#行動ログ
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スマホを解析されて、薬物売買のログを見せられたときのレポ
―逮捕から7日目。この日は2回目の検事調べが予定されており、今回はワゴン車による単独の護送ではなく、護送車での複数人共同の護送になるとのことで、僕は初めて護送車に乗れることを少し楽しみにしていた。
朝8時30分頃、点呼とともに居室から出され、留置場の出入り口扉の前に連れていかれると、扉の前には既に2人の収容者が縦一列に並ばされており、僕はその2人の後尾に立つよう指示をされる。そして例によって身体検査をされると、いつもよりキツく手錠をかけられる。
その後、留置官が先頭の収容者の手錠の間の輪に、通常より長い腰縄を通してから腰に巻き付け、同じ要領で、その長い腰縄を中間の収容者、そして後尾の僕に巻き付け、見事に3人を数珠繋ぎにすると、その長い腰縄を自分の腰につけているフックに括りつけ、後尾に立つ僕の後ろについた。
それから、3人の���後に警官が3人ずつついた体制で、地下の駐車場まで連行され、しばし駐車場で待機をしていると、白色と灰青色のツートーンカラーで、黒色のスモークガラス窓のマイクロバスがやってきて、3人の手前に停車した。
僕はその時まで、護送車とは、青地に白のラインが入っている、窓に金網のついたバス型の車だと思っていたので、実際の護送車がひどく凡庸なことにがっかりした。
上が護送車、下は人員輸送車(警察官を輸送する車)
そうして、3人は連結されたまま護送車に乗せられる。護送車の車内は、右側2座席に左側1座席の3列配置で並んでおり、窓には鉄格子が嵌められていて、運転席との間には壁があって全く見えないようになっていた。
また、護送車は周辺地域の警察署を順繰りにまわり、��検に移送する被疑者らを拾っていくシステムのようで、すでに15人ほどの先客が座っていた。
彼ら15人は、非常に長いロープで数珠つなぎにさせられており、全員が上下グレーのスウェットに茶色の便所サンダルの恰好で、手錠をかけられ、姿勢よく無言で着座しているので、捕虜の集団のようだった。
車内にいた警官らによって、3人は各自指定された座席に座ると、3人を連結していた長い腰縄が外され、今度は15人を連結している非常に長いロープに括り付けられる。
18人の被疑者と1本のロープによる数珠が完成すると、1人の警官が、「車内では会話や目配せはもちろん、足を組むのも禁止する」などという護送車内の規則を、大声かつ歯切りのよい口調で説明していた。
車内に5人ほどいる警官らも、これだけの逮捕者を移送するというだけあってか、非常に緊張感を持った面持ちで、ちょっとでも無駄に声を発したら怒鳴られそうな緊迫感がある。
僕は幸い、右側2座席の窓側の席であったので、外の景色でも見て気を紛らわせていようと思った。なんだったら、前回の単独移送で��、両隣に警官が座っていて、窓はほぼ塞がれている状態だったので、久しぶりに外の景色を見られることは楽しみだった。
そうして、護送車が出発する。捕虜同然の惨めな状態というのもあってか、留置場では見ることのない格好や表情をした道行く人々を見ると、外の世界は自分とはもう関係がないように思えてきて、非常にセンチメンタルな気持ちになる。梅雨時で曇天模様だったのがまだ救いであった。
出発からおよそ1時間が経過し、護送車が地検に到着する。護送車のドアが開くと、地検で待機していた警官がドア横に立ち、日本陸軍の点呼のような厳格さを感じる大声で「第三系統! 総員十八名!」と号令をする。車内の被疑者らが数珠つなぎにされたまま、1人ずつ車内から降りていくと、その警官はやはり日本陸軍のように「一!二!三!…」と点呼をとっていた。
数珠つなぎのまま連行され、待合室のある広間に出ると、そこには前回よりもはるかに多い、100人弱の被疑者らがおり、見るからに力士のような者からヤクザのような者まで、前回より威圧感のある男が多く集結していて、全体的に迫力があった。
また今回は人数が多いためか、警官の人数が多く、警官らはみな厳格な号令と点呼を行い、鋭い眼光で被疑者らを監視しているので、今までに味わったことのない張り詰めた空気が漂っている。
それから例によって、待合室という名の牢屋で、座る者の事など考えていない直角の硬い椅子にすし詰め状態で座らされ、時間もわからないままひたすら待ち、昼食時にコッペパンを食べ、いつ自分が呼ばれるか分からないまま、またひたすら待つ。相変わらず地獄。
おそらく3時くらいになってようやくお呼びがかかり、僕は一人の警官に連れられて、検事のいる部屋に入室した。あくまで検事が起訴か不起訴かを決めるので、入室の際、僕は少しでも検事の心証を良くしようと、礼節を重んじている風の挨拶を決め込む。
前回同様、義務的な質問などがされ、黙秘権について告知がされるので、僕はここぞとばかりに、昨日弁護士にアドバイスされた通りに、「担当の弁護士さんから抗議書が送られていると思いますが、昨日、留置担当官の方に「ブチ殺す」などの脅迫を受けて、警察や検察の方を信用できなくなったので、取り調べには協力できません」などと、あくまで被害者ぶった深刻な表情で言う。
すると検察官は、こちらの会心の一撃をまるで意に介さないような表情と口調で「わかりました。その件についてはこちらでも事実確認と調査を行ってまいります」などと流暢に返事をし、「ただ、本日は見ていただきたい資料があるので、応えられるものに関しては応えていただけませんか?」と尋ねてきた。
僕はその見せたい資料とやらが気になったので、「資料は見せていただきたいですが、黙秘はします」と応えると、検察官はそれを了承し、A4サイズの紙が200枚ほど綴じられている分厚いバインダーを取り出して、付箋の貼ってあるページを開き、僕に見せてきた。
そのページには、僕がプッシャーから薬物を買おうとやり取りしていた、Telegramのログ画面の写真が貼り付けてあった。
僕はまず、そもそもスマホの解析承諾をしていなかったので、無断で解析をされていたことに度肝を抜かれたし、露骨な薬物売買の証拠を見せられて、少し動揺が出てしまった。
ただ幸い、今回一緒に逮捕されたプッシャーとのやり取りのログは完全��消去していたし、見せられたログは、僕が「在庫はいかがですか?」と尋ね、プッシャーが「こちらになります」と隠語で書かれた薬物のメニュー表を画像で添付して送り、僕がそれを既読無視しているという、購入の意思を見せていない内容ではあった。
メニュー表のイメージ
ちなみにTelegramにはパスコードロックをかけていなかった。
検察官は僕が動揺している隙に、「これは、あなたが薬物を購入しようとして、売人にコンタクトをとったものじゃないですか?」と単刀直入に質問をしてくる。
僕は、このログについてはどうとでも取り繕って否定できそうだったので、つい否定をしたくなったが、下手に喋ってボロを出しては検察の思う壺なので、「黙秘します」と応える。
それに対し、検察官は無言で頷き、プッシャーが提示していたメニュー表の画像を指さして、「この“罰”っていうのは、コカインのことですよね?」と尋ねてくる。
僕は反射的に、「いえ、罰はMDMAの隠語です」と本当に危うく口走りそうになったが、一呼吸置いて「黙秘します」と応えると、検察官はやはり無言で頷き、再び付箋の貼ってある別���ページを開いて、僕に見せてくる。
そのページには、一緒に捕まった友人の吉岡とのLINEでのやり取りの写真が貼ってあり、どう見ても薬物を言い表した代名詞でのやり取りや、それに付随して、「悟ってる時の顔」などと言って、僕がLSDのピーク中に目を瞑って微笑んでいる顔写真を吉岡に送りつけている赤面不可避のログも載っていた。
当然、これらに関する質問にも黙秘を貫いたが、検察官は少し呆れた表情で、「…うん。でもね、小林さん(一緒に捕まったプッシャーの本名)のTwitterアカウントのリンクが、吉岡さんからあなたに送られているんですね」などと言って、今度はそのログの写真を見せてきた。
僕は吉岡とは完全にクロな証拠のやり取りをしていなかったつもりでいたので、これにはさすがに焦りを感じたが、そのメッセージの前後に脈絡はなく、リンクだけが送られているという内容のログではあったので、これだけでは証拠として不十分であろうとは思った。
検察官は続けて、「この小林さんのアカウントにコンタクトを取って、小林さんから大麻を購入したんじゃないですか?」と名推理をしてきたが、僕はなんとか無表情をキープしたまま、「黙秘します」とだけ言っておいた。
検察官は表情を変えず、「わかりました。それでは本日はこれで以上です」などと言って、この日の取り調べは終わることになり、僕は当然、調書への署名・押印を拒否して、部屋を後にした。
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つづく
・
この物語はフィクションです。また、あらゆる薬物犯罪の��止・軽減を目的としています( ΦωΦ )
#フィクション#エッセイ#大麻#大麻取り締まられレポ
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リクエスト(2/7) ②777 and SHO MINAMIMOTO (funny if they're friends) +α ②777と南師猩(友達だったら面白い)+α
When thinking about the illustrations of 777 and ZETTA, I thought that the main thing would be a live performance. 777とゼタのイラストを考えるにあたって、メインはどうしてもライブ系したいなと思っていた。
At first, I was thinking of doing a live within A-EAST, including the members of Death March. 最初はデスマーチメンバー含めてA-EAST内でのライブを考えていた。
But I didn't know which instrument Tenho and BJ were playing, so I changed it to an outdoor live. でもテンホーとBJの担当楽器が分からないので野外ライブに変更。
The request said, "It would be fun if we were friends." So the invisible feet are opus. リクエストに「友達だったら面白い」とあったので、すごく仲良くなったらオブジェの上でライブさせてくれるのではと思って月を背景に立ってもらった。ということで見えない足元はオブジェだったりする。
The live on the opus is good, but the pork city rooftop is also good. オブジェ上のライブも良いけど、ポークシティ屋上も良いよね。
If we get along well, I want you to perform live in various places. You can also make your own venue (in the sense of an opus)! 仲良くなったら色んな所でライブして欲しいな。会場も自作(オブジェ的な意味で)できるし!
Since ZETTA is the self-centered type, I think it would be difficult to be friends with ZETTA in the true sense of the word. ゼタが自分本位なタイプなので、真の意味でゼタと友達になるのは難しいんじゃないかと思っている。
But I feel like I can get closer to a certain extent...Even so, in terms of power, it's ZETTA >>>>>> a wall that can't be overcome >>>>>>>>>>> 777, but... でも、ある程度までは近づける気が…といっても力関係的にどうしてもゼタ>>>>>>越えられない壁>>>>>>>>>>>777になってしまうけど…
ZETTA is an image that only gets involved in 777 when there is something to do. ゼタは何かしら用事がある時だけ777に絡んでくるイメージ。
If 777 happens to see ZETTA, he can see that talking to her will cause trouble, so I have a feeling that she will leave it alone. 777はもし偶然ゼタを見かけても、話しかけると厄介なことになるのが見えているので、そっとしておく気がする。
Since there was a mic incident, everyone in Death March seems to avoid ZETTA. マイク事件があったのでデスマーチ全員ゼタ避けてそう。
Speaking of the mic incident, W2D4! マイク事件といえばW2D4!
I miss the compulsory missions that I had to complete when I went to Udagawa-cho... 宇田川町に行く時にこなさないといけない強制ミッションが懐かしいね…
At that time, Joshua was annoyed, so I thought that he would do something as sarcastic as this, so I made it into a mission without permission. あの時ヨシュアがムッとしていたので、これぐらいの嫌味はやりそうだなと思って勝手にミッション化してみた。
There are ZETTA objects, cars, and vending machines, so it must be difficult to find a single mic. ゼタのオブジェ、車とか自販機も混ざっているからマイク1本探し出すのもきっと大変だろうな~それにしてもマイク事件の犯人と動機を知った時は思わず笑っちゃったね…
I definitely want to draw one Death March trio, so I drew the story about the mic incident. デスマーチ3人組は必ず1枚描きたいな~と思って描いたのはやっぱりマイク事件ネタ。
Every time I see a public phone in front of Morco, I feel like it would be interesting if they were messing around with that incident. モルコ前の公衆電話を見かけるたびに、例の事件のことをいじられていたら面白いな~という感じ。
I couldn't draw it here, but it would be nice if Nek and the others remembered the mic incident when they saw that payphone, and told everyone about it. ここには描けなかったけど、ネク達も例の公衆電話を見かけた時にマイク事件を思い出して、皆に話してたらいいな。
There was no story where forbidden ZETTA met Death March, but if they did, what would it be like? And I tried to make it a battle style of POK●MON. 禁断化ゼタはデスマーチと出会うストーリーはなかったけど、もし出会っていたらこんな感じなのかな?とポ●モンの戦闘風にしてみた。
Since I have never fought 777, I set Pteropskaner's HP of 4000 in W3D2, and ZETTA (forbidden) with HP of 5926 during battle in W3D6 as a reference. 777とは戦ったことがないのでW3D2のプテロプスカナーのHP4000を、ゼタ(禁断化)はW3D6の戦闘時HP5926を参考に設定。
Actually, the one in front is the target of the command, but I wanted to mainly use 777, so I changed it a little. 本当は手前にいる方がコマンド対象だけど、777を主にしたかったのでちょっと変更した。
I managed to find Mic from the opus, but if ZETTA finds it, it's likely to be targeted again... マイクはオブジェからどうにか探し出せた設定だけど、ゼタに見つかったらまた狙われそう…
777 is tormented by the feelings of "what if my mic is stolen" and "how am I going to get out of this place". 「マイクを奪われたらどうしよう」「どうやってこの場を切り抜けよう」という気持ちに苛まれる777。
And what if we meet...? log. そしてもし遭遇したら…?なログ。
The forbidden MINAMIMOTO appeared! ▼ Attack of MINAMIMOTO!▼ "What, you're just going to ignore me?" (禁断化したミナミモトが現れた!▼) (ミナミモトの攻撃!) 「おいおい俺様を無視かよ」▼
777 tries not to make eye contact...▼ (777は目を合わせないようにしている…▼)
Attack of MINAMIMOTO!▼ "This mic is zetta sexy!" "Perfect for my opus!" (ミナミモトの攻撃!) 「こりゃ…ゼタイカすマイクだぜ…」 「俺のオブジェにふさわしい…」
777 quietly hid the mic▼ 777 covered his face! ▼ (777はマイクをそっと隠した▼) (777は顔を覆ってしまった!▼)
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雀始巣
