭兵は、リッパーが殺した死体を処理する為に使う道具を買いに行ってる。 傭兵は顔が良いので大学でも度々女の方から好意を向けられたり男友達に女を紹介されたりするけれど、適当にすり抜けて回避してる。 興味があまり無いのと、1回付き合った時にふとした瞬間に首吊ってた母親と姿が重なって駄目だって思って別れた。
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共犯者傭リの傭兵は、リッパーが女を殺してる所を見てる時もあれば見ずに待つ時もある。 リッパーに身を斬り裂かれる事から逃げ出そうとする女が傭兵に縋る様な視線を送るけれど、傭兵は熱を帯びたぎらついた目でリッパーの事だけを見つめ続けている。
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殺しの後に2人で飲んでいる時に、いつもはしない悪酔いをしてしまった傭兵がリッパーを押し倒してしまう奴。 それで、いつも以上に執拗的にキスしたり、触れた事の無かった場所にまで触れてしまう。 段々と酔いが冷めてきて気を持ち直した傭兵が、青白い顔になり慌ててリッパーの上から降りる。 そんなつもり無かった、申し訳ない、と、今まで見た事ないぐらい狼狽えて謝罪を吐き出す傭兵。 リッパーは、触られながら(「普通」はこうするものなんですね)とぼんやり考えていただけなので傷付いたりは別にしていないのに、酷く傷付けてしまったみたいな態度で謝り続ける傭兵にふつふつと腹が立ってくる。 リッパーは「被害者」みたいに扱われるのを嫌に思って欲しい。 あと、触れられても何も感じなくて、それが自分が普通の人間ではないと言う事をまざまざと思い知るリッパー。でも、本人は別にそれでも良いと思ってるし、傭兵がそれを受け入れるのなら自分も傭兵の事受け入れても良いと思ってる。
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傭兵はホームセンターでリッパーが殺した人間を処理する為の道具を買うのだけれど、そこでレジ打ちをしてる若い女性が傭兵に想いを寄せている話(前に呟いたのを掘り下げ) 傭兵は全く気が付いていない。 ある日リッパーも買い出しについて行くのだけれど、リッパーは一目で女が傭兵に想いを寄せてる事に気がつく。 普段は居ない背の高い男の姿に女は動揺するが、いつもの様にレジを打ち想い人の背中を見送る。
それから暫くして、リッパーから傭兵に「お誘い」が来る。買った道具を鞄に詰め込み、バイクに乗って約束の場所に向かう傭兵。 廃ホテルの一室に入ると、リッパーが出迎える。そんなリッパーを愛おしそうに触れるよへ。 リッパーにキスした後にその奥のベッドに視線を送ると、レジで見掛けるあの女が縛られ布を噛まされ転がされている。 女が傭兵を見詰める目は見開かれ、その瞳には先程の傭兵とリッパーの愛瀬が焼き付いて色濃く絶望が宿っていた。 傭兵は、なんか見た事がある気がするな。と暫く考え、レジの女だと思い出す。 リッパーが楽しんだ後を、傭兵は女が数日前に手に取りレジに通した道具を使い処理していく。 あのホームセンターは暫く使えないかもな。と零す傭兵に、レジ打ちの人間を全員順番に殺したりしませんよ。と愉しげに笑うリッパー。
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リッパーが女を殺す時に、傭兵は一切手を出さずに横で見ているか別の部屋で煙草を吸っているかだが、ある日被害者の女が抵抗してリッパーの顔に傷を付けて、それを見ていた傭兵が突然黙ってリッパーを後ろに避けて、自分が女に馬乗りになって顔面の形が変わるまで殴り続ける。 表情一切変えずに���り続ける傭兵に、リッパーが我に返って、このぐらい何ともないです。やり過ぎですよ。と声をかける。 その声に振り返った傭兵が、リッパーの腕を引いて顔の傷を舐める。 そして、これじゃお前好みじゃないな。俺が始末するから許してくれ。と言う。
傭兵は基本的に女を殴ったりしないけれど、それは女だからというより「自分が殺さなければいけない相手や、危害を加えてこようとする相手」でなければ手を上げる事が無いという感じだと思う。それに女が当て嵌る事が少ないだけで。 だから、リッパーが殺してる女の事も(可哀想に)としか思っていない。 同情では無くて、他人事で無関心だから出る言葉。それ以上でも以下でもない。
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リッパーの起こした殺人に関する情報を探っていた人間を、傭兵が処理を行うのだけれど、捕まえた人間の口の中にタオルを突っ込んで、吸っていた煙草で目を潰すのがみたい。 目を焼かれて唸る人間を見ながら、趣味が悪い殺し方ですね。と言うリッパーに、その方がお前と結び付かないだろ?と言う。 リッパーが楽しくない殺しは傭兵が行うのだけれど、わざとリッパーがしない様な品の無い殺し方をする。 傭兵は別に殺しを楽しんではいないので、面倒臭いからリッパーのこと探るのやめて欲しいと思ってる。
