本音
本音を言うけどよ
俺、お前が作る味噌汁が世界で一番好き
「はあ、そうですか。」
あとよーこれも本音なんだけど
もっとぱふぇやいちご牛乳飲みたいんですけど
「糖尿のケがなくなったら言ってください。」
それからさあ、もっと本音なんだけど
飲みに行くのは月に2回までってルールはちょっと厳しすぎるんじゃないかな〜って長谷川さんも言ってた
「お仕事とってきてください。ひいてはお賃金ください。そしたら月に3回でも4回でも行けるようになります。」
そんでさーこれはさーすっごい本音なんだけどよォ
俺、新八のことが好きだ
「…それは」
…
「ダダ漏れだったので知ってます。」
嘘だろ何それおっまえ俺の気持ち知ってて弄んでたワケ?酷い新ちゃん下衆にも程がある!影では俺の純情な気持ちをほくそ笑んでたんだろテメーコノヤロー
「真っ赤な顔して言いたいことはそれだけですか?」
お前だって耳まで真っ赤じゃねぇか
「うるっさい!これで僕の本音もわかるでしょ!言わせないでくださいよっ。」
お互い本音が滲み出ちゃってるみたいだけど、可愛くてキスしてしまいたいって思ってる俺の気持ちは今だけでも隠しきれてるだろうかなんて、その赤面に唇を寄せるのだった。
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さよならさんかくまたきてしかく
空がやけに藍色に見えた。
川沿いの土手。
草の匂いが鼻をつく。心地いい。晩夏の夕暮れは青と橙が絶妙にない交ぜになっていて、無駄に人を感慨深くさせるから参る。昔見た、青空と血の赤を思い出してしまった。自責の念が沸々と沸き起こる。
「あ。銀さん、あれ、あれ。」
「ん?」
傍らの新八が俺の着流しを引っ張りながら俺の見ていたのと反対の空を指差した。言われるがまま振り向けば、薄ら暗くなりつつある鰯雲の天に、小さく光る一番星。
「おー、明けの明星。」
「違いますよ。今は夕方なんだから宵の明星でしょ。」
「こまけーこと気にすんなや、ぱっつぁんよォ。」
間違ったことを誤魔化すように、俺は新八の手をやんわりと握った。おずおずと握り返して応えてくれる細い指がたまらなく愛しい。
「て言うか、金星なんて今、見える時期ですか?」
「…こまけーこと気にすんなや、ぱっつぁん…。」
ああ、しまった。もう誤魔化す術がない。
仕方がないから、呆れて俺を見ている可愛い顔にキスをひとつではぐらかされて貰うこととしようか。
また明日も、おまえは俺を無意識に励ましてくれるんだろう、と期待しながら帰る路。
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僕の花
「あれ、珍しいですね」
久方振りの依頼から、小さな花束を携えて銀時が戻った。それを指して疑問を投げかけると、いつものごとく至極面倒そうな物言いで彼は返した。
「今日の礼だっつって好きなので包んでくれるって言うからよ」
ん、とぶっきらぼうに渡された花は鮮やかで、自然、新八の口元を綻ばせた。
「僕、ひまわり大好きです」
「あぁ。なんかお前みてぇだなって思ったから入れてもらった」
ダリア
ヒマワリ
カスミソウ
活けましょうか、花瓶ってあったっけなぁ。と押入れを探しに新八がソファを立つのと入れ代わりに銀時が腰かけた。「いつもありがとよ、ってのを伝えたい」と言って作ってもらったことは秘めておこうと銀時は思った。バレたら最後、恥ずかしすぎて敵わない。
『カスミソウの花言葉には「感謝」の他に「無垢の愛」って意味もあるんですよ』
花束を渡しながらそう述べた主の言葉を想起していた。正しく、新八に似合いだと思った。控えめに花を結ぶ様も、繊細な花弁も。
「やっぱり花瓶なんてなかったのでコップに活けました」
と、新八がデスクにそれを置いた。銀時は気の無い返事を返して欠伸をこぼした。
「銀さん、花言葉って知ってます?」
頓に新八が問うた、銀時は僅かどきりとしたが平静な顔をしてさあなぁ、と答えた。
「花に意味をもたせた言葉のことです。僕の誕生花ってバーベナって花なんですけど、花言葉は魔力なんですよ」
ふふんと得意げに言って新八は銀時の隣に座った。魔力とはなるほど、この少年にこれほど傾倒している自分を皮肉っているのだろうか、と銀時は思わず小さく笑った。
「銀さんの花はなんでしょうね」
「知らなねーなぁ」
「銀さんを表すんで『怠惰』とかの意味合いの花ですよ、きっと」
「仕事から帰ってきた奴捕まえてひどい言い草だなオメー」
「あはは、そうでした。すみません」
そうして、銀時に向けられた屈託の無い笑顔が太陽のようで、やっぱりヒマワリは新八みたいだと思った。惜しげも無く俺たちを愛してくれる感謝を、捧げるためのカスミソウは新八によく似合うし、夜伽の時の艶美さや銀時の心を掴んで離さないのは確かにバーベナの意味するところだろう。
「お前の花は、なんかいっぱいあるな」
「そうですかね」
隣から香る清々しい匂いも、小首を傾げている様もまるで小さな花のようだった。なんてことはない、新八自体が花みてぇだなんて柄にも無いことを考えて銀時は一人密かに赤面するのだった。
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足袋
午前中に干した洗濯物がベランダではためく様をぼんやりと見ていた。今週のジャンプはもう見飽きる程に読んだから。パタパタと、移動の度に柔らかい風を吹かして家の中を駆け回る気配を頭上に、思案する。
ピンチハンガーに掛けられた俺のトランクスと、隣には白い足袋が数足。足袋なんてもう何年も履いていないし履くつもりもないから、あれは俺のものじゃない。
なのに当然という佇まいでヒラヒラと揺らめいているのが、台所でカチャカチャと忙しなく動くアイツみたいだった。
小言は五月蝿いし、騒がしいし、アイドルオタクだし、童貞拗らせてるし、騒がしいし。
然もありなん、それが家族ってもんなんだろ。
ハンガーにかけられた鮮やかで小さいチャイナ服、その横に漸く俺の着流し。日なたで眠る白い犬が部屋の大部分を占拠していて、あれはうちの娘が拾ってきたペットだから仕方ない、とか。
「ちょっと銀さーん!ボケっとしてるなら買い出しに付き合ってくださいよ!」
なんて、流石、主婦業が板についてるメガネが早速俺をこき使う。それがひどくむず痒い。
のそりと起き上がった俺を従えてとば口に佇む小さい背中にこみ上げた愛しさが、多分、今の俺の幸せなんだろう。
「新八」
「何ですか?」
「好きだぞ」
「唐突だなぁ!」
笑って見上げる双眸の中に、自分でも知らない表情をした俺がいた。
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