#ロー��バイク好きな人と繋がりたい
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2時間目終了✩.*˚ 本日初日教習。 2時間分通し。 やったこと、 ・バイク起こし 想像以上に重かった。身体を近ずけて、腰に来ないようにイッキに持ち上げる(立たせる)とりあえず1回でOK ・バイク操作の基本を教わり、ロー、ニュートラル、セカンドの入れ方、ブレーキ操作(右手、右足)のやり方まで ・ローのままゆっくり走行 ・リアブレーキで止まる 繰り返し ・セカンドまで入れて30km走行まで繰り返しながらぐるぐる回る これで2時間、あっという間。てか、蒸して汗だく。 今日初日はおっちゃん3人で。 プロテクターして、ゼッケン付けて、グローブとメット。(あの混み合う中で着替えるのがちょい嫌) その後、適正受けて初日は無事に終了。感想としては、ローからセカンドに上手く入らない。多分焦ってるからアクセルが弱くてスピードに乗ってない。気付いたらサードに入ってたり。あと、腕がピーンって伸びてる(緊張なのか?!)それ以外は3人とも無事にクリア。ちょっと慣れるまでアクセルワークがムズいなあ。これまた次の教習まで時間空くからまた忘れちゃう(原チャリの感覚で吹かすとヤバい) とりあえず次回も頑張ろう。 おっちゃんの初めての体験。 #photooftheday #instagood #バイク好きの人と繋がりたい #教習所 #style #photography #instalike #COZzY. https://www.instagram.com/p/CPQXS-9DH_B/?utm_medium=tumblr
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Alone
Alone
「1人でいたいから………」
そう断った。
心臓を震わせる振動で俺の心臓は勝手に震える。
声を掛けられても、
「はっ………? よく聞こえない………!!」
そう言って、何も無かった事にしてしまうほど、
本当に何も聞こえない。
本当に何も知らない。
本当に、何も何も分からない。
分かる、
必要性がない。
孤独を味わうために何をするかといえば、人が多くいる場所に行くことにしている。
何処か田舎へ行って、誰もいない所でひっそりと住んでみたいけれど、それが出来るほど俺は達観できていないし、
1人でいたいときは、1人でいたいし、
1人でいたくないときは、いたくない。
その時、その日、いつかさまざまな諸条件で色々と心は変わる。
元々、社交的なタイプでもないが、自分から声を掛けるタイプではないけれども、
本当はとにかく寂しいので、
本当はとにかく誰かといたいのだが、
じゃあ、誰かといつも一緒にずっといると心が疲れてしまう。
何処かに行く時は、誰かが付いてくるならばそれを拒まないが、自分からは声を掛けない。
今日は、1人になりたかったから…、
誰かの声なんか聞こえない世界に飛び込むことにした。
ネオンカラーが仰々しい。
俺の足元は先の長めの革靴で、歩くとスキニーの太腿が、右と左と動くのを確認しながら、
「…………………」
道路のアスファルトの上に昼に降った雨が、上のネオンを革靴の底に映し出している。
アスファルトの上に流れたガソリンの油染みが、虹色に光っていて、少しのもやの中に、ネオンが薄暗く彩っている。
店じまいを終えて閉まっている鉄格子向こうの店の奥を見ると、そこはLPレコードの店で、店の前に出されたゴミ袋の中から割れたレコードがビニールの中から出ていた。
黒いビニール袋に映し出される極彩色のネオン。レコードの円盤に映し出される回る光。
俺は眩しく感じ、目を細めれば、
「……………………」
くるくると回るレコードの円盤が、回ってもいないのに脳の中に溢れ出てきた。
脳の中から溢れ出て来たレコードを道端に後ろ足に捨てて、袋小路に突き当たれば、
そこにある扉を開くしか選択肢は無い。
ドアノブの色が不特定多数の人間が触りすぎて、暗闇の中、ドアノブだけが光っている。
俺は光った場所は触りたくなかったので、ジャケットの裾の中に手を隠し、ジャケットの裾でドアノブを掴んで回せば、もやがかった暗闇以上の極彩色の世界が広がっていた。
何がしたいかって、1人になりたいのだ。
目的が目的の様で目的でない。
ドアを擦り抜けて、クラブの中に入れば、夜なのに、不特定多数の大勢の人数がいて、階段を上がろうと、上を向けば、俺の目の前で階段を上がる女の脚が細くて、太腿の隙間をステージの光が後光が差すみたいに、太腿の間から光が差し込んで俺を照らした。
女が階段を上がり切って右に向かえば、階段というこのステージは俺だけのものになったので、俺はわざと、少しだけ、脚を開いて歩いて、誰だか知らない後ろの者に脚の隙間から見える光を、
後ろの世界に見せ付けてやりたくなるのだ。
聞こえないくらい大きな爆音の中に身を沈ませてしまえば、音で震える空気が心臓を撃ち込む。
空気圧ってけっこうすごいんだなって思うくらい、勝手に心臓を動かされるこの感じ。
ただ突っ立っているだけなのに、勝手にリズムが心臓を俺の鼓動のリズムを無視して、鼓動を撃ち込んでくる。
誰かに、
「………1人………?」
「………? 聞こえない」
声を掛けられたし、俺は1人になりたくてここに来ているのだから、適当に返事をすれば、
「…………………」
笑われて、彼は手に持ったマジックペンで俺の顔に、
「………………?」
何かを描いた。
俺は、咄嗟にその知らない奴を振りほどけなくて、知らない誰かに、何かを描かれてしまい、
「…………………?」
驚いた顔だけ��ていれば、
『分からないなら分かる必要ないけれど、
気になるなら、鏡を見て来いよ』
と、言ったから、俺は彼を押しのけて、
クラブの汚いバスルームへと向かった。
イライラとした足音を響かせながら、全ての足音を吸いこむ絨毯の中に足音を吸いこませて、階段下のバスルームで鏡を見てみれば、
「……………………」
目の周りに蛍光のマジックペンでゴーグルが描かれていた。
バイク用のゴーグルの様なデザインで、
「………………」
短時間でよく描いたなと思った。
俺は1人になりたかったから、この仮面の様なゴーグルが俺の心に響き、俺は絵に描かれたゴーグルで、
やっと心を孤独に落ち着かせることができた。
ステージ前に戻って来て、さっきの奴を探そうと思ったが、いつでもそうだが、探し人を探すのは難しい。俺は顔を左右に視線を向けて、さっきの彼を探せば、照明の光を受けて、俺の顔に描かれたマジックのゴーグルが極彩色に光るだけだけだった。
カウンターで飲み物をオーダーする。その時に、下げていた顔を上げれば、
バーテンダーはピエロみたいなメイクをしていて、俺はそれを見て、
「いくら………?」
と、聞けば、
「仮装してれば、2ドル安くなる………それは何の仮装だ?」
と、言われたから、俺は笑ってポケットの中からドル札を取り出しながら、
「さあ………? アンタのは何のメイク?」
5ドル札をカウンターに置けば、透明のジンを渡されて、
「見て分からないか………? ピエロにしか見えないだろ………?」
俺は彼に、
「………何のため? 自分の心を隠すつもり?」
笑って、トールグラスを掴み、彼を後にした。
音に酔いたい。
酒に酔いたい。
誰かが吸う煙草の香りに酔いたい。
酔ってしまって、一人になりたい。
狼がコヨーテが遠吠えをするみたいに…、
顔を上に上げて、睫毛は下げ切って、
目は閉じて、音に酔う。
誰かが俺の身体にぶつかれば、俺はより、孤独を味わうことになる。
こんなに人がいるのに、誰も俺のことを気にしない。
こんなに人がいるのに、誰も俺のことを見ちゃいない。
誰も俺のことを知らない。
俺を知らない心地よさ。
孤独という名の心地よさに身を任せてしまえば、俺の心は少しずつ、
度数の高いアルコールで、
心が溶けていく。
顔に描かれたゴーグルで俺の顔を隠してしまい、俺は両手を耳に当てて、耳で防音のヘッドフォンを作れば、爆音の世界に陶酔する。