春の足音がする。聴覚だけじゃなくて触覚も視覚も春が目覚めていると気づく。来月から3年目になる。後輩がまた同じ部署に入ってくるらしい。男女1人ずつ。周りの同期も同じようで悔いなく本社に行けるね、と話す。従兄もようやく社会人になって、2つ下の従弟が先輩という院生ならではの上下が生まれる。3月に入って3人の学部学科も違う大学の後輩に会社説明会兼面接やESの説明をした。筍みたいに年数だけ重ねてグングンと竹になる気分だけど、私は変わらず毎日学びを続けている。連続学習14週とログが残っているので続けたいという意欲がある。編み物も1ヶ月経とうとしていて、電車での移動中編みながら耳では学びを得て、なんだか一石二鳥、三鳥な気分でいる。ポーチを沢山作成した後帽子作りを齷齪している。不正利用されたクレカの再発行は1ヶ月かかるらしい。周りは不憫だったと言うけどお金取られてなくてよくない?なポジティブな私がいる。どういうところで寛大になってるんだか。婦人科で定期検診で診てもらっている子宮は少し悪化したらしい。せ��かく半年毎に定期検診がなったのに3ヶ月に逆戻り。ただ、異動前に診てもらえると思えば。異動になったら紹介状ではないけど手順を教えてもらわなくちゃ。皮膚科もそう。次の異動地では歯医者にもしっかり通いたい。先日ホワイトデーにばぶから花束をもらった。丁度欲しいなと願っていた時期だったのでとても嬉しかった。目標の一つである毎月何かしらの本を読むでは今月は加藤千恵著の本を読んだ。相変わらず私みたいな人が存在している。私みたいなというより本のような人になっていることがなんか不思議。初めて加藤千恵の本を手に取ったのは14歳だった。14年後の私がそうなるとは1ミリも思ってなかった。明日は休みにした。映画なりゲームなり進めて有意義にすごしたい。
私はばぶからちゅんちゅんと呼ばれている。
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週刊お陽さま コラム 機械人
2040 年代は脳神経工学の分野が大きな飛躍を遂げた時代でした 脳波を測定する上で、どんなパターンがどんな意味を成すか、そういった読み取り方法の多くが明らかになりました これは生体組織が発した信号を機械が読み取る話であって、逆の発想についてはあまり進展がなかったと聞きます 信号のモニタリングを経て、50 年代には信号の発信主体、つまり脳活動の暫定的な再現方法が推定されました このあたりから、人の機械化の研究が盛んに行われたようです 先駆けとなった蓬莱の N2, 崑崙の PCS 2 大プロジェクトはその名がよく知られています これらはプロジェクト名であったり、プロトタイプのモデル名であったり、のちの法人名であったりと様々ですが、その実体はかなり属人的で、職人気質の強い閉鎖的なコミュニティだったそうです N2 と PCS の違いは機械化の捉え方��ありました N2 は機械化を新人類の創造と捉えていた側面があります 一方、PCS は機械化を単なる移行と捉えていました この思想の違いは、のちの法整備で想定する責任主体の違いとして現れることになりました
共通して初めに着手されたのは、現段階で決められること、そうでないことの整理だったそうです この分野はとにかく前例がありませんから、なにか仕様を決めたとしても、実際にそれがどう作用するかわからないものが少なくなかったのです 代表的なものにセーフモードの仕様があります セーフモードとは、オペレーティングシステムを必要最低限のプログラムで起動するモードのことです これはなんらかの不具合を起こしているプログラムを排除して起動し、問題を修正する手段を提供します この時点で、N2 は大枠のエコシステム戦略やリソース管理上の思想を決定していました セーフモードの技術的な仕様を策定するにあたっての、だいたいの判断材料は揃っていたはずなんです ここで問題となったのは、セーフモードでの機能制限と、法的な同一性や人権上の影響についての関連付けを、運用前に想定するのは難しいということでした 結局、N2 がセーフモードを実装したのは、法整備がある程度熟成した 60 年代のことでした 一方、PCS がセーフモードの仕様を決められなかったのには、別の理由がありました PCS は元々法への適合意識がかなり低いことが指摘されていて、今でも叩けば埃が出ると言われています これは解釈に諸説ありますが、当時の開発者は「本人に聞く」とコメントを残しています 有力な説として、主体が感じる同一性の破綻といった感情的な不快感のみが問題だったと言われています 最終的に PCS は一部モデルを除きセーフモードを実装していません
58 年の両初期モデルのリリースから法整備が熟成し、社会的なフィードバックを得られるようになりました 多くの論争を生んだのが、社会的共通認識のシステム上の共有化でした 前提として、データ共有自体はプロトタイプの段階から行うことはできていました しかし、機械人がネットワーク上に自身が経験積上方式で生成した認識ベースリソースをアップロードしたとしても、他者がそれを主体領域で解釈するのは事実上不可能だったんです 解釈するには解釈主体の認識ベースログを初期化し、生成タイムラインに則ってログを展開する必要があるためで、これは生体脳の振る舞いの制約の域を出ていません つまり、他者が生成した認識ベースリソースを主体的に解釈するには、他者そのものになりかわる他無かったのです ことの発端は、65 年に蓬莱政府が要綱を公表した社会的共通認識の共有化構想です これは西��連合が収集したステークホルダーのイデオロギーをデータベース化し共有するというもので、相互理解と利益追求の最適化が説かれていました 要綱の中では、機械人の認識を醸成するリソースなるものの接続先として、従来のローカルデータに加えて共有サーバーを使用する試みが記載されています 世間的には参照の自由の前提のもとあまり騒がれた記憶はありませんが、開発者の間ではかなり不評で、特に「機械人の認識を醸成するリソース」というあやふやな記載に非難が集まっていたそうです ここで事件が起こります 68 年に蓬莱新萄州で起こった宗教団体間の洗脳事件が取り沙汰されました これは当時としては非常に先進的な技術力をもってして行われたと言われています 洗脳の被害者は特定の思想を、単なるデータとしてではなく、コアシステムがロードする、つまり現在の法定義における「主体性」領域のデータとして組み込まれていました 詳細は明かされていませんが、データ組み込みの手続きそのものは被害者のプロセスを使用しつつ、そのプロセスを他者が不正に起動するといった手法が取られたようです これの恐ろしいところは、この手続きにかかる所要時間はたったコンマ数秒程度で、生体人を洗脳するのと比べてずっと効率的だということです タイミングが悪いことに、この数カ月後に蓬莱政府の共有化計画の内部資料が流出し、技術的な構想とこの洗脳事件で取られた手法との類似点が多く指摘されることになりました しかしながら蓬莱政府に政治的洗脳の意図があったかは意見が分かれていて、特に要綱に挙げられていた、メーカーが申請を出していない国への機械人の入国許可手続きの簡素化に向けた認可プラットフォームの一部としての運用は有用な取り組みだったと言われています 環内ではこのあたりから、犯罪行為の経緯として認識形成プロセスの不備の有無が裁判で取り上げられることになり、減刑の判例も出ています また、72 年に勃発した蔡幻の内戦ではメーカーが認識形成手続きのログがローカルに秘匿して保存されていることを明らかにし、敗戦した体制側幹部のうちプロセス命令系統ログにない処理系統ログが確認された 3 人が不正な認識組み込みの被害者として恩赦されました
70 年代では、悪意ある第三者によって引き起こされる代理犯罪が本格的に顕在化し、責任の所在についての議論が活発になされるようになりました 脆弱性についての責任追及はメーカーに飛び火し、この時には新鋭の陰に隠れすっかり口数の少なくなった N2 や PCS が再び注目されるようになります ここで冒頭の両者の思想の違いが現れることになります N2 は誠実に応じる態度を示しました 機械人に対する開発上の瑕疵の検証に協力的で、ケースごとにこれに当たると判断した場合は賠償に応じました これは機械人が社会空間で表出するあらゆる行動選択の過程で、行動主体とは別に N2 が担保すべき責任領域の存在を自負していることが伺えます 一方、PCS が現在まで瑕疵を認めた事例は 1 件のみで、賠償は行っていません N2 とは対照的に開発責任を認めず、多くの場合「本人に言え」と声明を出すに留めています また、開発責任を認める交換条件として同メーカーの機械人の、あるいはそのコミュニティの行動選択によって生じた財産の所有権を主張したことでも話題になりました
今や N2 と PCS はその名だけが広く認知され、表舞台からはほとんど姿を消したと言っていいでしょう 両者ともに公式ホームページのトップにはメンテナンスを認可した業者のリンクが掲載されています 両メーカー製の機械人曰くパッチの配信は継続されているようで、N2 は小まめに、PCS はある程度まとめて配信する傾向があるようです とても俗物的な物言いですが、あくまで通説として、N2 の機械人はおっとりとしていておしとやか、PCS の機械人は快活で生意気といった印象を持つ人は多いと聞きます 簡単に言えば、N2 製は大人っぽくて、PCS 製は子供っぽいということです しかしながらこれまでの経緯を見る限り、両者が元々機械人に見ていた姿は、実は逆だったのではないかと思わざるを得ません つまり、N2 は良き保護者として子供を、PCS はひねくれた子供として親を、それぞれ機械人に見ていたのではないでしょうか 実際に生まれたのは、自身の生き写しのような機械人でした この誤算が両者にとってどんな意味を持つものであったか、私たちには知る由もありません
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FF8 ゼルのローポリ3Dモデルを制作したのでログ1。
今は動画制作の為のアニメーションの練習中です。
3DCGの練習はX(Twitter)で更新してます。
Archive:1
I created a low-poly 3D model of FF8 Zell.
Now I am practicing animation for video production.
I update my 3DCG practice on X (Twitter).
#ff8#final fantasy 8#zell#zell dinch#final fantasy viii#animation#3d art#maya#3d model#ff8 fanart#3d
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恒例の啓永くん。今日から電話ログ載せて行きまーす。毎度お互い脳死で会話してることも多々あり。何故かシリーズ化したいらしい、急遽始まる関西弁講座。俺、栃木出身なんだけど?キャスの振り返りやら、啓永くんの髪の毛事情やらのお話。『柔太朗のオススメのドラマ教えて!俺見るから!』って言ってくれてるのに調べて、あんま出てなくてごめん…って流れにすんのやめな?マジこれからだから!これからリアルタイムで見もらって。モブ役で笑うのも禁止。後、ペットボトルの蓋開けられなくて、滑り止めのなんか使って開けてた。苦労して開けたサイダーは美味しかったらしい。スパイダーマンがディズニーに買収された話もした。裏で色々動いてんだなあって関心してた、俺がね。後は子供の頃のケガあるあるで盛り上がってた。お互いそこそこ怪我してて笑う。大人になっての怪我はやめようね、健康で生きようね。来年の話してたら、「来年も友達で居てくれるってこと?」って言ってた。なんかどっかで聞いたことあるな…怜央くん。あ、後Tumblr講座!あれはマジで助かったしタメになった!マジありがとう!来月楽しみだねー。こんな感じでおっけ?またよろしくー。
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2024年6月13日木曜日
病院の待合室にて20
くちずさむ歌はなんだい?思い出すことはなんだい?(2)
まだ13時過ぎなんだけど。楽しいのになぜか時間が過ぎないという、最高なような不気味なような現象が起こっていた。でも大丈夫。鳴門といえば渦潮だから。まだ渦潮見てないから。徳島と淡路島を結ぶ大鳴門橋、その橋の中がトンネルのようにくり抜かれており、そこに遊歩道が作られていて、鳴門の渦潮に徒歩で近づく事ができる、その名も『渦の道』。そこに行くことにした。私は多分行くの3回目ぐらい。結構好きな観光スポット。たくさん歩けるし。渦が見えるかもしれないし(満潮とか干潮とかちゃんと渦が出るタイミングを狙わないと見えない事が多い)。
渦の道に車で向かっている道中では、私達はフィッシュマンズの話をしていた。Tくんは中学生の頃からフィッシュマンズを聞いていて、これは私の当時の感覚だと相当早かったように思う。私たちが13歳から15歳というと、1997年から99年に当たる。フィッシュマンズにとっては、『宇宙 日本 世田谷』、『8月の現状』、『ゆらめき IN THE AIR』、男達の別れツアー、佐藤さんの逝去、そしてライブ盤『98. 12. 28 男達の別れ』という激動の3年である。今でもありありと思い出せるTくんの部屋には、フィッシュマンズのCDが何枚か置かれていて、私は『ゆらめき IN THE AIR』や『宇宙 日本 世田谷』のジャケットを見て、かっこよいと思ったりしていた。私はTくんに、最近フィッシュマンズが海外で高く評価されていて、音楽の食べログことRate Your Musicでも『男達の別れ』が金字塔のように扱われていたり、ついこないだもPitchforkのSunday Reviewで『ロングシーズン』が採り上げられていたんだよ、と早口でまくし立てていた。どうして早口になったかというと、こんな話ができる人はあんまりいなくて(でもよく考えると今も私の友達でいてくれてる人は、多分この話みんなできる)嬉しくなっちゃったから。Tくんはそういったことを全然知らなかったが、東京から福岡までの飛行機の中で『ロングシーズン』を聞いていたらしい。無意識で世界とシンクロしていく人間。ホンモノとはこういう人のことを言うのだと思う。
youtube
「そのピッチフォークのレビューでね、「走ってる…」のところが”Driving…”って訳されてたの。あれって車の歌だったの気づいてた?よく考えたら夕暮れ時を二人で走って東京の街のスミからスミまで行かないよね」
「気づいてなかった!そっか」
Tくんに「どうしてフィッシュマンズ聞くようになったの?」と尋ねてみた。きっかけは、彼がかつて好きだった女の子、彼がバンドをやってる時に歌にまでした女の子が、フィッシュマンズを好きだったことだという。Tくんは最初に��Neo Yankees’ Holiday』を買ったらしく、一枚目としてはまあnice choiceだと思うのだが、その女の子は「まあ、あれもいいよねー」ぐらいの感じだったらしい。Tくんがすばらしくnice choiceであるためには、いわゆる世田谷三部作に手を出さなくてはいけなかったのだった。そして私はこの話を聞きながら、こんな素敵な話は、当然むかし一度聞いたことがあったのを思い出していた。でもそんなことは言い出せずにいたし、こんな話は何度聞いたって素敵なのでよかった。
渦巻は巻いてるのか巻いてないのかよく分からなかった。私が行く時はいつも、巻いてるのか巻いてないのかわからない状態である事が多い。時間とか潮の満ち引きとか考えず、適当に行ってるからだと思う。橋をその内側から見るのも、私は楽しいから大丈夫なのだが、相当歩いたので疲れてしまった。もう一箇所、鳴門には霊山寺という四国八十八箇所巡礼の一番札所であるお寺があり、そこも観光名所として有名なのだが、疲れてしまったので、行くかどうかを決める会議が私とTくんとで開かれた。そして、入るかどうかは別として、ドライブがてら行ってみようとなった。なんとなく高速に乗りたかったので、鳴門北ICから板野ICまで乗ろうと思った。せっかくだから音楽をかけようと思い、Apple Musicで、『はじめてのフィッシュマンズ』というプレイリストを掛けた。一曲目は『いかれたBaby』だった。やっぱり初めて買うフィッシュマンズは『Neo Yankees’ Holiday』で全然いいと思った。ほとんど誰も走っていない高速に、少し傾いてきた陽の光が射して、そこに音楽が混ざって気持ちよかった。鳴門の街のスミからスミまで、僕ら半分夢の中…もちろん運転中だから完全覚醒中だったけども。Tくんを無傷で東京に帰す事も運転手としての責務である。
高松道を降りて、霊山寺に着くまでの間に少しだけ、音楽ではなく、Tくんの私生活について話す時間があった。その内容については当然ここに書く事は出来ない。唯一言えることと言えば、Tくんは本当にエンターテイナーだということだけである。
霊山寺に来たのは私個人としては2回目だけれど、記憶よりこじんまりとしていたので、車から降りて参拝することにした。霊山寺は天井から多数の灯籠が吊ってあるのがとにかく綺麗でかっこよいのですが、それをTくんに見てもらえてよかった。ここは八十八箇所巡礼の一番札所なので��RPGの最初の町のように、お遍路さんになるための装備品、白衣や輪袈裟や遍路笠や金剛杖や納経帳などが全て揃えられるお店があり、入って眺めていると、「僕、数珠とか持ってないんだよね」と言って、Tくんが数珠を買おうとしていた。お店の中なのであんまり言えなかったが、数珠はいちばん安価なもので1600円くらいして、上は8000円くらいするものもあり、私は「高くない?」と思っていた。「数珠は高い方がいい。法事の価値観ではそう定義されています」みたいのは聞いたことがないけど、まあ本人が納得してたらいいか。Tくんはいちばん安価ではあるがしっかりしていると思しき数珠(数珠の審美眼など私にあるわけないけど)を購入していた。法事の度に私と四国のことを思い出すか、あっけなく失くすかのどちらかになるだろう。
午後三時を過ぎたので、本日宿泊予定のビジネスホテルにチェックインすることが可能になった。ホテルは徳島市内にあって、ここから三十分くらい。いったん。いったんチェックインしてみようか。しなくてはならないことを早めにやって、気持ちに余裕を蓄えていこうじゃないか。ホテルまでの道中では、Tくんがやっていたバンドについての話をしたと思う。彼らが発表したCDやCD‐Rのうち、私が一番好きなのは最初のミニアルバムである『ワンダフルまたはフレッシュ』、二番目に好きなのはその次のミニアルバムの『ギターでおしゃべり』という作品で、初めてこれらの音源を聞いた私は感動のあまり、この二枚の解説を頼まれもしないのに書き上げ、それがバンドのウェブサイトで公開されるということがあった(追記:改めて思い返すと、一枚目の『ワンダフルまたはフレッシュ』には解説を書いていないような気がしてきた。二枚目の全曲解説は書きました。これは間違いありません)。私はあの解説を書いたことを、どちらかと言えば良かったことだったと思っているが、割と最近になって、解説を書くのではなく、バンドにインタビューをした方が良かったのかもしれないと思ったのだった。なぜなら例えば、私が彼らのレパートリーで一番好きなのは、最初のミニアルバム所収の『湯河原で男女』という曲だが、このマジカルな曲をどうやって書き、どうやってアレンジし、どうやって録音したのか、ということをあいつらは絶対忘れてしまっているからだった。そういうことをつぶさに訊いて、記録に残しておけば良かった。誰のために?もちろん私のためにである。他の人も読みたかったら勝手に読めばいいと思うけど。一応車の中でTくんに『湯河原で男女』を書いた時のことを訊いてみたが、やっぱりあんまり覚えていなかった。しかし、彼自身のこの曲についての解釈と、自分自身の作家性への分析のようなものが聞けたので、それは嬉しかった。それをここで書いてもいいのだが、彼のバンドは一応現在「曲作り中」であるらしいので(12年くらい曲作り中みたいです)、万が一の時のために書かないでおく。なんか種明かしっぽくなりそうだから。他にも『国鉄に乗って』という曲を書いた時の大変面白いエピソードなどを聞けたので、ファンの私は大満��だった。まあ話に夢中になって、途中かなり道を間違えたりしたが、言わなかったので多分ばれてないと思う。土地勘のない人とするドライブにはこういう好都合な面がある。あと売るほど時間があるから大丈夫。時間の叩き売り。持ってけ時間泥棒。