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お前と居ると安心する。母親の腹を裂いて、一晩隣で寝た時と似ている。 と、語り掛ける傭兵に、それは素敵な事ですね。と返すリッパー。 ひとつのベッドの上で身を寄せて、何処と無く染み付いた死の匂いを感じながら眠りにつく。それがどちらからするものなのか、2人共分からない。
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傭兵が煙草を吸う度に、それ辞めたらもっとマシな生活出来るんじゃないですか?とリッパーは言うのだけれど、寝る前に吸わないと寝れないのでこれは辞めるの無理だな。と傭兵は言う。 リッパーが殺しをする時に、傭兵はわざと煙草の匂いを残す。煙草の匂いをさせない男から、嫌疑の目を背ける為に煙草をがんがん吸う癖に、煙草を吸った口では絶対にリッパーにキスしたりしない。 たまには良いと思ってるんですよ。とリッパーからキスするのだけれど、味におぇってえづいてしまうリッパーを見てだからやめておけば…。と思う傭兵。それでも、たまにリッパーからキスしてくるので、なんなんだろうなぁと思いながら受け入れる。
---------- クリスマスイブにリッパーに誘われて浮足立ちながら向かった先で、リッパーが女を殺してるのを見守る傭兵。 リッパーにとって女を殺す事は実質セックスなので、想い人のクリスマスセックスを見せ付けられている状態。 殺し終わって後処理をした後に、貴方どうせ暇でしょうから、一緒に過ごそうと思いまして。と誘い文句を謳われる。 傭兵はクリスマスにろくな思い出が無いので、その言葉に子供の様に目を輝かせる。 私の家で食事をしましょう。と誘うリッパーの手を取り、血に塗れた服のまま夜の街を去る。 想い人と同じベッドで眠り(notセックス)、クリスマスを幸せな思い出で塗り替える事になる。 ----------
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毒を食らわば皿まで
うちよそ。フェドート←ノルバ(パパ従兄弟) ※モブの死/暴力・性暴力行為の示唆
揺れる焚火を前にマグを両手で包み込む。時折枯れ木が弾ける音を拾いながら、岩場に座すノルバはじっと揺れる炎を見据えていた。泥水より幾分かましなコーヒーはすっかり湯気が消え去り、食事の準備をしていたはずの炊き出し班がいつの間にやら準備を終えて、星夜にけたたましく轟く空襲に負けぬ大声で飯だと叫んでいた。バニシュを応用した魔法結界と防音結界が張られているとはいえ、人の気配までは消すことが出来ないがゆえに常に奇襲が警戒されるこの前哨地において、食事は貴重な愉楽のひとつである。仲間たちが我先にと配膳の前に列を成していくその様子を、ノルバはついと視線だけを向けて捉えた。 サーシャ、ディアミド、キーラ、コノル、ディミトリ、マクシム、ラディスラフ、ヴィタリー。 炊き出しの列に並ぶ仲間の名を、かさついた口元だけを動かし声は出さずに祈るように唱える。土��にまみれた彼らが疲弊しきった顔を綻ばせて皿を受け取っていく様に、ノルバは深く息を吐いた。
「おい、食わないと持たないぞ」 「っで」
コン、と後頭部を何かで軽く叩かれ、前のめりになった姿勢に応じてマグの水面が揺れる。後ろを仰ぎ見れば、見慣れた顔が深皿を両手に立っていた。
「フェドート……」 「ほら、お前の分だ」 「ああ……悪ィな」
ぬるくなったマグを腰かけている岩場に乗せ、フェドートから差し出された皿を受け取る。合金の皿に盛られたありあわせの材料を混ぜ込んだスープは、適温と言うものを知らないのか皿越しでも熱が伝わるほど酷く熱い。そういえば今日の炊事係にはシネイドがいたな、と彼女の顔を思い浮かべ苦笑いを零した。 皿を渡すと早々に隣を陣取ったフェドートは、厳つい顔に似合わず猫舌のために息を吹きかけて冷ましており、その姿に思わず小さく笑い声がもれる。すかさずノルバの腕を肘で突いてきたフェドートに「面白れェんだから仕方ねえだろ」と毎度の言い訳を口にすれば、彼は不服そうな顔を全面に出しながら「それで、」と話を切り上げた。
「さっきは何を考えていたんだ。お前がぼうっとしているなんて、珍しい」 「…………ま、ちょっとな」
ようやく冷まし終えた一口目を口に含んだフェドートに、ノルバは煮え切らない声で返した。彼の態度にフェドートはただ咀嚼しながら無言でノルバを射抜く。それに弱いの分かってやっているだろ、とは言えず、ノルバは手の中でほこほこと煮えているスープに視線を落として一口分を匙で掬った。 豆を中心に大ぶりに切られたポポトやカロットを香辛料と共に煮込んだスープは、補給路断たれる可能性が常にあり、戦況の泥沼化で食糧不足に陥りやすい前線において比較的良い食事であった。フェドートが別途で袋に詰めて持ってきたブレッドや干し肉のことも考えれば、豪華と言えるほどである。まるで、最期の晩餐のようなものだ。 ───実際、そうなるのかもしれないが。 ため息を吐くように匙に息を吹きかけ、口内を火傷させる勢いのスープを口に放り込んだ。ブレッドと食べることを前提に作ったのだろう。濃い味付けのそれは鳴りを潜めていた空きっ腹を呼び覚ますのには十分だった。 フェドートとの間に置かれたブレッド入りの袋に手を伸ばす。だが彼はそれを予測していたらしく、袋をさっと取り上げた。話すまで渡さないという無言の圧を送られたノルバは観念して充分に噛んだ具材を飲み下す。表面上を冷ましただけではどうにもならなかった根菜の熱さが喉を通り抜けた。