全身がジンの中にアルコールの中で溶けていくような心地よさ。
そう、本来はそう、きっと、誰が誰かなんて知らなくていいし。
そう、誰が誰かなんてどうでもよくて、
本来はどうでもいいこと。
俺は生まれた時から1人でこれからも1人で生きていくと再確認できれば、
心が覚えた違和感を全部、足元に落とし、
俺は、用済みになった世界から、
泥の様な人との繋がりとかごちゃごちゃとうるさいSNS 至上主義の世界から抜け出して、
空になったグラスをカウンターに返しに戻った。
さっきのピエロに、
「………そのメイク好きだ…」
と、言えば、彼は笑って、
「俺もそのゴーグルメイク好きだ………」
そう言われて、俺は、自分が目の周りにゴーグル描かれていたのを今さら、思い出して、
「………………」
恥ずかしくなり、目元を手で覆って、
…彼の視線から目を反らした。
目元を擦って、その場から立ち去る。
急に褒めるから、
急に俺を見るから、
急に彼を意識してしまったのか分からないが、俺はなんだかとても気恥ずかしく、
「…………………」
やはり、ジンを最初に手渡された時と同じ反応をとってしまった。
俺は彼にすぐに背を向けて、
「……………」
階段を降りて、
ドアを開けて、
外に出て、
靄のかかったネオンが目に響く街に出て、街灯を見上げて安心をした。
良かった、俺は、やっぱり、1人だと、再確認した。
まだ、23時だ。
俺は中に戻ろうか色々と考えて、歩道の淵に腰を下ろして、街灯の光を見上げていたら、野良猫が俺の足元に近付いてきた。
警戒心を持っているわりには、目に光が宿っている。
好奇心で近付いてきている。
彼か彼女は俺なんか何も知らないかのように、俺の横を一旦、通り抜けた。
俺は決して、彼か彼女を追うことなく、
彼か彼女に声を掛けた。
「………オレは1人だよ………」
その言葉が分かったのか分からないが、
彼女か彼か彼女は、
俺の背中側から半周、回って俺の足元に戻って来て…、
尻尾で俺の膝を撫でて、何気なしに俺を振り返った。
尻尾の下を見て、彼だと分かり、俺は笑いながら…、口を大きく開いた彼の頭を手を伸ばして、
撫でつけた。
「………なんで、まだいるんだ?」
猫を撫でていると、急に頭上から声を掛けられた。
俺は鼻先を上げると、バーテンダーのピエロがそこにいた。
「………まだ…中に戻るかもしれないと思ってたから…」
戻るかもしれないし、家に帰るかもしれなかった。まだ、何も決めてなかった。
彼は、ポケットから煙草を取り出して、
「………ふうん。けっこう優柔不断なんだな…」
1本、摘まみだし、摘まんだままで、ライターで火を点けて、
火の吐いた状態の煙草を俺の口元に近付けて、
「………吸うか…?」
まるで世界中の人間が喫煙者であることが前提の様に俺に、煙草を差し出した。
俺は、煙草を吸わないので、
「………いや、いい…」
と、言えば、彼は、頷いて、
「………今、休憩なんだ…」
と、言って、まずは煙草を一口、吸って…、
一口、吹かして…、
人、1人分、間を開けて俺の横の歩道の淵に腰を掛けた。
野良猫が俺達の間の人、1人分の隙間を煙を尻尾で掻き混ぜるように、通り過ぎて行った。猫の尻尾が通るのを俺は、
「…………………」
目で追えば、彼は、
「猫が好きか?」
と、聞いた。
俺は、
「ああ…たぶん………」
と、答えた。
何事も明確な答えを俺は持ってないし、あまり考えようとしない。
彼は、笑いながら、煙草を吸いながら、
「猫のどこが好きだ………?」
と、聞く。
俺は、
「明日の不安をしないところだ………」
と、言った。
俺は、上空に舞う薄曇りの煙を見ながら、
「………猫は明日の飯の心配もしないし、明日、何が起こるかなんて何も想像しない。脳が小さいからそこまで考えないんだろうな。猫がうらやまし��………」
と、言えば、
「脳が小さいのが、うらやましいのか?」
と、言われたので、
「………そうじゃない、けれど、人間でこの脳の小ささは問題だが、猫としてはこのサイズの脳は適しているんだろう………」
煙の一部が鼻腔をくすぐる。
「適当な大きさで生きてみたい………」
と、言えば、彼は煙草を持たない手の親指で、俺の眉間の間に親指の腹を押し当てて、
「そんなに…寂しそうな顔をするなよ………」
と、言った。
その距離感の無い態度に、俺は、脳の大きな猫だから、
「…………………」
…少しだけ肩を上げてしまった。
0という数があって、彼は0の距離で俺に話し掛けてくる。
「キスしていいか………?」
俺はそう問われて、
「………えっ? ………ん」
返事できないままで、彼は煙草から離したばかりの唇が自分の唇に押し付けられたのを感じた。
彼の口元に煙草の火が、燃える火が近くにあったからだろうか。
彼は俺にキスをすれば、
そのキスは俺が思う以上に熱く。
俺が思う以上に甘かった。
唇だけを重ねて、
ぴったりと重ねるだけの、
ティーンエイジャーのようなキスをした。
煙草が短くなるのも惜しくなく、煙草が短くなっても、彼は俺にキスをした。
煙草はとっくに地面に投げ捨てられていて、火はもう灯されていないのに…、
1人でいる以上の心地よさを感じたので、俺は彼とキスをし続けていた。
ギトギトと輝くネオンの中に、常夜灯が優しいオレンジ色で俺達を照らして、少しのアルコールと少しの煙草の匂いが、嫌いじゃなかった。
彼は俺の耳元に唇を寄せて、俺の耳元で煙草を吸うみたいに、
「………俺の部屋に来ないか?」
と、聞いた。
俺は、
「仕事は何時まで………」
目を細めて遠くを見ると、ネオンの光が筋になるのを見つめながら、
「………ちょっと、調整できないか聞いてくる………」
言って、俺は煙草を吸わないのに、1本の煙草を俺に渡して、ライターを投げて寄越した。
彼は、
「煙草の火が消えるまでに俺が戻らなかったら、仕事は朝までだから………」
そう言い、彼は扉の中に消えて行った。
俺は知らない人の誘いにこのままのっていいか、自分で考えるのが面倒だったので、
「…………………」
言われた通りに、慣れないライターの火を点けて、煙草に火を点けて、吸わない煙草が灰になるのを、ぼおっと見ていた。
別に何をするわけでもなく、ただ、時間の流れに身を任せる。
これから何が起こるかなんて想像するだけ無駄し、不安に感じるだけ無駄だし、なにより。
この、1本の煙草が燃えるだけの時間を待つのが。
「……………………」
愛おしかった。
すぐに彼は扉から出て来て、俺の指に挟んだだけの煙草を見て、
「俺、仕事はやいな」
笑って出て来た。
「その煙草、吸っていいか?」
俺は、
「………勿論」
言って、彼の口元に、煙草を近付けた。
彼は、自分の手で煙草を持たずに、俺の手元から煙草を吸った。
煙草を砂時計のように使う人間を初めて見たし、それに喜んでいる彼が年上なのに、年下に見えて、煙草を待った時間と同じくらい、
なんだか愛おしく感じた。
彼は砂時計の砂が落ちきるまで、最後まで俺の手元から煙草を吸った。
彼の部屋の玄関で彼は俺にキスをした。
壁に背中を押し当てられて、唇をそっと寄せられて。
俺も唇をそっと寄せ返し、彼にキスをした。
道端でしたキスは唇と唇を触れあうだけだったが、部屋の中に入ると彼のキスは豹変する。
すぐに俺の心の中をこじ開けるように、彼の柔らかく温かい舌が俺の心を触り出す。
「…………んぅ」
その舌の感触に、俺は彼に自分の大事な孤独を奪われてしまう気がして、
「……………ヤ、やだ…」
性急すぎるキスから逃げようと、顔を反らすと、
「…………っぁ………」
閉じた瞳の奥から生理的な涙が溢れ出て来てしまって、
「……………シャワー浴びる…」
と、言いながら、両手の拳の付け根で彼の肩を押した。
彼は��悪戯をした子供の様に笑って、
「俺も一緒に浴びていいか………?」
と、聞いた。
「……………………」
俺はドアの鍵を思わず見たが、
俺が彼に付いて来たのだ。
全て合意の上。
こうなることは部屋の中に入る前から分かっていたはずだった。
シャワーブース前で、彼はコットンにクレンジングウォーターを染み込ませて、メイクを落とした。
俺は、横からそれを見ながら、彼の指に自分の手を寄せて、