つづく
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うささんが投稿されている「坂上どうぶつ王国という番組で放送された能登被災地での保護活動にて、保護+移送された猫の中に、飼い主が探していた猫がいた件」について、 ペットのおうち 代表 @tomoreverb が該当の活動に携わっておられたJARF代表の浦川さんと電話にて1時間ほどお話しをさせて頂きました。うささんが言及されているもう一方の団体様ともメールにて連絡を取り合っている状況です。 結論から申し上げますと、該当の猫は照合後、当然ながら返還に向けて段取りを取っていただけるとのことです。また、他の40頭についても可能な限り情報公開できるよう調整を進めていただけるとのことです。しかし、複数の団体が本件に携わっておられ、独断で回答できないとのことで、情報公開については数日を頂きたいとのことでした。 また、今回の保護活動については、保護前に所有権の確認や所有権放棄、保護依頼など全頭確認した上で行なったとの事で、飼い主が探している猫が含まれていた事が信じられないといったご様子でした。ペットのおうちといたしましては、善処いただき、速やかに返還と情報公開が進み、被災地で危機に瀕している猫たちの保護が加速するよう、建設的に解決されることを願っております。 能登の猫の飼い方(外飼い)では、一頭の猫に面倒を見ている方が複数存在していても不思議ではありません。また、飼い主の方が遠方の避難所に避難されていると、現地の方に猫を探している事がうまく伝達できないケースも十分に考えられます。よって、ペットのおうちと致しましては、引き続き保護された動物は速やかに下記のデータベースに登録いただくことを推奨しております。本データベースは保護動物の情報を週次で行政機関に共有するとともに、現在の保護場所確認、他団体への保護継承ログ確認、問い合わせなどができるようになっております。 全国保護動物データベース(石川県被災地自治体データ連携中) https://sap.or.jp/protection/ また、被災地の所有者不明動物については、下記のガイドラインに準拠し、飼い主への返還や情報公開が最優先され、行政への情報共有も徹底される方法での活動を推奨しております。 https://sap.or.jp/protection/guideline/ 本件、進展がありましたらご報告させていただきます。 テレビ局など、関係各所にクレームをされている方もおられるかと思いますが、基本的には善意での活動の中で起こったアクシデントであると考えております。しかし、上記のようにこのようなアクシデントを回避する策は存在すると考えており、これからの保護活動でこれらのガイドラインがより機能していくことを願っております。皆様のご理解とご協力に感謝いたします。
Xユーザーのペットのおうち【公式】さん
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パイロットの話
https://goo.gl/jbcg4v https://goo.gl/JVEbYM ------------------------ 三菱重工MHI名古屋航空宇宙システム製作所のテストパイロットの読み物です。 圧倒的な非日常の世界を仕事場にする選ばれた���たちの世界の話です。 マッハの世界なので、大戦期のレシプロ機のエースたちの手記とはまた違った凄み、つまり怖さがあります。 MHIのサイトで閲覧できなくなっていて一部のみのログが残っているのみなので、消えてしまう前に原文まま転載します。 おそらく今後読むのことが難しい作品を、このような形ではあれ広く読めるようにしていくことは、ささやかではありますが意味のあることではないかと思っています。ですから「関係各位」も大目にみてくださったら、ありがたいなあ(敬具)と思っています。
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コックピットから その1 「超音速飛行 GO GATE」 「BINGO」
【超音速飛行 GO GATE】
高度40000フィート速度0.95マッハこれが音速への入り口です。 この付近は遷音速域と言われ、機体の一部分ではすでに音速を超える部分も出てきています。このため飛行機によってはやや不安定な動きをする場合があります。当然パイロットにはそれに対応するために、特別な操舵が必要となります。
例えば、F-4では縦の静安定が逆転します。
飛行機は通常、加速をすれば機首が上がってきます。逆に減速すれば機首が下がってきます。これを縦の静安定が有ると言います。
F-4も音速以下もしくは音速以上では同じ特性があります。しかし遷音速域ではこれが逆転します。加速すれば、機首が下がろうとして、減速すれば、機首が上がろうとします。
具体的イメージが湧かないと思いますが、例えば、超音速飛行で右の5G旋回をします。旋回をすると抵抗が増えますので飛行機は徐々に減速します。減速してくると普通は、機首が下がろうとしますので、パイロットはさらに操縦桿を引きます。しかし、音速を切った瞬間、その特性が逆転します。
同じ力で操縦桿を引いているとパイロットの入力+飛行機の機首上げ特性で飛行機には、突然、パイロットが予想もしていない大きなGがかかってしまいます。G制限ぎりぎりで運動しているような場合はこれだけで飛行機が壊れてしまいます。ですから、超音速状態で敵に遭遇して空中戦に入った場合は、自分の速度に注意しながらの操縦をしなくてはいけないのです。
お話を音速飛行に戻しましょう。
左手のところにあるレバー(スロットル)を最大パワー位置にします。
戦闘機の場合、最大パワーは2種類あります。(謎笑)
1つは、エンジンの最大回転数を得られる位置です。民間機などでは離陸の時などに使われます。戦闘機乗りは、「BUSTER」と呼びます。技術屋さんは、MIL(ミリタリー)位置と呼びます。
しかし、戦闘機のエンジンにはさらにその上があります。(笑)
この位置は、エンジンの回転数はそのままで、エンジン排気口にさらに燃料を流し込みます。これによって、燃料流量は2倍になり推力が1.5倍ほどになります。これを「GATE」と呼びます。もしくは、MAX(マックス)と言います。
スロットルをこの位置にします。エンジンの排気口には、大量の燃料が再投入され、エンジンノズルが段階的に開いて、アフターバーナーが正常に着火したことを知らせます。
これに伴い、飛行機は急激に加速を始めパイロットを座席に押し付けます。燃料流量計が読み取れない速さで増加していきます。昇降計が小刻みに上下に震え始め、高度計も何���示そうか迷い始めます。
次の瞬間、突然高度計が激しく回り始めて大気の状態をモニターしている、エアーデーターコンピューターが計算が追いつきませんと警報を出します。しかし、目を速度計に移すと機体が音速を超えたことを何も無かったかのごとく平然と示しています。
これが超音速への第1歩です。
50年ほど前まではここまでが人間に許された最大速度でした。多くの勇敢なパイロットたちは壁の向こうを覗いても帰らぬ人になっています。そして、チャック・イエガー氏が最初にこの壁の向こうから帰ってきた男なのです。
しかし、現在はスロットルさえ前に出せば誰でも簡単に訪問できる世界になりました。知識も経験も勇気も必要ありません。玄関ドアを開ける程度の力があれば、音速を超えられるのです。これが、技術者の努力の結果なのでしょう。
音速を超えた飛行機は益々元気になって加速を続けます。後ろを振り返ると、濃紺の空に自分が引いてきた飛行機雲が白い1本の線としてくっきりと見えます。コックピット内もちょっと静かな気がします。何しろ、音より速く飛んでいるのですから!(笑)
機体近傍に目を向けると、自分の横に衝撃波が立っているのが観察できます。それでも、飛行機はさらに加速します。
1.2マッハ付近では飛行機はとても安定しています。あたかも硬い氷の上を滑っている感じです。振動も騒音もありません。対象物が無いので、速度感もありません。ただ青い空が広がるだけです。 多くの飛行機は1.5マッハ付近から、機体を守るために各種リミッターが作動し始めます。
これによってペダルや操縦桿が重くなったりエンジン回転数が変化したり機体全体の特性が著しく変化します。
また、この付近で機首を30度ぐらい引き上げれば、減速しながらも80000フィートぐらいまでは簡単に上昇してしまいます。そこはもう濃紺の宇宙空間です。
高高度のお話は別の機会にまわして今回は、そのまま加速します。
1.8マッハ付近になると、機体が「ギシギシ」ときしみはじめます。機体の色々な場所から短い金属音が出始めます。
この辺の燃料流量は、F-15などでは80000lbsPPH。消防車で、水を撒く程度の燃料を燃やします。
さらに加速していくと金属の焼ける臭いがしてきます。
「いやーこれはやっぱ限界だねーこれ以上行ったら分解?」
こんな思いが脳裏をかす��ます。その頃には、すでに音速の2倍以上で飛んでいます。
特別な戦闘機を除き速度限界は2.2マッハです。時速2600キロメートルぐらいでしょうか。
この速度は名古屋~東京間を約8分で通過しますが、これ以上に加速するとアルミ合���が熱によって強度を失います。言い換えれば熱によって機体が融けてしまうのです。ちなみに、飛行機は車と違って最大パワーのままにしておくと、機体が分解するまで加速してしまいます。
【BINGO】
加速開始から、約3分飛行機は「BINGO」と叫びます。「燃料がありましぇーん!」と言っているのです。
そこで、スロットルをアフターバーナーレンジから通常レンジへ引き戻します。しかし、飛行機はこれを無視するかのように超音速飛行を続けます。エンジン回転数もスロットルをIDLEにしているにもかかわらず最大回転数を維持しています。燃料計はみるみる下がっていきます。
「このままでは飛行場まで帰れなくなる!なんとかしなくてはー」
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コックピットから その2 「BINGO」 「ZOOM UP」 「BLACK OUT」 【BINGO】
さて、今回は超音速からの帰還のお話です。 超音速飛行でスロットルをIDLEにしてもエンジン回転数は100パーセントです。車で言えばアクセルから足を離してもフルスロットルでエンジンが回り続けているようなものです。飛行機は「BINGO」を叫んでいます。
【ZOOM UP】
しかし、このままでは本当に燃料が尽きてしまいます。そこでなんとか機体を減速させなくてはいけません。 まず、頭に浮かぶのはスピードブレーキです。F-15の場合は機体上面に畳1畳ほどの板を立ち上げて空気ブレーキを使います。しかし時速2,000キロメートル以上の向かい風で畳を立てるのには、かなりの力と強度が必要です。 そこでF-15の場合は高速では僅かしか開きません。このため効果はそれなりです。次に別の方法を考えます。飛行機は3次元を運動しています。そこで今度は速度のエネルギーを高度に変更します。坂道を自転車で登るときに坂道の手前で加速してからかけ上がるのと同じです。飛行機の場合は操縦桿を手前に引いて自分の前に上り坂を作って減速させるのです。
ここで、高度のお話をしてみましょう。 このあたりの高度では水分はすでにありません。ですから雲もありません。生命活動もありません。ただ無限に広がる濃紺の孤独で静寂な空間です。頭上を見ると単にギラギラ輝く太陽、眼下を見ると水色の丸い地球とそれを包む薄い大気と白い雲が見えるだけです。一言で4万フィートと言いますが、約12キロメートルです。この高度はもうどんなに頑張っても人間が生活できる環境ではありません。-56℃1/7気圧、すでに飛行機はこんな中を飛んでいます。 ここで機外に放り出されると「ちょっと寒いじゃん」って思っているうちに血液が沸騰して体の中は泡だらけになっています。これはかなりきついかもしれませんね!でもご安心を!酸素も無いので有効意識時間は5秒程度ですから「あれー?なんか変」と感じる時にはすでに黄泉の国に旅立っています。ですからパイロットにとってこの場所で一番怖いのはキャビン圧の漏れなのです。急激に減圧されればだれでも気がつきますがちょろちょろ漏れると知らず知らずのうちに意識がなくなっています。世界的には、今でも減圧もしくは酸素欠乏に起因するであろう高高度事故が時々報告されています。 半宇宙旅行を楽しんでいると、飛行機は音速を切ってくれます。そこで降下に移ります。飛行機は上昇するより、降下するほうが何倍も大変なのです。スピードブレーキを開いて、パワーを最少にして降下を始めます。ここで降下角を大きく取るとまた音速を超えてしまうので速度計を見ながらの降下になります。先ほど実施したズームアップは弾道飛行で、空気のほとんど無い所を飛んでいますから操縦は思うようにはできません。操縦桿はスカスカ状態です。だましだまし降下を続け、3万フィートを切ると、飛行機は俄然元気になります。エンジンパワーも操縦感覚もグライダーから戦闘機に劇的に変わります。
ついでに衝撃波のお話もしてみましょう。空気は音速よりも速く圧力変動を伝えることが出来ません。このため音速よりも速い物体が空気中にいるとエネルギーが溜まった壁が出来あがります。これが衝撃波です。何らかの原因でこの衝撃波が減衰前に地上に伝わるとドカーンドカーンと2回音がして窓ガラスが割れるような現象を発生させかねません。ですから超音速飛行試験は小松から北へ200キロメートルも沖合に出て細心の注意を払いながら実施されています。
【BLACK OUT】
さて、ここで元気になった飛行機の操縦特性を見てみようかとGをかけてみます。90度バンクに入れてスティックを手前に引いて、2G、3G、4G「うん、すごっく調子いいじゃん」さらに5じー6じー…ん? 「あれー?目が、目が見えなーぃ!まっくらだー!」
さて、今後の運命やいかに!次回に続く!
------------------------ コックピットから その3 「BLACK OUT」 「VERTIGO」 【BLACK OUT】
戦闘機の命は機動性です。 いかに相手よりも素早く動くかで勝負が決まります。この機動性を決定するための大きな要素の1つがG(ジー)です。Gとは地球の重力加速度をあらわす単位です。それではG変化はどのように感じるのでしょうか。私の体験からご説明しましょう。 皆様が日常体験できるG変化ではエレベーターがありますが、多分これで0.1G程度の変化だと思います。もし興味があるならば、体重計をエレベーターに持ち込んで測定してみてください。0.1Gの変化でも体重が1割増減する筈です。 飛行機に話を戻しましょう。民間の飛行機に乗って旋回時に感じるGは最大でも1.2G程度です。しかし戦闘機ではちょっと操縦桿に触るだけで1.5Gぐらい簡単にかかってしまいます。2GになるとGスーツが膨らんできてGがかかり始めたかなという感じでなかなか心地よい雰囲気です。ジェットコースターなどでは最大2~3G程度かかるようですので普通の人でもこれぐらいまでは許容されるのだと思います。3Gは戦闘機が���空で動くときの基本Gです。
2Gから膨らむGスーツはパイロットの下半身を圧搾空気によって締め付けるためのものです。Gがかかると血液は下に下がって脳に血が行かなくなります。これを物理的に防止するために下半身をしめつけて血液の降下を防止しています。Gスーツは1.5グラム程度の耐G能力を上げると言われています。
さて次は4Gです。これ以上はやはり戦闘機でなくては体験できません。通常の飛行機はこの辺で翼が折れてしまいます。 4Gは簡単なアクロバットなどをする場合にかかります。下腹にぐっと力を入れていれば特に問題はありません。さらに5G宙返りなどのアクロバットにはこの程度のGを使います。体全身に力を込めて頑張ればそれなりに耐える事ができます。そして6Gこの辺からやはり人間の構造的限界が自覚できます。ちょっと気を抜くと視野が狭くなって景色が白黒になってきます。これは目に十分な血液が供給されなくなっていることを示しています。「グレイアウト」と呼びます。
そして7G。ここからは根性との勝負です。 Gスーツはギリギリ下半身を締め付けます。体の力を抜くとブラックアウトと言って目が全く見えなくなります。そこを根性で頑張ります。操縦桿を持つ右手の二の腕でピシピシと音がして毛細血管が切れるのが分かります。何しろ自分の体重の7倍が体中にかかっているのです。 さらに8G。この辺の1Gの変化は劇的です。まず息が出来ません。まぶたも重くてあけているのがやっとです。 そして9Gもう本当に限界です。生きているのがやっとです。あと0.5G増やしたら心臓もお休みしてしまいそうです。9Gはすでに拷問です。「なんでもするから許してー」と叫びたくなります。まあ息はしていないので唸り声しか出ませんがね!(笑)
現在ここが戦闘機の限界です。 いや戦闘機の限界ではなく人間の限界です。戦闘訓練を終えて降りてくると腰は痛いし首は動かないし肩にはくっきりとハーネス痕が残り、足の裏・ふくらはぎ・二の腕など軟らかい部分は内出血しています。いやーまともな商売ではないなーと感じる時です。
しかしここで一番危険なのは意識喪失です。急激にGが立ち上がると人間の体はついてきません。こうなると脳に血液が突然行かなくなるので意識を失う感覚も無く、瞬時に意識を失います。戦闘機乗りが一番恐れている現象です。
マイナスGはさらに愉快です。 この状況を作るにはスティックをちょっと前に押します。普通の人は+0.5G程度で降参します。0Gで目の前で鉛筆が浮かんでいます。体の中身も浮き上がるので食後には気分のいいものではありません。 スティックをもうちょっと押します-1Gです。逆立ちをしているのと同じですごみなどの固定していないものはすべて頭上のキャノピーに張り付きます。そして-2G。これはもう限界です。頭に血が集まるためにひどい頭痛がしてきます。さらに-3G。飛行機はここが限界です。人間は限界を過ぎています。数十秒間この状態が続くとレッドアウトといって景色が真っ赤になって目から血が噴出します。ですからパイロットはこの状態をあまり好みま��ん。 多くの飛行機の戦闘ゲームがありますが、これで実機と一番違うところは押し舵を操縦者が多用することです。もしこの種のゲームを愛されておられる方がおられましたら一度押し舵を使わないで戦闘してみてください。そうすればより実戦的なゲームが楽しめると思います。
【VERTIGO】
さーって、飛行機の調子も良いし帰ろうかなーん?なんかいつもと景色が違う?なんで姿勢指示器が裏返しなの?飛行機壊れた?いーえ、あなたが壊れています。
さて、今後の運命やいかに!次回に続く!