「次の作戦を考えてた。今日までの作戦���死者が予想以上に出るわ、癒し手が不足してるわで頭が重いのはもちろんだが、副官が俺の部下九人を道連れにしたモンだからどうにもいい案が浮かばなくてな」
言って、ノルバはフェドートの手から袋を奪取すると中から堅焼きのブレッドを取り出し、やるせなさをぶつけるように噛み千切った。何があったのか尋ねてきた彼に、ノルバはくい、と顎で前哨地に設営された天幕を指す。中にはヒューラン族の男が一人とロスガル族の男が二人。ノルバと同じく、部隊指揮官の者達だった。折り畳み式の簡易テーブルの上に置かれた詳細地図を取り囲み話をしているが、平行線をたどっているのか時折首を振る様子や頭を掻く様子が見える。 お前は参加しなくていいのか、とノルバに問おうとして、ふと人数が足りないことに気付いた。ここにはノルバ率いる第四遊撃隊と己が所属し副官を務める第二先鋒隊、その他に第八術士隊と第十五歩兵隊に第七索敵隊がいたはずだ。そう、もう一人部隊長が────確かヒューラン族の女がいたと思ったが。 フェドートが違和感を覚えたことを察したのか、ノルバはスープに浸したブレッドを飲み下すとぬるいコーヒーを手に取り、その味ゆえか、はたまたこの状況ゆえか、眉間に皺を寄せつつ少量啜った。
「セッカ……索敵隊の隊長な、昨日遅くに死んだんだわ。今回の作戦は早朝の索敵と妨害がねェ限り成り立たなかったろ? 俺はその代打で一時的に遊撃隊を離れて第七索敵隊の指揮を預かってた。…………そうしたら、このザマだ」 「……副隊長はどうしたんだ、彼女が死んだのならそいつが立つべきじゃあないのか?」 「普通はな。ただ、まあ、お前と同じだよ。副官としては優秀だが、全体を指揮する人間とは畑が違う。本人の自覚に加えて次の任務は少しの失敗もできないとあって、俺にお鉢が回ってきたってェわけだ」
揺れる焚火の薪が音を立てて弾けた。フェドートはノルバの言葉に思い当たる節があるのか、「ああ……」と声を零すと干し肉を裂いてスープの中に落としていく。ノルバはその様子に僅かに口角を上げると、ブレッドをまたスープに浸して食みながら状況を語った。 曰く、昨日遅くに死んだセッカは直前まで普段と至って変わらない様子だったという。しかし、日付が変わる直前、天幕で早朝からの作戦に向けての確認作業中にセッカは突如嘔吐をして倒れ、そのままあっけなく死んだ。彼女のあまりにも急すぎる死に検死が行われた結果、前回の斥候で腕に負った傷から遅効性の毒が検出され、毒死という結論に至った。 本人に毒を受けた自覚がなかったこと、術士隊がその日は夜の任であり癒し手の人数が不足していたため軽症者は各自で応急処置をしていたこと、その後帰還した術士隊も多数の死傷者を抱えて帰ってきたこと等、様々な不幸が折り重なって生まれた取り返しのつかない出来事だった。 問題は死んだ時間である。早朝からの任務を控えていたセッカが夜分に死亡し、且つ翌朝の作戦は必要不可欠であったため代理の指揮官を早々に選出しなければならなかった。だが、セッカの副官である男は「己にその器たる資格なし」と固辞し、索敵隊の者も皆今回の作戦の重大さを理解しているからこそ望んで進み出るものはいなかった。 その最中、索敵隊のひとりが「ノルバ殿はどうか」と声を上げたのだと言う。基本的にノルバは作戦に応じて所属が変わる立場だ。レジスタンス発足後間もない頃、何もかもを少数でこなさなければならない時期からの者という事もあって手にしている技術は多岐にわたる。索敵隊が推した所以である諜報技術もその一つだった。結局、せめて今回作戦だけでもと頼まれたノルバは一日遊撃隊を離れ、索敵隊を率いたという。
「別に悪いとは言わねェよ。あの状況で、索敵隊の精神状況と動かせるヤツを考えれば俺がつくのが妥当だ。俺はセッカがドマから客将として入ってから忍術の手ほどきも受けていたから、死んだと聞いた時から予想はしてた」 「………………」 「ああ、遊撃隊は生還率が高く、指揮官が一時離脱しても一戦はどうにかなると言われたな。実際、俺もどうにかなる……どうにかさせると思ってたさ。そうなるよう事前に俺がいない間の指示も伝えてから行った。だけどよ、前線を甘く見る馬鹿が俺がいないからって浮足立って独断行動をしたら、どうにもなんねェんだわ、そんなの」
ブレッドの最後の一口を呑む。焚火の煙を追って、ノルバは天を仰いだ。帝国軍からの空襲は相変わらず止む気配がない。威嚇を兼ねたそれごときで壊れる青龍壁ではないが、星の瞬く夜空を汚すには十分だった。
「技術はあって損はないけどよ、その技術で転々とする道を進んだ結果、一度酒飲んで笑った仲間が、命を預かった部下が、てめェの知らねえとこで、クソ野郎の所為でくたばっていく度に、なんで俺は獲物一つの野郎でいられなかったんだと思う」