「オレがメイク落としてやるよ………?」
と、言えば、彼は薄く笑って、俺にコットンを渡したので、見様見真似でコットンにクレンジングウォーターを含ませて、彼のメイクを目元から落として。
「………………ん」
彼は長い睫毛を閉じて、金色の睫毛がバスルームの光の中で濡れて光った。
俺はメイクをしたことがなかったのに、どうして、彼のメイクを取ろうと思ったのか。
なんとなくだが…、彼の素顔を徐々に見たくなったのだ。
「………………」
頬のメイクを落として。
少しずつ、彼の素顔を見れば、
「……………かっこいいな…」
彼は俺が想像したより、整った顔をしていた。
彼は笑って、
「お前のメイクも落とすだろ?」
そう言って、俺は鏡で自分を見たが、俺は顔を両手で覆って、
「………オレは…落とさなくていい………」
と、顔を隠した。
俺は素顔を心をまだ彼に見せたくない。
「…………っひぃ…」
シャワーブースの中で四つん這いで胸から上を、
「…………っぁ、うあ………」
ブースの外に水が垂れ流されるのも構わずに、
「ココ、気持ちいいだろ………?」
上半身を箱の中から出した状態で、下半身を抱え込まれる。
名前をまず聞いた。『アンタ、名前は?』聞けば、彼は、『コラソン。みんな、コラさんって呼ぶ』、俺は、『そう…コラさん、オレは、ローだ』、と、簡単に自己紹介をした。名前だけ情報を交換し、次に、今日の夜の交渉をする。金とかの話じゃない。合意でこの場にいるのだから、『どっちが、トップで、どっちがボトムをする?』役割の交渉に入れば、彼は、『俺はどっちでもできるけど、どっちが好みだ?』と、また、悪戯に聞いた。俺は聞かれると、急に戸惑ってしまい、『………オレもどっちもできるけど………』言えば、彼は、『けど?』と、聞いて、クスリと笑い、『けど、そうだな、俺は、トップがいいな、オマエ相手には………』と、言った。彼はワセリンを棚から取り出して、『自分で準備できるか?』と、聞いたが、俺は、首を横に振った。そして、彼は、俺の顔を覗き込んで、『ローは可愛いな………』と、俺の心を、メイクをしたままの俺の心の奥底まで覗き込んだ。
熱い雨を頭の上から被り、換気の悪いバスルームは湯気だらけで薄曇りの中、彼に服を脱がされて、シャワーブースの中で抱き締められた。
俺が背を向けていたままなのに、彼は、俺を背中側から抱き締めて、首筋に何度もキスをした。
そして、
俺に彼の名前以上の情報量を、
愛撫をして注ぎ込んでくる。
「あっ、…ウァ………」
俺の身体は彼の情報で情報過多になり、少しずつパニックを起こす。
「コラさん………はやい……オレ、追い付かない………」
「何がはやい? 何が追い付かない………?」
それを慰めるように、彼は後ろから抱き締めて、俺の背中に唇を何度も押し付けた。
「心の動きがはやすぎる。心が追い付かない………」
そう言えば、彼は俺の背中で、笑って、笑った彼の吐息で、
「ひゃぁ………」
俺は変な声を上げて、背中を反らした。
彼はパニックになった俺を、
シャワーブースの中心に座り、
俺を彼の膝の上に座らせて、
俺の心が少し落ち着くまで、待ちながら、何度も俺の身体にキスをした。
俺の目元を大きな手の平で覆って、視界からの情報を遮って、
「俺の身体に体重を預けて………力を抜け…」
俺は彼の大きな手の平に頭を預けて、熱い情の雨の中で息をした。
彼は俺の身体を後ろから抱き締めただけで、手は動かさずに、唇を髪の毛から、耳元、肩へと滑らせて、優しいキスの雨を降らせた。
「………………」
「不安になったら、俺の名前を呼んでいいから………」
頷いて、
「コラさん………コラさん………」
ただ、呟いた。
その度に、彼は優しいキスを濡れた唇で俺の肌の上を流れていく水の粒を吸い取る様に、
キスをした。
「コラさん………」
俺はその優しいキスの雨に体重を、心の負荷を全部、預けて、渦を巻いて流れていく排水溝の中へと、重荷を全て流した。
「……………っぁ」
熱さとキスで頭が身体が弛緩をしてきた。
熱さとキスで鼓動が速くなってきた。
熱さとキスで脈が速い。
脳が痺れ出す。
脳が熱さで痺れだす。
キスをされながら、後ろから裸で抱き締められているだけなのに、
心が熱い…。
俺の身体から力が抜けたのを確認した彼は、俺の目元を覗き込み、
「なんだ………水性の顔料だったのか………」
「……………?」
「メイクだよ…ほとんど落ちてる………」
そう言って、俺の目元を親指で拭った。
「ほら、メイク、全部とれたぞ………」
俺の心を隠すものはもう何もなくなってしまった。
俺は彼の前で逃げも隠れも出来ず、向かい合って、膝の上で裸で抱き締められて、
「………そんな顔するな…」
彼は笑った。
「………どんな顔?」
彼に聞いた。
俺は今、自分がどんな表情をしているか、素直に分からないから、素直に聞いた。
「………困った…とか、戸惑ってる…というか…」
彼は言葉を選びながら、俺の両腕を折り畳んで、俺を彼の大きい胸板の上に載せて…、
俺に雨が降る様にキスをした。
「…………んぅ…」
俺は自分の反応も忘れて夢中になって彼とキスをしていれば、彼は俺を抱き締める腕に力を込めて、俺の手首を握った。
俺の顔は上を向いている。
熱い雨以外に彼の鼻先、顎、頬からも熱い雨が流れて来て、俺の顔に零れ落ちる。俺の頬を顔を全身を濡らす。
息苦しくなり…、
「………んぅう…っつ」
俺が喉から声を溢すのに、
きっと、もっと困った顔をしているのに、
「んふっ…んんっ………」
目頭から涙が溢れて来たし、目頭の涙は目尻に流れていく…。
涙で擦りガラスのような瞳で、
彼を見れば、
彼は、熱に浮かされた瞳でじっと俺を見ていた。
そして、
「………んぁっ………っはぁ」
唇を離されれば、シャワーの水とは違う、粘性の高い唾液が、俺と彼の唇の間で糸を引いた。
「あっ………はぁっ…はぁっ………」
荒い息で心を落ち着かせていようと思えば、下肢に手を伸ばされる。
キスだけで俺のペニスは反応をしたし、彼のペニスも熱を持っている。
耳がじんじんと痺れる。
快感を感じると、耳がじんじんと痺れ出す。耳の痺れはすぐに脳に到達し、脳が痺れる。
ペニスに手を寄せられて、長い指を絡められると、
「っひ………ヤ、ダメ………」
腰が引けた。
彼は優しく微笑みながら、俺をシャワーブースの熱い雨が降る、
檻の中、
俺を隅に追い詰めた。
やっぱり、俺は、
「心が………心が、追い付かない………」
そう言うのだ。
「………それはだから、どういう意味なんだ?」
いつもはセックスだけなのに、今日は何故か、心が追い付かない。
俺は腕で顔を隠して、
「分からなっ………ヤァ、ァア………」
「……………………」
彼は俺のペニスを触りながら、投げ出した脚の付け根を触る。
「………ひぁ………」
「はは、かわいいなぁ………」
腕の隙間から自分の下肢を見れば、
トロトロと本音を垂らしながら、彼の煙草を持っていた指が、俺の身体の中心に伸ばされて、
セックスの準備が本格的に始まるのだと思い、俺は、彼の手を咄嗟に握って、
「………まって、まって………」
制止し、
「………ダメ、…ダメだ………」
逃げようとした。
彼は笑って、
「悪いな………逃げようとすれば、俺は、追いたくなるんだ………」
そう言って、両手を下界へと伸ばし、両手両足、四つん這いでシャワーブースから逃げようとする俺の背中から覆い被さり、
「………気持ちいいことが、きらいか?」
と、俺に聞いた。
俺は濡れて湿った髪の毛で、頭を左右に振って、
「………好き」
「じゃあ、コレ好きだろ………」
アナルに長い指が差し込まれて
「……っひぁ、やぁん、………」
熱い感覚が襲う。
ぬるりと指が入り込み、水を流し込まれて、洗浄をされているだけなのに、
「うあ、っあ………」
本当に心が追い付かない。
「やだぁ、………やぁ、ああ………」
腰を抱き込まれて、洗浄と言いつつ、2本の指で上下に広げて、腹の方も押されると、
「っくぅ………うあぁ………」
ビリビリとした快感が太腿に走り、手を突っ張った。
彼は、俺の身体の反応はあまり気に留めずに、指を抜き差しして、
「………なんだ、キレイじゃないか………」