------------------------ コックピットから その4 「VERTIGO」 「Fingertip」 【VERTIGO】
バーティゴは空間識失調と言われています。 パイロットはこの現象から逃れることはできません。どんなベテランでも必ず陥ります。上と下が分からなくなるのです。いや分からなくなるというより間違って認識してしまうのです。 今あなたにとって下はどっちですか?足元が下ですよね!なぜかと言えば地球があなたを引っ張っているからそう思っているのです。この感覚が飛行機を操縦する上では大きな障害となってきます。飛行機は3次元を自由に運動します。運動するとそれと反対側に遠心力が働きます。人間はこの力と重力との合成を重力として感じてしまいます。そこで運動の外側が下だと勘違いするのです。 大型民間機の中央の座席に座って離陸時に「すっごーい急上昇!」と思ったことはありませんか?これも一種の勘違いです。前進する加速度をお客様は背中で感じます。するとその加速度と重力の合成が腰の付近に感じるのであたかも急角度で上昇しているように思ってしまうのです。ここで窓の外をちらっと見ると自分が思っているほど急角度で上がっていないのがすぐに分かります。
私の実体験では雲がポツポツある日、空中戦訓練を終了して帰る時に何か景色が記憶と違うのです。確か雲は下だったのに今は自分の頭の上にあります。お天気が変わったのかなーと思いながら姿勢指示器を見ると背面姿勢です。「そうかぼくは上と下を間違えてたのねーぇ!」この場合、飛行機は地上に向かって背面で2G降下をしていたのです。 これだとちゃんと床方向に1Gかかっていますので感覚的に全く違和感はないのです。水平飛行と2Gの背面との区別がつかないのです。このとき私は海と空をも見間違えているのです。地上では海の方が空よりも青いのですが上空では空の方がはるかに青いのです。人間一旦信じ込むとなんでもそれが真実だと感じてしまうのです。
ちなみにこの写真を見て違和感を感じますか?背面飛行しながらOKサインを出しているように見えませんか?もしそう見えたらあなたはすでにバーティゴです。 ではこの勘違いを防止するためにはどうしたら良いのでしょう。それは常に計器を信じる事です。しかし計器も機械ですので壊れているときもあります。「そんじゃーどうするのー?」それでも計器を信じます。
飛行中、自分の姿勢を知るためには姿勢指示器が一番簡単です。外界が見えようと見えまいとこの計器は常に飛行姿勢を示しています。しかしパイロットはすぐには信じません。次に高度計を見て高度変化を確認して次に高度計を確かめるために昇降計をチェックします。そこで何か疑いがあれば次に速度計エンジン計器などもチェックします。 飛行機には沢山の計器がついています。そして各々は別々の情報を指示しますが何らかの関連をもっています。速度計と高度計は別物ですがパワーをいじらずに上昇姿勢にして高度を上げれば必ず速度は減ります。それなのに速度に変化がなければ必ず何かがおかしいのです。 このようにして飛行中は常に多くの計器から1つの真実をいつも探り出そうとしています。そしてその結果が自分の感覚と違っていても計器を信じて自分���否定しなくてはならないのです。
命がかかっている時に自分の感覚や信念を曲げて機械を信じて行動することは至難の業です。それも数秒のうちに判断しなくてはいけません。10秒も悩んでいたら飛行機はすでに取り返しのつかない領域に入っています。飛行機に許されている余裕時間は2秒です。何かが発生して2秒以内に正しい手順を実施すれば故障で飛行機が落ちないようには設計されています。
車で、ここでは感じとしては右に曲がらなくてはいけないんだけどカーナビは左に行けと言っています。この場合あなたはどちらに曲がりますか?まあ、車ならどちらを選んでも「なーんだやっぱ違うじゃん!」って思った時に止まってやり直せますが、飛行機ではそうはいきません。「なーんだ、やっぱ違うじゃん!」って思った時には全てが終わっています。 空間識失調は訓練では克服できません。どんな訓練をいくらやっても結局上下は分かりません。そこでパイロットはいかなるときにも計器を信じるように訓練します。先ずは机上で教育を受け次にシミュレーターで訓練しそして実機で外界の景色を遮断して徹底的に訓練します。だからこそ計器の誤差や故障は許されないのです。 フライトを終わって「この飛行機ここが変だったよ!」と報告しているときに「あーそれは単に計器の故障ですよ!」ってなことを言われるとパイロットが血相を変えて怒るのはこのためなのです。(笑)
【Fingertip】
Fingertipは戦闘機の基本隊形です。手の指をくっつけた時の親指以外のつめの位置が各機の位置です。この隊形で離陸をしてアクロバットもこなし雲の中も飛んで着陸までします。この間ウイングマン(2番機)はリーダー機しか見ません。特に若いパイロットは他を見る余裕などは全くありません。 「このリーダー超へったくっそーいつまで旋回するの?疲れちゃうよー!」こんな思いが頭に浮かびます。 しっかーっし!これもあなたがまたまたバーティゴです。
さて今後の運命やいかに!次回に続く!
------------------------ コックピットから その5 「IN Popeye」 「HOME BINGO」 【IN Popeye】
ポップアイ?出目金のお話ではありません。セーラーマンのお話です。 雲の中を飛行していることを「インポパイ」と言います。雲の中では何も見えません、多分牛乳のプールの中に潜ってる感じだと思います。(私はそんなプールに潜ったことないので正確に比較はできませんが…笑)
ここで雲のお話をしましょう。 雲は雲があるのではなくて空気の乱れがあるから雲に見えると言ったほうが良いかもしれません。川でいえば瀬に白波が立ちます。これは白波があるのではなくて、流れが乱されて白波に見えるのです。空気の場合も同じで、流れが乱されると雲ができます。 このため雲の中は気流が乱れている��で回りとは性質が全く異なります。それでは頑張って雲の中を飛んでみましょう!
目の前に雲が迫ってきます。キムタクはドラマの中で「雲の頂点が左に流れているから風上側の右に迂回する」と言っていましたが、超正解です。 しかし状況によって避けられない場合もあります。そこで仕方なく雲に突入することになります。先ず前方に山とか障害物が無いことが第一条件です。「あったりまえでしょうー」と、思われる方も多いと思いますが、雲に入ってそのまま山に激突する事故は毎月のように発生しているのが現実です。 次に準備することはシートベルトをしっかり締め直すことです。そして計器飛行に移る準備をします。雲の中では景色が全く見えませんから計器飛行以外に無事に飛ぶ方法はありません。
そして覚悟を決めてズボッ!と雲に入ります。 案の定、回りは真っ白です。そして揺れが始まります。揺れは心地よい軽い揺れから飛行機が分解するような揺れまで様々です。この揺れを正確に前もって予想することはできません。 まぁ90パーセントはそれなりに安全ですので適当に心配しておけば問題ありません。
揺れが始まって数十秒たつと風防が白くなってきます。これはアイシングといわれる現象で、雲の中にある過冷却の水が機体にぶつかって瞬時に凍り、どんどん成長していくために発生します。外が見えない程度なら、それほど大きな問題ではないのですが、氷は機体全体に付着します。翼についた氷は翼の形状を変化させ飛行機の特性を変えてしまいます。エンジン付近についた氷は、大きくなってはがれ落ち、エンジンに吸い込まれて大きなダメージを与えます。そして何よりも機体自体が、氷でだんだん重くなります。 こうなってくるともう飛ぶことはできません。このため飛行機には、いろいろな防氷装置があります。あるものは氷をヒーターで融かし、あるものは風船を膨らませて氷を壊します。 機体へのアイシングは外気温が-3~-10度程度で発生します。また気温は高度を1000フィート上げる毎に2度下がります。ですからこの高度帯を避ければアイシングは発生しません。しかしアイシングを避けようとして、安易に高度を上下すると、もっとひどい目にあうこともありますので、注意が必要です。
雲にはいろいろな種類がありますが、パイロットにとって一番怖いのが入道雲です。入道雲に入ってしまったことはすぐに分かります。先ず、上下左右に大きく振られます。飛行機が木の葉のように舞い踊ります。その次に来るのは、激しい音です。最初は「大粒の雨かな?」なんて思っていますが、実際は氷の塊です。 地上に落ちてくるとヒョウとかアラレと呼ばれるものです。時によっては拳大の氷も浮かんでいます。「ひょえーひどい所にきちゃったなー」なんて思っていると、回りがだんだん暗くなって、雲が緑色に見えてきます。「あれーなんかいる!」「長い蛍?」「光るミミズ?」。そうこうしていると、前方の風防が青白く光り始めます。その中を細長い光が飛び交います。良く見ると機体全体が青く光り始めています。これが「セントエルモの火」と呼ばれるものです。 帆船時代の船乗りは、この光は嵐を知らせる兆候としていたようです。飛行機でも同じです。この光を楽しんでいると「ピシッパシッ」というラップ音が聞こえてきます。そして腕や足の毛が逆立ってきます。こうなってくると、もう近いです!「こりゃーくるぞー!」テレビなどではここでVTRが終わって、結局「霊」は出てこないのですが(笑)、現実は違います。来ちゃうんですねートラのパンツをはいた鬼が! 目の前でそれまで見た事もないような閃光が走ったかと思った瞬間ドッカーンと、大きな音がして自分の体から電気が抜けていくのがわかります。飛行機は比較的雷には強く設計されています。上空で飛行機に雷が落ちても通常この程度です。ただし、着陸後機体を点検すると何か部品がなくなっています。ですから、何があっても入道雲に入るのは避けたほうが良いと思いますよーっ!
【HOME BINGO】
本当に燃料がなくなっていることを飛行機が叫び始めました。燃料の余裕はもうありません。直ちに帰るように言っています。 「でもまだやることあるんだけどなー」
さて今後の運命やいかに!次回に続く!
------------------------ コックピットから その6 「Cockpit」 「Control」 【Cockpit】
今回は我々の職場紹介です。 戦闘機の操縦席はコックピットと呼ばれています。日本語で言えば鳥小屋です。中に鶏のようなやつがいるからではなくて、多分極端に狭いのでこのように呼ばれているのだと思います。ほとんどのスイッチやレバーには、そのままの姿勢で届くようになっています。座ったままでなんでも出来る!横着者にはピッタリの職場です(笑)。
コックピット中央にはいざという時に機外に脱出するための射出座席が鎮座しています。正面下には多くの計器、操縦席左右のパネルには無数のスイッチがついています。そして右手用にスティック(操縦桿)、左手用にスロットル(加減速器)、足用にはラダ-ペダルがついています。 またスティックとスロットルにも、やたらとスイッチがついています。これら全てを迷い無く使っていかなくては、戦闘機は動かせません。可能ならパイロットに手がもう1本あって、かつ親指が2本づつあれば理想的です。
このコックピットへは、車などとは違ってキャノピーを開けて、上から乗り込みます。 まず座席に足を置いて、スイッチなどを蹴飛ばさないように注意しながらゆっくり座り込みます。座ったら座席下にあるサバイバルキットと自分を左右つなぎます。そして今度は自分をシートベルトで固定します。この際同時にGスーツを機体ともつなげます。最後にパラシュートと自分を連結させます。飛行機によっては足にも固定装置を付ける場合もあります。もう、がんじがらめ状態です。これにヘルメットをかぶって無線コード1本と2本の酸素ホースをつなげれば、やっと準備完了です。 夏場などはこれだけでダイエット効果が望めます。
座って正面を見ると、HUD(Head Up Display)があります。これは飛行中、パイロットが必要であろう情報を常に表示しています。その上焦点は無限遠点になっているので、あたかも文字や絵が空中に描かれているように見えます。これによって、発見した目標から目を離さずに、自分や相手の状況を知ることができます。 最近のゲームでは、HUD表示がほとんどですから、見慣れている方も多いと思いますが、本物とはかなり違います。
コックピットは冷暖房完備です。フルオートエアコンがついています。夏場地上では35度、そこでキャノピーを閉めれば灼熱地獄、上空にあがれば外気温はマイナス52度、この環境範囲をカバーするように設計されています。また皆様が戦闘機で一番気になるのが騒音だと思います。 エンジンはものすごい音を出しています。しかしコックピット内で聞こえる音は、エンジン音ではなくて意外にもエアコンの噴出音なのです。それも、かなりの音圧です。まあ、パイロットは完全閉鎖型のヘルメットを常時装着しているのでその騒音もほとんど聞こえません。しかし、コックピットには、超おしゃべりなお姉さんが1人住んでいます。エンジンスタートからしゃべり始めます。やれエンジンが調子悪いだとか、はたまた、敵にロックオンされたとか、もう燃料が無いから帰れとか。分かってるって言うのに、しゃべリ続けます。昔は男性の声でしたが、最近はどの飛行機も女性になっています。この方が、パイロットが素直に従ってくれるからでしょうか(笑)。 他に、いろいろな音色の音が出ます。それも連続音であったり、断続音であったり、それらの混合であったりします。「ピッ」と音がしただけで、パイロットは飛行機が何を言いたいのか直ぐに分からなくてはいけません。ですから、我々はやたらと単音の電子音には敏感になっています。
さて話は変わって、コックピットからの景色のお話です。 一言、「それは最高でーす!」何しろ自分の腰より上は全部透明なのですから、民間機に乗って小さな窓から覗くのとは大違いです。景色360度見放題です。そのままでは、さすがに床があるので真下は見られませんが、飛行機を裏返しにすれば下も丸見えになります。昼間は大パノラマ、夕方には燃えるような夕焼け、夜間には全天溢れんばかりの星空が楽しめます。
しかし、この職場の最大の欠点は、孤独なことです。常に1人の世界です。喜びも、感動も、驚きも、恐怖も、すべて1人で受け止めなくてはいけません。何があっても、1人で判断して1人で対処します。地上には存在しないこんな職場が、そこにはあるのです。
【Control】
それでは次回は、飛行機の操縦についてのお話です。お楽しみにーぃ。
------------------------ コックピットから その7 「Control」「Instrument」「Flying Quality」 【Control】
今回は、操縦のお話です。あまり詳しくお話すると、だれでも飛行機の操縦が出来てしまって我々の仕事が奪われる可能性があるので、今回はほどほどに!(笑)
さて飛行機の操縦は、車とさほど変わりません。行きたい方向に操縦桿を傾ければ良いのです。右に行きたければ操縦桿を右に、上に行きたければ操縦桿を手前に!加速したければスロットルを前に進めます。しかし、車と決定的に違うのは、三次元的に変化してしまうことでしょうか。例えば、旋回すると高度は自然に落ちて、速度も変わってしまいます。ひとつを変えると、全部が変わってしまうのです。この現象を防ぐために具体的には、旋回に入るときには、操縦桿を適量倒すと同時に、機首を僅かに上げて、パワーを少々変更しておくことが必要です。すでにお気付きの方もおられると思いますが、今の文章でのキーポイントは、適量、僅かに、少々、ここにあります。この量が会得できればあなたはもうパイロットです。ちなみに 車の免許は18歳からですが、飛行機の免許は16歳から取得可能です。私自身も、車の免許よりも飛行機の免許の方が先でした。
ご自���が、ケッタ(名古屋弁で自転車)に乗れるようになったときを思い出してください。理由は分からないのですが、ある日突然乗れるようになりませんでしたか?飛行機も同じ感覚です。ある日突然着陸が出来るのです。とても不思議な感覚です。それまでは、悩んで勉強して練習して、試行錯誤を繰り返すのですが、いくらやっても着陸はできません。しかし、ある時突然着陸が見えるのです!
ご存知の方は少ないと思いますが、80年代の映画でスピルバーグ監督の「オールウェイズ」というのがあります。この映画で、若いパイロットが、ある日突然操縦が出来るようになります。私は「あー!ぼくもそうだったのかー」と感動したのを覚えています。しかし、友人に話すと「ん?あれってただのラブストーリーじゃん」全く観点がちがいましたー(汗)。いずれにせよ、飛行機の操縦は、ある日突然出来るようになるのです。
1つの飛行機を完全に手に入れると、後はどんな飛行機でも同じです。慣れるまでは上手な操縦はできませんが、安全に飛ぶ程度でしたら機種が変わってもさほど影響はありません。車で言えば、ミニカの運転が完璧にできれば、プラウディアの運転も出来るのと同じです。まあ飛行機は基本的には、機種毎に免許がありますから、法的にはちょっと問題はありますが…。
【Instrument】
飛行機には、無数の計器があります。「あんなに沢山の計器を見るのは大変でしょう?」と質問を受けます。しかし実際は、全部は見ないのでそれほど大変でもないのです(笑)。全ての計器を常にチェックしていたら操縦など出来ません。計器はあくまでも、飛行の参考とするものです。むしろ自分のやった操舵の結果を見るための物です。必要なときに 必要なものだけを見る。これも操縦の極意です。車でも同じですよね!いつもメーターを見ているのではなくて、パトカーを見つけたら、速度計!灰皿が一杯になったら燃料計!おなかがすいたら時計!この程度ですよね?
それでは、飛行機の計器の中で、何が一番大事だと思いますか?高度計?速度計?姿勢指示器?エンジン計器?航法計器? 私は昔から、それは速度計だと思っています。速度だけは、人間にはわからないのです。特に上空には、対象物がありませんから、速度は全くわかりません。お天気が良ければ、高度は、地上の物の大きさで分かります。例えば人間の形が見えれば1,000フィート、車の形が分かれば2,000フィート、家の形が分かれば5,000フィート…。また、速度計がなければ、着陸はできません。飛行機には失速があります。失速とは飛行機がただの金属の塊になることを意味しています。色々な理由で着陸は、出来るだけ低速でしなくてはいけません。そして何があっても 失速速度以下にしてはいけません。このために 速度計は不可欠な計器なのです。
【Flying Quality】
失速の話が出てきたので、次回はちょっと知的に飛行機の特性のお話をしてみたいと思います。簡単に言えば、飛行機の癖?特徴?性質?みたいなものです。皆様が「へー」とうなるような、トリビアを!お楽しみにぃ!