目を瞑る。第四遊撃隊は今朝まで十六人だった。その、馬鹿な副官を合わせて十人。全体の約三分の二を喪った。良かったことと言えば、生き残った者たちが皆比較的軽症だったことだ。戦場で果てた者たちが、彼らの退路を守ってくれたという。死んだ部下たちの遺体は回収できなかった。帝国が回収し四肢切断やら臓器の取り分けやらをされて実験道具としているか、はたまた荒野に打ち捨てられたままか、どちらかだろう。明日戦場に出た時に目につくだろうか。もう既に腐敗は始まっているだろう。その頃には虫や鳥が集っているかもしれない。 とん、とノルバの背に手が触れた。戦場において味方を鼓舞するそれを半分隠せるほど大きな手。その手は子供をあやす父親のようにゆっくりと数回ノルバの背を叩くと、くせの強い彼の髪に触れた。届かない空を見上げていたノルバの視線をぐっと地に向かせるように、荒っぽいが情愛のある手つきでがしがしとかき回す。「零れるからやめろ馬鹿!」と騒ぐノルバに手を止めると、最後に彼の頭を二度軽く叩いて手を離した。 無理をするな、とも、泣いていい、とも言わない。それらがノルバにはできないことであり、また見せてはならない顔であることを元々軍属であったフェドートは理解していた。ノルバは片手で椀を抱えたままもう片方で眉間を抑え、深く息を吸って、吐いた。
「……今回の大規模な作戦目標は、この東地区の中間地点までの制圧だ。目標達成まであと僅か、作戦期間は残り一日。全部隊の半数以上が戦死し、出来る作戦にも限りがある……が、ここでは引けない。分かっているよな」 「ああ。この前哨地の後ろは湿地帯だ。今は雲一つない空だが、一昨日から今日の昼間までにかけての雨で沼がぬかるみを増している。下手に後退すれば沼を渡っている最中に敵に囲まれるのがオチだ。運よく抜け出せたとしても、晴れだしてきた天気の中ではすぐに追跡される。補給路どころか後衛基地の居場所を教えてしまうだろうな。襲撃されたら単なる任務失敗では済まない」 「そうだなァ、他にはあるか?」 「……第七索敵隊の隊長はドマからの客将だったな。彼女が死んだとあれば、仲間の命を優先して中途半端に任務を終えて帰るべきではない────いや、帰れないな。"彼女は勇敢に戦い、不幸にも命を落としました。また、甚大な被害が出たため作戦目標も達成することが出来ず帰還しました。"ではドマへの示しがつかない。せめて、目標は達成しなければどうにもならん」 「わかってるじゃねェの」
くつくつと喉を鳴らして笑うノルバを横目に、フェドートは適温になってきたなと思いながらスープを食む。豆と根菜に内包された熱さは随分とましになっていた。馴染み深い香草と塩っ気の濃い味で口内を満たしながら、フェドートはこちらに向けられている視線へと眼光を光らせた。 鋭い獣の瞳の先にあるのは、ノルバが指した天幕。射抜かれたロスガルの男は肩をわずかに揺らすと、すぐに視線を地図へと戻した。フェドートは男の態度にすっと目線を椀へと戻すと、匙いっぱいにスープを掬う。具に押しのけられて溢れたスープが、ぼとぼとと椀に戻っていった。 万が一にでもこのまま撤退という話になれば────もしくは目標を達成できず退却戦となれば、後方基地に帰った後、まず間違いなくノルバは責任を問われる者のひとりになるだろう。ともすれば、全体の責任を負いかねない。ノルバ自身は最良を尽くし、明らかに自身の行いではないことで部下を大量に失っている身だが、皮肉なことに彼はボズヤ人でないことや帝国軍に身内を殺された経験を特に持たないことから周囲の反感を買っている。責任の押し付け合いの的にするには格好の獲物だ。 貴重な戦力であり、十二年ひたすらに積み重ねてきた武勲もある。まず死ぬことはないだろうが相応の折檻はあるだろう。フェドートは息子同然の子の師であり、共にボズヤ解放を目指す戦友であるノルバにその扱いが待ち受けているのが分かっているから��そ、引けないとも思っていた。ノルバ本人にそのことを言っても「いつものことだ」と笑うから決して口にはしてやらないが。 汁がほとんど匙から零れ、具だけが残ったそれを口に運ぶ。いつの間にかノルバは顔から手を離していた。血糊の瞳と、濁った白銀の瞳はただ前を見つめている。ノルバは肩から力を抜くように大きく息を吐き出すと、フェドートに続くように匙いっぱいにスープを掬い大口を開けて食べ、袋���ら干し肉を取り出して頬張った。
「ま、何にしろ全体の損失を考えりゃここでは引けねェが、簡単に言えばあと一日持たせてもう目と鼻の先にある目的を達成さえすればどうとでもなるんだ。なら、大人しく仰々しいメシを食いながら全滅を待つこたァねえ。やっこさんを出し抜いて、一泡吹かせてやろうじゃねェの」 「本当に簡単に言うなぁ……」 「そんぐらいの気持ちでいかなきゃやってけねェんだよ、ここじゃあな。ダニラ達もあっちで相当頭捻ってるし、案外メシ食ってたら何か、し、ら…………」
饒舌に動いていた口が止まる。急に黙り込んだノルバにフェドートは怪訝そうな顔でどうしたと彼を見やる。眼に映った顔は、笑っていた。 ノルバの手の中で、空の匙が一度踊る。そのしぐさに目を奪われていると、匙はこちらを指してきた。
「なあ、フェドート。アンタ、俺の副官になる気はないか?」
悪戯を思いついたこどものような表情だった。しかし、彼の声色が、瞳が、冗談なのではないのだと語る。「は、」とフェドートは吐息のごとく短い声を上げた。ノルバは手を引いて袋の中からまたブレッドを手に取る。「ようはこういうことだ」ノルバは堅く焼いたそれを一口大に引きちぎり、ぼとり、と残り半分もないスープの中に落とした。