俺の直腸の確認をして、
「はぁ、………っつぁ………」
俺のうなじにキスをして、楽しそうに彼は、
「………すぐに突っ込めそうだな………」
と、言った。
俺は、
「ヤダ、ヤダァ………無理…無理………」
彼のペニスを見て、シャワーブース外へと逃げ出した。
腰を掴まれて、引き戻されて、
「それ、みんな最初、言うけど、だいじょうぶだから………」
言われて、アナルにまた指を差し込まれる。
「んっひぃ………ひぃい………」
「イくなよ………イくと、アナルが��まるから………」
「ムリ、ムリ………っひぁっ………」
中の気持ちが良い所を探られると、条件反射で腰が震える。
突っ張っていた手から力が抜けてしまい…、
「………俺の指は好きか………?」
言われて、後頭部を床に擦り付けながら、
「好き、好きだから………指だけで終わらせて………」
言えば、
彼は、鼻で笑った。
「やだ。……こわい……っひぁあ………」
「………もっと俺のこと好きになるようにしてやるよ………」
指だけで狂いそうなのに、
「うっ、うん、あっ………あぁ………やら………」
泣きじゃくりながら、快感の拒否��懇願する。
熱いし、耳がじんじんと痺れっぱなしだし、腰は彼に突き出したままだ。
彼の指が入り口を薬指で広げて、長い中指で、入り口をぐるりと撫でると、
「っひゃぁあん………」
変な声が出た。
「わるいわるい………」
言いながら、また指を2本、同時に、
「ア、ッア………」
差し込まれれば、
「ヒドイ…ひどい………」
もう尾骨まで震えた。
ベッドに連れて行かれて、濡れた髪の毛のままで、寝かされて、
「っくん……んん………」
ワセリンをアナルに塗られる。
俺はシーツを指先で握りながら、それに耐える。
「もう入るけど、………もうちょっと遊んでいいか?」
「えっ?………」
俺は溢れる涙で視界が薄らぼんやりしているし、
熱い湯のせいで、思考も薄らぼんやりしている。
彼は、俺の瞳を覗き込んで、
濡れた目で俺を愛おし気に覗き込んで、俺の視界を一瞬、彼だけにした。
彼の右手の人差し指と中指でピースを作った状態で親指と人差し指と小指を曲げて、
「っひぃ、いいっ、いぃいい………っ」
ピースの部分でペニスを挟み込まれて、
「うあ、ヤダ、やだ…っ」
親指で睾丸の間を押される。
彼の指が上下するたびにペニスは扱かれて、同時に、親指で表面から前立腺を押される。
「コラさんっ、…イく、イク………っ」
太腿が引き攣り上がり、足先が上がった。
「イっちゃダメだ………中が締まるから………」
彼は、ピースの指を押し上げて、俺のペニスが俺の腹に当たるくらい持ち上げられると、男の身体の構造上、射精が出来ない。
「………っ!? ………っつう?」
俺は目を大きく見開いて、
「もうすこし、我慢しろ………」
「…………………!?」
身体だけはガクガクと震えるのに、射精が一旦、止まる。
中がイったわけではない。
射精が出来なかっただけだ。
俺の腰の震えが収まるまで、俺のペニスをピースで押さえつけて、
「………っん………」
「…………………」
彼はベッドサイドのショットグラスにパッケージを外されて、並べて入れられた煙草に火を点けた。
「コラさん、手ぇ…、っ…離してっ………」
彼はピースサインを一旦、離して、俺のペニスは角度を持って、
腹からは離れた。
「イきたい………」
彼は、煙草に火を点けて、
「………ダーメ」
煙草を吸いながら、俺に笑い掛けた。
その後は、ずっとピースでペニスを弄り続けられる。
イきそうになれば、ピースでペニスを上に押し上げられる。
すると、射精が出来なくなる。
ぐちゃぐちゃのドロドロになっても、
「コラさん、もうヤだ、ヤダァ………」
俺はもう何を言っているか分からないが、イかせてもらえないの連続。
射精欲の感覚が短くなってくる。
「何が���ダ………?」
俺は、口元を震える指で覆って、
「………煙草、吸わないで………」
本音を言うのが恥ずかしく、そう言うと、彼は少し、目を見張って、片手の煙草を見て、
残り半分、
「じゃあ、ローが吸ってて………」
言って、震える俺の指に煙草を持たせて、俺の唇に煙草の吸い口を咥えさせて、
「………っかは、ぁっ………っはぁあ………」
ピースで押さえたままのペニスを扱きながら、俺のペニスをフェラチオした。
「かはっ………ぁあ、かはっ………」
じゅくじゅくと先端から染み出てくる液を彼は舌で舐め取りながら、
煙草に何か匂いが付いている。
脚を大きく開いて、下半身を彼に固定されて、されるがままで。
「っはぁ、かはっ、………はぁあ………」
煙草に咳き込みながら、
涙を溢しながら、
フェラチオされながら、
煙草を吸った。
ジェニパーベリーの香りがする煙草の香りの中、
「っひぃ、イク……イク………」
と、言えば、
「まだ、ダメだ………」
そう言われ続けて。
俺は吸い終わった煙草を手にしたまま、
「もう…もう……疲れた………」
と、素直に言った。
何度もイかせてもらえないのが続いたから、身体が力が入るのか入らないのか分からない。
「…………………」
震えた手で限界まで短くなった煙草を持ったままだった。
彼は俺の胸に落ちた灰を指を伸ばして取り除いてくれて、短くなった煙草を手に取り、火を消して、
俺は、涙で溢れる瞳で、
「………コラさん、優しくして………」
彼にそう言った。
「うん………分かった………」
ここまでされないと、俺は、自分がセックスを求めているのではなくて、彼の優しさを求めているということに気付けなかったのだ。
彼は俺を全身で抱き締めて、
「………コラさん、なんで煙草にジンの匂いが………?」
と、彼に尋ねると、彼は俺の頬にキスをしながら、
「うん………? ショットグラスに煙草とジンを含ませたコットンを入れておくと、煙草にジンの香りが移るんだ………」
彼は俺に優しくキスをしながら、
緩慢な動きで、
俺の中に入ってくる。
「…………んん……そう………」
ゆるやかに俺の中に彼のペニスが入って来て、先ほどの攻め立てた同じ彼とは思えなないくらい、優しく、
俺を抱いた。
「…………はんぶん、入った………」
「うん………」
俺の肩に何度もキスをしながら、
「つらくないか………?」
と、俺に聞いた。
俺は唇を薄く開いて、
「………きもちいい…」
と、言った。
彼は笑って、俺を見詰めて、
「そうか………」
「うん………」
俺も彼を見詰めた。
「これで、ぜんぶ………」
「うん………」
俺は頷いて、彼の唇にキスをした。
「………………」
「………………」
暫く長いキスをした。
2人で吸った煙草の香りがした。
甘く疼く痺れを持て余しながら、
彼と長いキスをした。
「………動いていいか………?」
「いいよ………」
「どのくらいの速さで………?」
俺は笑って、
「すぐにイっちゃうくらい………」
彼にそう言えば、彼は笑って、
「俺もすぐに…イきそうだ………」
途端に、ペニスを動かした。
「………っひい、ィイイ………」
俺の喉が反り、高い声が出た。
ペニスを抜き差しされる。
気持ちの良い所を彼の心がかすり触っていく。
気持ちの良い所を刺激される。
心を刺激される。
両腕を折り畳まれた状態で彼に腰だけで抱かれる。
脚が彼のペニスが入り込んだ時に、跳ね上がり、
彼のペニスが去れば、俺の喉から嬌声が漏れる。
爪先まで緊張したままで、毛穴がぶわりと広がる。
汗が零れ落ちる。
全身を性感帯にして、彼に、抱かれる。
優しいセックスに心も身体��何もかも奪われる。
魂だけを大事に自分の物にしようとするみたいに、腕を胸の中で抱え込み、
「………んっ、っひ、っひ………」
彼の与える快感に耐えた。
律動が収まらなく、鼓動は大きく打ちっぱなし、何もかもが止まらない。
何もかもをセックスに持って行かれる。
驚くくらいの甘い快感に全てを奪われる。
彼に何もかもを奪われる………。
「イく…、イく……、コラさん! コラさん………」
腹筋が引き攣れて、汗がどっと出て来た。
「うん…うん………いいぞ……イって………」
オーガズムの波が押し寄せる。
彼の腕を掴み、
「ああ、うああ、アアァア!」