------------------------ コックピットから その8 「Air Speed」「ALTITUDE」「STALL」 【Air Speed】
「飛行機の速度計は…速度を示していない!」「へーへーへぇーっ…!」(笑)
飛行機の速度計と車の速度計には、大きな違いがあるのをご存知でしょうか?まあ機構的にも全く違いますが、それよりも大きな違いは、示している速度が違うことなのです。車の場合は、地面に対する速さを示していますよね!時速100キロメートルで走っている場合、目的地まで100キロメートルなら、到着は1時間後となります。飛行機はピトー管(写真○印)という機械で速度を感じます。自転車に乗って、ゆっくり走る時と、全速で走る時では、体で感じる空気の抵抗は違いますよね?この圧力変化を飛行機は速度に換算しています。また高原では、空気密度が低くなるのは経験上ご存知だと思います。これらの組み合わせで飛行機の速度計は、その高度の空気の密度に対する速度を示しています。
うーん、ちょっと難しいかな?それでは、超具体的にお話しましょう。車で速度計が時速100キロメートルを示しています。この場合走っている場所が、海沿いの道路であっても、山の上のスカイラインであっても、時速100キロメートルですよね!しかし飛行機の場合は違うのです。同じ速度を示していても、高度が違うと、実際の速度も違ってくるのです。飛行機が地上付近で200キロメートルを指示して飛んでいるときは、時速200キロメートルですが、高度が約10キロメートルだと、同じ200キロメートルの指示でも実際の速度は時速350キロメートルぐらいなのです。
ですから目的地までの飛行時間を計算する場合は、先ず計器を見て速度を読んで、計器の誤差補正をして、それに高度補正のために温度補正と密度補正をして、対地速度を求めてから、飛行時間を算出しなくてはいけません。風がある場合はさらにその補正もしなくてはいけません。「それなら今はコンピューターが発達してるんだから、最初から対地速度計にして表示すればいいじゃん!」っと思われる方も多いと思います。でもこれも大きな間違いなのです。
パイロットが最も必要な速度は、コックピット内にある計器の速度で、対地速度ではありません。その理由は飛行機の特性が、この計器に表示される速度で決まるからです。地上付近で、計器時速200キロメートルで失速する飛行機は、高度10キロメートルでも計器時速200キロメートルで失速します。ですから操縦する上においては、対地速度はあまり必要ではなくて、あくまでも計器が示す、空気の密度に対する速度が必要なのです。
一般の乗客の方は飛行機の速度は車と同じだと思って話を聞いているし、パイロットは、特性を示す計器速度だと思っているし、技術者は性能計算用の等価対気速度だと思って話をします。ですから、この3者で話が全く通じないのは当然です(笑)。
「速度計、ガッテンしていただけました?」「ガッテン ガッテン ガッテン!」おっといつのまにか番組が違っていますぅ。
【ALTITUDE】
今度は、高度計のお話です。飛行機は、毎日同じ高度を飛んでいるのではありません。それは、飛行機の高度計が気圧高度を使っているため、気圧の高い日は、同じ高度計指示でも高い高度を、そして低い気圧の日は、低い高度を飛んでしまいます。この結果、飛行機の飛行高度は実際の高度とは違うのです。「ん?なんか危険な香りがしますよねー」。富士山の高さが3,776メートルだからといって、高度計で3,800メートルだから絶対ぶつからない!と思うのは危険です。地球上の気圧変化を考えれば、最低でも500メートルぐらいの違いはあると思って飛んだほうが無難です。しかし飛行機同士の場合は、同じ理論の高度計を使っている筈なので、同じ場所で、違う高度指示ならば衝突することはまずないでしょう。将来、実高度や対地高度で飛行する機体が出てきたときには、高度計も考え直さなくてはいけないかも知れません。
【STALL】
次回は、飛行機で避けて通れない失速のお話です。本格的飛行機の特性のお話です。かなり専門的用語の多発が予想されます(笑)。事前に是非とも航空工学書の1冊でも読破しておいてくださいねー!それではー。
------------------------ コックピットから その9 「STALL」 【STALL】
今回は、お約束どおり失速のお話です。通常の会話で「失速しちゃったよー」というのは、それまでのペースが急に落ちた時や、なんかやる気が無くなった時などに使いますが、飛行機の失速はそんなに甘いものではありません。イメージとしては、高速道路を車で快適に走っていて、ある速度を切ると、突然道路がぬかるみになってしまうような感じです。
飛行機は、皆さんが想像されているよりも、空気にしっかりと支えられています。普通に飛んでいる限り、飛行機を支えている空気と、車が走っている道路と感覚的違いはありません。むしろ空気の方が安定していて揺れもありません。あたかも 平らな氷の上を滑っているような感じです。しかし一旦ある速度を切ると、それまでしっかりと飛行機を支えていた空気が、突然普通の空気になってしまうのです。こうなると飛行機はただの金属の塊です。地球に向けて一直線に落ちていきます。
それでは実際に、飛行機を失速させてみましょう。基本的には速度を減らしていけば良いのですが、失速後のことを考えると、飛行機の形態、エンジンの推力、補助翼などの中立位置、失速した瞬間の姿勢、残燃料量など、多くの条件を我々に有利にしておかなくてはいけません。これを間違えると取り返しがつかなくなる可能性があります。それと当然十分な高度が必要です。
予想失速速度の1.3倍ぐらいの速度からスタートします。通常はエンジンを絞っていけば徐々に減速していきます。先ず現れる現象は、バフェットと呼ばれる現象です。主翼で剥がれた空気が、胴体や水平尾翼に当たって、機体全体を振動させます。この大きさは、飛行機によって異なっていて、心地よい振動から、飛行機の構造物を壊してしまうような振動まで様々です。一般的には失速速度の1割程度前から発生して失速まで継続します。
「おーこれがバフェットね!おもしろいじゃん!」ってなことを考えていると、失速は突然やってきます。失速そのものの現象は、単に機首が真っ直ぐ下に落ちるものから、機首が横に流れて激しい回転運動を始めるものまで、千差万別です。いずれにせよ一番の問題点は、突然来ることです。「ありゃー」などと思っている時間的余裕はありません、直ぐに定められた手順で回復操舵をしないといけません。5秒も迷っていれば東京タワーの高さぐらいは簡単に落ちてしまいます。
もし、ここで高度に余裕があって、さらに探究心があるならば、さらに操縦桿を引き続けます。おまけで操縦桿を左右どちらかに最大操舵して、反対側のラダ-を踏み込みます。すると「ゴー」という音と共に激しく揺られて、上下左右何がなんだかわからないような運動に入ります。そこで手足を緩めても、同じ激しい運動が続くようなら、スピンモードに入っています。通常スピンは、自然現象として安定しています。木の葉がゆらゆらと揺れながら落ちて行くのと同じです。違いは木の葉が数グラムなのに対して、飛行機は数十トンなだけです(笑)。スピンは、何も対応しなければそのまま継続します。このとき計器類を見ると、姿勢指示器はぐるぐる回り、高度計は読み取れない速度で減少し、速度計だけは極めて低い速度で安定しています。運動が激しい場合は飛行機の構造を破壊しまので適当な所で止めるのが得策です。
スピンモードからの回復操舵は、飛行機によって全く異なります。そのため十分な予習が必要です。スピンを抜け出すと、自動回転運動というのに入ります。これもスピンだと思って、さらに回復操舵をしてしまうと、好ましくないモードに入りますので、正確な状況判定が必要です。自動回転運動に入ると、速度が増加してきて、失速領域から自然に抜け出すことができます。
失速自体は、それほど危険なモードではありませんが、離陸直後や着陸前などは、失速速度の2~3割程度の余裕速度しかありません。ここで何らかの原因で、ちょっとでも減速してしまうと失速してしまいます。ですから、パイロットは離陸後3分、着陸前5分は最高に緊張しています。うーん 今回はちょっと難しかったかな?先月号の予告どおり予習していました?(笑)
次回は、その離着陸の緊張をお伝えしたいと思っています。ご期待ください。
------------------------ コックピットから その10 「Take Off」 【Take Off】
今回は大空への第1歩である離陸についてのお話です。
離陸は飛行機を操縦する上では、比較的やさしいい操舵になります。しかし、その代わりにパイロットには多くの即断が要求されます。それでは実際に、戦闘機を使って離陸してみましょう。
滑走路進入許可をもらって、ゆっくり滑走路に進入します。この時には着陸しようとしている飛行機がいないか、そして滑走路上に障害物などはないかを、自分の目で確認します。またここで大切なのは、出来るだけ滑走路を長く使えるように、無意味に前進しないことです。通常軽装備の戦闘機は4~500メートルで離陸してしまいます。大型民間機でも2,000メートルもあれば離陸します。しかし普通滑走路は3,000メートルもあります。それなのに何故、滑走路は長く使える様に、進入するのでしょう?それは、離陸を断念して、停止するための滑走路長を確保するためで、飛行機は離陸するのに必要な長さの倍以上の距離が停止するためには必要になるからで��。
滑走路に進入して停止したら、しっかりブレーキを踏んで、針路計や磁気コンパスを確認します。次に、エンジンチェックを実施します。先ずは、手順書に示されているパワーまでスロットルを進めます。エンジンの計器を素早く読み取って、正常に動いているかどうか確認します。エンジンチェック中に、電気系統、エアコン系統なども確認します。さーって 飛行機はOKなようです。そして管制塔から離陸許可が来ました。離陸です。
再度前方に障害物などがないか確認します。指定されたパワーにして、ブレーキを離します。ゆっくり飛行機は動き始めます。動き始めたのを確認したら、100パーセントパワーにします。このときにも、エンジン計器を確認するのを忘れてはいけません。100パーセントパワーにすると、急に飛行機は加速し始めます。そして必要ならば、スロットルをアフターバーナ領域へ進めます。急激な加速感と、エンジンノズル計器の開きが、アフターバーナへの正常点火を教えてくれます。ブレーキを離してから約5秒後、すでに飛行機は、時速100キロメートルを軽く超えています。空中まであと数秒。
しかしこの付近で飛行機は一番不安定なのです。滑走中は3輪車、そして空中へ飛び出せば飛行機、その変化点なのです。ここで最も影響するのが、風です。特に横風は地上を離れようとしている飛行機にとっては、「嫌がらせ」以外の何ものでもありません。僅か数メートルの横風でも、この場所ではパイロットを真剣にさせるのに十分です。
また、戦闘機にとってはこの地点が大きな決心ポイントです。これまでに機体に異常があれば、離陸を中止して、残滑走路上で止まることを決心し、この点を過ぎてしまえば、何があっても飛び上がらなくてはいけません。(厳密には、もうちょっと複雑な計算が必要ですが…)
さて 離陸速度が近づきました。ゆっくりと機首を引き上げて、離陸姿勢にします。この操作を急激にしたり、���度にすると、思いもかけない事態が発生しますので、細心の注意が必要です。離陸姿勢を維持していると、自然に飛行機は浮きあがります。浮揚を確認して、脚とフラップを格納します。その間も、飛行機はどんどん加速していきます。そのままの姿勢では、滑走路エンド上空で、音速を超えてしまいます。(笑)そこで、決められた上昇速度になるように、機首をさらに上げて速度を維持するようにします。しかしながら今の戦闘機は、膨大な推力があります。速度を維持しようとすると、機首がどんどん上がって、最終的には垂直になってしまいます。搭載物の無いF-2などは真上を向いても加速していきます。そこで適当なところで、アフターバーナをキャンセルして 音速の0.9倍ぐらいの速度で上昇するのが良いでしょう。
これが一連の離陸になりますが、ブレーキを離してから15秒程で、全ての離陸操作が終わります。この間に、パイロットは環境の変化を素早く感じ取って、状況に応じた操舵をしなくてはいけません。そして、この間一瞬も気を緩めることができないのです。ある程度高度が取れれば、やっと、ちょっとひと安心です。
次回は、さらに難しい着陸についてです。飛び上がってしまった飛行機は、何が何でも降ろさなくてはいけません。さて、どのような事態が発生するのでしょう。お楽しみに!
------------------------ コックピットから その11 「Landing」「Final」 【Landing】
着陸は飛行の最終段階です。そして、飛行中一番天候の影響を受け、また飛行機の速度が極めて低く且つ地上に近いために、瞬時の判断の遅れなどが航空事故を引き起こす可能性が最も高い部分でもあるのです。これらの理由から、着陸はパイロットに瞬時の正確な判断が要求されます。
実は、パイロットは離陸する時から、着陸のことは考えています。なぜなら、一度飛び上がってしまえば、何があっても必ず着陸はセットになっているからです。他のミッションは飛行機の状況などで中止が可能ですが、着陸だけはパスできませんからー(笑)。
滑走路の手前約2キロメートル程度からが勝負になります。ここまでは、飛行機の種類や、飛行方法によって様々ですが、この先は、どんな飛行機でもほとんど同じです。それでは実際に着陸してみましょう。接地まで30秒前の地点からです。
ここまでに、自分の飛行機が、着陸できる形態になっているかを確認します。次に飛行場の状況を確認します。特に、気象状況、他機の状況は大切な事項です。これら全てを確認し終えて、着陸操作に専念します。
着陸のための滑走路への接近でやるべきことは、滑走路延長線上を、決められた降下角度で、決められた速度で飛行することです。ですから、この3つの条件さえ満足できれば、着陸は簡単です。しかし「そうは問屋が許しません」(かなり古い表現?)。それは、これら全てが関連しているからです。1つがズレたので直そうとすると、必ず他の2つが乱れるのです。その上、地上付近の風は複雑なので、常に飛行を邪魔しようと狙っています。
1例を見てみましょう。正面に滑走路が見えます、風が右前方から吹いています。飛行機はだんだん左に流されます。そこで右に飛行機を戻すために、浅い右傾斜で飛行機を右に持っていきます。しかしそれと同時に飛行機の向きも右を向いてしまいます。この修正に今度は左ラダーを踏んで飛行機を滑走路方向に向けます。すると今度は揚力の減少と向かい風成分のために、思っていたよりも多くの高度低下を招きます。それを修正しようとして、機首を上げると今度は速度が減ってしまいます。そこでパワーを足します。このように着陸は、修正操舵の繰り返しになります。修正が遅れると、修正量が多くなって、失速ぎりぎりの速度で飛んでいる飛行機にとっては、より危険な状況に近づく可能性があります。
そうこうしていると、滑走路は目の前に迫ってきます、このままでは、かなり激しく滑走路に接地してしまうので、徐々に降下率を小さくして、できるだけソフトに接地させるように操舵します。この辺の操舵は、ほとんどパイロットの経験と勘です。自分のタイヤと滑走路の距離があとどれぐらい残っているかを肌で感じるのが大切で、その許される誤差は数センチメートル程度だと思います。10センチメートルも勘違いしていると、「ドシャン」と接地してしまいます。まあこれでも特に問題はないのですが、プロ意識が許しません(笑)。
接地したからといって安心してはいけません、飛行機はまだ時速300キロメートルぐらいありますので、不意に横風を受けたり、ちょっと操縦桿を引いたりするとまた飛び上がってしまいます。時速150キロメートル以下になるまでは飛行機です。そこで、早急に減速する必要があります。減速方法は色々ありますが、一番簡単なのが、車と同じブレーキです、しかし20トンの重さで時速300キロメートルの機体を止めるのはかなりのテクニックが必要です。残りの滑走路の長さを確認しながら、自分の飛行機の速度を徐々に減らしていきます。時速100キロメートルを切ればひと安心です。ちなみにブレーキは、左右別々です。右ペダルは右ブレーキ、左ペダルは左ブレーキです。このためパイロットは、飛行機を滑走路上で直進させるために、左右のブレーキをちょうどいい具合に加減しています。すごいでしょ?(笑)。
着陸で、着陸操舵よりも大事なことがあります。それは着陸復行です。着陸をやめて、再度着陸進入するための操作です。この決心は早ければ早いほど安全です。着陸に何らかの疑問や不安を感じたら、直ちに着陸復行して着陸をやり直すべきです。ここで迷うのが一番危険です、着陸しようかどうしようか迷ったら着陸中止!こうパイロットは決めています。これが、安全への第一歩です。
【Final】
すでにこの連載も、あと1回を残すだけとなりました。次回は最終回!さーって、何をお伝えしましょうか?ご期待下さーい。
------------------------ コックピットから その12 「EMERGENCY」「Knock It Off」 【EMERGENCY】
緊急状態は、通常状態でないときです。あたりまえの話ですが…。飛行機にとっては、日常茶飯事です。機体の故障ばかりではありません。天候の悪化や、パイロットの体調不良、地上支援施設の故障など様々な状況が考えられます。
緊急事態が、発生したときの原則は、 (1)飛行機の操縦を続けなさい (2)状況を正確に判断して、適切な手段をとりなさい (3)出来るだけ早く、着陸しなさい 先ずはこの3つがあります。
あなたは、今空を飛んでいます。突然、何らかの警報灯が点灯します。同時に警報音や、機体に変化が生じます。これはかなりラッキーです。なぜならば、警報灯が点灯するということは、設計段階から予想されていた故障だからです。このため妥当であろう手順が、すでに作られています。しかし一番厄介なのは、警報等などが点灯しないけど、「なんか変だなー」と、感じるときです。機体後方から「コツン」と音がしました。車ならその場に止まって、後方を確認しに行けばいいのですが、飛行機では不可能です。ここからは、パイロットの知識量と経験に基づく判断が、その後を左右します。
原則(1)は、極めてあたりまえのように感じますが、原因追求に頭がいってしまうと、つい忘れがちになります。実際に脚の警報灯��球切れで、それに全員が集中して落ちてしまった機体もあります。ですから、何が起こっても、先ずは飛行機の操縦に意識を向けていることが大切になります。
原則(2)は、簡単に書いてありますが、かなり難しい原則です。「コツン」と音がしたのを考えても、その原因は、山ほど考えられます。そしてその状況判断を間違えると、間違った対処手順を実施してしまいます。私の恥ずかしい経験では、射撃終了で目標から離脱したときに、発電機の警報灯が点灯しました。「ありゃー 電源故障だー」「発電機リセット!」「あれー?リセットできない」「完全に発電機壊れちゃった?」「もーやっぱ○○製品はだめだね!」なんて思っていると。「ん?なんでエンジン温度が低いの?」「あれぇーエンジン止まってるジャン!」「エンジン止まった警報等をつけて欲しいよねー」。
原則(3)は、状況はその後どうなるかわからないので、出来るだけ早く降りるのが得策です。このためパイロットは常に、ここで何か起こったら、どこに降りようかを考えています。言い換えれば自分がその日に飛ぶコース近くにある飛行場については事前に調べてあるのです。そして、何かあれば直ぐにそちらに機首を向けながら、状況の判断を始めます。
飛行機を操縦する上で大切なのは、あらゆる面で余裕を持つことです。知識・技量はもちろん、心も体も、そして時間にも余裕を持つことが、安全への第1歩です。ぎりぎりでやっていると、何か発生したときに直ぐに限界がきてしまいます。そして、状況を判断するときには、1つの原因に限定せずに可能性があるものは、全て念頭に置くべきです。
【Knock It Off】
さて、今回で私の連載も終了になります。1年間、中年パイロットのたわごとに、お付き合いしていただきましたことを心から感謝いたします。
自由に大空を飛びまわる、この憧れは人類の永遠のテーマです。ライト兄弟が初めて飛んでから約100年、そして今、私たちはその一部分を手に入れました。しかし、まだまだ大空は限られた人々だけの特別な世界です。飛ぶためには、特殊な機械と、それを操る特別な技術が必要です。このために、多くの人々がこれを支えています。そしてあなたもその大事な1人なのです。
それでは、またの日まで…「R.T.B.」(Return To Base)
------------------------ コックピットから その13 「ENGINE START」 以前の連載から約10年、思うところあって連載を続けることになりました。よろしくお願いいたします。今回は開始ということで、スタートから!
【ENGINE START】
一世代前の戦闘機のエンジンスタートには、それなりの装置と知識と技量が必要でした。たとえば、F-4とかF-1にはスターターが搭載されていません。ですから、何らかの理由で、その飛行機を運用していない飛行場に着陸してしまうと、エンジン始動ができないので、飛び上がるには、かなりの時間と努力が必要となります。また、それ以前の戦闘機では、エンジンスタート中、常にエンジン温度をモニターして燃料量をパイロットがコントロールしなくてはいけないので、素人さんにはちょっと無理でした。
しかし、最近の機体のエンジンスタートには、特別な装置や技量・知識は全く必要ありません。だれにでも簡単に、エンジンスタートが楽しめます。それでは実際に、エンジンを始動してみましょう。でも、キーを入れて回すだけでは動きませんけどね!