「遊撃隊と」
ぼとり。
「先鋒隊と」
ぼとり。
「索敵隊。この三部隊を統合して俺の指揮下に置き、一部隊にしたい」
三つのかけらを入れたスープをノルバは匙でくるりと回す。突飛な発想だった。確かに遊撃隊はノルバを含め僅か六人の生存者しかいない。どこかの部隊に吸収されるか、歩兵隊あたりから誰かを引き抜いてくる必要はあるだろうが、わざわざ先鋒隊と索敵隊をまとめる必要があるかと言われれば否である。 帝国との兵力差は依然としてある状況でいかにして勝ち進めることができているのかと問われれば、それは部隊を細かく分けて配置し、ゲリラ戦で挑んでいるからに他ならない。それをノルバはよく知っているだろうに、何故。 答えあぐねているフェドートにノルバは真面目だなと笑うと、策があるのだと語った。
「承諾が得られるまで細けェことは話せねェが、成功率は高いはずだ。交戦時間が短く済むだろうからな。それが生存率に繋がるかと言われれば弱いが、生き残ってる奴らの肉体と精神両方の疲労を考えれば、戦えば戦うほど不利になるだろうし、どうせ負けりゃほとんどが死体だ。だったら勝率を優先した方がいい。ダニラのヤツは反対するかもしれねェが……俺が作戦の立案者で歩兵隊と変わらない規模の再編隊を率いるとなれば、失敗したら責任を負いたくない野郎共は頷くだろ」 「おいノルバ、」 「で、これの問題点と言やァ、デケェリスクと責任を全部しょい込んで無茶苦茶を通そうとする馬鹿の補佐につける奴なんて限られてるし、そもそも誰もつきたかねェってとこなんだが」
ノルバ自身への扱いを聞きかねて小言を呈そうとした口を遮って続けられた言葉に、フェドートは息を詰まらせた。目の前の濁った白銀と血溜まりの瞳が炎を映して淡く輝く。
「その上で、だ。もう一度言うぞ、第二先鋒隊副隊長さんよ。生き残って勝つ以外は全部クソな俺の隣席だが、そこに全てを賭けて腰を据える気はないか?」
吐き出された地獄へ導く言葉は弾んでいた。そのアンバランスさは他人が見れば奇怪に映るだろうが、フェドートにとってはパズルピースの最後の一枚がはめられ、平らになった絵画を目にした時のような思いだった。ああ、お前はこんなに暴力的で、強引で、けれども理性的な男だったのか。 「おっと、ギャンブルは嫌いだったっけか」とノルバが煽るように言う。彼の手の中でまた匙がくるりと弧を描いた。茨の海のど真ん中で踊ろうと誘っておきながら、退路をちらつかせるのは彼なりの優しさかそれとも意地の悪さか──おそらくは両方だろう。けれども、フェドートはここでその手を取らぬほど、野暮な男になったつもりはなかった。 フェドートが口角を上げて応える。ノルバは悪戯の成功したこどもの顔で「決まりだな」と言うと、浸したブレッドを頬張る。熱くもなく、かと言ってぬるくもない。シネイドが作ったであろう火だるまのようなスープはただ美味いだけのスープになっていた。 この機を逃すまいと食べ進めることに集中した彼に合わせてフェドートも小気味よく食事を進ませ、ノルバが最後の一口を口に入れるのに合わせてスープを飲み干す。は、と僅かに声を立てて息づくと、ノルバは空の皿を脇に置き腰のポーチを漁ると小箱を取り出した。フェドートはそれに嫌そうな顔を湛え腰を浮かせたが、「まあ待てよ」とノルバがにやにやと笑って彼の腕を掴んだ。その細い腕からは想像できないほどの力で腕をがっちりと掴んできた所為で逃げ道を塞がれる。もう片方の手でノルバは器用に小箱を開けた。中に鎮座していたのは煙草だった。
「俺が苦手なのは知っているだろう!」 「わーってるわーってる。そう逃げんなよ。願掛けぐらい付き合えって」
スカテイ山脈の麓を生息地域とする特有の葉を使ったそれは、ボズヤでは広く市民に親しまれてきた銘柄だった。帝国の支配が根深くなり量産がしやすく比較的安価なシガレットが普及してからというもの、目にしなくなって久しかったが、レジスタンスのひとりが偶然クガネで発見し仲間内に再び流行らせたという。ノルバも同輩から教えられたらしく、好んで吸う側の一人だった。 ノルバは小箱から葉巻を取って口に咥えると、ポーチの中に小箱をしまい、代わりに無骨なライターを取り出して、フェドートに向かってひょいと投げた。フェドートが器用に受け取ったのを見るや否や彼は咥えた煙草を指差して、「ん」と喉の奥から言葉とも言えない声を上げた。フォエドートが嫌がる顔をものともせず、むしろそんなものは見ていないとばかりに長く白いまつげを伏せて火を待つノルバに、フェドートは観念してライターの蓋を開けると、押し付けるように彼の口元の上巻き葉を焦がした。
「今回だけだぞ。いいか、吐くときはこっちには、ぶっ、げほッ!」 「ダハハハハ!」
フェドートが注意を言い終わるよりも先に、ノルバは彼に向かって盛大に煙を吐き出した。全身の毛を逆立ててむせる彼に、ノルバは腹を抱えてげらげらと笑う。
「お前なあ!」 「逃げねえのが悪ィんだよ、逃げねえのが」 「お前が離さなかったんだろうが!!」
威嚇する猫のように叫ぶフェドートなどどこ吹く風で笑い続けるノルバに、「ったく……」と彼はがしがしと頭を掻く。ノルバの側に置かれた椀をしかめっ面のまま手に取り、もう片手で自身が使った皿と空になった麻袋を持ってフェドートは岩場から立ち上がった。