俺は泣きながら、太腿を震わせて、彼の腰を挟み込んだ。
下半身だけが緊張し、断続的に震えた。
射精とドライオーガズムを同時に味わい、
「………うあぁ、…ぁあ! コラさん、なに? なにこれ?」
涙が止まらなかった。
1回の挿入とは思えないくらい、濃いセックスをして、俺は彼が達した後、ベッドから起き上がれなかった。
彼はけっこう平気で、使い終わったコンドームを縛り、ティッシュに包んでゴミ箱に捨てて、煙草を手に取った。
ジェニパーベリーのジンの匂いが俺の鼻腔をくすぐった。
震える肩で彼の方を向き、
「ねえ………俺にも、ひとくち…」
と、彼に煙草をねだれば、彼は笑って、
「甘えん坊だな………」
言って、煙草を自分の口で吸って、
俺に口付けをして、
「……………ん…」
煙を俺の口内に押し込んで、
「………っは、かはっ………」
やっぱり、俺は煙草の煙にむせるのだった。
END
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The Passion 1
【1DAY: 1st Impression】
「パッションという言葉には2つの意味がある。
『情熱』を意味し、同時に、反対の意味を併せ持つ。
『受難』という意味だ」
パッションフルーツを食べていたら、急にそう言われて、俺は、
「………………?」
彼の方を見た。
無精髭を生やした男はそう言った。
2つにナイフで割ったパッションフルーツの中身を指で掬いながら、奥歯で種と一緒に果肉を噛む。
パリパリとナッツを食べているような食感が好きなのだが、急に何を言うのかと、男を見れば、
彼は彼の兄がナイフで割った、パッションフルーツを皿に置いたままで、
席を立った。
俺は、うまければなんでもいいので、
「………オマエの弟、大丈夫か?」
と、兄の方を見た。
兄は兄で、
「軍隊で戦争に行ってから、気が変わったみたいだ…。別人みたいになった………」
と、溜息を吐いた。
彼はパッションフルーツをナイフで割る手を止め、席を立った弟の後を追った。俺は兄弟の背中を見ながら、パッションフルーツの種を摘まんで、口の中に入れ、種と果肉を舌で分離させてから、先に美味しい果肉をジュースにして、最後に口の中に残った、
種を歯で咀嚼した。
パッションフルーツを食べ終わり、俺は兄弟が向かった、部屋へと行けば、兄が弟と肩を寄せ合って、ベッドに座って話し合っていた。その姿を見れば、普通の兄弟だが。なんというんだろうか、ノイローゼといえば、いいいのか、専門用語でいえば、どこからどう考えても、『PTSD』というべきだろう。イラク戦争を体験した兵士達が過酷な戦争体験から肉体だけではなく、心が傷付いて帰って来て、戦争が終わっても、実生活に中々、復帰できない。
社会問題になっている。
ニュースでよくやっている。
俺は、彼の弟と初めて、今日、会った。
パートナーである彼の唯一の身内ということで、合わせてもらった。
彼の弟は俺と会った瞬間から挙動不審だった。目線が泳いでいて、視線が漂う。そして、俯いたまま、
「………………」
話をしない。
俺は彼と、その弟の間に挟��れて、まあ、何も話さずに、彼が彼の弟とどう接するのかをじっと見ていた。彼はそれがまるで普通のごとく接していたので、そんなもんかと思い、俺も、あまり気にすることを止めにした。談笑が弾むこともなく、笑いが起こるわけではなく、まるで最後の晩餐だったが、たまにはこうゆう日があってもいいだろうと、俺は思った。
色んな日がある。
グレゴリオ暦でいうと、1年間は365日だが、365日もあれば毎日、何かが起こる。その出来事を自分が望む、望まないにも関わらず、毎日、良くも悪くも毎日、何かが起こる。
俺はドアの傍に立って、その兄弟の様子を見ていた。
俺は彼の弟の家に1週間ほど滞在する。療養中の弟の身を見ながらの滞在だ。
俺は、他人の過程にとやかく言える立場ではないので、
「………………」
静かに、彼らの様子を見ていた。
兄は弟に、プラスティックのボトルから何かの錠剤を取り出し、それを弟に手渡した。
弟は何も言わずに、
「…………………」
その薬を飲んだ。
そして、暫く、兄と弟は黙って、弟が落ち着くのを寄り添って、時が流れるのを待っていた。
薬が効いて、時が解決するのを2人で待つ、大人の男を俺は黙って見守った。
【2DAY: Smoke】
食卓に、やはり無精髭の弟は大分後からやってきて、座って、兄と俺が作った、朝食を何も言わずに食べ始めた。
兄はその弟の様子を見て、少し、安心したようだ。静かな安堵が部屋の中に置かれて、俺もそれに、
「………………」
何も言わずに、朝食を食べる手を止めずに、観察した。
朝食を食べ終わり、皿を片付けて、食卓を綺麗にし、テーブルで俺はぼーっとしていた。休暇なので、ぼーっとするに限る。
窓辺をぼーっと見ていれば、窓の外から白い煙が流れて来たので、ドフィは、俺のパートナーは煙草を吸わないので、俺は、不思議に思い、椅子から立ち上がり、窓辺に向かうと、弟がそこで煙草を吸っていた。
「………………」
煙草を吸う弟と目が合う。
窓の向こうの弟が俺を見て、煙草の箱を差し出して、
「………吸うか?」
と、俺に煙草をすすめた。
彼が俺に向かって初めて、寄越した言葉だった。
俺は、普段は煙草は吸わないが、未知とのファーストコンタクトに興味を覚え、箱から1本、煙草を摘まんで手に取った。彼がボトムのポケットからライターを出そうとして、ポケットの前と後ろを探っているので、
俺は煙草を口に咥え、
彼の煙草の先に、自分の煙草の先をくっ付けて、
火を貰う。
短くなった煙草と、長いままの煙草の2本以下、1本と約半分の長さの距離まで近付いて、
火を貰う。
鼻先を掠め合って、火を点ける。
「………ありがとうな…」
俺は彼に一言、礼を言って、煙草と一緒に空気を吸い込んだ。そして、上を向いて、煙草の煙を空に、空気にまた吐き出した。
「………………」
空気から煙草の成分を貰い、体内に吸収し、空気に煙草を戻す。
その成分の還元の繰り返しを何度か繰り返す。
「………………」
普段、吸わないので、煙草の成分の効果が俺の身体に何かを起こすことはほぼない。
でも、煙草を吸う行為が、この男との1つのコミュニケーションであることは間違いない。
喫煙室で仲間意識が生まれる理由が何だか分かった気がした。
「………………」
俺は黙って彼の横に立って、煙草を吸っていれば、彼は、
「オマエ…普段はタバコ、吸わないんだろ?」
と、俺に聞いた。
俺は、
「………………」
黙ったままで頷いた。煙草を唇から離して、人差し指と中指で挟んで彼の、薄い虹彩の瞳を見れば、昨日、落ち着きの無かった男とは思えないくらい、何かを見据えた目をして俺を見た。見据えた彼の瞳との間に、1筋の煙が、一種のカーテンの様な効果をもたらす。煙草の煙が無ければ、直視できない、鋭い眼光の向こうに、男は一体、どんな現実を見てきたのだろうか。俺はそう思ったが、
「……………そうだ」
一言だけ、彼に言って、もう一度、煙草を口に咥えた。
普段、煙草を吸わないからだろうか、1本の煙草を吸う時間は、長いようで短く、人差し指と中指に挟んだ煙草の長さは、短いようで長かった。
「………なあ、昨日、”パッションフルーツ”について、話をしただろ? あれの意味を聞いてもいいか?」
と、俺が宙の煙を見詰めながら彼に聞くと、彼は向こうの景色を見ながら、
「………パッションフルーツを見たら、急に思い出しただけだ………」
と、言いながら、続けた。
「もともと、パッションは、ラテン語で、キリストの十字架に対する苦難、受難を意味する言葉だったのが、英語になって、十字架を背負うキリストの様子を英語が、情熱の意味を付け加えて、英語を喋らない人の間では、愛を意味する情熱という言葉になった」
それを聞いて、俺はその場にしゃがみ込んで上を見上げながら、
「情熱はいつでも劣情と激情と苦難を同時に背負ってやってくるのか………」
俺は手入れの入ってない木々の間から、光が筋になるのを見ながら、呟いた。
「………………」
弟は俺の言葉には何も返さずに、また煙草に火を点けて、俺は長い草の先を指で摘み、弄びながら。彼を、片目で見ながら、