その前に、確認すべきことがあります。まずは自分の機体内の状況です。戦闘機は、エンジンが動くまでは単なる高価な金属の塊です。操縦桿を動かしても、引き金を引いても、脚ハンドルを上げても、何も起こりません。動いているのはゼンマイ仕掛けの時計ぐらいです。特にF-15などは、バッテリーも搭載していないので、どこのスイッチを操作しても、電気的には何も起こりません。
しかし、エンジンが回ると、電気と油圧が供給されて、戦闘機は生き返ります。この瞬間が結構やばいんです。仮に、何かのスイッチが入ってたりすると、即座に作動して好ましくない状況が発生する可能性があります。もしかすると、皆様も時々やってしまっている、車のエンジンキーを回したらワイパーが動いてしまったとか・・・・ウインカーがカチカチ作動してしまったとか・・・この手の事象です。
まあ、設計者も操縦者を信じていないので、簡単には作動しないようには作ってあります。しかし、その安全装置がもし壊れていたりすると、とんでもないことが起こってしまいます。エンジンをかけたら、脚をたたんでしまったとか、ミサイルが出てしまったとか・・・・車のような笑い話では済まなくなってしまいます。これを防ぐには、やはり真面目なスタート前点検が必要となります。
次に確認すべきことは、飛行機の周りに固定されていない物が無いかどうかです。仮に、空気取り入れ口付近に、小石や工具などがあれば、必ず吸い込みますし、機体後方に車や人がいれば、必ず吹き飛ばします。このようにして、まずは、飛行機の内側と外側の安全を確認してからのスタートになります。それでは、待ちに待ったエンジン始動です。
どんな戦闘機でも同じですが、前方に「START」と書いてあるスイッチがあると思います。その形状は色々あって、倒す場合もあれば、押す場合もあれば、ハンドルを引く場合もあります。いずれにしても「START」と書かれていると思います。これをそれなりに操作します。
すると、「ぷしゅ~っ」と音がして、圧縮空気が流れて、軽く振動が伝わってきます。これは、エンジンを動かすための小型ジェットエンジン(JFSと呼ばれます)が作動したことを意味しています。JFSがスタートして数秒で、電気が流れ始めます。これでやっと、飛行機は目覚めて、計器や警報等が使える状態になります。
言い換えれば、ここまでは機体のどこかが壊れていても、油が漏れていても、火災になっても、何の警報も出てくれないのです。
その上この瞬間に、全ての電子機器に電気が流れるので、各機材が自己診断を始め、多種の警報や音が無意味に発生するのです。まあ慣れてしまえば、心地よいBGMに聞こえてきますがね!「ぴ~~うおーにんぐ!ヒャラヒャラこ~しょんぴろぴろふぁいや~ぽろんぽろんぴんぽ~んロック!びんご~・・・・etc」これに対しては適当に「は~い」と答えておけば良いでしょう(笑)。
JFSが安定したら、この力をエンジンに送る操作をします。すると、エンジン回転計が動き始め、ゴトゴト音がして、エンジンが動き始めたのが分かります。ジェットエンジンの回転数は、車などのレシプロエンジンと違って、最低回転数でも毎分数万回転です。安定するまで1分ほどかかります。
IDLEで、エンジンが安定してしまえば、もう心配はいりません。戦闘機のエンジンは、燃料がある限り、何があっても回り続けます。最近の機械では少しでもなにか変だと、自分自身を守るために勝手に止まってしまう機材がありますが、戦闘機のエンジンは違います。、自分がぼろぼろになるまで最高出力を出し続ける努力をします。
ですから、戦闘機でエンジンが止まってしまったら、それはもう何をしても動かないと思えば良いでしょう。それなのに、空中再始動手順ってあるんですよね~(笑)。まあ、何らかの理由でパイロットが故意に止めてしまった場合は、この手順に従って、再始動しなくてはいけません。
また、車のような、押しがけも可能です。皆で力をあわせて時速400kmぐらいまで加速して、上記の再始動手順をすれば、問題なくエンジンは始動するはずです。
これでエンジンスタートは完了です。エンジンをかけるだけならほんの数分ですが、飛ぶまでには機能チェックや各種点検など、やるべき事がたくさんあります。通常戦闘機は、乗り込んでから離陸開始までに30分~40分かかります。ですから、近所のコンビニにお菓子を買いに行くには、ちょっと不向きかもしれませんね。
こんなに時間がかかるのに、5分以内に離陸するスクランブルにはどうしているのでしょう? この疑問には次回お答えしましょう。
------------------------ コックピットから その14 「SCRAMBLE」 【SCRAMBLE】
それは、「じゃ~~~ん」という、けたたましい非常ベルの音から始まります。 とりあえず、パイロット、整備員、武器員の全員が、飛行機に向かって全力で走り出します。 「何をやっていても、ベルが鳴ったら、向こう側の扉に向かって走る!」これだけを体に覚えこませています。
皆、走りながら、次にやることを考えています。 パイロットは、装具をつける順番、エンジンスタート手順などを思い出しています。 整備員は、発進手順や武器のアーミング方法などを思い出しています。
10秒後には全ての人間が決められた位置に到着して、息を整えながら、エンジンスタートのために動き始めます。この辺からやっと、脳みそが動きはじめます。ここまでは単なる条件反射です。ワンちゃんが、ピンポンが鳴ると、とりあえず吠えながら、玄関に走っていくのと同じです。
アラート勤務についていた頃は、大きな音がするだけで、体が反応して、いつもビクンビクンしていました。普通の日でも、飛行隊の中で金属製のお盆でも落とそうものなら、パイロット全員が瞬時にその場に立ち上がります。しかし、その後、そいつは先輩の方々からボコボコにされてしまいますがね!
さて、スクランブルに話を戻しましょう。エンジンスタートは通常手順とほとんど同じです。但し、F-4だけは両エンジンほぼ同時にスタートできるので、時間は通常の半分になります。エンジンを始動しながら、ハーネスなどの装具を着けていきます。この順番を間違えると、全部外して、最初からやり直しになります。ヘルメット、股帯、胸帯、シートベルト、脚帯、Gホースなど、これらを全てつなぎます。つなぎ終えた頃、エンジンはIDLEで安定します。ここまでで約2分、残された時間は3分です。
ほとんどの電子機器は、最初からONにしてありますが、ある種の電子機器は、色々な理由で、エンジンスタート後に電源を入れなくてはいけません。その代表がINS(慣性航法装置)です。ここで少し、INSについてご説明いたします。この装置は常に飛行機にかかる加速度を感じています。それを積分して、速度にして、さらにそれを積分して、距離にしています。まあ理論的にはわかるような気もしますが・・・・(笑)。
このINSの自立が一番時間がかかります。普通にINSを立ち上げると、7~8分かかります。それはジャイロの回転が安定して、地球の自転を感知して真北を探し出すのに、これぐらい時間が必要だからです。これでは5分以内の発進には間に合いませんので、事前に北の方向だけは、INSに覚えこませておきます。これだと2分程で、立ち上げることができます。その上、現在はジャイロも機械的なものから光学的なものに変わっているので、さらに立ち上がりは早くなっています。
このように、スクランブル用に準備された機体は、すでに全てのチェックが終了している状態でスタンバイしているので、エンジンをかけさえすれば、飛行可能状態になります。
エンジンも安定し、アビオニクス関係の自動チェックが終了すれば、発進可能です。飛行機OKのサインを整備員に送ります。すると今度は、武器員の出番になります。アラートは実任務です。本物の武器を搭載しています。ミサイル、ガンなどを発射可能な状態にします。これをパイロットが確認をして、発進準備完了となります。
発進は通常最優先で許可されます。アラートハンガーを出て滑走路に入って、スロットを最大位置にします。そしてエアボーン。1番機が地上を離れた瞬間が、5分以内でなければいけません。
飛行機が飛び上がっても、アラートハンガーに静寂は戻りません。すぐに、次に発進させるべき飛行機の準備にとりかかります。10分ほどで次の飛行機の待機が完了して、全く同じ待機が始まります。このため、アラートハンガーには常に4機の戦闘機が準備されています。
スクランブルは訓練ではありません。実任務です。世界的には、戦闘時間に計算されます。私の飛行履歴書には戦闘時間92時間と記載されています。このため、米国へ行ったときなど「どこで戦ったの?」とか聞かれて、答えに困ったことがあります。
また、実任務のゆえに、天候が極めて悪くても決行されます。通常飛行機は、着陸時の天候を判断して飛行します。しかし、スクランブルは着陸可能な飛行場がなくても、離陸命令が出ます。民間機の場合、いくら日本が小さくても、国内の全ての空港が天候などのために閉鎖になっている事は考えられません。福岡に降りようとしたけど、お天気が悪いから、羽田にしようとか、千歳にもどろうかな~とか変更可能です。しかし、戦闘機は足が短いので、名古屋に降りようと思っていたのにお天気が悪いと言っても、変更できる飛行場は、浜松か岐阜ぐらいに限られてしまいます。こうなると、降りられる飛行場が全く無いのと同じになります。それでもスクランブルは命令されます。
離陸上昇フェーズが終わって、通常の管制機関から離れて防空管制に移行すると、任務開始です。飛行機を最短会合点まで進めます。離陸から十数分で、自分のレーダーに相手が映ります。徐々に距離を縮めて接近します。そして最終的に、相手機の真横の日本領土側に位置します。2番機は相手機の後方で、かつ、やや上方に位置して、いつでもミサイルを発射できる位置に占位します。もしかすると、第3次世界大戦の始まりが、今なのかもしれません。かなりの緊張です。
ここで大事なのは本気であることです。向こうも本気です。冗談とか��びではないことです。2番機は、1番機が落とされたら、必ず相手機を落とさなくてはいけません。
幸いなことに、わが国にはスクランブルから戦闘行為が始まった歴史はありませんが、世界的には戦争の始まりが、スクランブルからの場合も多いのです。
(今回の写真は、デュラム氏のご協力を頂きました。)
次回は、戦闘機に搭載されている機銃は当たるのか? この永遠のテーマに挑戦です。
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コックピットから その15 「AIR to AIR GUN」 【AIR to AIR GUN】
今回は、GUNによる空中戦についてお話しましょう。
第2次世界大戦までは、飛行機同士の戦いは鉄砲だけでしたが、それ以降はミサイルが加わり、今ではミサイル戦が主流になりました。このように、搭載武器は時代とともに変化しています。さて、30年ほど前のお話ですが、私が米国でF-4に搭乗したときの出来事です。
写真:GUN 1対1の空中戦訓練でした。相手とヘッドオン(正面同士)で交戦に入りました。相手が私から見て、右に急旋回したのが見えました(相手としては左急旋回)。そこで私も、右に上昇急旋回。上昇すると速度が減り、 旋回半径が小さくなって、 相手の後ろに入りやすくなります。180度回ると、 また相手とヘッドオンですれ違います。この瞬間に旋回を切り返して、お互いに逆の旋回に入ります。これを繰り返して、S字を描きながら絡み合うのがシザースです。
この結果、僅かでも相手の後ろに入れれば、GUNを撃つことができます。運よく私は、相手の後ろ2000フィートに位置できました。「そこでGUNを選択!FOX-III!」とCALLしようとすると、後席の米軍のパイロットが大笑いするのです。「ちみは何をするの?」
私が日頃乗っていたのはF-4EJ、米国で乗ったのはF-4D、ほとんど同機体ですが、決定的に違ったのは、F-4DにはGUNが装備されていないのです…(大汗)。ですから、近接戦で使う武器を持っていないのです。
飛行後のブリーフィングで、飛行隊内は大爆笑!「さすが日本人はすごい!空中で飛行機から出てナイフで戦うのかと思った」と…。
写真:GUN ベトナム戦争での教訓から、F-4E以降の戦闘機には、20ミリメートルの機関砲を搭載するようになりました。その多くは、油圧もしくは電動モーターで作動する回転式機関砲で���。砲身は6門あり、これが回転しながら弾を発射します。
発射速度は毎分6000発程度となっています。弾自体は、マッハ3~4ぐらいで飛んでいきます。毎分6000発ですから、1秒間に100発撃ちます。射撃感覚は「バン・バン・バン」という感じではなく、「ブーン」という振動と音になります。また、1回の射撃は1秒間ほどになります。
戦闘機のGUNの照準は、先ずは相手をレーダーでロックオンして距離を測ります。 次に自分の機体にかかっている荷重から、相手の運動を推測します(相手を追い続けていると仮定して計算)。その状態で、着弾時間を計算して、その時間で移動するであろう相手の予想位置に重力落下分を加えて、HUD(ヘッドアップディスプレー)に 照準点として表示します。パイロットはその照準点を、実際の目標の飛行機の上に乗せることで、銃の方向は相手の将来位置に着弾するようになります。
戦闘用計算機は正確なデータさえ与えれば、確実に正解を出します。第2次大戦中に戦った戦闘機はレーダも積んでないので、曳光弾を見ながらの射撃でしたが、通常弾と曳光弾では、その重さも空力特性も違っているので、弾道が違ってきます。実際は参考程度にしかなりませんでした。結局、空中での射撃は100パーセントパイロットの勘で撃っていましたので、まさに神業です。
このように考えて行くと、計算機制御の機関砲って、なんか当たりそうですが、そうは問屋が許してくれないのです。
音速の3倍で飛んでいる弾は、1秒間で100発撃っても、その弾の間隔は約1000メートルに100発ですから、10メートルおきに1発存在している計算になります。これは直線飛行をしているときの計算ですが、実際は急旋回して戦闘するので、角速度がこれに入ります。戦闘加重時は50メートルに1発程度の密度になります。戦闘機の大きさはせいぜい20メートルほどですから、戦闘機から見れば、弾はかなりまばらな感じで撃たれている感覚になります。
写真:GUN その上、計算機で行う照準は、その計算と表示に4秒ほどかかります。相手が4秒間安定した機動をしてくれた時は正確ですが、そうでない場合は、最初から照準点は 不正確となります。ですから、4秒に1回何らかの回避機動をすれば、 照準は定まりませんので、 弾の当たる確率はほとんど0パーセントとなります。強いて言えば、もし運悪く相手の弾に当たってしまった時は、日頃の行いのせいかもしれません。
これらをまとめて考えると、ほぼ同性能の戦闘機同士の戦いで、相手をGUNで落とすことは、ほとんど不可能になります。ですから、対空武器としては、GUNはお守り程度の効果があると思えば良いでしょう。
但し、相手が動かないものとなると話は違ってきて、GUNは極めて有効です。相手がトラックならば、100発撃てば50発は当たるでしょうし、全速で走っている戦車でも 30発は当たると思います。相手が駆逐艦程度の船ならば、90発は命中するでしょう。その上、20ミリメートル弾は鉛の塊ではなく、中に火薬が装填されていて、命中後、爆発するので、その威力はかなりなものです。
このように対戦闘機戦闘では、GUNはそれほど有効な装置ではありません。最も有効なのは、ご存知のようにミサイルになります。
(今回の写真はMasato氏のご協力を頂きました。)
次回は、このミサイルについてお話しましょう。
------------------------ コックピットから その16 「MISSILE」 【MISSILE】
今回はミサイルのお話をしましょう。
まずはイメージを作りましょう。
あなたは学校の校庭の真ん中に立っています。 校庭の端には野良犬が1匹います。 何故か、あなたは野良犬と目が合ってしまいます。すると、野良犬が突然うなりながら、あなたに向かって走りだしました。 あなたなら、どうします? これがミサイル戦の始まりです。
対戦闘機戦で、最も有効であろう武器がAAM(空対空ミサイル)です。 F-15世代の戦闘機のほとんどは、8本のAAMを搭載することができます。4本のMRM(中距離ミサイル)と4本のSRM(短距離ミサイル)です。
また目標1つに対して、2本のミサイルを発射するのが基本ですから、1機の戦闘機は4回のミサイル射撃が可能となります。何故2本撃つかと言うと、1本のミサイルの撃墜確立が80パーセントだとすると、2本目は1本目で外した20パーセントの80パーセントを落とせるので16パーセントとなります。こうなると、2本で96パーセントの確立で相手を撃墜することができるので、かなり有効な手段となります。仮にもう1本撃ったとしても、残りの4パーセントの80パーセントが落とせるので、さらに3.2パーセント増となりますが、1本目と2本目に比べて大変少ない数字になるので、あまり意味を持たなくなります。そこで通常は、1目標に2発撃つのが妥当とされています。これは撃つほうの理論です。
ここで、先ほどの野良犬に話を戻しましょう。あなたは犬に追われています。さてどうします?先ずは反対側に走り出します。時間稼ぎです。走りながら考えます。どうしたらいいか…。 ポケットを探ると、お菓子が入っていました。犬に向かって投げてみます。ラッキーだと、犬はお菓子を食べ始めて、あなたを追うのをやめるでしょう。これがフレアー(火の玉)でしょう。ミサイルが赤外線追尾式だったら、これで逃れられます。 しかし運悪く、この犬が満腹��ったら…。 次にあなたは上着を脱いで、それを放り投げます。犬がそれに向かって走ってくれれば、またまたラッキーです。これがチャフ(銀紙)です。これで電波誘導式ミサイルは向かってこないでしょう。
このような方法でミサイルをだますのが、撃たれるほうの理論になります。それともう一つ、ミサイルの最大の欠点は惰性で飛んでいることです。ミサイルは数秒しか燃料がありません。長くても5秒程度です。このため通常は、慣性力だけで飛んでいます。 その結果、何回も飛行方向を大きく変えての飛行はできません。もしミサイルを1度、自分からそらすことができれば大成功です。なぜなら、そのミサイルが180度方向転換して追ってくるのは、映画の世界だけの話ですから。
しかし、これで安心してはいけません。ミサイルには近接信管というものがついていて、相手に直接当たって爆発するのではなく、近くに来たなとミサイルが感じた時に、勝手に爆発するのです。この爆発で小さな金属の破片が四方八方に飛び散って、その1つでも飛行機に当たれば、あなたはまともには飛べなくなります。
今回は空対空ミサイルの話でしたが、実際は地対空、水対空ミサイル等の多種のミサイルが、戦闘機に向かって飛んできます。パイロットはこれらに対して、有効であろう多種の方法を使って回避しなくてはいけません。
また、その回避行動は技術的に立証されているわけでもなく、パイロット間で伝説のように言い伝えられているものです。たとえば、「SA-3(地対空ミサイルの一種)が撃たれたら、白煙が見えてその先にミサイルがたぶん見えるから、その大きさがタバコの大きさになったらキャノピーの右端に置くようにして、最大Gで右降下旋回しなさい。」と言うような手順です。この手順で回避できたパイロットがいるのも事実ですが、帰って来れなかったパイロットもいるでしょう…。しかし、後者は証言できませんので、この手順が正解となってしまいます。
あんなこんなで、色々な攻撃から無事回避して任務を終了し、基地に帰ってきます。しかし、ここで安心してはいけません。それは味方の基地防空用のミサイルです。1人で操作可能で、肩に担いで発射するタイプの携行対空ミサイルです。これらの発射の最終責任者は携行者自身です。特に戦時となれば、情報も混乱するでしょう。目の前に突然戦闘機が現れたら、あなたならどうします?翼に日の丸が無いのを確認してから撃ってくれますか?