「こいつは片付けてくるから、吸い終わってから作戦会議に呼び出せよ、ノルバ」
しかめっ面の合間から僅かに呆れた笑みを見せたフェドートは、ノルバに背を向けると配膳の天幕から手を振るシネイドの方へと足を進めた。その彼の後ろ祖型を目で追いながらノルバは膝に肘を立て頬杖をつくと、いまだくつくつと喉からもれだす笑い声は殺さないまま焚火の煙を追うように薄く狼煙を上げる葉巻を弄ぶ。
「他のヤツならこれでイッパツなのになァ。わっかんねェな、アイツ。おもしれえの」
フェドートの背中にふうっと息を吐く。煙で歪んだ彼の背は掴みどころが見つからない。ノルバはもう一度吸ってその煙幕をさらに深くするように吐きだすと、すっかり冷めたコーヒーを飲み干して立ち上がった。
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常用漢字と教育漢字
川越は教育漢字と常用漢字は増やすべきだと思っています。
この文字常用漢字じゃないの?と感じた文字が、多すぎるのです。 また、この文字は小学校で習ってもいいのでは?という文字も、多いです。 ということで、川越が教育漢字の配当を考えた場合の表と、川越が考えた常用漢字表を作成しました。
まずは教育漢字です。 【1年】20文字増えて100文字とします。 1年は身近な感じを中心に追加しました。 漢数字は基本1年で習いますが、「万」が2年です。「1万円」とかでよく使うため「万」も1年にしました。 「父・母」、「自分」、「友」、「心」、「体」などの人に関する文字、 「外」に「行く」や、「今」、「言う」、「会う」、「太い」、「多い・少ない」といった1年でもよく使う言葉、 他にも、「止まれ」の標識を1年から読めるようにするために「止」、 「市町村」のうち「市」だけなぜか2年なので全部1年に統一し、よく食べる「米」も1年にしました。 「公園」も1年で習うべきだと思いますが、画数や漢字の構造を配慮して「公」のみ1年にしました。
【2年】20文字増えて180文字とします。 まずは、その文字に対する対義語がなぜか同じ学年ではないということがあります。 「高い」に対する「安い」、「明るい」に対する「暗い」、「長い」に対する「短い」などは学年がなぜか違うため、先に習う学年に統一しました。 また、「勉強」の「勉」、「学習」の「習」などの学校に関する言葉、「仕事」、「世界」、「動物・植物」といった名詞、 「勝つ・負ける」、「使う」、「待つ」、「遊ぶ」、「開ける」、「消す」といったよく使う動詞などを中心に追加しました。 また、学校で習う科目の文字を全部2年にするため、4年の「英」を2年に、 「都道府県」に使う文字は4年だが、「都道府県」という文字は全部2年にしました。 「衣食住」も同様で、4年の「衣」が2年です。 また、元号では、「昭和」の「昭」「和」が3年なのに、 「平成」は「平」が3年だが「成」が4年、「令和」は「令」が4年です。 これでは今の年号・前の年号のほうが、2つ前の年号よりも後に習う漢字になっています。 2つ前の年号よりも今の年号・前の年号のほうが先に習うべきです。そのため「平成」「令和」ともに2年にしました。 また、6年からも1文字2年にしました。「机」です。 「机」は学校には当たり前にあるものなのに、なぜか6年。遅いです。2年でもおかしくはないでしょう。
【3年】15文字増えて215文字とします。 ここも単語や対義語を合わせることが多いです。 「悪い」に対する「良い」、「有る」に対する「無い」などです。 単語では「健康」、「特別」といった重要な言葉なのに習うのが遅いと思った単語は3年にしてます。 「産業」の「産」、「児童」の「児」、「信号」の「信」、「関係」の「関」といった文字は単語として同じ学年に合わせました。 学校に関する言葉では「給食」の「給」、「席」、「卒業」の「卒」、「割り算」の「割」を3年にしてます。 食べ物から「野菜」の「菜」「果実」の「果」「飯」などを3年にしてます。「麦」は2年では早いと思い、3年にしました。 また、「戦争」や「民」「法」など社会面からの文字も3年になっているものもあります。
5年からは、「永久」「可能」は3年に、6年からは、また「階段」の「段」も、「階」に合わせて3年にしました。(「割」も6年からです)
【4年】13文字増えて215文字とし���す。 ここでは、都道府県の漢字を追加した分習う学年が遅くなった文字を元に戻したものもあります。 「囲・紀・喜・救・型・告・士・史・賞・停・得・費・歴・胃・腸」を、元の4年に戻しています。 しかし、「航・殺・象・貯・堂・毒・粉・脈」は他の漢字と比較した結果もとには戻していません。 他の追加分では、学校に関する言葉で「授業」の「授」、「修学」の「修」を4年に、 建設の「設」、豊富の「豊」を単語に合わせて、 「借りる」に対する「貸す」、「夫」に対する「妻」(夫に対しては「夫婦」の「婦」も同様)を対義語として4年に、 「快適」、「現在」、「非常」、「資格」、「準備」といった単語、 「増える・減る」、「得」を4年に戻したことにより「損」といった対義語、 「情報」、「技術」、「国際」の「際」、「個人」の「個」、 「営業」の「営」、「防災」、「政治」の「政」、「税」といった社会面からの文字も4年になっています。 そして、逆に習う学年が遅くなったのが2年の「汽車」の「汽」です。 「汽車」自体が最近都心部を中心に見ないので、2年では早いと思い4年にしました。