「………なんで、そんなに煙草を吸うんだ………?」
と、聞いた。
彼は、口から煙を吐きながら、
「生きていると分かるからだ………」
と、言った。俺は、煙草をわざわざ吸わないと生きていることを実感できない男がこの世にいることに難儀さを感じながら、
「なぜ?」
と、聞けば、彼は白い煙を上に漂わせながら、
「無意識に吐く息は、色が無いから見えないだろ? 寒い日の息は白いだろ? オレはアレを見ると、自分が息をしていると実感して、………生きていると実感するんだ」
俺は、屈みこんだ膝の上に腕を乗せて、笑った。
「じゃあ、冬は、煙草を吸わないのか………?」
彼は、俺を見ながら煙草を咥えたままで、首を横に振った。口元を少し、緩ませて、
「いや?」
彼は煙草を指に挟み、土の上に、人生の様な消し炭を落とし、
「冬の寒い日は、生きていることを、2倍、実感するだけだ」
と、言った。
【3DAY: Buggy Fun】
バギーで岩の中を進む。
バギーの運転は簡単で、アクセルしか無い。
1人、1台のバギーで岩山を進みながら、大きな岩があれば、アクセルをゆるく押して、片手でハンドルを操作しながら、岩を避けるが、多少の岩は踏んだ方が、バギーの車体が大きく揺れて楽しい。
腰を浮かした状態で、顔にはゴーグル、後でシャワーで落としやすいようにダメージデニ��のショートパンツに、ミリタリーブーツでバギーに乗る。こんなこと、都会では出来ない。
郊外に引っ込んで住んでいる弟がいると彼から聞かされた時には、驚いたが、弟に感謝だ。俺はモータースポーツ全般が好きで、彼にそれを前から言っていたら、『弟が趣味用にバギーを持っているから、俺達の分も買って乗りに行かないか?』と、誘われた。俺はもちろん、それに承諾をした。
俺は、笑いながら、バイク用のゴーグルの向こう側で笑いながら、岩山の上に1番乗りで到着した。
バギーのハンドルに片手だけ握ったままで、バギーから飛び降りて、岩山の上で、俺は地上を見下ろした。
兄弟が岩山を上がって来るのを待つ。
2人とも、運動神経が中々、良い。兄も普段はジムにしか行ってないくせにバギーを乗る重心の乗せ方が上手だし、弟は元軍人というだけあって、ハンドルさばきがうまい。兄の方はたまに、岩にぶつかるが、弟はほとんど岩にぶつからずに、ハンドルを切って上に進んでくる。
バギーの大きいタイヤが俺の目の前に迫って、俺は、身動きせずに、まずは弟を歓迎する。
「うまいな。さすが、元軍人は違うな!」
俺がそう言えば、彼は、バギーの上で口元をゆるませて、グローブを外して、ゴーグルを外して俺を見た。
「ははっ………1番乗りしてるくせに、それは本心なのか?」
ゴーグルを付けていた目元だけ、岩埃がついてなくて、俺達は全身、砂とか岩の埃まみれだった。
「ああ…本気でほめてる」
と、弟に言えば、
「久しぶりに人に誉められた気がするぜ」
彼は、嬉しそうに笑った。
兄がバギーで上に登って来るのを待ち、今度は下りを降りる。
途中までは同じ岩山だが、岩山を過ぎればそこから先は泥でまみれた川がある。バギーの車輪の直径の方が川より高いと、踏んで、俺はそのまま川に跳び込んだ。
泥が顔に、全身に飛び散るので、ゴーグル以外の全身、俺は飛び散った泥の破片を浴びながら、この不安定な土地を行くのが楽しいのだ。
平坦な土地を進むのはもう飽きた。
都会の慣らされた画一的な土地を歩くのはもう飽きた。
あるがままの自然を楽しむ。
だが、自然は、誰にも予想がつかなくて。
「………………うおっ!?」
急にバギーの前輪が、何かに引っ掛かり、後輪が大きく浮いた。
バギーの車体が大きく前傾したことにより、ハンドルを握っていた手が滑る。
片手だけでハンドルを握って入れば、視界が大きく反転した。
俺の身体は大きく、バギーから振り落とされるように、大きく跳ね上がり、
俺の視界の中に、後ろを走る兄弟が映り、
その後、空が見えて、気が付けば、
俺は泥の中に跳び込んだ。
「……………っ!」
泥の中に背中から着地して、俺は全身、泥まみれだ。
泥だらけの手で顔のゴーグルを外せば、前輪に倒木の枝が泥に半分、埋まっていて引っ掛かっていた。兄弟が、俺がぐずぐずの泥の中で、座り込んでいれば、近くにやって来る。
「木の枝があるから! 気を付けろ!」
と、彼らに言えば、兄がバギーを停めて、降りて、俺の方に来ようとしたが、弟が、
「ドフィ、足を泥で汚す必要ねぇよ!」
と、言い切って、バギーを俺が座り込む、木の枝の無い左側から周回し、俺の傍を通って、俺の腕を引っ張って、俺を泥の中から拾い上げた。
泥だらけの俺を抱き上げて、彼の服にも泥がついたし、俺を救い上げた時に、バギーが泥を飛び散らせたので、彼の顔にも泥が飛び散った。
俺は、彼に、
「アンタが泥で汚れたけどいいのかよ?」
と、言えば、彼は、笑って、
「戦場で何度も泥まみれになってる! こんぐらい洗えば落とせる!」
と、俺をバギーの荷台部分に座らせて、早々に泥の海を立ち去った。
【4DAY: Instinct】
バスタブの湯のコックを捻った彼の背中に声を掛ける。
「ドフィ」
彼と夕食後にバスルームで2きりになり、キスをすれば自然と行為は始まる。
「なんだ、ロー………」
彼の大きな背中を後ろから抱き締めて、彼の背骨に沿ってキスをすれば、自然と肌が熱くなる。
彼は笑って、俺の方に振り向いて、
彼も俺にキスをした。
「キス、キスしたい………」
手より、指より、肌より、心よりも、唇が一番、熱い。
熱を伝えるには唇で触れ合うのが一番、早い。
彼の心を俺の方に引き寄せて、彼は俺の身体を引き寄せて、唇をくっ付ければ、不思議と1つになる。
「……………あ………」
唇を離せば、彼は俺をじっと見て、その独特の鼻筋の細い顔を俺は見詰めあえば、彼の瞳の中に俺が入り込み、俺の瞳の中に彼が入り込み、どちらの瞳がどちらの者の物か分からなくなる。
自然と抱き合う。
「………………」
バスタブに水が溜まりきっていないのに、お互いに服を脱がし合い。
俺達は膝下だけを湯に浸からせて、バスタブの中で、雨の音を聴きながら抱き合った。
湯気が蒸気が目に見えそうで見えないが、温かい熱気が足元から上がって来て、その蒸気が俺達の肌をますます、ぴったりと話さない様にくっつけてくれる。
だから、俺達は何も言わずに、肌を合わせて、幸せの蒸気の中に溶けていく。
腰まで湯が溜まるまで、キスばかりした。
全身にキスをされて、俺も彼の大きな身体を抱き締めて、キスをすれば、それだけでもう何もいらない。彼といると、時の流れが緩やかになる。
彼といれば時の流れが、
いつの間にか止まる。
困るくらい夢中になって、彼とキスをする。
腰を引き寄せられて、彼に抱かれて、その甘い感覚を、その熱い感覚と、バスルームで抱かれるのはまるで、雨の中で抱かれているようだ。
水に濡れながら、水しぶきを上げながら、欲望を垂れ流しに、上から降るシャワーに流されるようにセックスをする。
上から降るシャワーは流しても流しても、俺達の欲望は流しきれない。
愛は流しきれない。
愛を排水溝に垂れ流しにしながら、愛は円を作って流れ過ぎて行く。
彼はそれを見ながら、俺の中にもっと深い愛を、忘れられない愛を流し込むから、俺は彼から離れられないのだ。
「………んん………」
夜中にキスをされて起こされる。
どうせ、横で寝ている彼だろうと思って、キスに応えていると、不思議と違和感を感じた。
暗闇の中で誰かが俺にキスをしている。
それなのに、横からは寝息が聞こえてくる。
「………………?」
俺は、暗闇で目を見開いて、自分にキスをする影を突き飛ばす。
暗闇は一瞬、怯んだが、すぐに、気にせずに俺にまた覆いかぶさってくる。
「………ヤメ���………」
言って、誰かすぐに分かる。
兄は俺の横で寝ている。
弟が俺に覆い被さって来る。
兄の横で平気で俺にキスをする神経を疑う。
だが、初日に見た光景が俺の脳裏を過り、弟を暗闇の中で睨み付けた。
暗闇の中の霧を睨み付けるように彼を睨むがさほどの効果は無いらしく、彼は兄の横でベッドに横たわる俺の服を脱がし始める。それに本気で焦り始め、俺は、
