自由の蝶
聡明な女性のような自由の蝶 くもが張る罠にかからない かまきりの攻撃は上手にさける ひらりひらりと飛んでいく 心の牢屋に閉じこもった人に 自由の蝶は姿をあらわす 天井に手を伸ばせば ひらりひらりと飛んでいる 自由の蝶は牢屋の人の想いを受け 牢屋の壁を透り抜け 人知れず静かに飛んでいった 牢屋にいる人々と同じように 自由を求めて旅をしている人のもとで 自由の蝶は羽を休める
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イヴの唄
私はたった一人荒野を歩いてきた
決して終わることのない荒野
太陽は照らさず 月光は降り注がない
自然は息絶え 動物の足跡はない
わずかの水もない永遠の孤独の様な荒野
人影が恋しくなり何度もあたりを見渡した
そこには私の心など関係なく吹き荒れている
私と同じ孤独な心を持つ
どこからきたか分からない風が在るのみ
私は風の生まれたところを探した
私が何年も求めてきたものがそこにあると感じたから
風は同じ孤独な私に機会を与えてくれた
風は私の心と同調し始めた
風は私の背中を押しイヴのもとへ導いていった
女性の姿をしているイヴと私は出会った
泉が湧くそばの
イラクサの上に静かに座っていた
イヴは唄を口ずさんでいた
その唄はまるで
一陣の風が樹々の葉一枚一枚を優しくあやすような唄
水面に映る静かな月影が瑚を美しく化粧されるような唄
小鳥達の歌声が森を刹那唱和させるような唄
イヴと私は触れ合うことはできなかった
風はイヴと私を結び合わせた
イヴと触れ合わず遠くに去られることもない
絶妙な一点に私とイヴは存在する
そこでならイヴの唄が私の唇からあふれる
私はイヴの唄を紡ぐ
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深淵
プロメテウスがまた一人 深淵に迷い込んだ 深淵から地上にもどれた者はないという 春の優しい風に包まれた花びら 雪の様に舞い降りていく。 何世代にも渡って人々が観てきた桜 桜は自分達と感応する人間を ふるいに掛けるように一瞬で見つける 自然の神秘を観る者は どこまで辿っても出口が無いメビウスの輪の様に、 深淵を半永久的に彷徨い、 冬を通り越したら再び新しい自然の息吹が咲く様に、 地上の清らかな大地に ふたたび顔を出した者 自然と遊んでいたこだま達が プロメテウスと出会う時 嬉しそうにほほえむ 草叢に隠れていたこびと達が プロメテウスが通る時 隠れ家から顔を出す プロメテウスに力を授けた精霊が プロメテウスが道を踏み間違えない様に 静かに見守る 深淵で果てた者達の魂や 深淵を抜け出したかつての同類達の篝火を プロメテウスは知覚する 彼は 灯台の光の様に 道に迷っているたくさんの人々を導く
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rain tree 樹々の涙
陽が降り注いだ時 樹々は笑う 陽光と新緑が出会う 風と出会う時 樹々は囁く 心地よい音が木霊する 夕刻の時 樹々は静か 万象が眠りに付いていく 雨を含んだ時 樹々は泣く 葉から雫が滴る そして又 樹々は泣く 人々が泣く時と 同じ気持ちで 静かに泣いている いくら泣き叫んでも 樹々の泣き声は私たちの耳には届かない 私達は彼らが 虐げられて 刃向かわないのが 当たり前だと思っているから どうか 森羅万象を平和に見て 思いやる瞳を 私達に与えて下さい この世の 壊す人を施す人に 導いてください
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万物
人が造った歓喜の下に「彼」はいる 「彼」は形を変える 樹々も、鳥達も、風も 「彼」が形を変えたもの 子供達は「彼」と共にある 子供達は「彼」と友達 「彼」は子供達を楽しませ、喜ばせる 大地から唄が聞こえる やがて子供達は「彼」と離れる 子供達は「彼」を心から追い出し 人が造った歓喜のもとへいく そして子供達は一つの駒になる 「彼」は人が造った世界から追い出され 自然の中で、囁かれるのを待ち続ける
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美
美に私が負けないように
私は美を手なずける
自然 動物 女性 芸術
すべて美の塊
美を知覚できる人は
同じ様な人を引き寄せる
あらゆる事物から
美の痕跡を見つけ出す
美に飲み込まれた時
その人は罪を背負う
世界の終わりを心で感じる時
あなたは美にもっとも近づいている
女性は美であり
女性は愛する人を
美に飲み込まれないように
引き止める
美が世界を覆う
鳥達が 雲が 風が 太陽が
世界を祝福する
その様な時が
いつか訪れるように
私は願う
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ベアトリーチェ
君が 愛から 見放され 苦悩に 襲われ 孤独と 向き合うだけの 時 永遠の女性 ベアトリーチェが 君に寄り添ってくれる どこからも 切り離された と感じる時 ベアトリーチェが 君に寄り添ってくれる 彼女の愛が 君の進むべき道を 照らし続ける たとえ 現実の「モノ」 すべてから 見放されたとしても 彼女だけは 君から 離れることはない 「つくりもの」 の世界 罪人を 閉じ込める 世界に 君が 居る必要はあるか? ベアトリーチェが君を 君が必要とされている 世界へ 導いてくれる
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命の躍動
「命の躍動」が起きた時
海に 山に 川に 空に
彼が姿を現す
詩人は瞳で彼を感じ取る
彼の足跡を詩人は追いかけた
すいすいと彼は樹々を通り抜け 川面を渡り 空を舞った
その先に詩人は
真理が湧き出る泉を見つけた
かつてすべての者がこの泉から生まれた
泉を詩人が見つけた時
善と悪
生と死
自然と人工
多数と少数
これらすべての価値が逆転する
詩人は本当の価値を愛する人々に伝える
灯台のように
灯火のように
詩人は光を放ち続ける
光で自らが燃え尽きるまで
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囲い込み
ヒロシマとアウシュビッツ
を経過して約70年
科学技術の愚用
と
自由を扼殺するシステム
21世紀
この網は
世界中を覆おうとしている
19世紀中盤
2+2=4になる社会
画一的な社会
そこから本当の自由を探し求める
ことの大切さを描いた
ドストエフスキー
20世紀初頭
急速に近代化していく社会と
社会を維持するための制度から
こぼれ落ちる人々を描いた
夏目漱石
二人が書き残したモノに
世界と人の
ホンシツと
カラクリが
在る
囲い込み 囲い込み 囲い込み
その向こうも
囲い込まれている
もし
檻の街の
鉄格子を
一本外し
そこから
人々が溢れ出たなら
傀儡子により
新たに
鉄格子が造られ
傀儡子の人形が
鉄格子を外した者を
審問する
これは絶対に変わらない答え
ドストエフスキー
と
夏目漱石
が洞察した一つの
真理
世界は変わらない
個人はきっと変われる
救いはそこにありそうだ
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森
男と女が
心の底から愛し合う時
世界を覆う霧が晴れる
森への入口が開く
道化と冷酷と矛盾が覆う
砂漠の都市の
辺境に
森は散在する
男は
森に入り
見るべきモノを見る
森に深く入って
はぐれないように
女の呼び声を
道標にして
男は森から出てくる
何かを掴むために
男は何度も森に入る
女は森の入口を開いて男を待つ
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