【5年】22文字増えて215文字とします。 元の5年に戻した文字は「恩・券・承・舌・銭・退・敵・預」の8文字です。「俵」は元に戻していません。 単語では「私」、「呼吸」、「宇宙」、「秘密」、 動詞・形容詞では「洗う」、「干す」、「危ない」、「困る」、「暖かい」、 「閉める」、「若い」、「痛い」、「誤る」、「忘れる」、「捨てる」、 単語として合わせた文字は「保存」の「存」、「価値」の「値」、 「就職」の「就」、「確認」の「認」、「探検」の「探」、「創造」の「創」などです。 また、「警察署」の「警」「署」、「内閣」の「閣」、「憲法」の「憲」、 「権利」の「権」、「討論」、「政党」の「党」、「否決」の「否」、「批判」の「批」、 「納税」の「納」、「経済」の「済」、「勤労」の「勤」、「省庁」の「庁」、「発射」の「射」、 「臨時」の「臨」、「法律」の「律」、「政策」の「策」、「衆議院」の「衆」など、 公民の授業やニュース・新聞でよく使用する文字を追加しました。 また、常用漢字からは「江戸」の「江」、「与党」の「与」、「完了」の「了」を5年に追加しました。
【6年】24文字増えて215文字とします。 常用漢字から、日常生活や授業・社会で使用率の高い漢字を追加しています。平成元年に外された教育漢字も復活したものもあります。 平成元年に外された教育漢字から復活したものは「称・兼・釈・需」の4文字です。「名称」、「兼用」、「解釈」、「需要」と、 よく使う言葉に使われるため、復活させました。 なお、「歓・勧・是・俗・壱・弐」は他の常用漢字と比較した結果優先度が低いと思い復活していません。 動詞・形容詞からは「甘い」、「押す」、「遅い」、「怖い・恐い」、「辛い」、「驚く」、 「涼しい」、「眠い」、「寝る」、「怒る」、「耐える」、「払う」、「汚れる」、「悩む」、 「抜く」、「怪しい」、「抱く」、「嫌う」、「離れる」、「狭い」、「戻る」などです。 対義語では「降りる」に対する「昇る」が入りました。 日常生活や街中で見る漢字からは、喫煙所の「喫煙」、「塾」、掃除の「掃」、「猫」、「袋」、「缶」、 冷凍庫の「凍」、風呂の「呂」、年齢の「齢」、「隣」、洗剤の「剤」、携帯の「携」、玄関の「玄」、駐車場の「駐」などです。 他の単語では、削除の「削」、普通の「普」、「豪華」、募集の「募」、 健康診断の「診」、宿泊の「泊」、突然の「突」、連絡の「絡」、貧乏の「乏」などです。 新聞やニュースでよく使用する漢字からは、違反の「違」、隠蔽の「隠」、「影響」、炎上の「炎」、 疫病の「疫」、架空の「架」、介護の「介」、監視の「監」、返還の「還」、環境の「環」、 企業の「企」、不況の「況」、緊急の「緊」、刑事の「刑」、抗議の「抗」、「攻撃」、購入の「購」、 更生の「更」、湿度の「湿」、福祉の「祉」、侵略の「侵」、地震の「震」、聴衆の「聴」、摘発の「摘」、 盗難の「盗」、「倒壊」、廃止の「廃」、排除の「排」、爆発の「爆」、処罰の「罰」、避難の「避」などです。
結果1140文字、現行より114文字増えました。
【常用漢字】先に言うと、483文字増えています。漢字単体では「何この文字?」というものも多いですが、 単語にしてみると「その文字だったか」という文字が多いです。
まずは、単語にしないとわかりにくい文字からです。「」が川越案で追加した常用漢字です。 「唖」然、狭「隘」(きょうあい)、「軋轢」(あつれき)、「斡」旋(あっせん)、 所「謂」(いわゆる)、「隕」石、「迂」回、「云々」(うんぬん)、漏「洩」、「冤」罪、終「焉」、 「謳」歌(おうか)、「喧嘩」、「凌駕」、「凱」旋、「徘徊」、「傀儡」、「乖」離、「撹」乱、「恍惚」(こうこつ)、 「狡猾」(こうかつ)、急「遽」(きゅうきょ)、「癇癪」(かんしゃく)、「恰」幅、「几」帳面、「杞」憂、 「贔屓」、動「悸」、一「揆」、「綺」麗、「毅」然)、厚「誼」(こうぎ)、「姦」通、 「吃」音(きつおん)、愛「嬌」、卑「怯」、飢「饉」、大「袈裟」、「牽」制、 「譴」責、「罫」線(けいせん)、「轟」音、永「劫」、「慟哭」(どうこく)、「膠」着、 「昏」睡、「梱」包、「渾」身、「些」細、「忸怩」(じくじ)、「炸」裂、 「颯」爽、、晩「餐」、改「竄」、「懺」悔、「弛」緩、「嗜」好、「熾」烈、 「灼」熱、復「讐」、「蹂躙」(じゅうりん)、「顰蹙」(ひんしゅく)、 「駿」足、前「哨」戦、「憔悴」(しょうすい)、豊「穣」、「贖」罪(しょくざい)、 強「靭」、「彗」星、円「錐」、同「棲」、「脆」弱、「贅」沢、特「撰」、 「醍醐」味、清「楚」、「齟齬」(そご)、「蒼」白、「忖」度、「拿」捕、「楕」円、「只」今、 平「坦」、「蛋」白、忌「憚」、ご「馳」走、「厨」房、範「疇」、「躊躇」(ちゅうちょ)、天「誅」、「凋」落、「諜」報、 「寵」愛(ちょうあい)、「酩酊」、抜「擢」、「顛」末、沈「澱」、「杜」氏、安「堵」、常「套」、 怒「涛」、「淘」汰、脳震「盪」、「恫」喝、「獰」猛、混「沌」、「捺」印、「捏」造、 化「膿」、「播」種、「狼狽」、「焙」煎、「莫」大、被「曝」、「撥」水、「挽」回、麻「痺」、 「誹謗」、「逼」迫、「豹」変、「憑」依、天「秤」、「瀕」死、不「憫」、 「憮」然、接「吻」、招「聘」、「僻」地、「拇」印、「呆」然、同「朋」、 割「烹」、先「鋒」、泡「沫」、我「儘」、「蔓」延、啓「蒙」、「悶」絶、「揶揄」、 「宥」和、執「拗」、「螺」旋、「罹」患、可「憐」、「黎」明期、瓦「礫」、「牢」獄、貫「禄」、 「歪」曲、界「隈」、「猥褻」などです。 