「…ヤメ、ヤメロ………」
と、言う。
だが。
体格差と力の差で、圧倒的に押さえつけられる。
俺は兄の身体に手を伸ばして、助けを求めようとすれば、俺の手の甲から長い腕に包み込まれて、そして、俺の口の上に手の平を置かれて、
「………………んっ」
覆われて、口を封じ込まれて、腕ごと背中から抱え込まれて持ち上げられた。
けっこうな馬鹿力に俺は驚いて、愕然とし何も言えずに、足をバタつかせたが、そんな俺なんかに構わずに、片手で持ち上げられて、肩に担がれて、部屋を後にする。
彼の部屋に連れて行かれて、ベッドに押し倒されてしまえば、後は、
もう、想像はついている。
口に噛み付かれるようにキスをされた。
「…………………」
俺は、彼を力いっぱい、押しのけようとするが、体格も力も何もかも敵わない。
だから、
「………………っつ」
彼の舌に噛み付いて、彼の唇を離す。
暗闇の中で男を睨み付ける。
「オマエ、自分がどんだけ馬鹿なことしてるのか分かってるんだろうな」
と、舌についた彼の血が口内に広がる。
「………………」
彼は暗闇の中で俺を見ていた。
暗闇の中でシルエットしか見えない。
彼のシルエットだけが俺の目の前にある。
兄とは違う弟の姿。
闇夜に目が慣れてくれば、はっきりと彼の姿を認識できる。
………その姿は、俺に乱暴をしようとするようには見えなく、そのシルエットは恐ろしいほど、繊細で、シルエットを描く線は恐ろしいほど細い1本の線画のようで、俺は………、何も言えなくなる。
その繊細な線の集合体は、
「………………」
ベッドの腕で後ろ手で彼を見詰める俺の頬に頬を寄せた。
それだけ。
さっきまでの男とは別のよう。
まるで、自然保護区の国立公園の野生の獣が数年ぶりに、野生の獣を見付けたかのよう。懐かしい何かを、大事に心に仕舞うような仕草に、俺は、
「………………」
何も言えず、呆然と、言葉を忘れて彼に頬を摺り寄せられて、
「…………嫌か?」
と、聞かれた。
やはり、俺は、
「………………」
それに何も言えずにいた。
「………………」
暗闇の中、月の光の中、彼を見ればまるで、修復を忘れられた廃墟の中の、フレスコ画のようだ。イタリアにある、壁に描かれたフレスコ画のほとんどは未修復のままで放置されている。修復する技師が足りない、現実と、修復する資金が集まらない現実と、この目の前にいる男も、壊れた心を修復を待つフレスコ画なのだろうか。
俺は、
「………………」
彼の頬に手を寄せれば、壁の上の劣化した漆喰が、零れ落ちるように、彼の頬から汗が零れ落ちた。
俺は、
「………………」
何も言えずに、彼の頬を撫でていれば、彼は俺の顔に頬を寄せて、俺の耳の下の匂いを嗅いで、俺の髪の毛の匂いを嗅ぐ。
俺の首筋の匂いを嗅いで、俺の胸元の匂いを嗅いだ。
その獣のような仕草に俺は不思議な気持ちになる。
ベッドに体重を掛けられて、彼に圧し掛かれて、でも、彼は俺の全身の匂いを嗅いで、
その匂いを嗅ぐ彼の匂いが、彼の兄とよく似ていて、
「………………」
俺は、
彼に匂いを嗅がれると、不思議な気分になる。
同じ血肉を分けた血縁の兄弟の身体から出る汗の匂いがどうしようもなく似ているのだ。
いつも肌を合わせる彼の匂いと、今、俺の匂いを嗅ぐだけの男と恐ろしいほど、
匂いが似ているのだ。
「……ダメだ……ダメだ………」
俺は言葉で彼に物を分からそうとする。
言葉で彼を拒絶する。
だが、本能は、直感はまた別で。
彼の匂いに本能と直感で惹きつけられる。
彼は俺のシャツをたくし上げて、臍の匂いを嗅ぐ。俺の匂いで興奮する彼に、俺も本能的に興奮する。
彼は俺の下半身に、顔を寄せて。匂いを嗅ぐ。ただそれだけ。匂いを嗅ぐ。ただそれだけ。なのに、彼は興奮する。そんな彼に、
「………ダメだ、ダメだ………」
頭では、危険信号がずっと鳴り響いている。赤いサイレンが俺の脳内で何度も点滅する。
それなのに、それなのに、それなのに、完全に制止できない。
「ダメなんだ………本当に、ダメなんだ………」
彼を制止できない。
抵抗をができない。
彼は俺の全身の匂いをくまなく嗅いで、俺に言った。
「兄貴の匂いが混じってる………」
そして、俺のシャツをアンダーウェアを脱がしにかかる。
「………そりゃそうだ。オレはアンタの兄貴と寝てる…」
シャツも何もかも脱がされて、大きく脚を開かされて、今日、彼の兄を咥えこんだ部分に鼻を寄せられる。
「………どこを…嗅いでるんだよ………」
俺は眉をしかめる。
彼は、ただ、
「オマエの匂い………」
と、だけ言った。
そして、彼はベッドのシーツに腕を突っ張って、俺の上体の方へやって来て、俺を見下ろして、俺も彼を下から見上げて、
「………なんだよ」
言えば、彼は、
「兄貴と別れないでくれよ………」
と、言った。
俺は、
「………………?」
自分を裸にして、匂いを嗅いだ男の発言の意図が分からずに、戸惑う。
彼は、月の光に照らされて、薄い透き通るような、青い瞳で俺に言うのだ。
「兄貴と別れなければ、俺に会いにくるだろ………?」
と、言って、
「…………………」
何も言わない俺に、
「………………んぅ」
口付けした。
彼が何を考えているか全然、分からない。
彼が何をしたいのか全然、分からない。
だが、彼に口付けされることが、
嫌じゃない………。
背徳的だとか、非道徳的な快感ではなく。
本能的に嫌じゃない。
彼は俺に口付けをして、俺の口腔内を味わう。
柔らかい舌が入り込んできて、彼に口付けられる。
キスをすれば、俺は本能的に、スイッチが入る。
セックスがしたくなる。
誰でもいいわけではない。
今、俺が、セックスしたい相手は、彼なのかよく分からないし、彼としてはいけない。
そんなことは分かっている。
でも、彼とキスするのが止められない。
「っ………っふ………」
彼が俺の舌を追い駆ければ、心臓が勝手に速くなる。
鼓動が脳の中で鳴り響く。
心が勝手に燃え始める。
心が勝手に響きだす。
前に、彼は、『煙草の煙を見て、生きている』と、実感すると言っていたが、
それは本当なのだろうか。
煙草の煙を見ずとも、彼は生きているし、
俺は、彼が俺に噛み付くようにキスをして、その次に、舌を絡めてキスをして、そして、今、2人で舌を絡め合い、お互いを求めあう、
今の方が彼は、
生きている気がした。
人生に絶望している男と舌を絡め合ってキスをする。
人生に絶望している男の何処かに、一抹の希望を、見付ける様に俺は彼にキスをした。
壊れかけだと思っていた彼の心の何処かに希望は無いのだろうか。
顎が壊れるくらい、��鹿みたいにキスをした。キスを覚えたてのてティーンエイジャーの様にキスをして、ずっとずっと、キスだけをした。
彼の無精髭が俺の顎を擦って、心も擦る。
舌を絡め、唾液を交換し、息を奪い合い。
それしか知らない、分からない子供の様に彼はキスをして、俺は彼の心を探っていたのに、いつの間にか彼に心を探られる。
俺の心を見透かされる。
『俺は彼にキスをされるのが嫌じゃない』
俺の心の知らないパンドラの箱を開かれる。
俺はずっと、勘違いをしていたのかもしれない。
彼の心が壊れているのではなくて、世界が壊れていて、その壊れた世界に気付かないフリをしている俺の心を見透かされる。
鋭く、彼に俺の心を見透かされてしまえば、俺は、もう彼に抵抗する術は無い。
彼に服従するしかない。
彼との口付けが終われば、身体を強制的に開かされる。
俺の心を鍵なくこじ開けられる。
彼は俺のペニスに口付けして、俺はさっき、彼の兄と寝ているから、セックスをさっきしたから、ペニスの反応は緩やかだが、
反応をしている。
「………うぅ………」
彼にペニスの先端を唇で愛撫されて、生暖かい粘膜に含まれると、
「ぁあ、……うう…………」
気持ちがいい。
「っふ、うぅうう………」
性的な快感が脳に電流として伝わる。
「……っぁ、ああああ」
敏感な先端を舌で嬲られる。
心から血流をペニスに持っていかれる。
「うぁ、………うぁああ………」
彼にペニスを舐められて、生理的な涙が出てくる。勝手に反応する自分の身体。