古来より矛盾という単語があります。現代に言い換えると、誘導弾と戦闘機になるのでしょうか。お互いの技術者は常に自分たちの技術の方が優秀だと思っています。でも現実はやってみないとわかりません。
パイロットの私としては、常に戦闘機のほうが優秀だと信じていますがね!(笑)。
次回は「そこまでしてダイエットするの?」 戦闘機の重さについてお話しましょう。
------------------------ コックピットから その17 「DIET」 飛行機は空中に浮かばなくては意味がありません。このため、1グラムでも軽く作らなくてはいけないのです。特に戦闘機にとっては、この1グラムで勝敗が決するといっても過言ではありません。
今回は軽量化への努力の中でも、超オタッキーな話題である脚のダイエットについてお話したいと思います。
飛行機にとって、飛んでいるときに全く必要の無いものは脚なのです。飛行中の脚は単なる無駄な重量物なのです。ですから、いかに脚を軽く作るかが飛行機の大きな課題の1つとなります。
軽量化の究極の答えは、離陸と同時に脚を捨ててしまう手段です。持って飛ばないのですから、めちゃ合理的です。ライト兄弟の「ライトフライヤー号」や第2次大戦中の「秋水」などが、この方法を取り入れました。脚は離陸と同時に、機体から外れて地上に捨てられます。これで身軽になり飛行を続けます。すごいアイデアです。着陸は、胴体下に取り付けられているソリによってなされます。かなり革新的な方法ですが問題が1つ…。
次の離陸に際しては何らかの方法で、再度脚を取り付けなくてはいけません。また、その装置と脚が準備された飛行場にしか降りることができません。ですから、極めて特殊な使い方の飛行機だけに許される手段となります。
そこで次に思いついたのが、脚をできるだけキャシャにして軽量化することです。通常の運航では、脚にかかる最大の荷重は着陸の時です。この際には、自分の重さの1.5倍程度の荷重が接地と同時にかかります。ですから、基本的にはかなり頑丈に作らなくてはいけません。
ここで技術者は考えました。 「そうだ!かなり軽くなってからじゃないと、着陸はしちゃいけないことにしよう!」
これなら、そこそこの強度があればOKです。たとえば、自重が10トンの戦闘機で、残燃料量が3トンの場合、重さは13トンです。この機体が着陸するときには、約20トンぐらいの荷重が脚にかかります。この重さに耐えれれば、飛行機としては着陸できるので、設計者はこの数字を目標に設計すればいいのです。
皆様も経験したことはあると思いますが、民間機などで離陸直後に何か問題が起こって、着陸しなくてはいけない状況でも、着陸するまでにかなりの時間がかかったという記憶がおありと思います。これは、離陸した直後の重量では重過ぎるので着陸できません。そのため、燃料をある程度使ってからの着陸になりますので、時間が必要となります。これほどまでにして、脚は軽く作ってあります。
さて、戦闘機の一般論を…。通常、自重10トンの戦闘機には、8トンぐらいの燃料が積めます。これとは別に、ミサイルとか爆弾とかも8トンぐらい搭載できます。全部合計すると26トンになります。
ここで 「それって、おかしくない?」 「さっき、10トンの飛行機が耐えれる重さは、着陸時の最大20トンだって説明したジャン!」 「それなのに全備重量が26トンって、すごい矛盾!」…っと思われた方は、このコーナーを熟読していて、かなりの戦闘機通と言えます。(笑)
これまではプロローグです。ここからが本日のメインテーマとなります。
20トンまでしか耐えられない脚を持った戦闘機に、合計26トンのものを乗せる。これが技術者に与えられた命題です。このままだと、地上で燃料と武器を搭載しただけで、脚が折れてしまいますので、絶対何らかの方法が必要となります。
簡単な答えは、「脚を強くしよう!」ですが、これでは今までの努力が無駄になりますし、だれにも「すごーいい!」って、言われません。飛行機を軽く作ろうという目標からもずれてしまいます。そこで技術者が次に考えるのは、最大離陸重量を脚の強度限界の20トンにすることです。
「燃料とか武器とかの合計を10トンにしちゃおう!」 「そうだそうだ。それがいいよ!」 「それじゃ、どうやって積む?」 「燃料を乗せるのやめちゃおう!」 「そうなると、搭載物を8トンにして残りの2トンを燃料に割り当てるようにしよう。」 「これで、みんな丸く収まるねー!」
ここで初めて、パイロット君登場。
「あのね。君らは知らないと思うけど、飛行機は燃料がないと飛べないんだよ!」 「えー そうなんですか?知らなかった…。」 「そんじゃ、武器とか下ろします?」 「それだと、何のために飛んでるか、わからないじゃん。」
まあ、この会話は100パーセント嘘ですが。(笑)このような矛盾が生まれてきます。
(撮影:謎の黄色さん)
そして、答えは…。
すでに上の写真でお気づきと思いますが、本当に武装関係は全部積んで、燃料はちょっとしか搭載しないで離陸します。離陸後は、脚の強度制限は関係なくなります。その状態で、空中で燃料を満載にします。この方法だと、機体の重量の最大設計限界の26トンまで重くすることができます。空中給油は、単に戦闘機などの行動半径を伸ばすためのものではなくて、燃料満載で且つ完全武装をした戦闘機を任務へ向かわせるために、絶対的に必要な装備なのです。
蛇足ながら、わが国ではフォーメーション飛行ができない人は戦闘機乗りには不適ですが、米軍では空中給油ができない人が、先ずエリミネートされます。だって、戦闘機が飛び上がって最初の仕事が、空中給油なのですから!
【EPILOGUE】
急ではございますが、長い間、老パイロットのたわごとにお付き合いいただきありがとうございました。 今回をもちまして、このシリーズを終了いたします。いままでお付き合いいただいた方々に深く感謝するとともに、さらなる航空技術の発展と飛行の安全を祈りつつ、ペンを置きたいと思います。
それでは Knock It Off! 、 RTB 、 Pigeon to Mama? (作戦は終了!、帰ろう、ところでおうちはどっち?)
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Teen Vogueがインタビューしたクレアさん(仮名)の本名を検索すると、数百万人のチャンネル登録者数と10億回超の総再生数を誇るYouTubeチャンネルがヒットするとのこと。このチャンネルにはクレアさんの幼少期からティーンエイジャーになるまでを撮影した数百本の動画が投稿されており、InstagramなどのSNSでは人々がクレアさんについてコメントしているほか、公の場でもファンから話しかけられたり写真撮影を求められたりすることがあるそうです。 しかし、当然ながら幼少期のクレアさんが動画投稿を始めたわけではなく、動画投稿をしているのはクレアさんの両親です。Z世代の若者にとって、親によって自身の日常写真や動画がインターネットに投稿されているのは珍しいことではなく、クレアさんのように本人の同意なしでコンテンツとして収益化されてしまうことすらあります。 クレアさんは幼児の頃にインターネットで��気となり、家族は仕事を辞めてYouTubeの動画収益によって生計を立てるようになったとのこと。クレアさんはかつて両親に「もうYouTube動画に出たくない」と伝えたものの、そうすれば両親は普通の仕事に復帰しなければならず、裕福な生活もできなくなってしまうと反対されてしまったそうです。Teen Vogueの取材に対し、クレアさんは「私が家族全員を養わなければならないのは不公平です。私は怒らないようにしていますが、本当は怒っています」と述べています。 プライベートな関係であるはずの親が仕事の上司でもあるという状況は、クレアさんにとって大きなプレッシャーになっているとのことで、18歳になったら家を出て両親との関係を絶つことを考えているそうです。もし両親と別居することができれば、クレアさんは本名で「YouTubeチャンネルのスターになること」の問題について公の場で話したいと思っています。 クレアさんは、親のせいでソーシャルメディアのスターとなったことが子ども時代にどのような陰を落としたのかを、両親や他の人々に知ってもらいたいとのこと。「両親が今更何をやったところで、私が仕事をやらなければならなかった年月を取り戻すことはできません」とクレアさんは述べました。 また、クレアさんの両親は大学進学のための費用を貯金していると言っていますが、正確な金額をクレアさんが知ることはできません。アメリカのカリフォルニア州には、子役が稼いだ収入の15%以上を子どもに残すことを義務づけたクーガン法という法律がありますが、「インフルエンサーの子どもの収入」を保護するための法整備は遅れており、2023年にようやくワシントン州でインフルエンサーの子どもの収入を保護する法律の議論が始まったところです。 一方、一部のインフルエンサーは子どもを苦しませないために行動を変えています。TikTokで360万人以上のフォロワーを抱えるBobbi Althoff氏とその夫は、2人の娘を動画に写さないだけでなく、「Richard(リチャード)」「Concrete(コンクリート)」と呼んで本名がわからないようにしています。 実は、Althoff氏らは長女が2歳になるまでは本名や生年月日、名前、顔などをコンテンツ内に登場させていました。しかし、2022年になって「長女が生後6カ月で話し始めた天才だ」というネタ動画を投稿したところ、長女に対する誹謗(ひぼう)中傷のコメントが書き込まれるようになってしまったことで考えを改めたとのこと。 Althoff氏は、「私はインターネットに身を置く大人ですが、それでも自分自身に対する悪意のあるコメントを読むのはつらいです」と述べ、長女に対しても悪意のあるコメントが書き込まれることに耐えられなくなったと説明しています。Althoff氏はその日のうちに長女が写っているすべての投稿やコンテンツを削除し、その後は娘たちを動画に写さないようになりました。「リチャードはいつまでも私の小さな娘であるわけではありません。彼女はいつか大人になります」「彼女には自分の物語を自由に描けるようにしてあげたいのです。私は人々を楽しませることを仕事にすると決めましたが、それは子どもの仕事ではなく、子どもたちの仕事にしたいわけでもありません」とAlthoff氏は述べました。 また、投稿するコンテンツに子どもたちを載せないことは、Althoff氏が「子どもたちの母親であること」以外のアイデンティティを見つけるのに役立ったとのこと。Teen Vogueは、20代の親にとって自分たちの写真や動画をインターネットに投稿するのは自然なことであり、子どもが写ったコンテンツもインターネットに投稿しがちであるものの、成長するに従って考えを変えることもあると述べています。 近年ではAlthoff氏以外にも、子どもの顔を出さないインフルエンサーが増えています。TikTokで「Violet(バイオレット)」「Scout(スカウト)」という双子の娘が写った動画を投稿し、850万人以上のフォロワーを獲得したMaia Knight氏は、2022年12月から子どもたちの顔を絵文字や手で隠すようになりました。この決定に対するユーザーの反応は賛否両論ありますが、Knight氏はTikTokへの投稿で「今の彼女たちは幼児であり、私はもう彼女たちを見せないことに決めました」「この選択は娘たちを守るためです」と説明しています。 また、TikTokで270万人のフォロワーを抱えるLaura Fritz氏は、約2年にわたり継続してきたTikTokへの投稿を終了すると発表しました。Fritz氏はInstagramへの投稿で、「これで私たちのTikTokアカウントは終了です。約2年間にわたり私たちの生活の大きな部分を占めていたので、手放すのは困難ですが、これが私たち家族にとってベストなことです。子どもたちには、ソーシャルメディアのプレッシャーにさらされることなく、普通の生活を送ってほしいと思っています」と述べました。 近年では、オンラインで子どもの写真や動画を共有することに警鐘を鳴らすインフルエンサーも増えています。TikTokで16万人のフォロワーを抱えるsoftscorpio氏は12歳だった頃、1万人のフォロワーを持つ母親のFacebookアカウントで個人情報を投稿されてしまい、知らない男性から「友達と自転車で走っているのを見た」というメッセージを受け取ったことがあるとのこと。この経験で不安を覚えたsoftscorpio氏は、母親に自分のことを何も話したくなくなってしまったそうです。 2023年にワシントン州議会に提出された法案には、インフルエンサーの子どもに「自分の写真や名前を永久的に削除することを要求する権利」を与えることが含まれています。動画で議員らに向けて呼びかけたsoftscorpio氏は、「この世代の子どもたちの声に耳を傾けるよう、あなたたちに懇願します。なぜなら私は、自分が作ったわけでもないデジタルの足跡が一生付いて回るという選択肢がどんなことか、身をもって知っているからです」と述べました。 また、普段はコメディ系の動画を投稿しているインフルエンサーのcaroline_easom氏は、匿名で自分のもとに届いた「家族系Vロガーの子どもの手紙」を読み上げています。手紙の中で子どもは、「家族Vログを始めたり、公共のインターネットで子どもたちの生活を収益化したりしようと考えている親には、ここに私のアドバイスがあります。やらないでください」「あなたが得たお金は、長年に苦しみによって覆い隠されるでしょう。あなたの子どもは決して普通になれません。私はネット上に存在することに同意したわけではないのです」と述べました。
インフルエンサーの親によって自分の生活が「コンテンツ化」されてしまった子どもの苦しみとは? - GIGAZINE
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・LCログ4 ・LORログ5~8
サイトにログ更新しました。 http://neie.noor.jp めっちゃ溜め込んでたから残りも上げていく…ゆるゆると… 今更ですが、CPとかごちゃごちゃで入ってるのでご注意ください。 女体化TS系だけログ分けようかな~ 以下CPの話 ----- CP…お察しの通りクトジェラとロラケセがめちゃ好きで… でもビナジェラも好きだしゲブホドも好きなんだよな それぞれ違う世界線で色々見たいよっ… 【クトジェラ】 クトジェラはさ~…最初にアンジェラに真っ向から感情的に(怒鳴るのが良い選択肢というわけじゃないにしても)ぶつかっていったのがマルクトだから…信頼してる…怒りをぶつけることって、相手に心があることが前提な気がするから… 意外と子供っぽいところがあるアンジェラと、意外と大人っぽい所があるマルクトがさ~…ウウーーッ キスとか手をつなぐとか抱きしめるとかそういう接触において、 マルクトはそれが恋愛感情を伴う行為だという認識はもちろんあるから、するまでは気恥ずかしさがあるけどしたときの幸福感は素直に受け入れられると思ってて… アンジェラはキス!ハグ!手をつなぐ!そしてそれは好意を伴うものである!っていう知識だけは先行してるから、最初手をつないでみても「…私の右手と貴方の左手が接触したわね」ぐらいなもんだったのが、だんだんその行動によって生まれる謎の感情…にドギマギしていくのとか…見れるかもしれないじゃん…最高じゃん…最高じゃない?最高だよ… 【ロラケセ】 ロラケセはさ~…それぞれアンジェラに対立していった過去があって、解消しきれるわけがない色んな思いがありつつも、それらを背負って外郭エンド迎えてる2人でさ~…隙のない大人の仮面をかぶることが出来る二人で、下手するとお互い本音見せない交流になってしまう可能性もあったと思うんだけど…完全開放のもろもろとか、その辺のあれでお互いの感情的な所を強制的に見れたことがきっかけで一歩踏み込んだ話ができるようになってほしいな~…て気持ちと…でも自分から何かを成し遂げようとしたローランと、動けなくなってしまっていたケセドと…巣と路地裏、育ちだけじゃない根本的な違いがあるのもいいなって思うし… ゼホン+ジェリカ人形の最後の相手が…だったのもなんか…いいなあ、と思ってる
うーんやっぱCPの話、言語化難しいな
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旧東隊の頃をあまり知らない人たちの小説
(だんだん自分が何を投稿したか分からなくなってきたので重なったらすみません🙇♀️)
お好み焼き屋において旧東隊が話題になる話
「おー、寂しい男どもよ! ヒカリさんが来てやったぞー」
底抜けに明るい、高いトーンの声が『お好み焼き かげうら』の店内に響く。絵馬ユズルと入れ替わるように店に入ってきたのは、影浦隊オペレーターの仁礼光だった。
「おせーよ、もう食い終わったぞ」
この店の次男である影浦雅人がドスのきいた声でぼやく。動じることなく隣のテーブルの荒船隊の二人に挨拶し、仁礼は北添尋に素早く指示を出す。
「アタシにも、一枚焼け!」
「どうも、初めまして。玉狛第二の空閑です」
空閑遊真が挨拶する。おそらく今日、影浦が企画したのは、影浦隊の面々と遊真の顔合わせなのだ。
玉狛第二と影浦隊はB級ランク戦ラウンド4において戦っている。そして再び、一週間後にはラウンド7で対戦することが決まっている。
仁礼は立ったまま、ニカッと笑った。
「アタシはオペレーターのヒカリだ。よろしくな」
「こいつはアホでズボラだが、オペは上手い」
影浦が褒める。そういう男だ。仁礼も大きくうなずいた。