次に、動詞・形容詞です。 「逢う」、「炙る」、「溢れる」、「頷く」(うなずく)、「俄か」(にわか)、「掻く」、「叶う」、「庇う」、 「噛む」、「嬉しい」、「怯える」(音読みは卑怯で用いる)、「煌めく」(きらめく)、 「漕ぐ」、「悉く」(ことごとく)、「彷徨う」(さまよう)、「冴える」、「捧げる」、 「囁く」(ささやく)、「捌く」(さばく)、「晒す」、「喋る」、「奢る」、「濡れる」、「偲ぶ」、「尖る」、 「穿く」(はく)、「閃く」(ひらめく)、「煽る」、「剃る」、「蘇る」、「逞しい」、 「叩く」、「辿る」、「溜める」、「掴む」、「繋ぐ」、「呟く」(つぶやく)、「疼く」(うずく)、 「躓く」(つまづく)、「吊る」、「咎める」、「舐める」、「馴れる」、「賑わう」、「吞む」、 「睨む」(にらむ)、「覗く」、「這う」、「遥か」、「媚びる」、「惹かれる」、「撫でる」、 「扮する」、「焚く」、「吠える」、「殆ど」、「撒く・蒔く」、「儲かる」、「萌える」、「貰う」、 「茹でる」、「凌ぐ」(音読みは凌駕で用いる)、「淋しい」、「憐れ」、「歪む」、「詫びる」などです。 次に、1文字でも意味が分かる漢字です。 「仇」、「磯」、「嘘」、「噂」、「掟」、「舵」、「躾」、「縞」、「巴」、「砦」、 「絆」、「雛」、「頁」(ページ)、「迄」、「禊」、「轍」、「罠」です。 次に、ジャンル別で漢字を分けます。
家族に関する漢字は、「甥」、「姪」、「姑」、「爺」、体・病気に関する漢字は、 口「腔」、「腱鞘」炎、「癌」、「肛」門、「膀胱」、「垢」、「痔」、湿「疹」、「膵」臓、「脛」(すね)、 「咳」、排「泄」、「喘」息、「躁」病、「腿」(もも)、「禿」、「髭」、五臓六「腑」、「糞」、「屁」、分「娩」、 「瞼」(まぶた)、「聾」学校、「肋」骨、「痙攣」、「咀嚼」、「倦」怠感、「頸」動脈などです。 生き物に関する漢字では、哺乳類では、「鼠」、「兎」、「豹」、「狼」、「狐」、「狸」、鳥類では、 「鴨」、「烏」、「鷺」、「雀」、「燕」、「鳩」、「鷲」、魚類・海・川の生き物では「鯵」、「鮎」、「鰯」、「鰻」、 「鰹」、「蟹」、「鯉」、「鮭」、「鯖」、「鮫」、「鯛」、「鱈」、「蛸」、「鰤」、「鱗」、「珊瑚」(さんご) 両生類や昆虫では「蛙」、「蟻」、「蛾」、「蝶」、「蝉」があります。 十二支の文字の「丑」、「寅」、「卯」、「辰」、「巳」、「酉」、「戌」、「亥」も追加しました。
伝統芸・神事・寺・国事に関する文字では、「阿吽」、外「苑」、天「狗」、舞「妓」、「弘」法、「賽」銭、 神「輿」、「菩薩」、「獅」子舞、「阿」弥「陀」、「巫」女、大「晦」日、「瞑」想、「狛」犬、「旭」日旗、 合「祀」、「瑞」祥、「煤」払い、「お祓い」、「祟り」、「彦」星、紫「綬」褒章などです。 歴史に関する文字では、公「卿」、元「寇」、「庄」屋、「攘夷」(じょうい)などです。 土地・建物・工業に関する文字では、「矩」形(くけい)、「躯」体(くたい)、廃「墟」、 「竣」工、「斧」、「杭」、「釘」、「跨」線橋、防空「壕」、「錆」、「堰」、金「槌」、 「梯」子、雨「樋」、「鳶」、「鉈」、「鋸」、「梁」、「襖」、中「洲」、「淵」などです。 植物に関する文字では、「粟」、「苺」、「苔」、生「姜」、林「檎」、「桐」、「栗」、 月「桂」樹、「橙」、「筍」、「椿」、「藪」、「柚」子、「蘭」、「蓮」、「蕾」、「葱」、「茄」子などです。 食べ物に関する文字では、「飴」、「餡」、「粥」、「燻」製、「蕎」麦、酒「粕」、「麹」、「胡椒」、 「醤」油、味「噌」、「惣」菜、「佃」煮、松「茸」、「麩」、「餃」子、「糠」、などです。 道具に関する文字では、「桶」、花「笠」、「鞄」、「兜」、お「灸」、石「鹸」、「糊」、軟「膏」、「杓」子、 刺「繍」、「竿」、「匙」、「凧」、「襷」、「樽」、「箪笥」、「壺」、「砥」石、「屏」風、「箒」、 「鞭」、「楊」枝、「鎧」、お「椀」、茶「碗」、金「箔」、甲「冑」などで、「塵」「屑」「埃」などのごみに関する文字もあります。 気象に関する文字では、「蜃」気楼、「雹」をいれました。 地名に関する文字も、都道府県以外でも使用度の高い文字は常用漢字でもいいと思っています。 都道府県庁所在地のうち唯一常用漢字でない、札幌の「幌」、政令指定都市の「堺」、イタリアを漢字表記した「伊」、 日本一長いトンネルの青函トンネルの、「函」、日本一大きい湖、琵琶湖の「琵琶」、 国会や日本の省庁が集まる霞ヶ関の「霞」も地名ながら入れてもいいと思います。
最後に、今回追加したい文字よりも使わないであろう、「虞」と「朕」は除外してもいいと思っています。
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