でも、それが、俺だということを分からせられる。
俺がどんな人間なのかを、現実を強制的に見せ付けられる。
「ぁあ、………うぁあ、…っぅ………」
目を見開けば、虚無が広がるわけでもなく、快感が広がる。
ちゅるりと、ペニスから唇を離されて、俺のペニスの先から出た液なのか彼の唾液なのか分からないが、暗闇でてらりと光る粘性の高い液体が糸を引き、それが俺と彼とを繋いだ。
その液体が、ポタリと、シーツに落ちて、彼は興奮した自分の雄を俺に押し当ててくる。
「………っひぅ………」
俺のアナルにペニスを押し当てられて、
「………ゴム、ゴムつけてくれ………」
言えば、彼は、
「………………分かった…」
と、言って、コンドームを探しにベッドを離れた。
俺はベッドで荒い息を整えようとしたが、
「………………」
それは無駄なようだった。
ベッドから上体を緩慢に起こし、ベッドに座り込んで、彼を待つ。
「…………………」
視線を泳がせて、待っていれば、彼は、コンドームを持って戻って来た。
彼が手にしているゴムを、俺は手に取り、
「着けてやるよ………」
と、彼のペニスの根元を片手で固定して、ペニスの先端にキスをして彼のペニスを口に含む。もうとっくに勃ち上がっている彼のペニスの先端を舌で舐め上げて、舌の裏側まで使って、ぐるりと円を描くように舐め上げれば、ペニスがピクリと動いたのが、可愛らしく、俺は唇を離し、
「………………イイ形してるな」
と、彼のペニスを誉めて。
コンドームのパッケージを歯で破り、
中からゴムを出して、精液だまりを摘まんで、彼のペニスにコンドームをピタリと被せる。
指だけでコンドームを根元まで降ろし、
俺は視線は彼の瞳を見ていた。
「………………」
俺の顔を見詰めながら、
「………………」
ゴムを装着されて、彼は、少しだけ恥ずかしそうにするのが、行動と伴っていなく感じた。
彼は髭は無精髭のままで整えていないのに、アンダーヘアはきちんと手入れがされていてそれに、俺はまた、不思議な気持ちになる。
ゴムの中に彼のアンダーヘアを巻き込む心配なく、ゴムを根元まで降ろして、ゴムの上から、もう一度、口付けして、
「………着けたぞ………」
俺は彼に合意のサインを出した。
ベッドに自分から横たわる。
「………………」
彼は俺に覆い被さってきて、俺は脚を彼の腰に絡ませて、彼の腰を引き寄せた。
「………………」
静かに彼を待つ。
彼のペニスが俺のアナルに当たるのを感じる。
「………………」
何も言わずに、俺は心の扉は開けっ放しで彼の行動を待つ。
たぶん、
お互いが、
この行為に精神的に戸惑っている。
分かっている。
だから、俺は彼の心の準備が整うのを待った。
心と相反する身体の反応にお互いが戸惑っている。
分かっている。
けれども、お互いが今の状況を素直に身体で受け止めたい。
「………………んぅ」
彼のペニスがゆっくりと俺の中に埋め込まれてくる。
「…………うぅ……」
俺は先ほど、彼の兄のペニスを入れて楽しんでいるので、何の抵抗もなく、弟のペニスも飲み込んでしまう。
何処までも、貪欲な自分の身体に嫌気が差す。
けれども、そのペニスが欲しい自分がいる。
彼のペニスが俺の奥にまで届けば、
「はぁ……………」
半分まで入れて、抜いての抜き差しをされる。
「…ぅうん、…あぁ………」
奥を軽くノックされるような動きに、腰が勝手に震える。
「っぁ、っぁ……っぁ………」
彼のペニスの先端が気持ちが良いように動くだけの行為。
「ああ、………イイ………」
それだけの行為が、じんじんと俺の胸元にまでに広がり、気付けば、俺は彼の背中を搔き抱いている。
「………もっと、もっと………」
動きが速くなると、俺の腰が逃げる。
「っつぁ、……あああ………」
その腰を掴まれ、
「っぁあ、あぁ、うぁああ……」
引き寄せられて、
「っひぁい、……いい………」
ガツガツと中を貪られて、
「っひぁ、っひぁ」
俺の心臓はドクドクと時計の針より早く、時を回る。
「……………ぁ、……ぁああ」
時計の針がぐるぐると俺の頭の中で回転し、
「んん、ぁん、ああ、んん……」
今日、一度、達している俺は、ドライオーガズムを勝手に感じ始める。
「うぁ、あっ、ああん」
アナルの奥しか擦られていないのに、
「オレ……オレ………うぁあ」
下半身に血流を持っていかれてしまい、身体の反応がはやい。
すぐに爪先が震え始めて、
「オレ……もう、もう………」
急激に、爪先にまで緊張が走ったと思えば、
「っひぃいいい」
腰の震えが足先にまで走った。
「………っつ………」
目を閉じて、背中を反らせて、暫く、脳にまで快感が伝わるまでタイムラグがある。
「…………………っはぁ」
脳から足先まで、快感が全身に回れば、
「っはぁ、…っは、……っはあ」
やっと俺の身体は弛緩する。
「………………っつ……」
彼のペニスはまだ脈打っていて、俺は荒い息で、彼の心臓に手を寄せて、
「………………」
下で彼の下半身の鼓動を感じながら、
「………………」
手の平で彼の心臓の鼓動を感じる。
「………っはぁ、………っぁ………」
俺は彼の胸を押し倒し、彼をベッドに押し倒して、
「………オレが上になる…っ………」
彼の上に跨った。敏感な部分が大きく擦れて、腰がビクリと動くが、
「っふ…………」
俺はもう、イったので、彼をイかせたい。
「………俺が動くから……イってくれ………」
だから、俺は彼が感じるように、腰を振る。
彼がイけば、何かから許されると思っているのだろうか。
共犯者と共犯者の快感の貪りあい。
救いようは無い。
「イってほしい………オレ、もうイったから………」
彼の身体の上で、汗を撒き散らしながら、彼の胸の上に、汗がポタポタと落ちて、
「…………ぅう……うう………」
その���ちに、また次の波がくる。次の快感の波がくる。
「………あぁ、……オレまた、イきそう………」
髪の毛が、汗で顔に張り付いて、口を閉じたが、涎が、
「…ぁあ…………うぅ……」
ポタリと零れたが、もうそれどころじゃない。
「イっちゃう……」
彼をイかしたいと思っていたのに、自分が彼のペニスに夢中になっている。溜息交じりに言葉を溢すが、腰を上下する動きが自然と速くなる。
「……ぁあ、………あああ、ロシィ、……また、また………」
汗が溢れて、心からも何かが溢れて、彼の下半身からも心が溢れるのを待つ。
彼は舌でべろりと唇を舐めて。
「ローは、今日は………お喋りだなっ………」
そう一言、言った。そんな彼を俺は見下ろして。
俺はもうとっくに、表面張力ギリギリの状態だ。
「ロー、…オレも動くぞ………」
彼の上で腰を振って、今の状況に夢中になる。そんな俺の腰を掴んで、下から大きく突き上げられれば、
「っひぐ……うぁああ、あああ………」
熱い、熱い、熱い。
「……あつい……俺もイきそうだ………」
何もかもが熱い。
「ロシィ…、あつい……あつい……ぁあ」
だから、俺は、その熱さを彼に分かる様に、だが、もう、その熱さにもう耐えきれない。
「う��ぁ、ああ、………ぁああ」
気付けば、中からまた快感が溢れてきて、腰を動かす、腰が大きく、震え始める。
「………ロシィ……うぁ、んあ」
もう動けない。そんな俺の腰をガツガツと貪られてしまえば、
「っひぃ、ひぃ、あぁ………」
ああ、絶頂がまた近い。
「ロシィ、ロシー……っひいい」
ああ、まだまだ、気持ちがいい。
「イって…、イって、おねがい……イって………」
頭を垂れて、彼がイくのを待ちわびた。
「んあ、…ぁ……ううう………」
汗で彼の腰に当てた手が滑る。
それでも、懸命に腰を上下させる。
「もうちょっと………」
俺は、身体がガクガクとしながら、彼を見詰めて、懇願すれば、
「………その顔が、……好きだ………」
と、言われて、俺の頬が真っ赤になった。
「…………………?」
途端に、律動が止まり、
「………イったぞ………」
と、彼に告げられて、
「………………」
俺の頬も身体も、何もかも、火照りが引きそうにも無かった。
火照りをそのままで俺は、兄の寝るベッドへと戻った。
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