「こいつらは、光さんがいねえと何もできねえんだ」
誰も嘘は言っていないから、本当なのだろう。空閑は敬意をもって仁礼と握手した。
「脚が寒そうだよ、ヒカリちゃん、風邪引いちゃうよ」
北添尋が仁礼の足元をみて、ブルっと身を震わせた。
この寒いのに、仁礼は太ももを大胆に露出��たホットパンツをはいている。靴下も短い。しかし、身軽な格好は彼女によく似合っていた。
「寒さには強えんだ」
膝を豪快にあげてみせる。さっぱりとした仕草に色っぽさはなく、彼女の健康的な美しさを引き立てるのみだった。
「あぶねえだろ」
しかし、ひとつ年上の隊長は心配になったらしい。
「お前、そんな格好して、柄の悪いのに絡まれたらどうすんだ?」
二、三年前と比べて、だいぶ治まったが、九時を過ぎたあたりから、繁華街は柄の悪い連中が我が物顔で徘徊し始める。第一次侵攻から復興に至るまでの間に三門市の治安が悪化した、その名残りだ。
仁礼はカカカと笑って、手を振った。北添の隣にドスンと勢いよく座る。
「大丈夫、三輪に送らせた」
意外な名前を聞いて、空閑は目を開く。その名前は久しぶりだ。彼の率いる三輪隊とは空閑が玄界にきて間もない頃に戦った間柄だ。その後、大規模侵攻において空閑の相棒であるレプリカを通して共闘したが、以後、接触はない。玉狛支部と本部、B級とA級、接点もないのだ。さらには空閑は近界民だ。近界民を憎む彼がわざわざ接触してくることもない。
一方、影浦は意外でもなんでもない顔をした。
「三輪か。こっちに用事があったのか?」
彼は本部住まいだ。
「んや。食堂に行こうとしてるところを捕まえて、送れつったから」
「それで?」
「文句言いながら、着いてきたよ。もう帰った。一応、誘ったんだけどよ、来ねえって」
「来ねえだろ」
三輪と影浦はそんなに親しくもない。
空閑が不思議そうな顔をした。
「ヒカリはミワ先輩と仲良しなんだ」
「おう、学校で同じクラスだぜ」
「なるほど」
彼も学校に通っているのかと思う。
なお、危険な時間帯に三輪が仁礼を送るのは、特段変わったことではない。ボーダーでは当然とされる行為だ。
「つーかさ、お前、なんで三輪を知ってんの?」
同席している当真勇は違和感を感じて問う。空閑の持つ黒トリガーを巡って、水面下で行われたA級同士の実戦を当の本人は知らぬはずだ。
「ちょっとね」
「?」
「申し訳ないがくわしくは言えない」
「ふうん?」
影浦は仁礼に小言を言うのに忙しく、空閑と三輪の接点の不自然さには気がついていない。
「まあいいけどよ。ヒカリ、気をつけろよ。何かあってからじゃ遅せえんだから」
「わかったよ」
仁礼は気をつけてるから送ってもらったと言いたかったが、肩を竦めて了承した。
「ミワ先輩とニノミヤさんとカコさんが同じチームでアズマさんが隊長?」
「そ、反則でしょ?」
その流れのまま、話題は昔の東隊の話になっている。東隊は仲がよくて羨ましかったよ、と北添が懐かしそうに目を細めた。仲の良い三人+アズマ隊長。空閑には想像できない。空閑にとって、それぞれの最後に見た顔は不機嫌、尊大、無邪気な表情だ。
「俺らは?」
影浦が拗ねたように言うと、
「その頃は喧嘩ばかりしてたでしょ」
と北添が返す。これも想像できない。
「かげうら先輩は昔のアズマ隊と戦ったことあるの?」
「俺とゾエはあるぜ」
影浦隊がA級に上がったばかりの時代の話だ。
「アタシが入った時は解散してたな」
仁礼が補足する。
「むらかみ先輩は?」
「いや。俺がボーダーに入ったのはカゲのずっと後だからな」
黙って、話を聞いていた村上鋼が穏やかに答えた。彼は入隊してから、変わらず鈴鳴支部にいる。
「強かったよ〜」
北添がのんびりと語る。
よほど強かったのだろう。影浦は素直にうなずいた。
「太刀川隊だって、太刀川さんが旧東隊と戦いたくなって作ったくらいだ」
「ほう、タチカワさんが」
「その頃は太刀川隊に烏丸がいたし」
「とりまる先輩が…?!」
「お前が驚くの珍しいな。知らなかったのか?」
空閑はうなずいた。
知らなかった。帰って、修とチカに教えてやろう。しかし、納得できる話だ。彼は木崎、小南と同じく最強部隊玉狛第一に所属している。
「最初、太刀川さんと烏丸だけだったんだが、中距離補強で出水が入ったんだ」
二宮、加古相手に攻撃手だけでは無理があるということらしい。
「興味深い」
まだ明かしてはいないが、現在の玉狛第二も攻撃手が二枚となっている。隊長の三雲が射手だ。これに大砲、トリオンモンスターと呼ばれる狙撃手が加わる。
「それで今のミワ隊にシューターがいないの、おもしろいな」
射手メインのチームにいたのなら、そのメリットをよくわかっているはずだ。
「そういや、そうだな」
今の三輪隊は中距離まで敵を逃がさない戦法をとっていると思う。以前、空閑が黒トリガーで戦った感触では。
「おそらくだが」
話を聞くともなしに聞いていた隣のテーブルの荒船が控えめに口を挟む。彼は戦闘に関して、人一倍研究熱心なのだ。
「以前のログはあまり残っていないんだが、旧東隊は、アタッカーが囮になって、メテオラでまっさらにして射線を通して、東さんがトドメを刺す戦法じゃないのか?」
「ああ、そしたら、ミワ先輩が射手を入れないのはわかる」
「だろ?」
「なんで?」
ピンとこなかった仁礼が聞く。
「囮はいやだろう」
「ああ、そういうこと」
「ゾエさん、いつも囮やってるよ?」
「ゾエは偉いぞ」
「褒められた」
荒船はさらに続ける。
「あとは、どっちをとるかの問題なんだが…。俺の部隊も最初そうだったが、アタッカーが一人だと、狙われやすいし、負担が大きいな」
荒船隊は現在、狙撃手三人体制の特殊な編成だが、以前は隊長の荒船が攻撃手を務めていた。
「それで、よねや先輩が入ったのか」
「多分な」
「ログが残ってるかもよ」
「どうかな」
「いや、あっても見ないよ」
空閑はキッパリと答えた。どっちにしろもうない部隊だ。意味がない。どんなに強く、厄介だったとしても、それはすべて過去の話だ。
明日と少し先の未来のことだけが、空閑の関心事なのだ。
終わり
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Fediverseに参加してみた一年を振り返る
この記事はFediverse Advent Calendar 2023 第二会場の8日目の記事です。 昨日の記事は、まくらさんの「FediverseとTwitterの反復横跳びをしてる」でした。
こんにちは、ヌヌです。 普段はマストドンやツイッターで独り言を垂れ流しつつ、イラストや短歌や俳句などを投稿しています。大体居るのはじゃぱねっと鯖(mastodon japan server)です。
ツイッターからマストドンにSNSの主軸を移してから大体一年が経ちました。移してみてから、いくつかのサーバに登録してみたり、自分でサーバを建ててみたりしたので、ツイッターやマストドン関係のことを中心に振り返ってみようと思います。
私がだいたい居たのはじゃぱねっと鯖なので、絵文字が追加されたとかなんかが流行っていたとか、何かを食べたとか、そういった事象はじゃぱねっと鯖のローカルTLでの流行・ネタです。
なお振り返るにあたり、今年前半トラベラーズノートにつけていた日記と、notestock(https://notestock.osa-p.net )が役に立ったので、何かしらのログをつけておいて見返したい人にはおすすめです。
2022.10月~12月
・マスク氏がツイッターのCEOになった
・ツイッターの創作界隈で頻繁に行われるコンテストや人気投票+それらにしつこく参加を募ってくる人がいてツラかった
・fedibirdにアカウントを作る。連合TLなどで自分とまったく関わりない人を探せるのが楽しい
・fedibirdに人が増えて重たくなったので、vivaldiやじゃぱねっとにアカウントを作る。ローカルTLの面白さを知る
・ホストドンで一人サーバを作成。自分でSNSを運営できる、という点に惹かれた。でも独りで使うにはもったいないような気もした(モデレーション関係の機能とか)
2023.1月~3月
・参加したツイッターの投票形式のコンテストで予選敗退し、投票形式のコンテストでダメってことは自分の作品て需要ないんだなーと落ち込む
・差別問題などでマストドン界隈一部がゴタゴタしていた。人が増えたから、そういうのもおこるよなーと思った。
・misskeyの一次創作サーバにアカウントを作る。ツイッターの創作関係のフォロワーがアカウントを作ったのに合わせてみた。
・なごやんを始めて食べる
2023.4月~6月
・ローカルTLで短歌を褒められる。嬉しい。
・事務のパートが雇用期間満了になり、6ヶ月の待機期間に入ったので、Linuxなどについて勉強してみようかなと思って職業訓練校に入学する。
・独りで使うにはもったいないのかなと思っていたホストドンを解約する。
・職業訓練校にトラブルメーカーが居て大モメ。殴り合いとかにならなくてよかった。
・ITパスポートの勉強を始める。
2023.7月~8月
・酔った勢いでconohaでVPSを契約し、misskey系のサーバを建てられないか悪戦苦闘する。 →最初、めいどるふぃんで建てようとしたけどうまくいかず、情報が多くて公式のマニュアルが詳しいmisskeyで建てみて、おおよその流れや各手順の役割を理解 →改めてめいどるふぃんで建てられた。
・有識者の「かんたんに」「サクッと」は信じてはいけない
・ツイッターがXになった
・ITパスポート取得した。大変だった。
・じゃぱねっとに人が増えた。ローカルTLの話題や流速についていけなくなり、未収載・ホームTL運用で壁打ちするようになる
・短歌を褒められる。嬉しい。
・御座候(ベイクドモチョモチョ)を食べる
2023.9月~10月
・就活失敗。元の事務の仕事に戻ることにする。
・じゃぱねっとのローカルTLに、スパムアカウントや怪しげなクスリを売ってるようなアカウントがあらわれる(人が増えた弊害?)
・人が増えたのでローカルTLもまったり和気藹々というカンジではなくなってきた。色々なタイプの人が増えた。
・ンァヒィ!の絵文字ができる(ツクツクボウシの鳴き声とのこと)
・手入れを怠った自鯖がダウンする →とりあえず再起動したり、何か更新がないか確認してみた →「容量がいっぱいで再インストールできない」みたいなエラーがでたので、該当フォルダを確認・いらなそうなファイル(キャッシュとか)を削除した →復帰したけど、一部サムネイルが消えたままになってしまった(今も)
・DISTOPYAというSNSにアカウントを作ってみる。投稿をAIが検閲するSNSで、面白いけど普通に使うには不便だ(人が多いと投稿がすぐに反映されなかったり)
・マスク氏がヒゲ面になる。私的には不評。
・短歌を褒められる。嬉しい。
・私の創作物で何が見たいですか?というアンケートをとったら「絵を見たい」という人が多かったのが嬉しかった。
・モヒヒアッカが流行する。
2023.11月
・スカイミートというSNSにアカウントを作る。とにかく、改行すると一行空くのが使いづらくて運用してない
・じゃぱねっと鯖が1周年を迎えた。結構人の入れ替わり立ち代りがあったよなー。
・自鯖は管理に不安があるので閉じようかな……
【総評】
・今年の前半は、週末になるとツイッターで何かトラブルが起きて人が増えていた気がする。ユーザーを飽きさせないためのそういうイベントだったのか?
・場に人が増えると自然と何かしら衝突が起きてタイムラインがごたつき、やがて人が分散して落ち着く、という流れの繰り返しだった。
・ローカルTLでの交流が盛んなところで、ローカルで交流する人をフォローしつつホームTLを運用するのって難しい。やっぱりリストとか複垢を使い分けるのが良いんだろうか?
・とはいえ「同じ町内に住んでるけど面識��ない人々」が、大通りでワイワイやっているのを眺めつつ自宅でぼんやりしてる、みたいな今の環境はわりと好きだったり
・来年はお絵かき掲示板周りを色々やれたらいいな~。misskeyと連携できる絵板を見つけるなどしたので。
ここまで読んでくださりありがとうございました。 最後に、自分なりのfediverse短歌を1首ひねってみたので記しておきます。
狂騒のタイムラインを差し退きて たゆたうFediverseとふ宇宙
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2023年夏の思い出
youtube
毎年、夏の思い出を動画にしてまとめている「memories of summer」シリーズの2023年版を投稿しました。いわゆるVログみたいなもんです。
なんだかんだ2018年から毎年続けているこのシリーズ。上記動画のリンクから全部見られるようになってるので暇な人はどうぞ。
今年の夏はいろいろ解禁されましたが、コロナ情報はより見えにくくなっていきましたね。自分は幸いにも健康に過ごせましたが周りでは罹患した人も多かったです。
コロナ禍前は夏休みに毎年一人旅をしていましたが、ここ数年の状況によって、なんだか旅の仕方も忘れてしまったかのように旅に対する情熱がしぼんでしまった日々になってしまいました。今年の夏休みも動画を作ったり近くを散策する感じで穏やかに過ごしました。
音MDM天告知動画の制作もあり結果的に映像制作に打ち込んでいた日々になりましたが、不思議なことにそちらに対する情熱は高まりがやまないです。FRENZ2023の作品も眺めていると自分も参加したい欲が出てきます。来年こそは!と思考をめぐらす日々。
そんな感じで夏が過ぎていきました。旅行しないとこのシリーズのネタがないのも事実なので、活発に過ごしたいですね。暑すぎる夏でしたがご健康に。
懸賞で花火大会のすごくいい席が当たったので見てきた
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2023/07/04
Mastodonでフォローしている方からBlueskyの招待コードをいただいたので早速登録してみた。
Twitterの雰囲気に似てるがまだ日本のユーザーは少ない。招待制ということもありMastodonよりもユーザー数は少ないだろう。逆にそれが良くて今のところフォローしている人の投稿だけ流れてくるので余計な情報が入って来ない。フォローを増やして行くとタイムラインの情報が増えてくるのだろうが、Blueskyではなるべくフォローは控えようと思う。
正直に言うと自分はあまり友人がいない。自分がきちんと友人関係を維持していこうとしていないから当然なのだが、昔の友人とはもう長年疎遠になってしまった。たまに会社で仲のいい同僚とは飲みに行ったりもするが、基本的に1人行動だ。仕事が休みの時などは誰とも会話しない日が多い。たまに妻と電話で話をするくらいだ。
そういう時に何か独り言を垂れ流す場所があればと思う。特に反応も期待していないが、あればあったで嬉しい。Twitterも当初はそんな感じで使っていたが随分雰囲気が変わってしまった。
Mastodonはログ的に使っているところがあるが、Blueskyはただ単に独り言を呟く用に使ってみようと思う。
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230807 月
ピンチはチャンス。
家族の入院やらコロナやらでもう3ヶ月近く働いてないから銀行残高が80万切ってしまった。3人家族で医療費等のコストかかる家庭でそれはマズい。
入院一回で20万以上はかかるのだ。
愛を横に置き鬼になる手続きしないとなんもかんも立ち行かなくなるが、鬼になってる最中にぜんぶ終わって空っぽになってしまうリスクってもんもある。
大事な存在を「看取る」為にはお金と時間のバッファが必要だ。
理性が感情に敗けている。感情に勝って��で空虚な生活維持してなんになる・・とも思うが子供の為に虚無の中に悦び見出し親ムーブを全うする。
優しい親をエミュレートする自分はあまりにも他人すぎるのだ。
頭と身体を動かさざるを得ない「危険な刺激」があればいい。条件反射で建設的で社会的な行動してしまうイベントが次から次に起きればいい。
その活動ログを誰かから応援してもらえればきっと人生はうまくいく。
かつての俺はそんな「ちゃんとした人」を応援する気になれなかった。
ちゃんとした人はちゃんとできるだけの幸運に恵まれたんだから遠慮して恵まれぬ我々にエネルギー寄越せと思っていた。
��よ、なんとなく我に力を。気が向いたらでいいから理不尽なまでのラッキーを―
別に自分が家族を護らずともこの法治国家の日本ならそれなりにぬくぬくと30過ぎまで人は生きていける。問題となるのは「寂しさ」だ。
肉体的健康犠牲にする事なく寂しさ忘れる為の技術さえ手にすれば、人は家族を失ってもなんとなく生きていける。
退屈な日々の中に「可笑しみ」を見い出せ。「エンタメ」を捏造しろ。
不断の努力でつまらないものを反転させ「愉しむ」のだ。
酒を買い続けるのをやめろ。酒で得られる安寧や酩酊は訓練で炭酸水から得られるように進化しろ。しゃっくりを技術で止めろ。人生をラクにする「肉体的チートテク」を一つでも多く獲得するのだ。
認知を意識的にバグらせてストレスを自在に操れ。外部からの刺激を自分好みに編集して味変しろ。
虚無に追いつかれるな。虚無は反転する事も掛ける事も割る事もできない。
ならばまだ「毒」の方が価値がある。
平和と安寧には虚無がつきまとう。混沌と脅迫には毒がある。けれどその毒を反転させれば「おもしろ」が生まれる。
毒を反転させたおもしろ食べてりゃ元気が出る。元気あればなんでもできる。
電気があればなんでもできる。
アンと匂いの木。
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